ショッピングセンター
ショッピングセンター(英:shopping center)は、複数の小売店舗やフード・サービス業、美容院・旅行代理店などの第4次産業も入居する商業施設である。略称は「SC」。ショッピングモール(英:shopping mall)とも呼ばれ、大型百貨店やアウトレットモールを含む[1]。
単独出店と比べ、顧客吸引力が強くでき、駐車場や荷捌き施設などが共用できる。また、開発業者が建物を所有する形態であると小売業者の初期投資が軽減できる。
目次
概要[編集]
日本におけるショッピングセンターの定義を、日本ショッピングセンター協会では下記の通りとしている[2]。
- 小売業の店舗面積は、1,500mテンプレート:Sup以上であること。
- キーテナントを除くテナントが10店舗以上含まれていること。
- キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1,500mテンプレート:Sup以上である場合には、この限りではない。
- テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること。
2013年12月末現在で、日本では3134箇所、店舗面積は4786万9188mテンプレート:Sup、テナント数は15万4659店に及ぶ[3]。
上記の定義にあてはめると、東京タワー フットタウン、帝国ホテルアーケードなどもショッピングセンターのひとつとして数えられる。
歴史[編集]
起源[編集]
2世紀のローマに建設された「トラヤヌスの市場」が人類史上初のショッピングモールとされる[4]。
原型[編集]
近代的なショッピングセンターとしては、1922年にアメリカ合衆国のカンザスシティで始まった、不動産業者・J.C.Nicolsによる「カントリー・クラブ・プラザ」が最初のものといわれている。その後の1950年前後からは車社会化と郊外住宅の発展を背景として、1948年にはオハイオ州コロンバスの不動産業者・Doncasterが開いた「タウン・アンド・カントリー・ショッピング・センター」、ワシントン州のシアトルでJ.B.Douglasが開いた「ノースゲート・ショッピング・センター」が今日のショッピングセンターの原型となった。
発展〜現在[編集]
その後、1956年にDayton Hudsonがミネアポリス郊外に、最初の完全な共同店舗型のモール(下記参照)として「サウスデール・センター」を開いた。これは一個の街と呼べる巨大なもので、駐車場が広い上、ミネソタの厳しい冬でも快適に多数の店を回る買い物ができるため、ミネアポリス都市圏のみならず複数の州から買い物やイベントを楽しむ客が集まった。
1981年にカナダのアルバータ州エドモントンに開業した「ウェスト・エドモントン・モール」は、1998年に第4期工事が完成した段階で総床面積49万3000mテンプレート:Sup、店舗数800超でホテル、遊園地、水族館等を備え、年間2000万人の入場者を数える大規模なもので、世界最大のショッピングセンターとして『ギネスブック』に記載された[5][6]。2004年以降「金源時代ショッピングセンター」や「華南MALL」、「SMモール・オブ・アジア」など、中国や東南アジア各地に更に大規模なショッピングモールが建設されている[7]。
2008年10月31日、ドバイに世界最大規模のショッピングモール「ドバイ・モール」が正式開業。総面積約111万5000mテンプレート:Sup、屋内フロア約55万mテンプレート:Sup、小売店舗数約1200、屋内水族館やスケートリンク、映画館等を備える[8]。
日本での歴史[編集]
1954年に米国施政下の沖縄県において「プラザハウスショッピングセンター」がオープンしている。
1964年には「ダイエー庄内店」(現・グルメシティ庄内店)がオープン。日本において初のショッピングセンターの実験をおこなった店舗であり、日本初のショッピングセンターでもある。1968年にはダイエー香里店(2005年閉店)がオープン。日本初の本格的な郊外型ショッピングセンターが誕生した。これ以降、車社会化に対応したショッピングセンターが増加していった。
