裁判員制度
裁判員制度(さいばんいんせいど)とは、特定の刑事裁判において、国民から事件ごとに選ばれた裁判員が裁判官とともに審理に参加する日本の司法・裁判制度を言う。
制度設計にあたっては、1999年7月27日から2001年7月26日までの間、内閣に設置された司法制度改革審議会によってその骨子[1]、次いで意見書[2]がまとめられた。
この意見書にもとづき、小泉純一郎内閣下の司法制度改革推進本部が法案「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律[3]」を国会に提出し、2004年(平成16年)5月21日成立。裁判員制度は同法により規定され、一部の規定を除いてその5年後の2009年(平成21年)5月21日に施行され、同年8月3日に東京地方裁判所で最初の公判が行われた。
日本独自の制度のため、法務省は英文でもsaiban-in systemとしているが、英語文献では専らcitizen judge systemと訳されている。lay judge system(直訳すれば「素人判事制度」)と意訳されるものもある。
目次
概要
裁判員制度は市民(衆議院議員選挙の有権者)から無作為に選ばれた裁判員が裁判官とともに裁判を行う制度で、国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映するとともに、司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上を図ることが目的とされている。
裁判員制度が適用される事件は地方裁判所で行われる刑事裁判(第一審)のうち、殺人罪、傷害致死罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪など、一定の重大な犯罪についての裁判である。例外として、「裁判員や親族に危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件」は裁判官のみで審理・裁判する(法3条)。被告人に拒否権はない。
裁判は、原則として裁判員6名、裁判官3名の合議体で行われ、被告人が事実関係を争わない事件については、裁判員4名、裁判官1名で審理することが可能な制度となっている(法2条2項、3項)。
裁判員は審理に参加して、裁判官とともに、証拠調べを行い、有罪か無罪かの判断と、有罪の場合の量刑の判断を行うが、法律の解釈についての判断や訴訟手続についての判断など、法律に関する専門知識が必要な事項については裁判官が担当する(法6条)。裁判員は、証人や被告人に質問することができる。有罪判決をするために必要な要件が満たされていると判断するには、合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない[4]。以上の条件が満たされない場合は、評決が成立しない[5]。
なお、連続殺人事件のように多数の事件があって、審理に長期間を要すると考えられる事件においては複数の合議体を設けて、特定の事件について犯罪が成立するかどうか審理する合議体(複数の場合もあり)と、これらの合議体における結果および自らが担当した事件に対する犯罪の成否の結果に基づいて有罪と認められる場合には量刑を決定する合議体を設けて審理する方式も導入される予定である(部分判決制度)。
裁判員制度導入によって、国民の量刑感覚が反映されるなどの効果が期待されるといわれている一方、国民に参加が強制される、国民の量刑感覚に従えば量刑がいわゆる量刑相場を超えて拡散する、公判前整理手続によって争点や証拠が予め絞られるため、現行の裁判官のみによる裁判と同様に徹底審理による真相解明や犯行の動機や経緯にまで立ち至った解明が難しくなるといった問題点が指摘されている。裁判員の負担を軽減するため、事実認定と量刑判断を分離すべきという意見もある。
対象事件
- 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件(法2条1項1号)
- 法定合議事件(法律上合議体で裁判することが必要とされている重大事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関するもの(同項2号)
例えば、外患誘致罪、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、強姦致死罪、危険運転致死罪、保護責任者遺棄致死などが地方裁判所の受理する事件である[6]。なお、内乱罪は高裁が第一審の管轄であり、対象外となる。※裁判員制度は刑事裁判第一審(地裁が管轄)に対応する。事件が控訴されても(控訴審)、裁判員は関与しない[7]。
ただし、「裁判員や親族に対して危害が加えられるおそれがあり、裁判員の関与が困難な事件[8]」(裁判員法3条)については、対象事件から除外される。報復の予期される暴力団関連事件などが除外事件として想定されている。
対象事件はいずれも必要的弁護事件である。最高裁判所によれば、2005年に日本全国の地方裁判所で受理した事件の概数111,724件のうち、裁判員制度が施行されていれば対象となり得た事件の数は3,629件で、割合は3.2%とされている[9]。
公訴時効が停止している大昔の対象事件が起訴された場合は裁判員裁判の対象となる。例として以下の事件の指名手配犯がいる。
- 1970年によど号ハイジャック事件に関与したよど号グループの小西隆裕・魚本公博・若林盛亮・赤木志郎(強盗致傷罪等)
- 1972年5月にテルアビブ空港乱射事件に関与した日本赤軍の岡本公三(殺人罪等)
- 1977年9月にダッカハイジャック事件に関与した日本赤軍の坂東国男・佐々木規夫(ハイジャック防止法等)
- 1995年2月に目黒公証人役場事務長拉致監禁致死事件に関与したオウム真理教の平田信(監禁致死罪等)
- 1995年3月に地下鉄サリン事件に関与したオウム真理教の高橋克也・菊地直子(殺人罪等)
ただし、これらのような公安事件は前述の裁判員法3条の「裁判員や親族に対して危害が加えられるおそれがある」として対象から除外され、起訴されても裁判員裁判にならない可能性がある。
裁判員選任手順
まず、地方裁判所が、毎年9月1日までに、次の年に必要な裁判員候補者の員数をその管轄区域内の市町村に割り当て、これを市町村の選挙管理委員会に通知する(法20条)。
