富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ

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株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ (ふじつうソーシアルサイエンスラボラトリ )は、ソフトウェア開発、システム構築などを行う富士通連結子会社(完全子会社)。

社員の西垣 和哉さん(平成18年1月26日死亡)を27歳で死に追いやったブラック企業である。

沿革[編集]

  • 1972年 - 株式会社ソーシアルサイエンスラボラトリ 設立
  • 1976年 - 日本電信電話公社(現NTT)殿向け「DIPS」開発業務へ進出
  • 1978年 - ユーザアプリケーション開発業務へ進出
  • 1982年 - 株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに社名変更
  • 1990年 - 通商産業大臣認定 『システムインテグレータ』取得
  • 1991年 - 名古屋システムセンター開設(現 東海事業所)(3月)
  • 1991年 - 大阪システムセンター開設(現 関西事業所)(12月)
  • 1995年 - 本社を川崎市中原区武蔵小杉タワープレイスに移転
  • 1999年 - ISO9001認証取得(3月)
  • 2000年 - ISO14001認証取得(11月)
  • 2000年 - ソリューション商品体系『Powered Solution』発表
  • 2003年 - BS7799およびISMS認証取得
  • 2005年 - 株式会社SSLパワードサービス設立
  • 2006年 - ISO27001認証取得(移行)
  • 2008年 - PMS認証取得(2月)、IMS認証取得(3月)
  • 2011年 - 情報セキュリティ格付「A+is(シングル・エー・プラス)取得
  • 2012年 - ブラック企業大賞2012において「業界賞」をフォーカスシステムズともに受賞

西垣さん過労死事件[編集]

2002年4月同社入社の西垣 和哉さんが、2006年1月26日医師より処方された薬を過量に服用し死亡した。
西垣さんはシステム開発に従事していたが、長時間残業をはじめとする過重な業務に伴う業務上の過度のストレスにより、遅くとも2003年9月下旬ころまでに精神障害を発症していた。休職と復職を繰り返したが、精神障害から回復することはなく死亡に至った。

西垣さんの母親は、息子の死亡が業務上の原因によるものであるとして、川崎北労働基準監督署に労災申請(2006年4月5日)したが同署は認めなかった。続く審査請求も神奈川県労働局労災保険審査官が棄却(2008年7月10日)し、再審査請求も労働保険審が棄却(2009年6月24日)していた。西垣 迪世さんは、再審査請求棄却に前後して、国を被告とし川崎北労働基準監督署による遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分を取り消すよう求めて訴えた(2009年2月18日)。
これに対して2012年3月25日東京地方裁判所は、以下の因果関係を有りと認め、不支給処分を取り消す判決を下した。国側が控訴しなかったことから同判決は確定している。
・業務と被災者の精神障害発症との因果関係
・精神障害発症と死亡との因果関係

因果関係 有無 根拠
業務と被災者の精神障害発症との
因果関係
有り -月当たり100時間以上に達する時間外労働とその連続。
 徹夜作業や休日出勤。

-プロジェクトに増員無し。
-仮眠用の十分な設備がなく作業場所での疲労回復が困難。
-狭い1人当たりの作業スペース。
 従業員数が多く恒常的に二酸化炭素量が基準値を超過。
-ミスが許されず神経を使う作業。
 反面比較的単純作業の繰り返し。達成感や満足感の不足。
-業務外要因、個体的要因は特にない。

精神障害発症と死亡との
因果関係
有り 業務によって発病した精神障害の影響下において、
次第に薬物依存傾向を示すようになり、
これが回復しないまま過量服薬に及んだもの

東京地方裁判所民事第11部,白石哲裁判長[編集]

原告の子(被災者)は,株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにシステムエンジニアとして就職し,勤務していたところ,平成14年12月から平成15年6月にかけて配置転換を短期間で4回繰り返し,平成15年4月に地上デジタル放送の実現に関連するプロジェクトに配置転換になったことから長時間残業が目立つようになった。そのため,被災者は,過重な業務に伴う業務上の過度のストレスを受け,遅くとも平成15年9月下旬ころまでに精神障害を発症した。かかる精神障害の結果,被災者は,過量に医師から処方された薬を服用するようになった。被災者は,休職と復職を繰り返したが,精神障害から回復することはなく,平成18年1月26日,過量服薬のために死亡した。

