石油ファンヒーター

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石油ファンヒーターとは暖房器具の1つで、灯油を燃焼しそのエネルギーで得たを送風ファンによって排出し暖をとる電気製品である。他の暖房器具に比べランニングコストが安いことが利点。しかし原油価格による影響を受けやすく、また灯油の扱いや燃焼時の臭気がデメリットである。

1978年三菱電機が初めて商品化し、以後各メーカーが参入した。しかし近年では価格競争の激化などにより撤退したメーカーも多く、シャープ2007年春に撤退したことで全ての総合電機メーカーが石油ファンヒーター事業から手を引いた形になり、以後はコロナダイニチなどの暖房器具メーカーのみが生産を行っている。

基本的な構造[編集]

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↑石油ファンヒーターの画像
灯油を機械的な仕組みで気化させ、空気との混合ガスにして燃焼、発生した熱を本体背面にある送風ファンにより機外(室内)へと送り出す。送風ファンによって室内の空気が強制的に攪拌されるため、部屋全体を速く暖める能力に優れている。を使った自然気化式の石油ストーブと比べ構造的には複雑で、商用電源を必要とする。そのため停電時には使えなくなる。

構造による違い[編集]

燃焼用空気の扱いで、大きく分けて以下の3つの方式がある。

開放式[編集]

単に「石油ファンヒーター」と呼ぶ場合、通常はこの方式のみを指すことが多い。

燃焼用空気を室内から取り入れ、燃焼したガスを室内に排気する方式。使用にあたっては定期的な換気が必要である。室内に排気するので、灯油を一酸化炭素や臭いなどをなるべく出さずに高いレベルで安定して燃焼させる技術が求められた。そのため、温風を出す暖房機器としてはFF式に先を譲ることとなった。開放式の石油ファンヒーターは1978年に三菱電機が初めて商品化し、製品は「ダンファン(暖ファン)」と命名された。

FF式(密閉式・強制給排気形)[編集]

燃焼用空気を室外から給排気筒を通して燃焼用送風機の力で強制的に取り入れ、発生した熱を送風ファンで室内へ送り出し、排気は給排気筒を通して室外に出す方式。FF式はForced draught balanced Flue typeの頭文字をとった略称。開放式と違い使用時に定期的な換気は必要ないが、給排気筒の設置工事が必要である。FF式の石油温風暖房機は開放式の石油ファンヒーターが登場する以前から商品化されていた。

FE式(強制排気型)[編集]

FF式から強制給気を除いたような構造で室内の空気を使って燃焼、排気のみ屋外へ出す構造。FEとはForced Exhaustの略。給気構造を持たないため構造が単純、また排気管の延長が容易なためFF式の設置困難な豪雪地帯などで採用が多い。

燃焼方式の違い[編集]

石油ファンヒーターには主に3種類の燃焼方式の違いがあり、各方式により以下のような特徴がある。

ブンゼン式石油ファンヒーター[編集]

ダイニチ工業が積極的に採用。かつては最も多くのメーカーが採用した燃焼方式。灯油を気化器と呼ばれる装置で電気の力により熱し、自然吸気によってとりいれられた空気と混合されたガスを燃焼筒で燃やす仕組みを持つファンヒーター。ダイニチ工業が製造したブンゼン式ストーブは、ガスを燃焼させたように青い炎で燃焼したことから、「ブルーヒーター」の名で呼ぶようになったと言う。 他の方式よりも消費電力が多い。反面、初期着火が他の方式よりも早い。燃焼中の音は他方式に比べて大きい傾向にある。気化器の構造上灯油の気化ガス発生の制御を瞬時に行えるため、点火、消火時の臭いは少なく、燃焼中の臭いに関してはほとんど気にならないレベルである。 高地での使用はできない(1000mが上限という)。

メリット[編集]

  • 初期着火までの予熱時間が短い。
  • 点火、消火時の臭いが少ない。

デメリット[編集]

  • 灯油気化器を電力で動かすため、電気使用量が多い。
  • 燃焼用空気と送風空気のファンが同一である事が多く、炎を安定させるために送風能力を落とす設計が多い。
  • 灯油の質に左右され、タールに弱い。
クリーニング機能[編集]

ブンゼン式のファンヒーターの特徴である、気化器に付着したタールを焼き尽くしてしまう機能のこと。クリーニング機能動作時は強烈な異臭を放つので、室外での動作を勧める。ただしダイニチは公式サイトのお客様サポートQ&Aにおいて、「気化器自体の耐久性を大幅に向上させておりクリーニングをしなくても長期間使用できる」「当社の製品にはクリーニングの効果が無い」「客の知識も向上し故障の原因となる不良灯油に関する知識が向上した」という理由でクリーニング機能を搭載していない。

ポンプ噴霧式石油ファンヒーター(ARCバーナー)[編集]