通知を受けた市町村の選挙管理委員会は衆議院議員の選挙権を有する者として選挙人名簿に登録されている者の中から、「くじ」により裁判員候補者の予定者を選定して「裁判員候補予定者名簿」を作成する。市町村の選挙管理委員会は、通知を受けた年の10月15日までに、作成した「裁判員候補予定者名簿」を地方裁判所に送付する(法21条、22条)。
地方裁判所は裁判員候補予定者名簿を元に、毎年、「裁判員候補者名簿」を作成する。裁判員候補者名簿に記載された者には12月頃までにその旨を通知する(法23条、25条)。
そして、対象事件ごとに、地方裁判所は裁判員候補者名簿の中から呼び出すべき裁判員候補者を「くじ」で選定する。この「くじ」に際しては検察官及び弁護人は立ち会うことができる(法26条)。呼出すべき裁判員候補者として選定された者には「質問票」と「呼出状」が自宅に送付される(法27条、30条)。
裁判員候補者は質問票に回答し、裁判所に持参または返送する。この質問票においては、欠格事由(義務教育を修了しない者、禁錮以上の刑に処せられた者など。法14条)・就職禁止事由(一定の公務員、法曹など法律関係者、警察官など。法15条)・事件に関連する不適格事由(被告人・被害者の関係者、事件関与者など。法17条)・辞退事由(70歳以上、学生、重要な用務があること、直近の裁判員従事など。法16条)の存否について質問される。
質問票の回答により、明らかに欠格事由、就職禁止事由、事件に関連する不適格事由に該当する場合および辞退を希望して明らかに辞退事由が認められる者については呼出しが取り消されることもある。
- なお、質問票に虚偽の事項を書いた場合には、50万円以下の罰金に処せられるか、または30万円以下の過料が課される(法110条、111条)。また、呼び出されたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しない者は、10万円以下の過料が課されることがある(法112条)。
裁判所に呼び出され、出頭した裁判員候補者の中から、非公開で裁判員と補充裁判員が選任される(法33条)。候補者としては裁判員・補充裁判員として必要な人数を超える人数(現時点では未定)を呼び出すこととなる。
裁判長は裁判員候補者に対し、欠格事由の有無や辞退理由の有無、および不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするため、必要な質問を行う。陪席の裁判官、検察官、被告人又は弁護人は裁判長に対し、判断のために必要と思う質問を、裁判長が裁判員候補者に対して行うよう求めることができる(法34条)。
裁判所はこの質問の回答に基づいて選任しない者を決定する(法34条4項)。さらに、検察官及び被告人は、裁判員候補者について、それぞれ4人(補充裁判員を置く場合にはこれよりも多くなる)を限度に理由を示さず不選任請求できる(法36条)。これらの手続を経た上で、裁判所は、「くじ」等により、不選任の決定がされなかった裁判員候補者から、必要な人数の裁判員と補充裁判員を選任する(法37条)。
裁判員・補充裁判員の選任手続が終わったら公判準備及び公判手続に入る。裁判員は裁判官とともに証拠書類・証拠物の検討や、証人尋問、検証、被告人質問等の証拠調べを経て、評議・評決の上、判決成立に関与する。公判開始後も、裁判員について不公平な裁判をするおそれがあるときや裁判から除外すべき場合、検察官、被告人又は弁護人は裁判所に対し、裁判員の解任を請求できる(法41条)。また、法律問題は裁判官のみによる合議で決定される。
なお、「裁判員候補者名簿」に記載されるのは毎年約29万5000人にのぼり、全国平均で352人に1人の確率とされ、実際に裁判員となる確率は、全国平均で約5,000人に1人になると想定されている[10]。
合議体の構成
原則、裁判官3名、裁判員6名の計9名で構成する(法2条2項)。
ただし、公訴事実について争いがないと認められるような事件(自白事件)については、裁判官1名、裁判員4名の5名の合議体で裁判することも可能である(法2条3項)。
裁判員の権限
裁判員は有罪判決若しくは無罪判決または少年事件において保護処分が適当と認める場合の家庭裁判所への移送決定の裁判をするに当たって、事実の認定、法令の適用、刑の量定について裁判官と共に合議体を構成して裁判をする権限を有する(法6条1項)。
評決に当たっては構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の賛成を必要とする(法67条1項)。
なお、構成裁判官及び裁判員の双方の過半数を得られない場合、挙証責任を有する者に不利な判断が下されたものとして扱うほかないと考えられている。例えば、裁判官3名と裁判員1名が犯罪は成立する、裁判員5名が犯罪は成立しないと判断した場合、犯罪の成否に関する事実については一部の例外を除いて検察官が立証責任を負うので、この場合、犯罪の証明がないとして無罪として扱うこととなるものと考えられる。英米のように、評決不能(hung jury)として、裁判をやり直すわけではない。
ただし、刑の量定について、意見が分かれ、構成裁判官及び裁判員の双方を含む過半数の一致ができないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数になるまで、被告人にとって最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による(法67条2項)。
なお、法令の解釈に係る判断、訴訟手続に関する判断(保護処分が適当な場合への家裁への移送決定をなす場合は除く)、その他裁判員の関与する判断以外の判断は裁判官のみの合議による(法6条2項)。
もっとも、裁判所は、裁判員の関与する判断以外の判断をするための審理以外の審理についても、裁判員及び補充裁判員の立会いを許すことができ(法60条)、その評議についても裁判員に傍聴を許し、その判断について裁判員の意見を聴くことができる(法68条)。
裁判員が負う義務
- 出廷義務
- 裁判員及び補充裁判員は、公判期日や、証人尋問・検証が行われる公判準備の場に出廷しなければならない。正当な理由なく出廷しない場合、10万円以下の過料が課される(法112条)。また、評議に出席し、意見を述べなければならない(評議参加者全員の意見が必要なため。議論が進む中で、気付いた範囲で、自由に意見を述べればよい)。
