ペーパードライバー
ペーパードライバー(和製英語: paper driver)とは、自動車運転免許証を取得し、現に有効な免許を保有しているものの、普段運転することがない者や、運転する機会がない者をいう。略してペードラとも言う要出典。
また二輪車の運転免許を保有しているものの普段は二輪車を運転することがない者をペーパーライダーと言う。
似た概念としてサンデードライバー(Sunday driver)がある。これは休日だけ運転する人を指した言葉[1]であるが、休日などたまの機会にしか運転しないために免許保有歴の割に運転技能が未熟なドライバー[2]を指す意味で使う場合もある[3]。
ペーパードライバーは運転する機会がないため運転技能や危険予測能力が低下している人も多いので、久々に運転する際は自動車教習所で実施している「ペーパードライバー教習」(有料)に前もって参加するなどして勘を取り戻しておくことが望ましい。
概説
日本では公共交通機関の充実している大都市圏(特に首都圏、京阪神都市圏)においては自動車を所有しなくても日常生活に支障をきたす事は少なく、むしろ高額な駐車場代など費用面で高くつくことから、自家用車を運転しない者はさして珍しくない。
更には2000年代以降、経済的理由等[4]により自動車を買えない・維持できない若者が増加した(「若者の車離れ」)ため、ペーパードライバーの割合も増加し、さほど珍しい存在でもなくなった(1990年代まではペーパードライバーはどちらかと言えば珍しかった)。
運転免許取得者がペーパードライバーになるか否かは、通勤・業務・私用などでの必要性の有無、居住地の公共交通機関の利便性、自身や家族の経済力の有無、地域のガソリン代・駐車場代などの維持費の多寡、など色々な要素が絡んで決まる。
運転免許取得の意義
モータリゼーションの発達により運転免許取得者が増えた結果、公的機関の発行した身分証明書として運転免許証は世間一般で多用されている[5]。また自動車で業務を行う運送業や自動車で旅客を送迎する職業に就きたい場合は必須であるのは無論、最低限の資格として取得していなければ就職やアルバイトに不利に働く[6][7][8]、職人やアーティストを目指すにしても最初の下積みに入る段階の門戸が狭まる[9]、就職後は運転免許を取得する時間の余裕が無くなる、などの理由から、当面は自動車を購入する予定が無くても、将来のことを考えて運転免許の取得だけは済ませておくという若者は昔も今も非常に多い。その他に自家用車は無くとも、飲み会等の後に友人、同席者の車の運転を代行できる、旅先・帰省先での移動手段としてレンタカーを運転することができるなど、必ずしも免許取得の目的が「自家用車の運転」に限るわけではない。
ペーパードライバーは(運転しないので)ゴールド免許であることが多く、運転免許更新時には優良運転者として講習時間が短くなる、更新手数料が他の一般運転者更新等に比べると安価になるなどのメリットもある。 なお、ペーパードライバーなら必ずゴールド免許であると決まったわけではない。運転していなくても該当する交通違反行為もあるからで、飲酒運転者への車両の提供や酒類の提供、飲酒運転車両への同乗などがそれである。
運転の忌避
一部の芸能人やプロスポーツ選手などでは、所属先との契約によって自動車の運転について制限されている者も見られる。特に芸能人については交通事故、とりわけ対人事故の加害者となることは、たとえ円滑に示談が成立したとしてもスキャンダル扱いとなり、当面の間は活動の大きな支障となるため、ドラマやバラエティ番組の撮影といった業務上の必要から運転免許の取得・更新はさせても、プライベートでの自動車運転については禁じる芸能事務所もある[10]。また、芸能人やスポーツ選手など著名人が運転中に交通事故を起こしたことをきっかけに、それまで事実上黙認状態であった所属の事務所やチームが自動車の運転を禁止した事例もある[11]。日本相撲協会では1985年に当時前頭の水戸泉が交通事故を起こしたのを機に、所属する力士の自動車運転を全面的に禁止する規則を定め現在に至っており[12]、すなわち運転免許を持つプロの力士は序ノ口から横綱まで全員がペーパードライバーということになる[13]。