灯油を燃焼筒で発生した熱を利用し、機械的に空気と混合させて作った混合ガスを使用して燃焼筒で燃やす仕組みを持つファンヒーター。過去に多く作られていた方式だが近年では1社(コロナ)のみの製造となっている。電気の力で灯油を温めないためブンゼン式に比べ格段に燃焼時消費電力が低い。しかし炉を温めるための初期着火の待ち時間を要する。

燃焼時に発生する臭気はブンゼン式やポット式に比べ少ない。点火時、消火時には臭う。機械的に空気を混ぜているので、混合ガス用空気を別の口から取り入れているのが特徴。

メリット[編集]

  • 燃焼中の灯油気化は燃焼熱を使うため、電気量が少なくて済む。
  • 燃焼用空気と送風用空気のファンが分かれ、送風力が高い。

デメリット[編集]

  • 着火まで時間がかかる。
  • ホコリなどに弱い

ポット式石油ファンヒーター[編集]

燃焼筒に灯油を流し込み燃焼させるタイプのファンヒーター。過去に多く作られていた方式だが近年では3社(トヨトミ、サンポット、コロナの一部製品)のみの製造となっている。混合ガスを作らないので、どんな灯油でも燃焼させることが出来るが、若干石油臭が多く排出されてしまう。トヨトミのものはNOx低減を詠っており、「レーザーバーナー」の商標を取得している。

メリット[編集]

  • 不良灯油の使用でも壊れにくいとされる。
  • 燃焼中の電気使用量が少ない。

デメリット[編集]

  • 着火まで時間を要する。
  • 予熱から点火までの消費電力が多い。

ロータリー式石油ファンヒーター[編集]

バーナー直下に回転する円盤状の気化器を搭載し、遠心力で気化させて燃焼させるタイプのファンヒーター。直線的な噴射のポンプ噴霧式やブンゼン式に比べて、灯油をより均一な混合気にできるため、石油臭が少なく、また耐久性が高いとも言われている。ブンゼン式と同じく気化には電力を用いるが、ヒートパイプなどで熱を誘導し効率を上げることができる。かつては三洋電機が代表的なメーカーで、5年補償を謳った「ロータリーガス化バーナー」として販売していた。しかし、同社は2001年に石油暖房機から撤退。現在FF式ファンヒーターに僅かに採用例が見られるのみとなっている。

メリット[編集]

  • ブンゼン式に比べると消費電力が低い。
  • 石油臭が少ない。
  • ポット式ほどでは無いが、不良灯油には比較的強い。

デメリット[編集]

  • 着火まで時間を要する。
  • 運転音が大きい
備考[編集]

以上の方式の他、油ポンプによって燃料を高圧にし、ノズルより燃料を微粒化させ噴霧して燃焼に必要な空気と混合したところへ電極捧により点火し燃焼させるガンタイプバーナーを搭載する方式もあり、一部のFF式ファンヒーターで採用されている。またかつては石油ストーブと同様、芯を用いたしん式の石油ファンヒーターも存在したが、燃焼性能の問題から間もなく姿を消した。

問題点[編集]

一酸化炭素中毒[編集]

石油ファンヒーターの使用にあたっては取扱説明書をよく読み、必要な換気を十分におこなうことが重要である。暖められた部屋の空気を冷たい外気と入れ替えても、壁・床・家具などの蓄熱により、速やかにもとの室温に戻る。

不良・不純灯油[編集]

太陽光線にあたっていたり長期保管によって品質が劣化した不良灯油や水やガソリン、軽油など灯油以外の成分が混入した不純灯油を使用すると故障の原因となる。火力が安定しなかったり、異臭や煙が多く排出されるなどの症状が現れた場合は灯油に何らかの問題が生じていると見られる。

シリコーン[編集]

ワックス材やヘアスプレー、枝毛コート剤などに含まれるシリコーンが石油ファンヒーターの安全装置を誤作動させ運転を停止することがある。これはバーナーの炎を検知する装置にシリコーンが付着し、正常に燃焼しているにもかかわらず不完全燃焼と誤認して消火してしまうのである。噴出口が白く汚れているときはシリコーンによる故障が疑われる。この場合は機器を分解し、炎検知器の清掃あるいは交換を必要とする。

FF式石油ファンヒーターによる主なトラブル[編集]

松下電器FF式石油温風機欠陥問題 を参照

石油ファンヒーターメーカー一覧[編集]

ブンゼン式石油ファンヒーター[編集]

ポンプ噴霧式石油ファンヒーター(ARCバーナー)[編集]

ポット式石油ファンヒーター[編集]

過去に製造していたメーカー[編集]

事故・リコール[編集]

脚注[編集]

  1. 余談だが、この商標は三菱重工業1986年頃に生産されていた冷媒加熱式パッケージエアコンと同一である
  2. 同名の冷媒加熱式パッケージエアコンとは無関係

外部リンク[編集]