ピース (タバコ)
ピース(Peace)とは、日本たばこ産業(旧・日本専売公社)から製造・販売されている日本の代表的な紙巻きタバコの銘柄の一つである。
目次
商品概要[編集]
この銘柄は、一般に「ピース」でくくられているが、単にパッケージあたりの入り本数を括弧書きで付けるものにしても、フィルターの有無・パッケージ等に違いがある[1]。また入り本数だけではなく風味やニコチン・タール量によってもいくつかのバリエーションがあり、ピースファミリーを形成している。本場バージニア葉を主体に国産優良葉をブレンドした国産初の本格的バージニアブレンドタイプでバニラ豆のバニリンのような加香を施して、「ほのかに甘く華やかな香り」と深みのある味わいを実現している。
ピースの逸話[編集]
1946年(昭和21年)1月に発売されたピース(10)が最初の製品である。新銘柄の名は図案とともに公募され、1等は「ニューワールド」だったが、製作技術上の都合で2等の「ピース」が採用された[2]。以前にもピースという名のたばこが第一次世界大戦後の1920年(大正9年)に、平和が訪れた記念として発売されているが、販売が一度途絶えており、現行のピースとの継続性はない。しかしながら、現行のピースも第二次世界大戦後の混乱期に、平和な未来を願って発売されたものであり[3]、その意味では、継続性のある「平和(ピース)」のたばこと言える。
ピース(10)は、「ラッキーストライク」のパッケージデザインも手掛けたアメリカの著名な工業デザイナーのレイモンド・ローウィによって、1952年(昭和27年)4月、現在とほぼ同じパッケージデザインに変更された。商業デザイン一般への認識が薄かったこの時代の日本では、日本専売公社がアメリカのデザイナーに当時150万円の高額なデザイン料(当時の内閣総理大臣の月給が11万円であり、これでもローウィ事務所側としては格安の受注であったという)を支払ったことも話題になったが、このデザイン変更で爆発的に売り上げが伸び、「デザインが嗜好を変えた」「新しい意匠は世界的水準にある」などと絶賛された。シンボルマークのオリーブの葉をくわえた鳩は、旧約聖書のノアの方舟のくだりで、外界の様子を知るため、ノアが方舟の窓から放った鳩がオリーブの葉をくわえて戻ってきたことで、大洪水が収まり、安らぎの大地が近いことを知った、という、鳩が平和の象徴となった逸話にちなんでいる。
ラインナップ[編集]
ピース(10)、ピース(50)[編集]
ピースのオリジナルとなる両切りタバコ。どちらもタバコ自体は同じ物で、クラムシェルの箱入りにしたものがピース(10)、缶に詰めた物がピース(50)。通称(後述のピース(20)の「ロングピース」に対して)「ショートピース」「ショッピ」。
ピース(10)[編集]
- 自由販売たばこ第1号として、1946年(昭和21年)1月13日に発売されたロングセラー商品である。最高級バージニア葉を使い、香り高いのが大きな特徴である。現在では、他のたばことの価格差は特にないが、発売当初は、既存のたばこが10本入り20~60銭であるのに対し、ピースは10本入り7円という破格であり、高級たばこに分類されていた。また、発売当初の人気は大変高く、1人あたりの販売数、1日あたりの販売数が制限されたこともあった。また、パッケージの色から『ピース紺』という色調の言葉を作るきっかけにもなった。
ピース(50)[編集]
- ピース(50)は、「缶ピース」「缶ピー」と云う愛称がある。2010年(平成22年)10月1日の価格改定まではピース(10)よりも1本あたりの単価は高くなっていた。しかし、缶は気密性が高く流通過程で風味が落ちにくいため、あえてこちらを選ぶファンも多い。缶は本体と開封後に蓋となる金属製の上蓋で出来ている。かつての缶本体は全金属製で、開封するには上蓋に付いた金属の爪を缶上部に突き立てて回し、缶切りを使うようにして開ける必要があった。2008年(平成20年)頃から流通した新しいものは、濃紺色のデザインに底面と側面が金属製で、それをアルミ製シールの内蓋で密閉しており、内蓋のつまみを引っ張るだけで開封できる。これにより開封が容易になり、また開封口のギザギザがなくなるので安全性が高まった。また上蓋もぴったりと缶にはまるように変えられた。
- たばこのパッケージが250mlの飲料缶と似ている事、形状が煙草の自動販売機に収納出来無い事から、自動販売機での販売は無く、対面式煙草屋でのみでの販売である。
- また、写真業界でよく使われる業界用語に『ピーカン』と云う言葉があるが、一説によると、これはピース50本入り缶の濃紺色パッケージと快晴時の空の青さの語呂を掛け合わせて付けられた合成語である。また、ピーカンという言葉は広辞苑第六版にも収録されている。
ピース(20)[編集]
ソフトパッケージでフィルター付き。通称「ロングピース」「ロンピー」「金ピ」。淡い黄色のパッケージデザインは田中一光が手掛けたもので、ピースファミリーの中で異彩を放つ。また、ピース(20)のロゴだけ“PEACE”と大文字であったが、現在は統一されている。
ピースインフィニティ[編集]
D-spec製品で、アルファやバンテージにも採用されているAFTチャコールフィルター(プレーンフィルター部に蛇腹に加工されたフィルターが巻かれている)が用いられている。他の銘柄ではCVDチャコールフィルターと呼んでいるが構造は同じである。
ザ・ピース[編集]
2012年(平成24年)2月1日に販売の新製品。バージニア葉100%使用する製品であり、原料、ブレンド、加工処理、香料、パッケージにこだわった商品。一箱20本入りで定価1000円である。また、紙巻きタバコおいて初めてとなる、シール付平型缶を採用した事により、香りとデザインにおいて、今までのピースとは一線を画す特別仕様となっている。全国の一部煙草屋で、対面販売を実施している3500店での販売となる。よって、煙草の自動販売機では発売されていない。
