藤枝市都市ガス漏出事故

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2014年現在の夏目歯科医院。40年近く経った今でも買い手はつかず。昼間にリフォームに入った業者が逃げ出した

藤枝市都市ガス漏出事故とは、1979年5月20日静岡県藤枝市で発生した東海都市ガスのガス漏れによる死亡事故である。歯科医一家5人をはじめ2世帯10人が死亡する大惨事となった。

事件内容[編集]

藤枝市には東海都市ガス株式会社がガス供給しており、昭和54年4月現在の同社の需要家件数は約29000件、うち藤枝市の需要家は11000件であった。なお、同社の従業員は95名であった。

ガス事故が起こった場所は、藤枝市前島1丁目1061番地の道路であり、これは藤枝駅前である。

被害状況は、事故時死亡が9名、中毒者26名、うち5名が入院。入院した者のうち1名が翌日死亡し、この事故での死亡者は合わせて10名となった。

事件発生[編集]

5月20日13時30分、東海都市ガス株式会社にレストランの鈴録よりガス臭いという通報があり、当該株式会社の職員が調査をしたが、その時点では異常が発見できず。その後、再度レストランの鈴録より通報があり再調査をした結果、同17時30分ころにガス漏れの事実を確認した。

東海都市ガス株式会社は直ちに緊急出動体制をしき、周辺住民への安全の周知、ガス漏れ個所の把握、復旧等に努め、21日午前0時20分ころに仮復旧をし、同3時ごろに本復旧を完了した。

原因は本年2月から3月にかけて行われた下水道工事に起因する地盤沈下によって低圧本管が折損し、漏洩したガスが被害者宅へ流れたもの。

死亡者宅の前の地下に埋設された都市ガスのガス管に相当の亀裂が発見され、死亡者及び入院者は、いずれもガス吸引による一酸化炭素に起因して障害を起こし、亀裂ガス管付近の土の中及び死者を出した二世帯の家屋内等におき一酸化炭素が検知されたことなどから、都市ガス漏出による一酸化炭素中毒事故であると判断された。

死亡家族[編集]

  • 夏目歯科医院
歯科医の夏目功さんを含む一家5人が死亡。就寝中の死亡。
  • 川島陶器店
一家7人のうち川島英男さんを含む家族5人が死亡。

ある輸入業者の思い出[編集]

当時、スゥエーデン製のエンジン削岩機の輸入販売に従事していた私は、削岩機のドリル機構を利用した「ガス探知機(ガス探知用のセンサーを地中に入れるための機械)」の現場デモを、あるガス会社から依頼されていた。

ところが予期せぬ大事故に遭遇して、大変な経験をした。テストの予定地は静岡県焼津市だった。依頼主は東海都市ガス。

テストの前日、藤枝市でガス漏れ事故が発生し、10人が死亡する事故が起きた。翌朝、事故が起きたことは知っていたが、約束通り、機械を持って、もう一人の社員と作業員を伴って出発した。朝の時点では医師の家族が全員死亡ということだけを聞いていた。他にも死者がいることや、事故の前日からガス臭がしていたことなど、車のラジオでだんだん分かってきた。

着いた東海都市ガス本社は、騒然としていた。テレビ・新聞などマスコミ関係者や警察や県の関係者だろうか。我々は、会社に入った時から、マスコミの注目を浴びてしまった。

「ガス探知機」の言葉が聞こえたのかも知れない。先に書いたように、ガス探知機ではなく、正確には、探知センサー用の穴掘り器なのだが、それが通称になっていた。

東海都市ガスの人と直ぐ出かけた。事故現場ではなく、市内の別な箇所だったが事故現場から遠くはなかったと記憶している。死亡者が出るような高濃度のガスが出ている現場では、エンジン削岩機など、爆発の危険があり使えない。地中でガス漏れの兆候がないか、のチェック用なのだ。

このような事故を防ぐためにPRして、導入を前提のテストなのだが、偶然、この非常時に当たってしまった。大事故のため、てんやわんやのガス会社の社員。予定を変更するのかと思ったが、機械の性格上、テストを急ぐ必要があったからだろう。あえて強行した。焼津から変更して、藤枝にした。理由は分からない。しかも商店街の中だった。

機械の運転が始まった瞬間、報道陣が集まってきて我々を撮影した。NHKのテレビカメラもあった。騒ぎに気づいた一般の人たちも集まってきた。そして口々に我々に罵声を浴びせ始めた。

「事故が起きてからじゃ遅いんだ」
「お前ら、日頃はなにやってんだ」

作業をやっているのは4人。うち3人は機械を売り込みに来た会社の関係者、なんてことは、当然知らない。

我々はどう対応したら良いのか分からず、ただ黙って作業を続ける。黙っていると、それが不遜な態度に見えるのか、しまいには取り囲まれて、つるし上げられそうになってきた。   作業を中断して、昼食を取るために入った食堂のテレビニュースに私の顔が出てきた。「慌てて対応するガス会社」のようなコメントが入る。周りの人だけでなく、食堂従業員の視線も冷たい。「飯なんか食っていられるのか」と言われそうだった。

夕方、ガス会社に帰ると報道陣は、まだたくさん残っていた。そこで目にしたのは、傍若無人とも言える記者の振る舞いだった。

事務所に勝手に入ってくるのは仕方ないとしても、断りも無しに会社の電話を使って、連絡を始める。しかも机に尻を乗せて長々と話す。ようやく、終わったからと、事務の女性が自分の席に戻ろうとすると、それを押しのけて、別の記者が、また受話器を取った。

男性社員が「勝手に電話を使わないでください」というと、その記者は「お前ら反省してないなー。こんな事故起こしておいて。何様のつもりだ」と怒鳴った。私は、それを聞いて、ついに切れた。

「お前らこそ、何様だっ!外の公衆電話を使え」あとは、なにを言ったか覚えていないが、その無礼千万な記者達も、私が部外者で、しかもガス漏れ事故専門の学者だか、技術者と勘違いしていたので、ふてくされて外に出て行った。

今なら携帯電話が当たり前だから、こんなトラブルもないだろう。犯罪者の親が経営する会社(事件以来閉鎖しているのに)の中に無断で入って写真を撮ったり、未成年の兄弟を追いかけ回す記者というのは、ああいう連中なんだろうと思った。全国放送のテレビに大きく映ったなんて経験は、あれが最初で、最後だろうと思う。

関連項目[編集]