被害届
被害届(ひがいとどけ)とは、犯罪の被害に遭ったと考える者が、被害の事実を警察などの捜査機関に申告する届出。
被害届や事故証明の様式は国ごとに異なっており、これらの書式が存在しない国もある[1]。
日本
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日本では、被害届は、被害を受けた関係者が一般に警察に対して提出する。また交番や警察署を訪れて被害事実を申告する場合には、警察官が聴取事実を元に作成することもある。
被害届は、私人による任意の書面であることから、犯罪事実を捜査機関に告知する役割を果たし、実際に捜査の端緒として活用されることが予定されているものの、法律上所定の効果をもたらす告訴ないしは告発としての性質は有さず、親告罪の場合における起訴の要件を満たすものではないと理解されている。つまり、被害届が出されているだけでは、事件を担当する検察官は親告罪に該当する事件(代表例として刑法224条の未成年者略取、同法230条の名誉毀損、著作権法違反)の公訴が行えず、不起訴処分にせざるをえない。
被害届は、被害事実についてのみ申告するものであって、犯人の起訴を求める意思表示は含まれていないとされている(これは告訴・告発によって法的に有効な形で行われる事になる)。被害届があっても捜査を開始するかどうかは担当警察官もしくは担当課長の任意職権での判断に左右され、告発や告訴と違い被害届には署長決裁が不要なうえ、警察本部への報告義務もない。そして、被害届は、刑事訴訟法に全く記述されていない(なので当然、法律に明記されている行為である告訴(刑訴法230条)ないし告発(刑訴法239条)として扱われる妥当性に欠け、法的にその扱いを受けない)。
近時は、被害者に対する警察などの捜査機関の十分な対応が求められていることから、警察などが正式に被害事実を知った「捜査の端緒」としての被害届の重要性は増している(ただし、やはり告訴が要件となっている親告罪では被害届だけでは公訴の障害となるものであり、検察において刑事訴訟の公訴が行えない事には変わりが無い。この場合、公訴を行うには、追って告訴が行われる必要がある)。
告訴・告発とは違い被害届は犯人処罰をそれ自体では求めないものであるが(そのため、それらより警察において微罪処分、検察において起訴猶予処分を行われやすいとされる)、虚偽の被害届を提出すると告訴・告発と同様に刑法172条の定める虚偽告訴等の罪を構成しうる。また、虚構の犯罪の公務員への申出である事から、軽犯罪法1条16号について要件を満たす事になる。
類似の名称の届出として加害届(かがいとどけ)というものもあるが、これは自らが飼育している犬やそれに準ずる危険な動物が人に危害を加えた場合に、その事実を保健所に届け出るものとなる。なお、この届出は条例によるもので、自治体によっては逆に犬などに危害を加えられた場合に届け出る被害届について規定している場合もあるが、これは警察に届け出る被害届とは異なる。
オランダ
オランダでは盗難の犯罪被害にあった場合に警察に被害届を出すと紛失証明・報告書が発行され、この紛失証明・報告書は保険会社へのクレーム時に役立つ場合がある。なお、警察に盗難届を提出する場合にはシェンゲン協定により盗難物品の購入証明や製造番号証明書を求められることがあり、これらを所持していない場合は証明書の発給が拒否される。
脚注
- ↑ (2017) [ 困ったときのお助け英語 ] JTB 2017 177