製品一覧[編集]
現行販売製品[編集]
製品名 | 発売年月日 | 価格 | 本数 | タール | ニコチン | 販売地域 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ピース(10) | 1946年1月10日 | 220円 | 10本 | 28mg | 2.3mg | 全国 | 両切り/通称:ショートピース |
ピース(50) | 1949年7月1日 | 1100円 | 50本 | 28mg | 2.3mg | 全国 | 両切り/通称:缶ピース,ピーカン。煙草の自動販売機での販売は無い。 |
ピース(20) | 1965年2月1日 | 440円 | 20本 | 21mg | 1.9mg | 全国 | 通称:ロングピース,ロンピー、金ピ |
ピース・ライト・ボックス | 1991年10月1日 | 440円 | 20本 | 10mg | 0.9mg | 全国 | |
ピース・スーパーライト・ボックス | 1996年10月1日 | 440円 | 20本 | 6mg | 0.5mg | 全国 | |
ピース・インフィニティ | 2006年10月2日 | 470円 | 20本 | 8mg | 0.7mg | 全国[4] | D-spec/100'sサイズ/AFTチャコールフィルター |
ザ・ピース | 2012年2月1日 | 1000円 | 20本 | 10mg | 1.0mg | 全国 | 全国3500店の対面販売煙草屋のみ販売。煙草の自動販売機での販売は無い。 |
販売終了製品[編集]
製品名 | 価格 | 本数 | 発売年月日 | 廃止年月 | タール | ニコチン | 販売地域 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ピース・ミディアム・ボックス | 440円 | 20本 | 1994年8月1日 | 2011年5月 | 14mg | 1.2mg | 全国 | |
ピース・ライト | 260円 | 20本 | 1985年4月1日 | 2001年4月 | 10mg | 1.0mg | 全国 | ソフトパック |
ピース・スムースアロマ・ボックス | 320円 | 20本 | 2005年7月1日 | 2008年2月 | 6mg | 0.5mg | 岡山県・鳥取県 | チャコールフィルター |
ピース・アロマメンソール・ボックス | 320円 | 20本 | 2004年7月1日 | 2007年3月 | 7mg | 0.6mg | 全国 | ピース初のメンソール |
ピース・アコースティック | 320円 | 20本 | 2002年11月1日 | 2008年2月 | 8mg | 0.9mg | 全国 | 香料無添加 |
ピース・インターナショナル | 20本 | 1989年10月1日 | 1994年1月 | 12mg | 1.3mg | 全国 |
CM・広告出演者[編集]
- 中川昌三(1988年2月 - 1989年3月 / ライト「フルート篇」)
- 宮本文昭(1989年 / インターナショナル「オーボエ篇」)
- 天野清継(1991年 / ライトボックス「ギタリスト篇」)
- 古澤巌(1993年6月 - 1994年5月 / ライト「ヴァイオリニスト篇」) - 現在でもピース・ライトを吸っている
- 古川展生(2000年6月 - 2002年4月 / ライト「チェロ・ローアングル篇」)
ピースにまつわる事件[編集]
- 土田・日石・ピース缶爆弾事件 - 缶ピースの空き缶が手製の爆弾容器として使用された事件。
- 大阪事件 - 1957年の参議院選挙で野党陣営が一部の有権者をピースで買収した事件。
ピースが登場する作品[編集]
- JITTERIN'JINN『くわえたばこのブルース』 - 8cmシングルCDである「夏祭り」のB面の曲『くわえたばこのブルース』の曲中にて、「♪おいらのロングピースが好き…」「♪ロングピースをふかしながら…」等、『ピース』が歌詞に登場する。
- つボイノリオ『本願寺ブルース』 - ベストアルバム『あっ超ー』などに収録されている『本願寺ブルース』の曲中にて「♪しけもく銜えて考えた 世界に平和が必要で 俺にはピースが必要さ…」と、『ピース』が歌詞に登場する。
- ダウン・タウン・ブギウギ・バンド - シングル『スモーキン・ブギ』。冒頭から「♪はじめて試したタバコがショートピース」で始まり、男子中高生と思しき未成年がこっそりとタバコを嗜む情景が歌われている。
- DMBQ - アルバム『DMBQ』の収録曲「CAN PEACE」にて、「CAN PEACE CAN PEACE ほんのちょっとの金で 50本ピース」とサイケデリックなサウンドにのせて歌詞に登場する。
- 原りょう - ハードボイルド探偵小説「私立探偵 沢崎」シリーズにて、主人公、沢崎が愛飲。作者の弁によれば、「ピース」という語感が、いかにも探偵らしからぬミスマッチだから。
- Lass - 11eyes「罪と罰と贖いの少女」にて、主人公の友人、田嶋賢久、主人公の通っている学校の養護教諭、赤嶺彩子、が愛飲。
脚注[編集]
関連項目[編集]
- タバコの銘柄一覧
- レイモンド・ローウィ - ピースのパッケージデザインを担当した。
- 江守徹 - 両切りピースを愛飲。ただし、現在は禁煙している。
- ゆーとぴあ - 元メンバー・ピースの芸名の由来。
- ココアシガレット -パッケージはピース(10)を意識してデザインされた。
関連書籍[編集]
- ザ・タバコ(たばこ文化社、1984年12月10日)