被災者の母親である原告は,被災者の死亡が業務上の原因によるものであるとして,遺族補償給付及び葬祭料を請求したが,川崎北労働基準監督署はこれを認めなかった。その後,神奈川県労働局労災保険審査官が審査請求を棄却し,労働保険審査会が再審査請求を棄却した。

本件は,原告が,国を被告として,川崎北労働基準監督署による遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分を取り消すよう求めた事案である。

本件は,働く者の命と健康を守るための裁判として重要な意義を有している。被災者のように,過重な業務により心身を害し,療養ひいては死亡に至る労働者が増えている。特に,被災者のようなシステムエンジニアの間ではこの傾向が顕著である。本年3月7日,同じくシステムエンジニアが長時間労働の末にアルコールを過剰摂取して死亡した事案において,東京地方裁判所は,死亡が業務に起因するものであり,会社に安全配慮義務違反が認められるとして,会社に対して約5960万円の損害賠償を命じた。他方,労災行政においては,業務と死亡との因果関係について硬直した判断を続けているために,不当に労災を認めない事例が相次いでいる。原告は,そのような労災行政のあり方に一石を投じるべく,本件訴訟を提起した。

事件概要[編集]

  • 原告   西垣 迪世(神戸市在住,現在60代)
  • 被災者  西垣 和哉(平成18年1月26日死亡,享年27歳)
  • 被告   国(処分をした行政庁:川崎北労働基準監督署)
  • 被災者の勤務先 株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ
  • 係属部  東京地方裁判所民事第11部合議甲B係
  • 事件番号 平成21年(行ウ)第75号
平成14年4月 株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリに入社
平成14年12月 配置転換
平成15年2月 二度目の配置転換
平成15年4月 三度目の配置転換(地上デジタル放送関係のプロジェクトへ異動)
平成15年4月 このころから長時間労働が目立つようになる
平成15年6月 四度目の配置転換(同じプロジェクト内での異動)
平成15年8月上旬 職場が武蔵小杉から門前仲町に変更(職場環境悪化)
平成15年11月 休職
平成16年2月 復職
平成17年8月 休職
平成17年11月 復職
平成18年1月26日 過量服薬により死亡
平成18年4月5日 川崎北労働基準監督署に労災申請
平成19年12月26日 同署が労災を認めず,不支給決定
平成20年1月9日 審査請求
平成20年7月10日 審査請求棄却
平成20年9月1日 再審査請求
平成21年2月18日 本件訴訟提起
平成21年6月24日 再審査請求棄却
平成23年3月25日 本件訴訟判決

本件の争点は被災者の過重労働と精神障害発症及び死亡との因果関係である。

(1) 被災者の過重労働と精神障害発症の因果関係

長時間労働(法定時間外労働数)

  原告主張 被告主張

平成15年3月 36時間32分 29時間36分
4月 124時間39分 93時間25分
5月 40時間25分 28時間23分
6月 97時間45分 72時間5分
7月 97時間27分 75時間19分
8月 74時間58分 54時間3分
9月 37時間8分 21時間54分

原告は,平成15年4月以降,被災者が昼休みを10分程度しか取れていなかったと主張している一方,被告は,昼休みにはまったく仕事をしていなかったと主張している。

  • 配置転換
  • 労働環境
  • 地上デジタル放送に関するプロジェクトによるプレッシャー
  • 富士通ソーシアルサイエンスラボラトリによる被災者に対する支援の不足
  • 精神障害発症の時期
    • 原告は,遅くとも平成15年9月下旬には発症していたと主張。被告は,平成15年11月と主張している。

(2) 被災者の過重労働と死亡の因果関係

(原告の主張)

被災者は,精神障害発症に伴い,薬物依存傾向を示しようになった結果,平成18年1月26日に過量服薬が原因で死亡しているのであるから,因果関係はある。

(被告の主張)

被災者は,自らの強い意思に基づいて薬物を摂取し,その結果死亡したのであるから,仮に精神障害発症と業務との因果関係があったとしても,死亡との因果関係は切断される。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]