- 守秘義務
- 裁判員は、評議の経過や、それぞれの裁判官・裁判員の意見やその多少の数(「評議の秘密」という。)その他「職務上知り得た秘密」を漏らしてはならない。この義務は、裁判終了後も生涯に渡って負う。裁判員が、評議の秘密や職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(法108条)。
- ただし、公判中に話された傍聴人も知り得る事実については、話してもよいとされている。
裁判員等の日当等
裁判員、補充裁判員及び裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者に対しては、旅費、日当及び宿泊料が支給される(法11条、29条2項)。
旅費は、鉄道賃、船賃、路程賃及び航空賃の4種であり、それぞれ裁判員の参加する刑事裁判に関する規則に定められた計算方法により算定される。
日当は出頭または職務およびそれらのための旅行に必要な日数に応じて支給され、裁判員及び補充裁判員については1日当たり1万円以内において、裁判員選任手続の期日に出頭した裁判員候補者については1日当たり8,000円以内において、裁判所が定めるものとされている(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則7条)。
宿泊料は出頭等に必要な夜数に応じて支給され、1夜当たり8,700円ないし7,800円と定められている(同規則8条)。 尚、裁判員の精神的負担や経済的損失を考慮すると日当が少ないとの批判も多い。
区分審理
連続殺人事件や無差別大量殺人事件などのように、多数の事件を1人の被告人が起こした場合においては審理が長期化するおそれがあり、裁判員が長期間審理に携わることは困難である。そこで、裁判所は、併合事件(複数の事件を一括して審理している事件)について、事件を区分して、区分した事件ごとに合議体を設けて、順次、審理することができる。ただし、犯罪の証明に支障を生じるおそれがあるとき、被告人の防御に不利益な場合などは区分審理決定を行うことはできない(法71条)。
この場合、あらかじめ2回目以降に行われる区分審理審判または併合事件審判に加わる予定の裁判員または補充裁判員である選任予定裁判員を選任することができる。
区分審理決定がされると、その区分された事件についての犯罪の成否が判断され、部分判決がなされる。部分判決では犯罪の成否のみ判断が下され、量刑については判断を行わない。ただし、有罪とする場合において情状事実については部分判決で示すことができる。この手続を区分審理審判という。
そして、すべての区分審理審判が終了後、区分審理に付されなかった事件の犯罪の成否と併合事件全体の裁判を行う。すなわち、ここの合議体では残された事件の犯罪の成否と既になされた部分判決に基づいて量刑を決定することとなる。なお、この審判を併合事件審判という。
そして、裁判員はそれぞれ1つの区分審理審判または併合事件審判にしか加わらないので、裁判員を長期に拘束する必要がなくなり負担軽減につながるとされている。もっとも、裁判官は原則として事件全体に関与するので、裁判員と裁判官の間の情報格差が審理に影響を及ぼすのではないかと懸念する声もある。
裁判員裁判を行う裁判所
裁判員裁判を行う裁判所は、地方裁判所であり、原則として47都道府県庁所在地の各地裁と函館地裁、旭川地裁、釧路地裁の計50地裁の本庁で裁判員裁判を行う。ただし、50地裁の本庁のほか、次に掲げる10の地裁支部に限っては、裁判員裁判を行う(裁判員の参加する刑事裁判に関する規則2条等)。
- 福島地裁郡山支部
- 東京地裁立川支部(八王子支部を移転 2009年4月20日設置)
- 横浜地裁小田原支部
- 静岡地裁沼津支部
- 静岡地裁浜松支部
- 長野地裁松本支部
- 名古屋地裁岡崎支部
- 大阪地裁堺支部
- 神戸地裁姫路支部
- 福岡地裁小倉支部
制度に関して指摘される問題点
制度の問題点が表面化しない
「いろいろな問題が起きていても、それが直らない制度設計になっている」[11]
- 法律では3年後の見直しを予定しているが、実際の運用の中で問題が起こっても、それを表明し、議論することが出来ない。
- 実際の判決や量刑を議論する評議の過程で、裁判官が裁判員にどのような説明を行うかによって、法律の知識が限られる市民は容易に説得や操作が可能になると思われるが、そこでのやりとりは表には一切出てこない。
- 評議が割れた場合は多数決で評決や量刑が決まるのだが、それが割れたかどうかも、公表はされない。
- 裁判員になった市民はそこでの経験を一切口外してはいけないことになっているため、実際に裁判に参加した裁判員と市民社会全体が、経験則や参加意識を共有することはまず難しい。
法的安定性の崩壊
量刑相場 も参照 従来の裁判ではほぼ同種の犯罪に対してはほぼ同等の刑罰が言い渡される量刑相場が慣行となっている。裁判員制度ではこの慣行の崩壊が予想されるため、最高裁判所が、量刑データベースを裁判員に開放して、裁判員が過去の同種事例を参照しやすくすることを決めているが、弁護士の五十嵐二葉は青森県の裁判員第3号事件において強姦2件と窃盗の罪に対して量刑相場の倍以上の重い判決が言い渡されたことに言及し、量刑が犯罪被害者の心情や裁判員の個人的感情に左右されていく可能性を示唆している[12]。
公判前整理手続
公判前整理手続は非公開のため、裁判員はどのような論点が外されたのか知らされずに有罪無罪、量刑の判断をすることになる。
制度導入の自己目的化
元検事の郷原信郎(現桐蔭横浜大学 法科大学院 教授)は「司法への国民参加は、あくまでより良い社会を実現するための手段に過ぎない。だが、裁判員制度は導入することが自己目的化してしまっている。いったん実施を凍結した上で、国民全体であるべき司法の姿を議論した方がよい」と述べ、問題点として以下の指摘を行い、本制度への疑問を呈している[13]。
- 制度の目的達成の不確実性
- 刑事事件への影響
裁判員の出頭義務
- 裁判員法第52条により、裁判員には出頭義務が課せられている。
- 自営業者が裁判員に選任された場合、審理が終了するまで全く営業ができない。経営者が選任された場合、会社の運営に影響を及ぼすおそれがある[16]
