水酸化ナトリウム

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水酸化ナトリウム(すいさんかナトリウム、sodium hydroxide)は、化学式 NaOH で表される無機化合物で、ナトリウム水酸化物でありナトリウムイオン水酸化物イオンよりなるイオン結晶である。苛性ソーダ(かせいソーダ、caustic soda)と呼ばれることも多い。CAS登録番号は1310-73-2。

強塩基(アルカリ)として多量に用いられ、工業的に非常に重要な基礎化学品の1つである。毒物及び劇物取締法により原体および5%を超える製剤が劇物に指定されている。

性質[編集]

常温では無色無臭の固体試薬としては白色の米粒状やフレーク状であるものが多い。融点約 318 ℃、沸点約 1390 ℃、密度2.1g cm−3潮解性が強く、空気中に放置すると徐々に吸湿して溶液状となる。

水に易溶(20 ℃ での溶解度は 109 g/100 cm3)。水中で完全に電離水酸化物イオンを放出するため、強いアルカリ性を示す。また、水に溶かす際に激しく発熱する。水溶液を濃縮すると一水和物NaOH·H2Oが析出する。

二酸化炭素を吸収する能力が強く、実験室においてその吸収剤として用いられる。

市販の製品は多少の炭酸ナトリウムを含んでいるが、50%(d=1.52g cm−3, 19mol dm−3)程度の濃厚水溶液では、炭酸ナトリウムはほぼ完全に沈殿しこれを含まない水溶液の調整が可能となるため、分析化学において中和滴定などに用いられる。

工業用にはフレーク状やビーズ状のものもあるが、通常まとまって使用する場面では48%水溶液(工場出荷時の質量%)が流通しており、凝固点約 10 ℃、沸点約 138 ℃。性状は無色透明からやや灰色。密度は約 1.5 g cm−3。固体および水溶液伴に空気中の二酸化炭素を吸収し炭酸ナトリウムを生じるため密栓して保存する必要があるが、ガラスを徐々に侵しケイ酸ナトリウムを生じて固着するため、ガラス瓶、特にすり合わせの栓は使用しない。

また、両性元素であるアルミニウムと反応してアルミン酸ナトリウム水溶液を生成し水素を発生する。その他、亜鉛およびガリウムなどもアルミニウムより反応性は低いが濃水酸化ナトリウム水溶液と徐々に反応する。

なお、強いアルカリはアミド結合ペプチド結合)を加水分解するので、タンパク質を腐食する作用を持つ。したがって、皮膚等に付着したまま放置すると火傷のような(ぬるぬるする)症状を起こすので、付着した場合は即座に水で、きれいに洗い流す。ちなみに、皮膚がぬるぬるするのは、皮膚のタンパク質が水酸化ナトリウムによって溶かされ、反応を起こしたものがぬるぬるさせているのである。特に、眼に入った場合失明のおそれがあるので、取扱いには注意を要する。万が一身体に付着した場合はこすらずに充分に水で洗い、医師の治療を受ける。

声優高垣彩陽は水酸化ナトリウム中毒患者として知られている。

製法[編集]

工業的には塩化ナトリウムを原料として、イオン交換電気分解とを併用するイオン交換膜法によって製造される。したがって、塩素と水酸化ナトリウムは併産関係にあり、どちらか一方だけを選択的に得ることはできない。

用途[編集]

基礎工業薬品のひとつとして多様な方面で用いられる。水酸化ナトリウムの2008年度日本国内生産量は 4,372,807t、消費量は 986,744t である[1]。2001年時点の世界生産量は4218万トンであり、アメリカが1/4強と首位を占めた。これに中国、日本を加えた3カ国で全生産量の過半数を占める。

代表的な用途としては、単純なアルカリとして上水道下水道や工業廃水の中和剤とされるほか、ボーキサイトからアルミニウムの原料であるアルミナ(酸化アルミニウム)を取り出すのにも使用される。パンスナック菓子プレッツェルの生地を水溶液に浸けて、表面のつや出しと食感改善にも利用されている。ただし、高温 (170℃) で焼かれるため、製品には残らないと言われている。

強力な鹸化作用のため、石鹸洗剤の製造にも使われる。また、油分と反応して鹸化する特性を利用して、メッキ工場などでの脱脂処理として利用されることもある。

製紙工業においては、パルプ製造の際、原料の木材中のリグニンを溶解するための蒸解行程で硫化ナトリウムとともに多量に消費される。

学校教育の現場で、葉脈を取り出す実験を行う際の水溶液として利用されることがある。葉を水酸化ナトリウムの水溶液に浸して加熱したあと、葉肉を歯ブラシなどで除去し、葉脈を取り出す。

過去にラーメンのコシを出すために使われているかんすいの代用品として使われていた時期もあったが、現在は、食品衛生法により、食品添加物としての使用は条件が付けられている。(製造用剤として認められているが、最終食品の完成前に中和又は除去することが定められている。財団法人日本食品化学研究振興財団

脚注[編集]

関連項目[編集]