赤い洗面器の男
赤い洗面器の男(あかいせんめんきのおとこ)とは、話の途中で何らかの理由で必ず物語が中断してしまう小咄。三谷幸喜がテレビドラマなどの脚本でよく用いる。
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概要[編集]
三谷作品を語る上では欠かせない、「赤い洗面器を頭の上に乗せた男」の小咄。複数作品の登場人物によってこの話が語られるが、誰もが最後のオチを口にしようとした途端、必ず何かしら邪魔が入って話が途切れる。そのため、結末はいまだ明かされず謎のままである。三谷によると、オチは用意されているとのことだが、この解説そのものがネタになっている可能性がある。
話自体は聞いていて、さほど面白いものではないが、ドラマの登場人物には「馬鹿受け」したり、興味を持たれたりすることが多い。古畑任三郎(田村正和)も、この続きを気にしており、何度もオチを話してくれるよう頼んでいるが、語られることはない。
初出は『警部補・古畑任三郎』第11話「さよなら、DJ」内での、桃井かおり扮するDJ・中浦たか子のセリフ。以降、中浦たか子が登場人物として出演するドラマでは、たびたび「赤い洗面器の男」の話が出てくる。
イスラエルのジョークが元になっているというが、それ自体がうさんくさい(DVD「すべて閣下の仕業」特典映像より)。
以下の内容は著者独自の見解で根拠がないのではないかと言っていた人がいたようです。 |
ストーリー[編集]
回によってセリフが多少違うが、まとめると以下の通りになる。各回のセリフは、下記参照。
- 職務熱心といえば、こんな笑い話を聞いたことがあります。
- ある晴れた日の午後、道を歩いていたら赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いてきました。洗面器の中にはたっぷりの水、男はその水を一滴もこぼさないように、ゆっくりゆっくり歩いてきます。
- 私は勇気をふるって「ちょっとすいませんが、あなたどうして、そんな赤い洗面器なんか頭に乗せて歩いているんですか?」と聞いてみました。すると男は答えました。「それは君の…」
『古畑任三郎』でのセリフ[編集]
「さよなら、DJ」でのセリフ[編集]
- 中浦たか子(桃井かおり)が、自身の番組のオープニングとエンディングで話す。
番組開始部分
- (番組開始) 中浦『赤い洗面器の男の話。ある晴れた日の午後道を歩いていたら、向こうから赤い洗面器を頭にのせた男が歩いてきました。洗面器の中にはたっぷりの水。男はその水を一滴もこぼさないように、ゆっくり、ゆっくり歩いています。私は勇気をふるって、「ちょっとすいませんが、あなたどうしてそんな赤い洗面器なんか頭にのせて歩いているんですか?」と聞いてみました。すると男は答えました。この話の続きは番組の最後に。中浦たか子の…
番組終了部分
- 中浦『今週もそろそろお別れの時間がやってきました。ある日の午後、道を歩いていたら、向こうから赤い洗面器を頭にのせた男が歩いてきました。私は勇気をふるってその男に聞いてみました。(古畑が登場)「どうして…どうしてあなたは、赤…赤い洗面器なんか頭にのせ…のせて歩いているのですか?」』(番組終了)
「魔術師の選択」でのセリフ[編集]
- ゴーストキャッスルの創立10周年パーティーで、マジシャンの倉田勝男(池田成志)が恋人の毛利サキ(松たか子)に話す。
- 倉田『でね、彼女は男に聞いたんだよ。「どうして赤い洗面器を頭の上に乗せているんですか。」そしたら奴は答えた。「それは君の…」』(倉田が倒れ、その後死亡)
「消えた古畑任三郎」でのセリフ[編集]
- 「さよなら、DJ」の回に出演した、獄中の中浦たか子が面会で話す。
- 中浦『私はその男に尋ねました。「あなたはどうして赤い洗面器を頭に乗せて歩いているのですか?」するとその男はとうとう答えました。』(看守が呼びに来る)
「最も危険なゲーム」でのセリフ[編集]
- SAZのリーダー・日下光司(江口洋介)が、古畑任三郎に話す。
- 日下『職務熱心といえば、こんな笑い話を聞いたことがある。』 古畑『伺いましょう。』 日下『道を歩いていると、向こうから、1人の男が頭に赤い洗面器を乗せて歩いてきた。この話ご存知ですか?』 古畑『先を。』 日下『洗面器には水が入っていて、男はそれをこぼれないように、そーっと歩いてくる。そこで聞いたんです。「失礼ですが、どうして頭に洗面器を乗せているんですか。」すると…』 古畑『すると? すると何…』(武藤田が倒れる)