- 裁判員候補者に送付される質問票では介護や育児、仕事などで都合が悪い期間を2ヶ月しか申告できない制限がある。この制限に法的根拠がない。
- この制限によって幼児・児童や高齢者と同居する主婦が申告期間外に裁判員に選任された場合、介護や育児に支障を及ぼす[17]。ただし、裁判員法第16条第8項により、証拠を提出すれば辞退の申し立てが可能である。
- 学校に通わず勉学を続ける浪人生や20歳以上の高等学校通信教育、通信制大学・大学院の学生・院生が裁判員に選任された場合、受験勉強や高卒・大卒・院修了などの学歴・学位取得に影響を及ぼす[18]。浪人生・通信制学校の学生は裁判員法第16条第3項によっては保護されない。
- 人に裁判員の職務を強制することは、意に反する苦役を禁じる日本国憲法第18条に反するおそれがある。また、裁判員への参加義務は教育・納税・勤労の義務には当たらないことから、憲法に存在しない義務を国民に課す法律は憲法違反であると指摘されている[19]。法務省は、裁判員制度は意に反する苦役に該当しないと解釈している[20]。
裁判員の不利益
- 裁判員候補者は、正式な裁判員を選任する手続きの中で、宗教や前科などプライバシーに踏み込んだ質問を受ける[21]。
- 裁判員の氏名が被告人や他の裁判員に知られることにより、危害が加えられるおそれがある[22]。裁判員法第101条は、裁判員の氏名の漏出を禁じている。なお、顔貌の視認により裁判員を特定されるおそれはある。
- 裁判員は法廷で提出される証拠を全て確認しなければならない。その中に遺体の写真などグロテスクな資料があった場合、過度の嫌悪感を催し、精神的な後遺症を患うおそれがある[23]。
- 判決を言い渡した後に誤判が判明した場合、裁判員は罪悪感に苛まれる[24]。
- 合理的理由により死刑判決に賛成した場合であっても、将来にわたり過度の罪悪感に見舞われ一般生活に支障をきたす可能性もある。
- 裁判員候補者の氏名等は被告側の弁護人に通知することが規定されている(裁判員法31条)。被告側の弁護人が裁判員候補者の氏名を被告人本人に閲覧することは禁じられておらず、むしろ裁判の必要上被告に閲覧させる必要もでてくる。従って候補者になった時点で被告側に氏名を知られることになる。
- 裁判員になるため勤務先等を休んだ場合、勤務先等に裁判員になったことが知られることになるが、それを知りえた上司、同僚等が裁判員となった者の氏名を口外することは禁じられておらず罰則もない。
裁判員の守秘義務
- 裁判員は審理に関して終身の守秘義務を負う。違反した場合は6か月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑。
- 裁判員の守秘義務は裁判官より重い。裁判官の守秘義務は範囲が狭く、終身のものではない[25]。
裁判員と同じ裁判体を構成する裁判官は弾劾裁判・分限裁判で免職になるなどするケースはあるが、刑事罰の罰則規定がない。しかも、退職後は守秘義務を担保する規定が存在しない(参照:憲法第14条・法の下の平等)[26]。
- 裁判員法第9条第2項における、裁判員が漏洩してはならない「職務上知り得た秘密」という語句は、範囲が不明確である[27]。刑事法における不明確な規定は罪刑法定主義に反する。
- 裁判員を勤めた者が日本国籍を放棄すれば、裁判員法を含む日本国法の管理下から外れるため、評議で知り得たこと全てを漏洩することが可能になる。
- 守秘義務と参加義務については検察審査会も同様の問題を抱えている。
裁判の資質
- 日当が目的の無職者や興味本位の人が率先して裁判員を務めたがったり、一般の会社員が不参加を求めたりすることや、暴力団などの反社会的団体の構成員を裁判員から排除する規定がなかったりすることなどで、裁判員の枠が不健全な人物によって占められるおそれがある[28][29]。なお、欧州には制裁を覚悟で出頭しない陪審員が多い。
- マスメディアが大きく報道した事件を取り扱う場合、裁判員が予断を抱いて審理に臨むおそれがある[30][31]。
- 刑事訴訟がワイドショーと化すおそれがある[33]。2009年8月には、放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、「裁判員にプレッシャーを与える報道は慎むべき」、「裁判員法に規程がない記者会見は不要だ[34]」などの意見・批判が39件寄せられている[35]。
- 法に疎い裁判員は専門性が高い事件を正しく判断できない。法令の解釈は裁判官のみが行うのに対して、量刑の決定には裁判員も関与する。その裁判員には量刑の相場などの知識が不足している[36]。
- 取り調べの一部録画の導入により、取り調べの過程の捜査側にとって有利な部分のみを裁判で再生することで、警察や検察が虚偽自白を作出しやすい状況を作ることになる。
- 裁判員制度に当たる陪審員制度を採っているアメリカでは陪審員がインターネットを参照して審理をおこなっていることがあり問題となっている[39]。
被告人の権利の侵害
- 取り調べの一部録画の導入により、捜査機関の偽の証拠や誘導によって作出された虚偽自白の部分のみを裁判で公開するなど、取り調べの過程の検察や警察にとって有利な部分のみを裁判で再生することで、虚偽自白を見抜くことが阻害される。
- 被告人は審理に裁判員や重罰を求める主張を行う被害者の関与を拒否できない。日本国憲法第32条に反するおそれがある[40]。
- 裁判員の都合に配慮して法廷での審理が短縮される結果、拙速な審理による誤判の危険が生まれる[41]。
- 公判前整理手続により、裁判官の判断によって証拠が制限される。
- 裁判員の選任その他の準備のため、起訴から第一回公判期日までに大きな間が空く[42]。
- 裁判員制度は冤罪の防止に有益であるという見解があるが、被告人に有利な判決に対しては検察が上訴されれば上訴審は職業裁判官による審理になるため、結局は審理が長期化するだけである[43]。
被害者・証人の不利益
- 被告人と同様に、被害者・証人も裁判員の関与を拒否できない。
- 無遠慮な裁判員によって被害者・証人が興味本位の尋問に晒されるおそれがある[44]。
- 裁判員選任の手続きでは被害者との関与の有無を確認するため、被害者氏名などの個人情報が裁判員候補者に伝えられる。裁判員に選任されなかった候補者は守秘義務の対象でないため、被害者のプライバシーが外部に流出するおそれがある。特に、被害を他人に知られることを拒絶する性犯罪被害者が、誹謗中傷などの二次被害に晒される危険性がある[45]。