1980年代以降、日本においても車社会化の進行で、郊外や農村部の幹線道路沿いの田畑を埋め立てや産業構造の変化に伴い閉鎖された大規模工場敷地跡等て広大な敷地を確保した大型ショッピングセンターの出店が盛んになった。特に日米構造協議や規制緩和を経て、大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、大規模小売店舗立地法(大店立地法)が制定された2000年以降、数と規模は大きく増えた。中でもモール型ショッピングセンターは1つの建物に数多くの専門店やアミューズメント店を揃えた大規模なもので、1日中滞在できる「時間消費型」の施設として、この時代の大型ショッピングセンターの代名詞ともなった。
しかしながら大型商業施設が商店街や近隣自治体に悪影響を与えるとして2006年にまちづくり3法が改正され、店舗面積1万平方メートルを超える郊外型施設について建設の抑制がかけられた。
種類[編集]
店舗面積などの規模によって「リージョナル型ショッピングセンター」、「コミュニティ型ショッピングセンター」、「ネイバーフッド型ショッピングセンター」の3種類に分類される[9]。
リージョナル型ショッピングセンター[編集]
略称は「RSC」。店舗面積4万mテンプレート:Sup以上、半径8 - 25km程度の広域を基本商圏とする大型ショッピングセンター(大型SC)。総合スーパー(GMS)や百貨店などを核店舗にした「1核1モール型」や、それらの核店舗に映画館や家電量販店など、集客性の高い大型専門店を加えて副核店舗へ集約し、相互の中間にモールを設置する「2核1モール型」を形成している施設などがある。専門分野の有名専門店、飲食店、サービス店、アミューズメント店など多種にわたる店舗が並び、その施設だけで1日買い物を楽しむ事を目的とした時間消費型の施設である。
また、埼玉県越谷市のイオンレイクタウンなど、リージョナル型よりさらに広範囲を商圏とする超大型SCの「スーパー・リージョナル型SC」は店舗面積10万mテンプレート:Sup以上で基本商圏も8kmから40km程度まで設定している施設も存在する。
コミュニティ型ショッピングセンター[編集]
略称は「CSC」。店舗面積1万 - 3万5000mテンプレート:Sup程度、半径5 - 10km程度の地域を基本商圏とし、総合スーパー(GMS)やディスカウントストアなどに専門店が出店する中規模のショッピングセンター。日本では大店法廃止以前の総合スーパーといえばこの形態が多く、専門店は最寄品やサービス店などが中心である。近年ではこういった旧来型の店舗にモールの増築を行いリージョナル型に拡張された施設もある。
近年、アメリカでは郊外の富裕層が多い地域にリージョナル型SCから厳選した専門店を集めたコミュニティ型SCサイズの「ライフスタイルセンター」が新しいジャンルを形成しているが、日本では成功例が少なく一部の事業者によって行われているのみである。
日本においては、リージョナル型SCが飽和状態にあり、また2006年のまちづくり三法改正によって建設が難しくなったこともあり、商圏が狭くても高密度の人口が確保出来る都市圏においてリージョナル型SCのようなモール型を採用する新しいタイプのコミュニティ型SCが増加している。
ネイバーフッド型ショッピングセンター[編集]
略称は「NSC」。店舗面積3000 - 1万5000mテンプレート:Sup程度、半径5km程度の近隣地域を基本商圏とした小商圏型のショッピングセンターとしては比較的小規模な施設。食品スーパーやホームセンターなどを核店舗に比較的実用的な商品を扱う専門店で構成され身近な買い回りを得意としている。日々の買い物に使われるため、商圏人口は少ないが来店頻度は高いのが特徴である。
建物[編集]
エンクローズドモール形式[編集]
施設自体が大きな1つの建物となっており、通路が建物内にあるタイプのショッピングセンター。気候や天気に左右されないのが特徴で、大型のリージョナル型ショッピングセンターや、中型のコミュニティ型ショッピングセンターでよく見られる形態である。
モール(通路)の中央を吹き抜けとして圧迫感を減らし、見通しを良くすることで回遊性を上げるガレリア式モールを採用したものに「モール型ショッピングセンター」(モール型SC)と名付けるデベロッパーもある。これによって日本で「ショッピングモール」という言葉が流行ることになった。欠点としては建設コストが高いため出店リスクが高いことにある。
オープンモール形式[編集]
店舗を結ぶ通路が屋外にあるタイプのショッピングセンター。店舗ごとに建物が独立しているタイプではそれぞれの店舗の入口の前に駐車場が広がっており、駐車場から目的の店が近いため歩行距離が短くて済むメリットがある。複層階のタイプでは、店舗を結ぶ通路を屋外のペデストリアンデッキによって結ぶことで、買い回り性を上げているものもある。全体的に簡易な施設とすることで建設コストを抑制出来るため、中小事業者でも進出しやすいメリットがあり、ネイバーフッド型ショッピングセンターでよく見られる。