「すべて閣下の仕業」でのセリフ[編集]
- 大使館の客の、世界のジョークを知っている現地の人が、大使館スタッフたちに話す。
- 客『Hace tiempo, cuando estaba carga por calle, venia un hombre hacia donde estaba cargando un lavatorio rojo sobre cabeza. Ya no me acuerdo del resto, pero me acuerdo que él (es) bien chistoso. Pero me parto de ir con solo acordarme la mitad del chiste.』
- 訳:「少し前から通りを歩いていたら、あっちの方から男がやってきたんだよ。それも、赤い洗面器を頭に乗っけてな。残りは覚えてないけれど、あいつは面白い奴だったってことは覚えているよ。でも、この話の半分を思い出すだけでも、大笑いしてしまうのさ」
『王様のレストラン』でのセリフ[編集]
- 原田禄郎(筒井道隆)による、本シリーズ第7話におけるセリフ。
- [背景]日本とEUとの間で貿易交渉が外交議題に。決裂寸前の大臣間交渉で、正餐(猿渡大臣:村井国夫と、やぶにらみのムシューコンスタンタン:G.マルテ)がもたれる。しかし、会議の難航を反映し、料理に誰も手をつけずディナーは崩壊寸前に。何とか場を支えようとするベルエキップのスタッフ。しかし、あいついで持ちネタは玉砕していく。
- [場]今日も今日とて、とんちんかん兄弟のかたわれこと禄郎がテーブルに登場。例によってネタを振るだけ振って落ちを忘れる禄郎。
- 猿渡の陣笠こと近藤芳正、また千石こと幸四郎による必死の目線、さらにはEU通訳氏の身振り手振り入り応援も甲斐なく、おじいさんと赤い洗面器はまたも迷宮入り。
『ラヂオの時間』でのセリフ[編集]
- ラジオ弁天の「ミッドナイトジャパン」で中浦たか子が語るセリフ。ただし、本編ではなくDVDに収録された映像特典のサウンドライブラリーにある。
- 「ある男の人が道を歩いていたら、向こうから赤い洗面器を頭の上に乗せたおじいさんがやってくるの。でね、洗面器の中には水が入ってるの。それを一滴もこぼさないように、おじいさんはゆっくりゆっくり歩いてくるの。それで男の人は勇気をふるいおこしておじいさんに聞いたの。『もしもしおじいさん、どうして洗面器を頭に乗せて歩いてるんですか?』」・・・
- ここでラジオ弁天のアタックが流れ、映像が終了してオチは聞けず。
予想されるオチ[編集]
以下の内容は著者独自の見解で根拠がないのではないかと言っていた人がいたようです。 |
真実は定かではないが、熱心な三谷ファンには、下記のように予想されている。
- 「赤い洗面器」略して「あかせん」なので、「理由は明かせん」とする説。
- 洗面器や水が頭から落ちないことから「おちない」=「オチはない」とする説。
- 単なる「マクガフィン」であるとする説。
古畑任三郎の第42回(完結篇)においても、この話は語られず、ついにオチは公表されなかった。
なお、小泉八雲の編纂した日本の怪談集である『骨董』には、もとから結末が存在せず欠損したまま伝えられている「茶碗の中(In a Cup of Tea)」が収録されている。これは物語自体、幽霊や妖怪を扱ったものであるが、文章の途中で突然途切れたものとなっているために結果としてなおのこと怪談として特異な恐怖感を持った作品となっている。要素として、「赤い洗面器の男」はこうしたものと類似したカテゴリーに属するとも解釈できる。
登場した作品[編集]
古畑任三郎[編集]
- 第11話「さよなら、DJ」(初出)
- 第21話「魔術師の選択」
- 第25話「消えた古畑任三郎」(第11話でのDJ中浦たか子が登場)
- 第38話「最も危険なゲーム・後編」
- 第39話「すべて閣下の仕業」(スペイン語)
- 第39回の本編中では、「スペイン語で語られたが、古畑はオチ部分の日本語訳を聞くことが出来なかった」という演出になっている。また、三谷曰く、「スペイン語を訳すとオチがわかる」(DVDの特典映像より)らしいが、実際にはスペイン語を訳しても、オチは語られていない。
王様のレストラン[編集]
- 第7話「笑わない客」
ラヂオの時間[編集]
- 本編ではなく、DVD特典映像のサウンドライブラリーにて、ラジオ弁天の「ミッドナイトジャパン」で中浦たか子が語っている。