- そもそも日本はただでさえ加害者擁護・被害者なおざり大国であるうえに「市橋ガールズ」の件からもわかるように、ちょっと犯罪者の容貌が美形だったらすぐ擁護したりファンになったりするような国であり、被害者の為になれない。
- 国民はいざ自分が裁判員になったら極刑を下すのにやたら消極的な発言を飛ばしており、極刑に相当する事件の被害者の関係者が報われない。
- 結果として性犯罪者をつけ上がらせた[46]。
公的な影響
- 裁判員への日当として多額の国費が流出する。国税の浪費である[47]。
- 裁判員であった者と接触することが禁じられることにより、マスメディアの取材の自由が侵害される[48]。
- 誤判が起こっても責任は裁判員に押し付けられ、裁判官に反省の心が失われる[49]。
- 裁判員の都合に配慮して法廷での審理が短縮される結果、事件の真相が詳しく究明されない[50]。
背景事情
裁判員は衆議院議員の公職選挙人名簿より抽選で選ばれ、思想・信条・能力にかかわらず選任される。選任に際して虚偽申告した場合、刑事罰として罰金に処せられ、選任された場合に正当な理由なく出頭しなければ行政罰として過料に処せられる。類似制度として検察審査会がある。
意識調査
裁判員制度への国民意識について2005年2月に裁判員制度における刑事裁判への参加意識(内閣府)によれば、制度導入後の裁判について
- 専門家でない裁判員により適切でない判決が出る(39.3%)
- 犯罪・治安のことを自分のこととして考える意識が高まる(31.2%)
- 裁判に国民感覚が反映され、司法への国民の理解・信頼が深まる(27.6%)
- 刑事裁判の手続・判決がわかりやすくなる(27.0%)
などの回答が得られている。
また、2006年12月に実施された裁判員制度に関する特別世論調査[51]によれば、
- 裁判員として参加したいかについて
- 参加したい(5.6%、前回[52]4.4%)
- 参加してもよい(15.2%、前回21.2%)
- あまり参加したくないが、義務であるなら参加せざるをえない(44.5%、前回34.9%)
- 義務であっても参加したくない(33.6%、前回35.1%)
- 刑事裁判に参加する場合に不安に感じる点について
- 自分達の判決で被告人の運命が決まるため責任を重く感じる(64.5%)
- 冷静に判断できるか自信がない(44.5%)
- 裁判の仕組みが分からない(42.0%)
- 専門家である裁判官の前で自分の意見を発表することができるか自信がない(40.5%)
- 被告人やその関係者の逆恨み等による身の安全性(39.1%)
などの結果が出ている。
なお、政府は裁判員制度導入に向けて前向きな姿勢を保ち続けているが、法曹界での賛否は両論ともにあり、否定的見解としては、「国民にまだ(裁判員制度の導入や詳しい内容が)十分に浸透していないのにもかかわらず、時期尚早ではないのか」といった意見や「裁判員制度を導入したところで、国民の負担が増えるだけで、政府が考えるほどの効果は得られない。廃止、凍結すべきだ」といった反対意見が出ている。
また、裁判員制度に反対する集会では「以前から(一部評論家などの間で)『(裁判では)市民が持つ日常感覚や社会常識からかけ離れた判決が出ることがある』という意見はあったが、それは『(裁判員制度で)国民も裁判に参加したい』という要請ではなく、『(社会研修などを行って)裁判官(をはじめとする法曹)にもっと市民が持つ日常感覚や社会常識を理解して欲しい』という要請であり、そもそもの(裁判員制度導入による)司法改革の方向性がずれているのではないか」と指摘する意見が出されたことがある。
制度比較論
裁判員制度は職業裁判官と一般人の裁判員の協同による制度といえるが、問題点は主に旧来の日本における職業裁判官のみが裁判に関与する制度と比較される。なお、他の裁判制度として、アメリカで行われている、事実認定に職業裁判官が関与しない陪審制があるが、陪審制との比較を元に裁判員制度を評価する見解は少ない。
- 賛否意見の比較
- 裁判員制度の導入に賛成する立場の論拠は「国民の司法参加により市民が持つ日常感覚や常識といったものを裁判に反映する」という考えの上に成り立っているものが多く、制度の導入による市民の負担は少ないと考えているものが多い。
- それに対し、制度の導入に反対する立場による裁判員制度の問題点の指摘の背景は多くの場合「一見、常識的でないと思われる判決でも、裁判で提出された証拠品や裁判記録を見れば納得いくものが多く、決して現行の裁判に日常感覚や常識がないとは言えない」などの現行制度の変更をする必要があるのかという視点に基づくものが多く、現行職業裁判官制度が良好に機能しているという意識があるといえる。また、制度の導入による市民の負担は大きいと考えているものが多い。
- 司法制度の問題点の比較
- 裁判員制度導入前の日本の司法制度の問題は、主として、時間がかかりすぎるように思われていること、裁判制度が過度に専門化されているために一般人に理解されにくいことが中心で、判決形成過程に国民が関与できないことに批判があったとはいえず、裁判員制度のメリットの一つとして、審理時間の短縮が挙げられることはその意識を物語っている。しかも、長期化する裁判は一部に限られていて、一般的に日本の裁判が他国の裁判と比べて長いとはいえない。
- 参加者の精神的な負担に関する問題点の比較
- 裁判員制度の心的負担に関する問題点は本来、職業裁判官にも当てはまる問題である。これまで裁判官は社会から隔絶された存在として、心証形成に関する人間的限界があることは政治的影響が強いケースなどの特殊例を除き、あまり一般には論じられてこなかった点で放置されてきたが、(裁判員制度導入の上で問題があるような)それらの心的負担に関する問題は、職業裁判官に裁判を行わせれば問題がなくなるものとはいえない。
適用範囲
裁判員の適用は重大な刑事事件に限られている。
裁判員制度が米国の陪審員制度とは異なり「民事事件に適用されない」とされたのは、米国資本の日本進出にあたってアメリカの国益を守るために、米国企業が対象となる可能性の少ない殺人などの刑事事件に絞ったという指摘がある。アメリカ企業が外国企業と争う裁判で、アメリカの陪審員がアメリカ企業に有利な判決を下すケースが多く、日本企業の多くが特許裁判などのアメリカの裁判で米国民の陪審員に不利な判決を下され巨額の賠償金を取られてきたことから、裁判員制度において日本においてアメリカ企業が逆の目に遭うことを心配しているということである[53]。
