株式
株式(かぶしき)とは、株式会社における社員権のことである[1]。
持分会社における社員権である持分は、各社員の出資額などに応じて不均一な形態をとり得るのに対して、株式は、種類ごとに均一に細分化された割合的な構成単位をとる点に特徴がある。そのため、株式会社が事業に必要な巨額の資金を調達する際に、資本を細分化し、小額の出資を多数の出資者から募ることが可能になる。また、株式会社におけるそれぞれの株主の出資の割合を知るためには、各株主の有する株式の数を調査すれば足りることになる。
なお、株式を表章する有価証券が発行されることがあり、これを株券という。
株式の発行は、社員の参加と資金調達という二つの性質を持つため、かつては前者の性質が重視されて株主総会の決議が必要とされていた(現在でもヨーロッパではこのような法制が通常である。)が、現在では後者の性質が重視されるようになり、経営の機動性を確保するため、株主総会の授権の下で原則として取締役会の決議で発行することができるほか、株式の分割、消却なども会社法の規定の範囲内で自由にできるようになった。
目次
仕組み
株式会社は、事業で得た利益の一部を出資比率に応じて配当という形で株主に分配する。事業が赤字の場合には無配になる可能性がある。また、廃業したり、経営が破綻して倒産した場合には株式の価値がゼロになることもある。しかし、株主の責任は有限責任であり、会社に多額の債務が残っても株主は出資額以上の損失を被ることはない。一方で、会社を解散した場合、債務をすべて履行してなお資産が残れば、その資産の所有権は株主にあり、出資比率に応じて分配する。
また、出資することで得た株式は株券を発行する会社においては有価証券である株券で表章され、特に譲渡制限を設けていない限り譲渡可能である。特に証券取引所に上場された株式は、相対取引や公開買付などを除くと、証券会社を介して証券取引所において売買取引されるのが通例である。これに対し公開されていない株式である未公開株は相対(あいたい)で取引される。
株価
株式の売買取引の際に付けられる価格が株価である。基本的には通貨換算の価値ありとする共同幻想の元に売り手と買い手双方の合意があれば自由に決定できるが、上場株式においては、証券取引所での直近の約定値を株価として時価の評価基準にすることが多い。これら株式の売買の際の株価変動によって得た利益をキャピタルゲインと呼び、価格変動によって被った損失のことをキャピタルロスと呼ぶ。なお、配当などによる利益はインカムゲインと呼び、キャピタルゲインとは区別される。
株券
株式を表章する有価証券のことを株券と呼ぶ。従来は株式の譲渡性を確保するための必須の存在であったが、定款において譲渡制限が定められているような中小企業においては発行されないことも多く、大企業においても発行コストや善意取得の危険など管理コストの問題もあるため、株券不発行制度が導入された。日本の会社法においては、株券は発行しないことがむしろ原則とすらされている。
また、株券等の保管及び振替に関する法律(ほふり法)により、上場株式全体の多くが、「証券保管振替機構(ほふり)」に株券を預託したまま行われるようになり、さらに、決済合理化法の施行により、2009年1月に株券電子化がなされた。株券電子化により、上場株式に係る株券は全て廃止され、社債、株式等の振替に関する法律に基づくコンピューター上の登録データでの管理に移行されたとする。
会社法での株式
会社法は、以下で条数のみ記載する。
- 第1節 総則
- 第2節 株主名簿
- 第3節 株式の譲渡等
- 第4節 株式会社による自己の株式の取得
- 第5節 株式の併合等
- 第6節 単元株式数
- 第7節 株主に対する通知の省略等
- 第8節 募集株式の発行等
- 第9節 株券
- 第10節 雑則
株式の種類
株主の権利の違いや記載内容の違いにより以下のような種類がある。
株主の権利の違いによる分類
全部の内容についての特別の定め(107条)
普通株式は、一つ(一単元)の株式に与えられる株主の権利は平等(株主平等の原則)である。これに対し、配当や議決権などの権利について意図的に差をつけた株式を発行する場合があり、これを普通株式と区別して優先株式あるいは種類株式と呼ぶ。
記名の有無による株券の分類
記名株券は、株券上に株主の氏名又は名称が記載された株券をいい、無記名株券は株券上の株主の氏名又は名称が記載されていない株券をいう。
日本においては、かつては商法において記名株券と無記名株券の両者が規定されており、記名株券についてはその交付によって株式を譲渡できるものの、株主名簿への記載又は記録が発行会社に対する譲渡の対抗要件であった。一方、無記名株券については交付によって株式を譲渡でき、株主名簿は存在しなかった。1990年の商法改正(1991年4月施行)で無記名株券の制度は廃止され、記名株券に一本化された。もっとも、廃止前から無記名株式はほとんど利用されていなかった。
会社法においては、株券に株主の氏名又は名称を記載する必要はない。その意味では無記名株券であるが、かつての無記名株券とは異なり、株主名簿への記載又は記録が発行会社に対する譲渡の対抗要件となる点で、従来の記名株券と同様である。
額面の有無による分類
日本においては、2001年10月1日を以て、額面株式は廃止され無額面株式に統一された。
- 額面株式:発行時の出資金額を示す額の記載がある。
- 無額面株式
権利の行使
- 共有者による権利の行使
- 共有に属するときは、原則として、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない(106条)。
株式の発行
- 設立時発行株式
- 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。ただし、非公開会社の場合は、制限がない(37条)。
- 募集株式
- 新株発行
株式の譲渡
- 株式譲渡の制限
- 株式の譲渡に係る承認手続
- 指定買取人による買取りの通知(142条)
- 売買価格の決定(144条)
- 特例有限会社の株式の譲渡制限の定め(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条)
- 株式の質入れ
用語
- 株式無償割当て(185条)
- 株式会社が、株主に対して新たに払込みをさせないで株式の割当てをすること。
- 株式分割と異なり、異なる種類の株式を割り当てることが出来る
- 株式引受人:会社設立時、発起人から株式を割り当てられた、株式申込人。
- 株式消却:自己株式を消滅させる行為
- 株式買取請求権
- 株式公開(上場、IPO)
- 株式の持ち合い
- 株式公開買い付け(TOB)
- 株式相場
- 株式の希薄化
- 株式市場
- 株式市況
- 株式譲渡自由の原則
- 株式等:株式、社債及び新株予約権をいう。(107条)
- 株式併合
- 自己株式
- 相互保有株式:株式の持ち合いがされた株式。
- 単元未満株式:単元株式数に満たない株式
- 募集株式
- 発行可能株式総数
関連項目
- 投資顧問会社
- 株主
- 単位株
- 単元株
- 第三者割当増資
- 新株引受権
- 新株予約権
- ストックオプション
- トラッキング・ストック
- 株券等の保管及び振替に関する法律(証券保管振替制度)
- 社債、株式等の振替に関する法律
- 株主総会
- 株主代表訴訟
- M&A
- 株主優待
- 権利確定日
- 権利落ち日
- 持株会
- ジョイント・ストック・カンパニー
株価関係
脚注
- ↑ 「株式」という日本語は、独占営業の権を許された集団の成員という意味の「株」と、中世における土地収益権を意味する「式(職)」という語に、その沿革を有する。大久保治男、茂野隆晴『日本法制史(第7版)』(高文堂出版社、1997)243頁
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