救助工作車

提供: Yourpedia
移動: 案内検索

救助工作車(きゅうじょこうさくしゃ)は、救助隊が搭乗する消防車両
救助隊の通称である「レスキュー隊」が使用することから、レスキュー車(レスキューしゃ)とも称される。東京消防庁では救助工作車とは呼ばず救助車とされている。 一般生活上で起きるさまざまな救助事案に対応できる多数の救助資機材を積載し現場へ急行する。

概要[編集]

救助工作車や救助車、レスキュー車などと呼ばれている。

主にウインチ照明装置、クレーンなどを装備し、中型トラックをベースした車両が一般的。フロントにウインチを装備するため、バンパーが他の消防車よりも大きく張り出しているのが特徴である。

全国の消防本部特別救助隊が設置されたのに合わせてⅡ型の救助工作車が全国の消防に多く導入されていたが、近年、緊急消防援助隊制度の発足と東京消防庁消防救助機動部隊(通称はハイパーレスキュー)や政令指定都市消防局及び中核市消防本部に特別高度救助隊・高度救助隊など震災対応部隊の創設により現在は各消防本部の規模や地形、用途などによりI型からIV型の車両が運用されている。また、近年は高床型と低床型、ハイルーフ、バス型などた様々なタイプの車両が存在する。 例として東京消防庁では消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)運用の車両はクレーンを装備しているIII型だが、各消防署の特別救助隊のII型車両[1]にはクレーンを装備していない。

車体側面のシャッター部に稲妻マーク(つばめマークやコウノトリの羽根とも)や所属本部名等のマーキングやドアの部分エンブレムが付いている場合が多く最近は各本部によって個性が見られる。東京消防庁の場合はつばめマーク(稲妻マーク)[2]が全車両の車体側面のシャッター部に白い稲妻マークと左右フロントドアに特別救助隊ならスイスで救助犬とし活躍したセントバーナードが描かれた青色のワッペン、消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)なら金色のワッペンがマーキングされている。

消防救助工作車の種類[編集]

消防が運用する救助工作車は車両のサイズや装備する救助資機材などによりIからIV型に分類されている。

I型[編集]

主に2~3tクラスのトラックシャーシをベースにした車両。以前は小規模な自治体が運用していることが多かったが、現在ではI型を配備する自治体はほとんどない。近年では救助専任ではなく、消火活動も行う兼任救助隊または一般の消火隊(ポンプ隊)が救助を兼任し使用する車両に救助資機材を積載し、救助対応ポンプ車として運用する自治体が増えている為である。例外として狭い道路が多い地域、建物密集地域、山間部などを管轄する自治体があえてI型を配備する場合がある[3]。 また、大阪市消防局では特別救助隊[4]の救助工作車はⅡ型・Ⅲ型(Ⅳ型も配備)だがそれ以外の救助隊はタンク車ベース(規格上はCD-IまたはCD-IIポンプ車)の車両を配備している。

II型[編集]

最も普及しているのがII型である。主に5~7tクラスのトラックシャーシをベースにしている。
名古屋市消防局横浜市消防局の様にポンプを装備して消火も行える車両を配備している自治体もある。
地域の特性によって7~10tクラスのシャーシを使い、通常の救助資機材の他に水難救助など特定の資機材を充実させた車両や、逆に5~7tクラスのシャーシに後部クレーンを装備せず、全長を短くして道路の狭い地域や山間部等での使い勝手を優先させた車両もある。
クレーン等がなくても規格上II型に適合するが、現在では後部クレーンと照明装置を装備した車両が一般的である。 また、シングルキャブを改造し、ハイルーフ化と後部座席のスペースを追加した車両の事をバス型と呼ぶ。バス型は車内で救助資機材の収納・取り出しや装備の着装などを行なえる広い後部スペースをもつ事から近年導入が増えている。因みにバス型とは救助工作車の規格名ではなく、車両の形状を示す総称である。 緊急消防援助隊整備として総務省消防庁から補助金が支給されることになっており、緊急消防援助隊登録車両として満たすために更新時にクレーンや四輪駆動の車両も増えている。

III型[編集]

阪神・淡路大震災後に設定された震災対応救助車両。II型の車両をベースに高度救助資機材を積載できるよう主に7~10tクラスのトラックシャーシ[5]をベースに架装されている。車両の形状がIII型に準じていてもクレーンを装備していなかったり、高度救助資機材を車両に積載していない場合はII型となる。東京都及び政令指定都市特別高度救助隊が設置されている自治体中核市の高度救助隊が設置されている自治体に配備されている。

阪神淡路大震災以降に震災時の悪路に対応するために登場した車両でありかつては除雪車ウニモグベースの超高床の車両も多く登場した。 例として横浜市消防局特別高度救助部隊(スーパーレンジャー)やさいたま市消防局及び新潟市消防局特別高度救助隊は超高床の除雪車ベースの車両を、京都市消防局北部救助隊と神戸市消防局パリ・ダカールラリートラック部門に出場したラリーカーをベースにした超高床の車両を、さらに川崎市消防局特別高度救助隊と入間東部地区消防組合新居浜市消防本部ではウニモグベースの車両を導入していたが新潟市消防局と新居浜市消防本部以外はすべて更新廃車となった。このようにかつてⅢ型は高床型の大型車が一般的だったが悪路に強い一方で大型ゆえに通常の市街地での活動で取り回しが悪く運用面の理由から小型化進み近年は低床型も登場し外見上Ⅱ型と変わらない車両も多い。