世論調査で国民の抵抗感が最も大きいものの一つは「自分の判断で被告人を裁くのは嫌だ」という理由である。そのような観点からは国民参加は刑事裁判より民事裁判でのほうが抵抗感が薄いと考えられるところ、最も心理的負担の重い重大な刑事事件に限ることで困難が増しているともいえる。裁判員制度の適用範囲については法律自体において「重大な刑事事件」に限定していることから、どのような種類の事件なら国民が参加の抵抗感が少ないかという点についての議論がほとんどなされていない。国を訴える裁判も裁判員適用にはなっていない。
特に、労働裁判においては職業裁判官は雇用主寄りの判決を出しやすい傾向にあるとして、米国などでは労働裁判についても陪審制が採用されている。日本においても、従前から労働裁判については選択陪審制の導入が労働弁護士らにより提案されてきたものの、経済界(雇用主側)の反発が強く実現には至っていない[54]。労働裁判は最も民間感覚が生かせる場と考えられるのにも関わらず、今回の裁判員制度の導入に際しても労働裁判への裁判員制度の導入は見送られている。
裁判員制度の国民への周知・広報
裁判員制度導入に至って、それを国民へ周知させるための広報活動を行っている。
ゆるキャラ導入に関する問題点
裁判員制度を国民へ周知させるための広報活動の一環としてゆるキャラの導入によるアピールを行っているがこれについては以下のような問題点も発生している。
裁判員制度の公式キャラクターが存在せず地方の個性を尊重した広報活動を推奨したため、各裁判所が個々に裁判員制度を広報するためのキャラクターを作成、乱立する事態となった。また、後に日弁連も独自のキャラクター「サイサイ」を導入したため、広報する側の連携がとれていないとの批判を浴びた[55]。
また、ゆるキャラによるアピールではなく、裁判員制度の具体的な内容や詳細の普及に予算を使うべきであるという批判もある。
制度導入過程での不正行為
- 裁判員制度広報活動における不正経理
- 裁判員制度の広報業務をめぐって、2005-2006年度の2年間に、企画競争方式の随意契約を結んだ14件(契約金額計約21億5900万円)で、最高裁は事業開始後に契約書を作成するなどの不適切な会計処理を行っている。
- 特に、電通に発注した2005年度の「裁判員制度全国フォーラム」(約3億4100万円)では、実際には2005年末から2006年初めに契約したにもかかわらず、契約書の日付を2005年9月30日などと虚偽の記載をし、印刷会社に発注したパンフレット作成(約174万円)でも、契約日を実際より約4か月前に偽るなど、16件(計約21億6500万円)の契約で不適切な経理処理をしたことが問題視されている。
- タウンミーティングでの「やらせ」行為
- タウンミーティング 小泉内閣の国民対話では、いわゆる「やらせ」・「仕込み(サクラ)」(参加者が多いように見せかける偽装行為)が多数行われていたことが後に発覚している。最高裁が広告代理店の電通に委託して実施されたタウンミーティングの一つである「司法制度改革タウンミーティング」においても、電通から人材派遣会社を通じて日雇いのタウンミーティング参加者(サクラ要員)が募集され、計6回の「やらせ」が行われたことが明らかになっている(詳細は、タウンミーティング 小泉内閣の国民対話を参照)。
裁判員制度を題材にした作品
報道・ドキュメンタリー
- 「裁判員制度がはじまる 今夜とことん考えます あなたは死刑を言い渡せますか」-NHK総合2008年12月6日 「NHKスペシャル あなたは死刑を言い渡せますか・ドキュメント裁判員法廷」と「(討論)日本の、これから 裁判員制度 あなたは人を裁けますか」の二部構成
- 「激論!ド〜なる?!裁判員制度〜あなたは人を裁けますか〜」朝まで生テレビ - テレビ朝日2008年06月28日深夜
- 「NHKスペシャル 21世紀日本の課題・司法大改革 あなたは人を裁けますか」 NHKが2005年に裁判員制度を取り上げてテレビ放送したドラマとドキュメンタリーの作品。
フィクション
広報
- 「裁判員〜決めるのはあなた」 日本弁護士連合会が制作した裁判員を問うた作品。石橋冠監督、石坂浩二主演。
- 「総務部総務課 山口六平太 裁判員プロジェクトはじめます!」 作・林律雄、画・高井研一郎 政府広報製作のアニメビデオ
- 「審理」 最高裁判所企画・制作の作品。主演女優が逮捕されるという不祥事が発生し、最高裁判所が公開停止した。原田昌樹監督。星野真理ら出演。
テレビドラマ
- 「行列のできる法律相談所」 日本テレビが放送している法律を題材にしたバラエティ番組(テレビ番組)。2007年10月7日放送分にて、裁判員制度についてのミニドラマを作成し放送。出演者が現職の検事に裁判員制度に関して質問するQ&Aのコーナーを設けた。
- 「相棒」 テレビ朝日が放送している社会派刑事ドラマ。season6の第一話「複眼の法廷」にて裁判員制度が取り上げられている。あくまでドラマであるため留意が必要だが、裁判員制度を考える上で参考になる。裁判員制度が試験導入されるのだが、それが原因で事件が発生。法務省が想定し得なかった、制度の施行を脅かすほどの不測の事態が続々と発生してしまうという内容。
- 「魔女裁判」-フジテレビ 「裁判員コンサルタント」と名乗る人物が裁判員たちに脅しを掛け、評決を操作する事件を描いたサスペンスドラマ。
- 「裁判員制度スペシャルドラマ サマヨイザクラ」-フジテレビ 郷田マモラの漫画が原作。裁判員に選ばれた主人公の相羽圭一を中心に、殺人事件の裁判を執り行うストーリー。
漫画
- 「裁いてみましょ。」 きら、酒井直行による漫画。2003年、集英社「YOU」にて連載。
- 「ジキルとハイドと裁判員」 - 作画:森田崇、原作:北原雅紀、法律監修:今井秀智による漫画。ビッグコミックスペリオールで連載している。
- 「裁判員の女神」 - 作画:かわすみひろし、原作:毛利甚八による漫画。漫画サンデーで連載している。
