中高年フリーター

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中高年フリーター(ちゅうこうねんフリーター)は、アルバイト・パート・派遣社員・契約社員などで食いつなぐ、35歳以上の非正規労働者である。

定義[編集]

フリーターは本来、15歳から34歳(いわゆる若年者)のうち(就学生や主婦を除く)、勤め先での呼称がパート・アルバイトの者、あるいは現在は無業者でパート・アルバイトの仕事を希望する者。(厚生労働省の定義)

または、これに派遣社員や契約社員等の非正規雇用者を含めた者。(内閣府の定義)

しかし、現在、この厚生労働省と内閣府が定めた年齢の上限(34歳)を越えるパート・アルバイト・派遣社員・契約社員などの非正規労働者が増え続けており、この35歳以上の非正規労働者を呼称する際に一般的に用いられるようになったのが、“中高年フリーター”という名称である。故に、35歳から定年の59歳までの非正規労働者が、中高年フリーターの定義に当てはまる。

語源[編集]

フリーターという言葉自体は、1987年に「フロムエー」(リクルート社のアルバイト情報誌)の編集長・道下裕史が生み出した。フリーアルバイターの略。

当初は1980年代のバブル景気時代を中心に、希望の職種を志す目的で、定職には就かずにアルバイトで生計を立てる若者を指した言葉(バブル期・フリーターだが、バブル経済崩壊後(おおむね平成に入ってから)は、新卒市場を覆った就職氷河期により就職の機会を失い、アルバイトで食いつながざるを得なくなった若者(就職難民)を意味するようになった(氷河期・フリーター)。

1991年、厚生労働省がフリーターの定義を定める際に該当年齢を15歳-34歳(いわゆる若年者)とした。だが、2000年代に入ると、リストラによる再就職が決まらない35歳を越えるフリーターが増加し始めたため、2005年に三菱UFJ総合研究所が実態調査を行い、35歳以上のフリーターを「中高年フリーター」と呼称した。(この時、それまでは曖昧に用いられていた「中高年フリーター」という言葉が、35歳以上の非正規労働者を指す言葉として初めて公式に用いられた)

発生源と増加の要因[編集]

一部、氷河期フリーターの高齢化[編集]

中高年フリーターの一部は、高齢化した氷河期フリーターである。

氷河期フリーターについては、「フリーター」の項目を参考のこと。しかし、中高年フリーターの多くは、就職氷河期世代の年代ではないため、その過半数はバブル崩壊とアジア通貨危機の大不況時代に失業した元正社員である。

バブル崩壊とアジア通貨危機[編集]

1991年、日本のバブル経済は崩壊し、企業の倒産が相次いだ。失業率は急速に増加し続け、1997年のアジア通貨危機を切っ掛けに、完全失業者数は300万台にまで跳ね上がった。(後述の「完全失業率の推移」を参照)

有効求人倍率も1993年以降1倍を下回り(1993年の有効求人倍率0.76)、アジア通貨危機の煽りを受けた1999年には0.48倍にまで落ち込んだ(後述の「有効求人倍率の推移」を参照)。失業者が急増する中で、就職口が減り続ける時期に失業した労働者が、この中高年フリーターの主な発生源である。

特に、バブル崩壊時とアジア通貨危機の際は、人件費削減の為に管理職を含む“中高年の正社員”が大量リストラされた。これは正社員の中高年層が最も人件費を圧迫していた為である(年功序列制度下では、勤続年数が長ければ長いほど、能力の如何に関係なく高賃金となる)。

正社員から非正社員へ入れ替え[編集]

1999年、アジア通貨危機によって溢れた中高年失業者と、就職氷河期の深刻化によって溢れた就職難の若者の受け皿として、派遣制度が一般に解禁された。

それまでは、通訳やプログラマーや航空機操縦士など専門技術を持つ人材のみが派遣社員になる事が許可されていた。しかし、改正により、派遣会社に登録さえすれば、誰もが仕事を斡旋してもらえるというシステムが誕生した。年齢・学歴・職歴を問わず、仕事を直ぐに斡旋してもらえる事から、失業者に雇用を提供する大きな役割を果たした。だが一方で、大手企業の多くがこの労働者派遣制度を利用し、人件費が嵩む正社員をリストラして、人件費が安く済む派遣社員と入れ替えるという方式を取り始めた。

2008年第169回・衆議院予算委員会における共産党の志位和夫委員長は、「1999年に派遣法を原則自由化して以降、正社員は348万人減少しました。派遣労働者は、この間215万人増えている。常用雇用すなわち正社員から派遣への大規模な置きかえがされていることは、マクロの数字でも一目瞭然であります」と指摘し、正社員が次々とリストラされ、派遣社員に入れ替える現象が大規模に生じている事を訴えている。 この派遣制度の改正により、中高年の正社員がさらに急減し、代わりに派遣社員や契約社員として働かざるを得ない中高年フリーターが急増した。

介護のための離職者の増加[編集]