近年、特別高度救助隊・高度救助隊の発足や大きな災害が多発していること、総務省消防庁の緊急消防援助隊整備の補助金制度に伴い、更新時にII型からIII型への更新が増えている。

IV型[編集]

III型と同じく阪神・淡路大震災後に設定された震災用救助車両。平成8年に自治省(現在の総務省)消防庁が指定した東京消防庁大阪市消防局名古屋市消防局福岡市消防局の各本部に無償配備され2010年浜松市消防局2012年さいたま市消防局、2013年に横浜市消防局や京都市消防局などにも配備された。一隊につき2台で編成される。総務省消防庁が配備した初代の車両は トヨタ・スーパーダイナの2tシャーシをベースにモリタが架装しており、足回りと4駆のメカニズムはメガクルーザーの機構を採用していた。配置先のうち、大阪市消防局は平成19年度に2台とも日野・デュトロ4WDベースの車両に更新[6]し、東京消防庁は平成22年にいすゞ・エルフベースの車両に更新した。また浜松市消防局に配備された2台は一方をダブルキャブ・ポンプ搭載型とし、もう一方をシングルキャブ・資機材搬送特化型として山岳地帯を管轄する天竜消防署に配備した。さいたま市消防局は大宮消防署特別高度救助隊の救助工作車Ⅲ型をⅣ型に更新する形[7]でⅣ型で初めてバス型車両を配備した。
救助工作車IV型だけは緊急消防援助隊として大規模災害派遣時に航空自衛隊C-130で輸送される事を前提としている。また、自治体単独で導入するのではなく、消防庁から指定を受けた本部にのみ配備されているのが特徴である。
6本部の共通点は、政令指定都市であり、行政区内にIV型車両を輸送するC-130輸送機の離着陸が可能な空港などの施設[8]がある事である。さらに2013年には総務省消防庁が大規模震災用高度救助車として救助工作車Ⅳ型を横浜市消防局や京都市消防局などに追加配備した。

警察用車両[編集]

警視庁千葉県警察などの機動隊には災害警備活動[9]を目的とした機動救助隊があり、阪神淡路大震災後は全国の警察広域緊急援助隊が創設された。また、東日本大震災後には警視庁に特殊救助隊と呼ばれる災害救助専門部隊が発足した。

消防の救助隊は人員と資機材を救助工作車で同時に搬送するのに対し、警察の機動隊は人員輸送車(警備輸送車)とレスキュー車(救助資材車)とで人員と資機材を別々に搬送している場合が多い。

警視庁機動救助隊のレスキュー車(機動救助車)は、消防が使用する救助工作車と同じボディーを使用したものと、市販の2tや4tの4WDシャーシを使用したものがある。他の道府県警察との違いは、塗色が「緑地に“疾走する黒豹”の入った白帯」である点で、積載資器材は消防の救助工作車Ⅰ型程度と少ない。マイクロバスをベースにしたレスキュー車とセットで出動する。

都道府県警察の広域緊急援助隊広域レスキュー車は大規模災害派遣時に使用される車両で、塗色が水色と白帯で車体は4t~5tのシングルキャブ4WDシャーシを採用していたが、近年は更新に従い消防と同じダブルキャブタイプの車両が全国に配備された。

備考[編集]

ミニレスキュー車やマイクロバスがベースのレスキュー車は救助工作車ではない。また、警視庁のレッカー車も救助工作車ではない。

脚注[編集]

  1. かつて東京消防庁には国際消防救助隊マーク(緑色の地球儀を背景に、上半分に赤で「IRT JF」[2]の文字、下半分に握手を交わす2つの手)が描かれた国際消防救助隊登録車両が永田町、練馬、足立、城東、武蔵野各消防署の特別救助隊に配備されていた。この国際消防救助隊登録車両は貨物専用ジャンボ機に空輸して海外派遣できるように制作されたⅡ型救助車であり車上の取り付け品などを脱着することもでき車高も低くした仕様になっていた。しかし海外に車両を派遣する機会がなかったために現在はノーマル仕様へ更新されている。
  2. 東京消防庁の救助車のシャッター部の白い斜めのマークは1971年度製作の車両からで、電光石火の出場、電光石火の技の冴えの意味が込められている稲妻マークとされてきた。しかし、公式には稲妻ではなく「救助を求める人のもとへ素早く駆けつけるツバメ」を表したツバメマークだとされている。「われら消防レスキュー隊」(イカロス出版)より
  3. 例:八尾市消防本部山本分署
  4. 通称スーパーレスキュー。大規模災害時は特殊災害機動部隊いわゆる大阪市消防局の特別高度救助隊として活動する
  5. 代表的車種は8t車ベースではスーパーグレートFP(4x2)型、ギガCVR(4x2)型、プロフィアFH(4x2)型、10t車ベースではスーパーグレートFV(6x4)型、ギガCXZ・CVZ(6x4)型、プロフィアFS(6x4)型
  6. 市が単独で購入。架装はモリタ
  7. Ⅲ型は浦和消防署特別高度救助隊も運用している
  8. 浜松市は航空自衛隊浜松基地、さいたま市は陸上自衛隊大宮駐屯地
  9. (災害が発生した場合に、個人の生命、身体および財産を保護し、公共の安全と秩序を維持することを目的に行う警察の救助活動)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]