週刊金曜日
金曜日(きんようび、通称週刊金曜日)は、日本の出版社株式会社金曜日が発行する主に政治・社会・環境問題を扱う週刊誌である。
目次
概説[編集]
「スポンサーや広告主に阿らずに市民の立場から主張できるジャーナリズム、権力を監視し物申せるジャーナリズム」を目指し、また、休刊した『朝日ジャーナル』の思潮を受け継ぐものとして創刊。「日本で唯一の、タブーなき硬派な総合週刊誌」を標榜しており、反戦・人権・環境問題など市民運動・市民活動の支援、体制批判を主に扱っている。最近の特集としては、テレビ、新聞業界のタブーに迫った「電通の正体」、メーカータブーに迫る「トヨタの正体」など。憲法改正論議では、一貫して護憲の立場を取っている。誌名の名付け親は久野収。戦前(1936年 - 1937年)に久野と中井正一らが発行した週刊『土曜日』と、フランス人民戦線の雑誌『Vendredi(金曜日)』にちなむ。2010年現在の編集長は、平井康嗣。
投書欄のスペースが広いのも特徴で、毎号8通前後の投書が掲載されている(読者が出資して創刊したという経緯もあり、創刊からしばらくは投書欄が雑誌の巻頭にあった)。他に、市民運動や読者会(読んだ感想を話し合う)の紹介などを投稿できるコーナーもある。毎号、全体のおよそ3分の1が特集記事や単発記事で、残りの誌面は連載記事や投書欄にあてられている。ただし、掲載される連載記事の種類は多いが、多くは毎号連載されるわけではなく(不定期連載・隔週連載・月1回連載)、複数の執筆者が交代で執筆する連載も多い(たとえば政治コラムは毎号掲載されるが、国会議員秘書・ジャーナリスト・大学教授・新聞記者の4者が交代で執筆している)。このため、毎号必ずお気に入りの執筆者の文章が読めるとは限らず、このことが定期購読を躊躇して書店買いをする読者を増やす遠因にもなっている。創刊当初5万部だった部数は、現在3万部(うち定期購読2万部)。
内容・論調[編集]
「権力は腐敗する、専制的権力は徹底的に腐敗する」(ジョン・アクトンの言葉)という前提にたち、「だから監視が必要であり、そのためにジャーナリズムは存在する」という思想を体現した誌面を特徴とする。したがって、与党や政府や財界など体制を批判する記事も多い。近隣諸国の中では日本の政界・財界と深い関係を持つアメリカ合衆国を批判する記事が目立つが、チェチェン紛争などに絡むロシアの人権問題や覇権主義、「人体の不思議展」の疑惑など中国の人権問題、中国共産党の独裁と腐敗に言及した記事も少なくなく、“敵か、味方か”の二分的な思考に囚われず、強権的・タカ派・ジンゴイズムな政権には厳しい姿勢を貫くのが基本的な論調といえる。
日本の社民党を中心に左派政党や市民団体関係者がしばしば寄稿し、日本や韓国の左派勢力に対しては好意的な論評が比較的多い。日本共産党などを批判する記事も少なからずあり、週刊金曜日16周年記念号の看板ルポで「創価学会の失われた一〇年」として、公明党と創価学会の問題点を取り上げるなど、互いに非難合戦に陥りがちな共産党と創価学会陣営の両方に批判的な論調である。日本の民主党に対する批判も以前から散見されるが、民主党政権発足後は批判しつつも、自民党政権に比べ相対的に評価し、政策提言を行う記事が増えている(とはいえ、あくまで民主党は保守政党であるという認識である)。改憲問題や北朝鮮への経済制裁については、批判的記事が多い。
左派色が薄い、あるいは市民運動と距離を置いている人物に記事を書かせたり、対談などに登場させたりすると、少なからず読者から批判が寄せられるという(特に亀井静香、城内実などの保守系とされる人物)。最近では反米左派と反米保守の共闘として、西部邁や小林よしのりらが誌上に登場することもあった。2005年の第44回総選挙での野党大敗後は、民主党などを含む保守勢力との共闘を肯定する記事も増えている。2008年の創刊15周年集会では、ポスターにドラクロワの「民衆を導く自由の女神」の旗を日の丸に置き換えたパロディを用いたが、日の丸を肯定的に用いたことに強い批判が寄せられた。また、天皇制廃止論の立場からの論説がしばしばみられ、保守派はもちろん、天皇に好意的な左派、あるいは天皇や皇族自身の言動も批判対象にしばしばされる。
2009年4月8日、「貧困とテロ、クーデター」と題する『月刊日本』との共同講演会を開催した。派遣切りなどの貧困労働者問題を中心に論じたものである。
池上彰氏の『朝日新聞』は「潔くない」に強い違和感、『慰安婦』の否定こそ「潔くない」[編集]
「従軍慰安婦」検証記事以降、『朝日新聞』バッシングが強まっている。池上彰氏のコラム不掲載は火に油を注いだ。池上氏の意見が気にいらないからと掲載を見合わせた『朝日』は言語道断だ。
とはいえ私は池上氏が『朝日』が謝罪しないことを「潔くない」と断じたコラムに強い違和感をおぼえた。「中立」を自認しているという池上氏の見解を模範解答のように捉える論調にも呆れたが。