立地[編集]
都市型[編集]
中心市街地など人口密集地に立地するタイプのショッピングセンター。日本では2000年に廃止された大店法によって大型店の出店が厳しく制限されていたため、大型店は中心市街地への出店が中心であった。中心市街地では車でのアクセスが悪い場所が多いため、鉄道や路線バスなど既存の公共交通機関利用での来客をメインに置いた施設が中心である。土地の制約からコミュニティ型SCが中心だが、再開発された街や、市街地にあった工場跡地などに建てられたリージョナル型SCも存在する。近年では、地方の市街地を中心に市街地のコミュニティ型SCを閉店して、郊外に新たに開設したリージョナル型SCに置き換えるケースも出てきている。
郊外型[編集]
中心市街地から離れた郊外に立地するタイプのショッピングセンター。地価が高く土地交渉に時間の掛かる中心市街地への出店に比べて、郊外では割安で広大な土地が確保可能ということもあり、2000年の大店法廃止以降に急激に増加した。自動車での来客がメインで広大な駐車場のスペースを確保する必要があるリージョナル型SCや、周辺の郊外住宅地を商圏とするネイバーフッド型SCで見られる形態である。特にリージョナル型SCの場合、広範囲の人口密集地からのアクセスのしやすさが重要になる。鉄道駅から離れた施設の場合は自動車以外でのアクセス手段として最寄り駅や人口密集地から路線バスや無料送迎バス(買い物バス)を運行していることもある。
なお、2006年に施行された「まちづくり三法」改正後は、郊外への大型商業施設の出店が原則禁止されたため大規模な郊外型の建設は難しくなった。
問題点[編集]
日本[編集]
2000年の大店法廃止以前から中心市街地の商店街には、ショッピングセンターをはじめとした大型店の出店には葛藤があった。しかし、大店法廃止によって、ショッピングセンターは中心市街地から広大な土地を求めて郊外へ進出するようになると、地元商店街や地元スーパーの来客数が減少し閉店、その結果特にマイカーを所有していない、或は運転できない層が食料品・日用品と言った生活必需品の買い物にすら困るという事態が発生している。(買い物難民の項目を参照)
南アフリカ[編集]
南アフリカでは、1990年代以降、違法移民が都市部に流入して治安が悪化。高い塀をめぐらし武装警備員を配置するなど、極端に安全を重視したショッピングセンターが発展した。しかし2000年代にはいると、徐々にショッピングセンター内でも銃撃や襲撃事件が発生し、治安の悪化が伝えられるようになった[10]。
アメリカ[編集]
近年、アメリカでは夜な夜なショッピングモールに集まり、何をするわけでもなく徘徊・たむろするなどの若者たちを、蔑称的に「モールラッツ」(mall rats:rat(ラット)はmouseよりも大きいネズミを指す単語で、英語ではしばしば「うっとうしい奴ら」の意味で使われる。それをmaul rats(群れているネズミ)に掛けた洒落)と呼ぶなど、風紀・治安上の問題が指摘されている。同様の現象として、日本ではコンビニエンスストア前に不良少年・あるいはその予備軍が集まる状況に酷似する。
脚注[編集]
- ↑ なお、アメリカ合衆国では、近年建設された大規模な施設をショッピングモール、数件の個人店舗から構成される旧来の施設をショッピングセンターと呼び分ける傾向がみられる。
- ↑ 日本ショッピングセンター協会ウェブサイト「SCの定義」より
- ↑ 日本ショッピングセンター協会ウェブサイト「我が国SCの現況」より
- ↑ クレイグ・グレンディ『ギネス世界記録2014』角川マガジンズ、2013年、146頁。ISBN 978-4047318847
- ↑ Edmonton Economic Development Corporation
- ↑ Guinness World Records
- ↑ American Studies at Eastern Connecticut State University - Shopping Mall Studies
- ↑ 「ドバイ・モール」、10月31日に正式オープンへ-UAE、WEB-TAB、2008年8月4日更新。
- ↑ 「ショッピングセンター用語辞典(新版)」学文社発行
- ↑ (2009-08-27) 南ア:安全とされるショッピングモールで強盗殺人が多発 毎日新聞 [ arch. ]