その他の理由としては、高齢化社会にともなう“介護が必要な両親を抱える中高年”の増加が挙げられる。

年老いた両親の介護のために、フルタイム労働の正規職を離職し、パートタイムなど時間の融通が利く非正規に転じるケースが増えている。平成11年度の介護離・転職者数は8万7700人だったのに対し、平成19年では14万4800万人にも増加している。

介護が必要な両親を抱えている年代は、その息子である中高年層に集中しており、これが中高年フリーターの増加の要因の一つとなっている。(特に、要介護者への在宅サービスを大きく制限する改正「介護法」が実施された平成18年10月から一年の間の介護離職者数は、前年比4割も増加している)

中高年フリーターが就職で不利になる理由[編集]

年齢の問題[編集]

通常のフリーターが“職歴の不足”という問題を抱えているのに対し、中高年フリーターの多くは元正社員であるため、失業当時は、そのような問題に悩まされる事は少なかった。

中高年フリーターが、再就職で不利になってしまった原因は、“職歴”ではなく、その“年齢”である。

一般的にノンキャリア採用が通用するのは25歳未満がほとんどだが、キャリア採用とて通用するのは35歳未満がほとんどである。

雇用対策法が改正され、平成19年10月1日から労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることが禁止されたため、多くの企業は上辺は“年齢不問”とするようになったが、改正以前はほとんどの企業が採用年齢を「35歳以下」「30歳以下」「25歳以下」等に規定しており、35歳以上を対象とする求人は極めて少なかった。

ちなみに、35歳以上の求職者が歓迎されない理由は、「人件費上の問題」と「習慣上の問題」が大きく関係している。

「人件費上の問題」とは、初任給を年齢に応じて配慮する企業にとって、35歳以上の労働者は人件費が嵩んでしまうからで、「習慣上の問題」とは、目上を敬う習慣がある日本では、若い上司にとって、年上の部下は何かと気を使わねばならず扱いづらいとされている。

この二つの理由より、日本では他国以上に中高年の求職者が嫌われる傾向にある。

IT化によって生じた問題[編集]

中高年フリーターの多くは元正社員である。彼らは若き頃にしっかりとした社内教育を受けて育っており、即戦力と成り得る技術と経験を持っていた。しかし、それらの技術と経験はあくまで“アナログ時代”に研鑚されてきたといっても過言ではない。

中高年の失業者が大発生したアジア通貨危機以降の日本では、急速にIT化が進んだ。手書きで会計をやっていた状況が、PCのExcelやWordを使う状況へと変わった。更に手作業で行われていた作業の多くに、PC端末やデジタル機器が加わるようになった。この流れに対応する為に、各企業はITの専門家を招いたり、社員に補助金を出してパソコン教室に通わせる等を行った。

このIT化が急速に進んだ時期に失業してしまった中高年層は、このIT化の流れに乗る事が出来なかったのである。彼らが若き頃に学んだアナログ時代のスキルが、ほんの数年の間に役に立たなくなってしまったがために、これがまた再就職を困難にしてしまった。(需給のミスマッチ)

有り付けるのは不安定な求人[編集]

上記の理由より、中高年フリーターが就職できる所といえば、その多くが職歴や年齢を余り問題としない人手不足の求人(鉄骨組み、零細の土建、地方の配達業、掃除夫、中小の警備会社、チェーン店の店員など)に限られる。しかし、これらの求人は終身雇用の保証はなく、低所得かつ雇用状況も不安定である。 (零細の土建や地方の配達業などは大手の下請けであるため、常に仕事を確保できる訳ではない)

“再就職までの一時的な求人”としては役立っても、子供を大学に入れてやることも、家族が病気になった時の入院費や老いた両親の介護費を賄うことも困難である。 (しかも、45歳を越えてしまえば、こうした仕事すら正規で有り付くことは難しくなってしまう)

中高年フリーターと労働者派遣制度[編集]

アジア通貨危機の煽りを受けた大不況の真っ只中、1999年に中高年の失業者と就職難の若者の受け皿として労働者派遣事業が一般に解禁された。

この労働者派遣事業は、「アルバイトよりも高賃金」「年齢制限がない」「企業で最新の職務経験(PCを用いた職務経験)を積める」「安定した雇用先で正社員化のチャンスも期待できる」等の利点から、多くの中高年フリーターから歓迎された。しかし、派遣労働者の平均賃金は年毎に低下し、収入面での安堵は束の間に過ぎなかった。

また、単純労働だけを強いて職務経験を積ませない企業も多く、正社員化せずに非正規のまま放置される状況が続いた。さらに、派遣はフルタイム労働である為に求職活動が出来なくなってしまうというデメリットもあり、派遣労働はフリーターを救済する役には立たなかった。

その上、2008年9月に世界金融危機が生じると、派遣労働者は真っ先に解雇の対象となり、逆に失業者を増大させる温床と化してしまった。中高年フリーターは、アジア通貨危機の際に正社員の身からリストラされ、今回の金融危機では非正規の身からリストラされるという、二度のリストラを受けたことになる。