池上氏のようにいくつもの媒体で影響力を持つ書き手は、媒体に応じて文章を書き分けることが多い。つまり池上氏の文章は読者を含めた『朝日』関係者に向けて書かれ、そのため「慰安婦」問題を考える際に同社の姿勢に焦点を絞ったのだろう。
ただ、それが今書かねばならぬことなのか。?がばらまかれ世間の歴史認識は大きく揺らいでいる。今回の問題の本質とは、なぜ過剰な『朝日』批判がなされるか、なぜ今さら「慰安婦」の存在が否定されようとしているかではないか。
「潔くない」のは歴史事実を否定する側ではないか。
販売方法[編集]
創刊当初は、日本の大都市中心のごく一部の書店売りを別にすれば、1年分や2年分の雑誌料金を前納する購読方法しか選択肢はなかった。環境問題への配慮から、郵送する雑誌は包装せずに、表紙と裏表紙を接着剤で張り合わせた“袋とじ”状態のまま投函されるため、表紙には耐水紙を採用している。現在のように店頭で扱う書店が増えたのは1990年代の終わりごろからである(書店に並ぶ雑誌は袋とじではない)。ただし、増えたとはいえ扱いのある書店は一部である。また、前納制の定期購読の場合、中途解約しても返金には応じない方針が不評だったため、購読料を月単位で指定口座から自動引き落としにする定期購読コースも新設された(この場合の購読料金は定価となる)。
このほか、部数が低迷しているのは知名度が低いからであるとして、多くの人に読んでもらうことを目的に、公立図書館に定期購読してもらうよう読者に呼びかけ始めたのは2000年代に入ってからである。ただ、利用者が少ないことを理由に購読をやめる図書館も散見される(予算削減で購読続行出来ないのをこれに託けた館もあり)。この現状に対し、図書館が所蔵する『週刊金曜日』をもっと借りるよう読者に促す意見が投書欄に掲載されたりもした。
その他[編集]
天皇・皇族のスタンスに関する問題[編集]
週刊金曜日の1997年11月14日号の天野恵一の投稿「『天皇行事』のオリンピック 象徴天皇は〝国家元首〟か?『長野五輪は誰のため』」の掲載に際して、貝原浩のイラスト「オリンピックの『お言葉』で先祖還りを世界に宣する元首アキヒト『ファシズムは繰り返す』」を掲載しようとしたところ、
- 1.今の天皇は平和主義者と右翼は言っていてあまり重きを置いていないが、前天皇については右翼も重きを置いている
- 2.天皇にもプライバシーがある。それを侵害してはいけない。今回はそのケースではないが、侮辱もあってはいけない。今回はその侮辱にあたる
- 3.今回の企画は、天皇を正面から攻撃したものではない。面倒になることを避けたい。
などを理由に掲載を拒否した。
貝塚浩のイラストの掲載を拒否した一方、2006年11月19日、日比谷公会堂で教育基本法改正反対などを訴える集会「ちょっと待った! 教育基本法改悪 共謀罪 憲法改悪 緊急市民集会」を主催した際に、(参加者は本多勝一、佐高信、永六輔、中山千夏、矢崎泰久、石倉直樹(劇団「他言無用」団員)。なお筑紫哲也、姜尚中も参加予定であったが、欠席している)永が「君が代」をアメリカの国歌「星条旗」のメロディーで歌う、「皇室の中傷」と指摘されるコント(悠仁親王を「猿のぬいぐるみ」に見立て「こんな子い〜らない」と放り投げる、以前前立腺癌を患った天皇を笑いのネタにする、など)が演じられた。これについて、週刊新潮の2006年12月7日号の掲載記事ですぎやまこういちなどから批判を受けた。
最終的に同誌は、佐高信発行人および北村肇編集長名にて「人権及びプライバシー上、一部の表現に行きすぎや不適切な言動があったことで、誤解や不快の念を生じさせてしまいました。集会主催者として配慮を欠いたことを率直に反省しおわびするとともに、今後開催する集会等の運営には十分に留意をしてまいります」との見解を示し、誌面上で謝罪・反省の記事を掲載した。
元編集者による「暴露」記事[編集]
『新潮45』2000年12月号に「私が見た反権力雑誌『週刊金曜日』の悲惨な内幕」という記事を、元編集部員で現在保険営業マンの西野浩史が執筆。この中で、西野は自身が実際に体験したり、内部で聞いた話であると主張している。
外務省美術品紛失疑惑記事[編集]
2007年5月25日発売号にて「スクープ 外務省に新疑惑 日本大使館から名画や陶磁器など4年半で98点が消えた!?」との記事を掲載。報道記者がその記事を元に当時外務大臣であった麻生太郎に対し「そのような記事が書かれているが本当か」との質問をすると麻生は、「ああ、それ週刊金曜日だったな。週刊金曜日なんて読むんだ。あんなの誰が読んでいるのかと思っていたが、あなたみたいな人が読むのね。紛失してないから。ちゃんと裏とって質問しないとみっともないことになりますよ」と記者へ述べ、否定した。また、外務省もホームページにて『配置換えをしただけで週刊金曜日が指摘した美術品は実際にあり、また経年劣化等により廃棄処分としたもので、「消えた」とする記事の内容は事実ではない』と否定した。その後、この件に関する鈴木宗男による国会での質問により、外務省が密に調査をしたところ、日本画『潮の舞』の1点のみが見当たらないことが判明した。なお、他の97点については外務省が発表した通り廃棄処分、もしくは配置換えとなっていた。