多くの国において、少なからぬ大企業がリスクマネジメントやビジネス上の観点から企業首脳の通勤や移動のために運転手を手配している。
また、自動車運転の資格や制度は国・地域毎に大きく異なり、自国では運転免許を取得済みでも国外の赴任先で有効な運転免許が容易に取得できるとは限らなかったり、交通法規の違いや道路事情・治安をはじめ、自動車運転自体にまつわる文化土壌や習慣が異なることもある。そのため国際的な展開をしている企業では国外の事業所に赴任した幹部(地域によっては一般社員も)の移動のために、現地の運転資格を持つ(主に現地人の)要員を確保することも多い。
この様な形で自分自身で自動車を運転することが無くなった企業幹部も、事実上のペーパードライバーとなる。
統計
2010年時点において、日本国内における全体のペーパードライバーの具体的な人数や割合を網羅した統計が集計されたことはない。財団法人全日本交通安全協会が1995年10月中旬に全国18都道府県で実施した運転頻度に関するアンケート調査によると、回答者3,162人中「運転しない」と回答した者が94人(全体の3%)、「年2~3回」と回答した者が54人(全体の1.7%)となっている[14]。
その他
多くの自動車教習所で、公共交通の不便な地域に転居するなどで自動車を購入したりするなど何らかの事情で自動車の運転が再度必要になったペーパードライバーを主な対象とした再教育・訓練課程(「ペーパードライバー教習」と銘打たれていることが多い)が設けられている[15]。
脚注
- ↑ コトバンク. “サンデードライバー(大辞林 第三版)”. 2014年5月7日閲覧。
- ↑ コトバンク. “サンデードライバー(デジタル大辞泉)”. 2014年5月7日閲覧。
- ↑ 前者の例として、「国土交通省のETC車載器普及策、低頻度利用者に焦点当てる」、2006年3月10日、日刊自動車新聞、後者の例として「[ナビゲーター]ゆっくりすぎる運転も危険だ」、毎日新聞 東京夕刊、1998年8月21日、5頁。
- ↑ その他の理由は若者の車離れの項に詳述あり
- ↑ 例えば、現代の必須ツールである携帯電話の新規契約や機種変更にも何らかの身分証明書が必要である。
- ↑ 大都市圏にオフィスや店舗を構えている場合においても、品物の運搬や営業活動や取引相手の送迎などで車を使うケースがある。
- ↑ 当然のことながら、宅配業務や出張修理を行う業種においては自動車での移動が大前提であるため、免許が無ければそれらの業種に就職するのは困難である。
- ↑ この他、勤務地の立地条件から自動車での通勤が大前提であるために、免許が無ければ就職するのは困難となるケースも存在する。
- ↑ たとえば、伝統芸能などの世界における付き人(いわゆる「かばん持ち」)や音楽業界のボーヤやバンドボーイなどは、少なからず師匠や機材の運転手を兼ねる。
- ↑ “芸能人の交通事故多発の原因は? 制作費削減、スター不在影響”. 産経新聞. (2010年5月8日) 2011年2月14日閲覧。
- ↑ 一例:“二宮和也が衝突事故、「嵐」全員運転禁止に”. スポーツニッポン. (2010年6月5日) 2011年2月14日閲覧。
- ↑ ただし、力士の運転免許の取得や更新までは禁止していない。
- ↑ その後の力士の交通事故の事例としては、2000年に当時前頭の闘牙が運転中の乗用車に、赤信号無視で無理に道路を横断しようとした歩行者が衝突し死亡する事故が起きたケースがあり、闘牙は1場所出場停止の処分を受けた。この事故は死亡した歩行者側の責任が極めて大きいものであったが、相撲協会は闘牙が力士の自動車運転禁止の規則を違反を承知して運転しており、死亡事故の当事者となったこと自体を問題視し、出場停止という厳罰を下した。
- ↑ 国土交通省資料PDF - 道路関係4公団民営化推進委員会事務局の要求に応じて国土交通省が2002年10月21日付で示した資料
- ↑ 例として、「ペーパードライバーも腕を磨こう 警視庁が女性に無料運転教室」、朝日新聞 東京朝刊、1995年6月24日、21頁。
関連項目
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