深刻なワーキングプア生活[編集]

15-34歳(いわゆる若年者)の非正規労働者を指すフリーターと異なり、中高年フリーターは年齢的にも扶養家族を抱えている者が多い。 特に、介護を必要とする両親を抱えているケースが多く、低賃金の中から介護費を負担しているために、年長フリーター(25歳-34歳の非正規労働者)以上に苦しい生活を強いられている。さらに、子供も学費がかさむ時期に差し掛かっている者は、学費と介護費の両方の負担に苦しめられることになる。

だが、現代の日本においては、何ら対策が講じられていないのが現状である。

若年層に広まる誤解と差別意識[編集]

昨今、中高年フリーターが、若い正社員や若者から差別される問題が生じている。これは、今の若い世代は、派遣社員が1999年に誕生したばかりであることも、アジア通貨危機の際に中高年が大量リストラされたことも知らないためである。中高年フリーターの大半が元正社員であることを知らず、「若い頃からバイトで生計を立ててきた人」と誤解されている傾向が大きい。

ネット上でも、40代50代の非正社員がメディアで取り上げられる度「40代、50代にもなってバイトなんて、どんだけ無能なんだよ(笑)」と、馬鹿にする光景が多々見られる。しかし繰り返すが、派遣制度が一般に解禁されたのは1999年であり、それ以前から派遣社員をしていた者といえば、通訳やプログラマーといった少数の専門技術者のみである。

また戦後間もない頃は、1人1社主義の原則に基づき、中学校と職業安定所が協力して中卒者に事前に仕事を斡旋するシステムが確立していた。(1947年に制定された職業安定法の25条の3方式にて規定)

高校進学率が急上昇した1960年代は、高校が高卒者に仕事を斡旋した上で卒業させるシステムが整っていた。大学進学率が上昇した1970年代以降は新卒市場が整っており、バブル崩壊によって新卒市場が就職氷河期を迎えるまでの間は、新卒でさえあれば誰もが就職できたのである。

故に、中高年層が、スタートラインの時点から非正規だったなどということは有り得ず、一部の高齢化した氷河期フリーターを除けば、彼らは百%元正社員である。

関連する統計データ[編集]

完全失業率[編集]

完全失業者数及び完全失業率の推移
(総務省統計局)
完全失業者数(万人) 完全失業率(%)
男女計 男女計
1990 134 57 77 2.1 2.2 2.0
1991 136 59 78 2.1 2.2 2.0
1992 142 60 82 2.2 2.2 2.1
1993 166 71 95 2.5 2.6 2.4
1994 192 80 112 2.9 3.0 2.8
1995 210 87 123 3.2 3.2 3.1
1996 225 91 134 3.4 3.3 3.4
1997 230 95 135 3.4 3.4 3.4
1998 279 111 168 4.1 4.0 4.2
1999 317 123 194 4.7 4.5 4.8
2000 320 123 196 4.7 4.5 4.9
2001 340 131 209 5.0 4.7 5.2
2002 359 140 219 5.4 5.1 5.5
2003 350 135 215 5.3 4.9 5.5
2004 313 121 192 4.7 4.4 4.9
2005 294 116 178 4.4 4.2 4.6
2006 275 107 168 4.1 3.9 4.3
2007 257 103 154 3.9 3.7 3.9
2008 265 106 159 4.0 3.8 4.1
2009 347 137 210 5.2 4.9 5.4

有効求人倍率[編集]

有効求人倍率の推移[1]
有効求人
倍率
有効求人数 有効求職者数 就職件数
1988 1.01 1,538,883 1,522,912 134,534
1989 1.25 1,729,624 1,383,335 125,989
1990 1.40 1,814,807 1,294,185 113,332
1991 1.40 1,805,631 1,290,153 106,709
1992 1.08 1,553,333 1,433,026 108,284
1993 0.76 1,275,820 1,669,074 111,747
1994 0.64 1,186,463 1,848,098 120,628
1995 0.63 1,233,449 1,954,365 126,684
1996 0.70 1,393,689 1,980,970 128,680
1997 0.72 1,493,094 2,070,944 132,306
1998 0.53 1,265,216 2,394,818 137,300
1999 0.48 1,206,889 2,529,993 144,177
2000 0.59 1,472,596 2,506,804 155,421
2001 0.59 1,534,182 2,597,580 157,206
2002 0.54 1,486,484 2,768,427 168,366
2003 0.64 1,670,065 2,596,839 176,143
2004 0.83 1,956,329 2,368,771 178,754
2005 0.95 2,163,164 2,271,675 176,954
2006 1.06 2,294,833 2,164,014 178,075
2007 1.04 2,179,802 2,094,404 170,598
2008 0.88 1,831,664 2,091,492 155,902
2009 調査中 調査中 調査中 調査中
</div>

脚注[編集]

  1. e-stat 一般職業紹介状況 2009年10月

関連項目[編集]

外部リンク[編集]