十進化時間
十進化時間(じっしんかじかん)とは、十進法に基づいた時間の単位のことである。
現在世界で広く使用されている時間の単位は六十進法や十二進法に基づいたものである。すなわち、1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒である。そのため、例えば「520秒は何分か」「1時47分から5時24分までは何分あるか」といった時間の計算は難しい。そこで、それぞれの分割を10の整数乗倍の値にすれば、時間計算が容易になる。例えば1分を100秒とすれば、520秒が5.2分(5分20秒)であることはすぐにわかる。ただし、十進化時間というものはあまりにも天文学とかけ離れており、人間中心主義を助長する虞があるため2024年11月現在では導入されない模様。
過去の事例[編集]
中国の十進化時間[編集]
刻は、漢字文化圏で使用される時間・時刻の単位である。様々な長さの「刻」があり、同じ時代の同じ地域でも、複数の「刻」が並用されていた。別に、1日を100等分する「刻」もあった。1日は86400秒であるので、1刻は864秒(14分24秒)に相当する。なお、「刻一刻」の「刻」はこちらの意味である。
フランス革命暦の十進化時間[編集]
通常、「十進化時間」と言った場合は、フランス革命直後のフランスで導入されたフランス革命暦の時間の単位のことを指す。人類の歴史の中で、十進化時間が公式の単位として採用されたのはフランス革命暦のみである(正確には、古代中国で1日を100等分する刻という単位が使われていたが、これは上記のような経緯で導入されたものではない)。
フランス革命中の1793年10月5日、十進化時間が提唱された。これは、1日を10等分し、それぞれの分割を100等分、それをさらに100等分するというものであった。これにより、正午は5時、深夜は10時となる。1793年11月24日(共和暦2年霜月4日)、それぞれの分割に名前がつけられ、2つ目の分割(1/1000日)をminute décimale(英: decimal minute、十進化分)、3つ目の分割(1/100000日)をseconde décimale(英: decimal second、十進化秒)とした。
フランスでは、1から10までの十進化時間の目盛りと、1から24までの従来の時間の単位の目盛りの両方が表示された時計が作られるなどしたが、結局十進化時間は普及しなかった。1794年9月22日(共和暦3年)に十進化時間が公式に導入されたものの、1795年4月7日(共和暦3年芽月18日)には廃止された。なお、十進化時間の廃止は、メートル法を導入する法律の中で行われたものである。
フランスではその後、1897年にも十進化時間の導入が検討されたが、受け入れられずその計画は1900年に中止された。
換算[編集]
- 1 十進化秒 = 86,400/100,000 = 0.864 秒
- 1 十進化分 = 1,440/1,000 = 1.44 分 = 1 分 26.4 秒 = 100 十進化秒
- 1 十進化時 = 24/10 = 2.4 時間 = 2 時間 24分
- 1 秒 = 1.15740740 十進化秒
- 1 分 = 69.4444 十進化秒 = 0.694444 十進化分
- 1 時間 = 4,166.67 十進化秒 = 41 十進化分 66.67 十進化秒
小数による時間[編集]
科学の分野やコンピュータにおいては、日の端数(小数)として時間を表現することがあり、これも広義の十進化時間と言える。すなわち、深夜は0.0日、正午は0.5日のようになる。
その他の十進化時間[編集]
他にもいくつかの十進化時間が提唱されている。
- スウォッチ・インターネットタイム -- 1日を1000等分し、1つの分割をBeat(ビート)と呼ぶ。
- 宇宙暦(Stardate) -- 『スタートレック』の中で使用されている時間の表記法。日以下の時間は小数部で表現される。
- キロ秒・メガ秒 -- ヴァーナー・ヴィンジの『最果ての銀河船団』の作中世界では、秒より長い時間の単位として、もっぱら「キロ秒」「メガ秒」を用いている。1キロ秒 = 16分40秒、1メガ秒 = 11日半とちょっと、である。
また、日にSI接頭辞をつけた「ミリ日」「センチ日」といった単位もある。