- 「Q.E.D. 証明終了」加藤元浩による推理漫画。単行本27巻収録の「立証責任」で高校生の主人公コンビが高校で行われる裁判員制度の模擬裁判の裁判員に選ばれ、実際の事件を基にした模擬裁判を体験していく様を通じ、裁判の方法を描いている。
ゲームソフト
- 「逆転裁判4」 ニンテンドーDS用(2007年4月発売、カプコン)。第4話で裁判員制度が取り入れられているが実際の制度とはかなり異なる。平成17年5月25日に行われた第一回法教育推進協議会の発言に同シリーズへの言及がある。
- 「もしも!? 裁判員に選ばれたら・・・」ニンテンドーDS用(2008年11月27日発売、タカラトミー)裁判員制度の体験シミュレーション。早稲田大学法科大学院教授で弁護士の四宮啓が監修。
- 「SIMPLE DSシリーズ THE 裁判員 〜1つの真実、6つの答え〜」 ニンテンドーDS用(2009年5月21日発売、D3パブリッシャー)。不公正な裁判で自分を殺した犯人が無罪となった未練で幽霊となった主人公が、裁判員の一人に憑依して裁判に参加する。
- 「裁判員推理ゲーム 有罪×無罪」 ニンテンドーDS用(2009年5月21日発売、バンダイナムコゲームス)。裁判員として裁判に参加し、事件の真相を推理する。
候補者への通知
裁判員候補者への通知が2008年11月28日から始まった。
しかし、候補者が通知書などが入った郵送物をインターネットのSNSやブログで公開する事例が相次ぎ、中には氏名や顔写真が特定できる事例もあり[56][57]、裁判員制度の先行きに不安が生じている。
11月29日放送の日本テレビのニュース『リアルタイム』では候補者の女性が顔を伏せた上で取材に応じていた[58]。
12月17日に和歌山地裁は、裁判員制度の「『有識者枠』に特別指名された」などとする偽文書が、和歌山県高野町の住民2人に郵送されていたことを発表した[59]。
制度施行前のモデルケースとした裁判
脚注
- ↑ 司法制度改革審議会 第51回会議配付資料-「訴訟手続への新たな参加制度」骨子(案)
- ↑ 司法制度改革審議会意見書(2001年6月12日)-国民的基盤の確立(国民の司法参加
- ↑ 平成16年法律第63号。以下「法」という。
- ↑ 一部立証責任が被告人に転換されている要件が満たされていると判断するためには無罪判決をするために合議体の過半数の賛成が必要で、裁判員と裁判官のそれぞれ1名は賛成しなければならない。
- ↑ 有罪か無罪かの評決が成立しない場合には被告人の利益に無罪判決をせざるを得ないと法務省は主張しているが、法令解釈権を持つ裁判所の裁判例、判例はまだ出ていない。
- ↑ [1]PDF 「罪名別に見た裁判員制度対象事件」(最高裁判所ホームページ内の裁判員制度解説文)
- ↑ 法務省公式ホームページ よろしく裁判員 裁判員制度の概要 6.裁判員制度早わかりPDF
- ↑ 俗にいう「お礼参り」のこと。特に暴力団や黒社会、マフィア、過激派、テロ組織、宗教団体など組織犯罪の場合、その危険性が高まる。米国においては証人、陪審員に対しては国家による保護が付く場合がある。「沈黙の掟」、証人保護プログラムを参照のこと。
- ↑ 「裁判員制度の対象となる事件の数(平成17年)」(最高裁判所ホームページ内の裁判員制度解説文)
- ↑ 裁判員制度Q&A「裁判所には裁判員候補者として何人くらい呼ばれるのですか。」、最高裁判所。
- ↑ マル激トーク・オン・ディマンド 第398回(2008年11月15日)今あらためて問う、この裁判員制度で本当にいいのか ゲスト:西野喜一氏(新潟大学大学院教授)
- ↑ 同じ懲役15年 殺人とレイプ(南日本新聞 2009年9月19日)
- ↑ 13.0 13.1 13.2 13.3 郷原信郎 (2008-08-20) 郷原信郎 裁判員制度が刑事司法を崩壊させる 日経ビジネスオンライン 日経BP社 2008-08-20 [ arch. ] 2008-09-20
- ↑ 裁判員制度Q&A http://www.saibanin.courts.go.jp/qa/c3_17.html
- ↑ 『読売新聞』2007年3月30日付配信。
- ↑ 引用エラー: 無効な
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タグです。 「nishino164165
」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません - ↑ 西野, 前掲 (P.167-168)
- ↑ 西野, 前掲 (P.167)
- ↑ 鈴木宗男 『裁判員制度の問題点に関する再質問主意書』 平成二十年十月二十四日提出 質問第一六一号
- ↑ 平成16年5月11日、参議院法務委員会。
- ↑ 西野, 前掲 (P.148-150)
- ↑ 西野, 前掲 (P.179-180)
- ↑ 西野, 前掲 (P.161-162)
- ↑ 西野, 前掲 (P.176-177)
- ↑ 高山, 前掲 (P.51-52)
- ↑ 第159回国会-衆議院予算委員会 2004年03月04日 ○政府参考人 山崎潮(司法制度改革推進本部事務局長) 裁判官の場合は、現職の間は、もしこの守秘義務違反を犯せば、程度にもよりますけれども、弾劾裁判所で法曹の資格を失うということにもなります。あるいは、分限裁判がございますので、これで免職になるというペナルティーがあるわけでございまして、これで担保をされているということになります。 それから、ただいまの御質問の中には、退職後のことも言われているのかと思いますけれども、裁判官につきまして、こういうような専門的なトレーニングをしておりますので、その後につきましてもそういう行動はきちっと守れるということから、現在の体制ができているということでございます。
- ↑ 高山俊吉 『裁判員制度はいらない』 (P.165-168) 講談社、2006年。
- ↑ 西野, 前掲 (P.223)
- ↑ (2008-12-20) 暴力団員も裁判員に? 法に規定なし、排除できず 神戸新聞 [ arch. ] 2009-10-05
- ↑ 犯罪報道#裁判員制度と犯罪報道も参照。
- ↑ 高山, 前掲 (P.30)
- ↑ 丸山徹 『入門・アメリカの司法制度 陪審裁判の理解のために』 現代人文社、2007年。
- ↑ 高山, 前掲 (P.150) 、西野, 前掲 (P.99-101)