舞の海の排外発言捏造記事[編集]
2014年5月9日号において「“昭和天皇万歳”集会で――舞の海氏が排外発言」という記事で「外国人力士を排除したらどうかと言う人がいるが、これは難しいというか、もう後戻りはできない。今大相撲を支えているのは実はモンゴル人なんですね。モンゴル人がいるからこそ、私たちは横綱の土俵入りが見れる」と発言した内容を、「外国人力士が強くなり過ぎ、相撲を見なくなる人が多くなった。NHK解説では言えないが、蒙古襲来だ。外国人力士を排除したらいいと言う人がいる」と排外主義的な発言をしたと報じた。これを引用する形で『ニューズウィーク』日本版で記事にした冷泉彰彦が読者の指摘により講演動画を確認すると排外発言とは程遠く歪曲報道と言わざるを得ないと謝罪記事を掲載。同じく引用した赤旗も事実誤認として記事を撤回した。だが、週刊金曜日編集部は見解の違いとして謝罪はしていない。
沿革[編集]
1993年、編集委員が中心となり、読者から出資を募る形で創刊された。これは、経営者の(広告主への配慮という)編集方針により原稿をボツにされることが度々あった本多をはじめとするジャーナリストの経験を踏まえ、「広告に依存しない自由なメディアを作りたい」という動機によるものである。そのため誌面に広告が少ない(思想傾向を同じくする出版社の広告がほとんど)、週刊誌にしては価格がやや割高である。創刊当初には、部数が増えたら価格の引き下げを検討するとのことだったが、今日まで価格は500円のまま一度も変わらない。
- 1993年7月-10月、創刊準備号として『月刊金曜日』という名称の月刊誌を発行。編集委員は石牟礼道子、井上ひさし、久野収、筑紫哲也、本多勝一。『月刊金曜日』は、7月号から10月号まで計4号発行される。初代編集長・発行人は和多田進。
- 1993年11月、創刊。創刊号より椎名誠が編集委員に参加。
- 1994年-1995年、社内不祥事による和多田の急な辞任により、編集長・発行人は本多が引き継ぐ。この後、石牟礼と井上が編集委員を辞任。本多の編集後記のよると、石牟礼はもともと金曜日創刊の最初の段階だけ手伝うという約束で編集委員を引き受けていたという。これに対し井上は、(路線の対立かどうかは定かではないが)本多が編集長に就任して以降、誌上に登場することはほとんどなくなっていた。その後、佐高信と落合恵子が編集委員に参加。
- 1995年-1997年、編集長は本多
- 1996年、副編集長(デスク)として松尾信之が入社
- 1997-2001年、編集長は松尾信之
- 2001年、編集長は松尾からデスクの黒川宣之に交代。発行人は本多から黒川に交代。
- 1999年、久野収死去。
- 2000年、辛淑玉が編集委員に参加。
- 2000年-2002年、編集長が朝日新聞OBの岡田幹治に交代。同性愛者に関する掲載記事の表現が誌上で論争となり、辛が編集委員を辞任。
- 2004年、編集長が岡田から元『サンデー毎日』編集長の北村肇に交代。
- 2005年、石坂啓が編集委員に参加。また外部のライターが時事通信と共同通信の配信記事を盗用していた件で同年10月4日に両社に文書で謝罪した。黒川、2期6年の任期満了で発行人を退任(再々任を認めない社の方針に従う)。後任に佐高。
- 2007年12月、椎名誠が編集委員を辞任。雨宮処凛が編集委員に参加。
- 2008年11月、筑紫哲也死去。
- 2009年1月、宇都宮健児、中島岳志、田中優子が編集委員に参加。
- 2010年10月、佐高が発行人を退任し、北村が新発行人に就任。編集長には前副編集長の平井康嗣が就任。
編集委員[編集]
現任編集委員[編集]
過去の編集委員[編集]
歴代編集長[編集]
- 和多田進(発行人も兼任・晩聲社社長)
- 本多勝一(発行人も兼任・元朝日新聞社会部員のジャーナリスト)
- 黒川宣之(元朝日新聞経済部員) 先代発行人
- 松尾信之(元『日刊ゲンダイ』ニュース部長・元『日刊アスカ』編集長)
- 岡田幹治(元朝日新聞経済部員)
- 北村肇(新聞労連兼毎日労組元委員長・元『サンデー毎日』編集長)
- 平井康嗣(初の生え抜き編集長) 現編集長
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- http://www.kinyobi.co.jp/
- 週刊金曜日(@syukan_kinyobi)- Twitter(編集部などが発信している)