- ↑ 一方、裁判官には判決が全てであるという「裁判官は弁明せず」という考え方があり、裁判官が個別事件について記者会見に応じることはほとんどない。北村和巳 (2009-10-03) 北村和巳 なぜ裁判官は裁判員みたいに記者会見しないの?=回答・北村和巳 質問なるほドリ 毎日新聞 [ arch. ] 2009-10-05
- ↑ (2009) 2009年8月に視聴者から寄せられた意見 2009年度 視聴者の意見 放送倫理・番組向上機構 2009 [ arch. ] 2009-10-05
- ↑ 高山, 前掲 (P.86-91)
- ↑ 西野, 前掲 (P.71-72, 99-101)
- ↑ 西野, 前掲 (P.108-113)
- ↑ As Jurors Turn to Web, Mistrials Are Popping Up New York Times March 17, 2009
- ↑ 高山, 前掲 (P.56-59) 、西野, 前掲 (P.82-84)
- ↑ 西野, 前掲 (P.156-157)
- ↑ 西野, 前掲 (P.136)
- ↑ 高野善通 「アキバ事件から1ヶ月」『天下の大悪法・裁判員制度徹底糾弾!!高野善通の雑記帳』2008年7月12日。
- ↑ 西野, 前掲 (P.138-142)
- ↑ 性犯罪被害者名も裁判員候補に開示、情報流出懸念の声 読売新聞 2009年5月6日
- ↑ 『「裁判員裁判でみんな見るぞ」強盗強姦罪被告、犯行時に』 朝日新聞、2010年5月12日。
- ↑ 西野, 前掲 (P.142-143)
- ↑ 高山, 前掲 (P.50-56)
- ↑ 西野, 前掲 (P.178)
- ↑ 西野, 前掲 (P.)
- ↑ 内閣府政府広報室 (2007-02-01) 内閣府政府広報室 「裁判員制度に関する特別世論調査」の概要 PDF 平成18年度特別世論調査 内閣府 2007-02-01 [ arch. ] 2008-09-20
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- ↑ (2008-12-01) 「裁判員の通知届いた」--mixi日記で告白相次ぐ ITmedia News ITmedia [ arch. ] 2008-12-01
- ↑ (2008-12-01) 「裁判員通知来た」ブログで公開相次ぐ…氏名・顔写真も 読売新聞 [ arch. ] 2008-12-01
- ↑ (2008-11-29) 裁判員候補者通知、候補者の手元に 日テレNEWS24 日本テレビ放送網 [ arch. ] 2008-12-01
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参考文献
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- 堀部政男(ほか編)『刑事司法への市民参加 高窪貞人教授古稀祝賀記念論文集』現代人文社、2004年5月、ISBN 4877981888
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- 季刊刑事弁護編集部(編)『季刊刑事弁護』No.41(2005年春)連続特集・裁判員制度と刑事弁護 1 公判前整理手続・連日的開廷が始まる! 特別企画・「取調べ可視化」実現へのプロローグ Part2、ISBN 487798240X
- 季刊刑事弁護編集部(編)『季刊刑事弁護』No.42(2005年夏)連続特集・裁判員制度と刑事弁護 2 選任手続はどうなるのか、ISBN 4877982418
- 季刊刑事弁護編集部(編)『季刊刑事弁護』No.43(2005年夏)特集: 連続特集・裁判員制度と刑事弁護 3 公判手続はどうなるのか? 特別企画・再審事件の現状、ISBN 4877982426
- 季刊刑事弁護編集部(編)『季刊刑事弁護』No.44(2005年冬)特集: 連続特集・裁判員制度と刑事弁護 4 量刑はどうなるのか? 特別企画・記録の取扱い、ISBN 4877982434
- 季刊刑事弁護編集部(編)『季刊刑事弁護』No.45(2006年春)特集: 模擬裁判員裁判を検証する 特別企画・「取調べ可視化」実現へのプロローグ Part3、ISBN 4877982841
- 法と心理学会機関誌編集委員会(編)『法と心理』第5巻第1号、日本評論社、2006年8月、ISBN 4535067252
- 今あらためて問う、この裁判員制度で本当にいいのか ゲスト:西野喜一氏(新潟大学大学院教授)マル激トーク・オン・ディマンド 第398回(2008年11月15日)
- 見えてきた裁判員制度の危うい実態 ゲスト:保坂展人氏(衆議院議員)マル激トーク・オン・ディマンド 第332回(2007年08月10日)
- 人が人を裁くとはどういうことか 作家・高村薫氏インタビュー(反対論)
- 裁判員制度は現行司法制度の問題を解決できない 梓澤和幸弁護士インタビュー(反対論)
- 今の裁判制度のままでは市民の信頼を得られない 一橋大学大学院後藤昭教授インタビュー(擁護論)
- それでも裁判員制度は必要だ(擁護論) ゲスト:河合幹雄氏(桐蔭横浜大学教授)マル激トーク・オン・ディマンド第408回(2009年01月31日)
- 「開かれた司法」と逆行する裁判員制度(反対論) ゲスト:田島泰彦氏(上智大学文学部教授)マル激トーク・オン・ディマンド 第423回(2009年05月16日)
関連項目
- 司法制度改革審議会
- 陪審制 - 米国や英国などで行われている。日本でも、1928年(昭和3年)から1943年(昭和18年)まで行われていた。
- 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
- 被害者参加制度
- 人民裁判
外部リンク
- 最高裁判所 - 裁判員制度
- 法務省 - あなたも裁判員!
- 日本弁護士連合会 - 裁判員制度コーナー
- 総務省法令データ提供システム - 裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
- 最高裁判所規則 - 裁判員の参加する刑事裁判に関する規則
- 主要な裁判員裁判対象事件一覧表
- 東京高等裁判所 - 裁判員制度用モデル法廷
- 司法制度改革審議会 - 司法制度改革推進本部
- 司法制度改革審議会意見書ー21世紀の日本を支える司法制度ー