ニセ「左翼」暴力集団

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ニセ「左翼」暴力集団(ニセさよくぼうりょくしゅうだん) 主に新左翼党派(あるいは毛沢東主義党派)を指す、主として日本共産党の中だけで通用する独特の用語。かつて、日本共産党およびコミンテルン系譜の各国の共産党が使用した「トロツキスト」あるいは「トロツキスト暴力集団」とほぼ同義と考えてよい。警察用語では、「極左暴力集団」に相当する。

日本共産党の定義として、「ニセ『左翼』暴力集団とは、「革命」とか「共産主義」など『左翼』的な装いを凝らして、実際の役割は、国民の要求実現のたたかいと政治革新の運動を、暴力によって混乱させ妨害することにある。国民の期待と支持が日本共産党に集まることを恐れる支配勢力が、日本共産党と紛らわしい主張を掲げて暴力行為をおこなう集団を反共宣伝のために利用してきた」(2006年6月14日付『しんぶん赤旗』から要約)とし、「ニセ『左翼』暴力集団」を警察すなわち権力に泳がされている存在(「ニセ『左翼』泳がせ論」)としている。

概要

背景

1934年に発生した、ソ連共産党政治局員だセルゲイ・キーロフの暗殺事件を「トロツキー一派の仕業」とでっち上げ、1936年大粛清を開始したヨシフ・スターリンは、敵対者、あるいは潜在的な反対派とみなした人物に対して「トロツキスト」というレッテルを多用した。ここで言う「トロツキスト」とは「ソ連邦の破壊を目論むトロツキーを頭目とする反革命分子で帝国主義の手先の群れ」あるいは「革命派を装ったファシストの第五列」と定義されたが、実際は粛清された多くの者はトロツキーあるいはトロツキーが指導した「左翼反対派」の組織とは無関係であった。また、トロツキー派が実際に、ソ連国内で要人暗殺やテロを行ったことはなく、その計画すらなかった。むしろ、スターリンは、この「トロツキスト」のレッテルをもって、スペイン内戦時の非スターリニスト左翼活動家(主にアナルコ・サンディカリズムのCNT急進派、非トロツキスト政党POUM)を抹殺し、ソ連国外のトロツキー派活動家たちを潜入させた秘密警察やテロリストによって暗殺していく。1940年には、スターリンは、メキシコに亡命していたトロツキーをスペイン人テロリスト、ラモン・メルカデルを使って暗殺した。メルカデルはメキシコで20年間服役した後、ソ連で1961年にレーニン勲章を受けた。

世界各国の共産党は、自ら以外の共産主義組織および共産主義者、あるいは指導部の指導に従わない党員、党を離れたものに対する蔑称としてスターリンの定義を踏襲して「トロツキスト」を多用してきた。その場合は、「階級敵の側に転じた裏切り者」「左翼を装った挑発者」「スパイ反革命(集団)」を意味していた。

コミンフォルムは、ソ連邦政府およびスターリンの指導を拒否したユーゴスラビアチトーに対して、大々的な「チトー=トロツキスト・キャンペーン」を行った。日本では、同時期の1950年に日本共産党内部で分裂した「所感派」と「国際派」が互いを「トロツキスト」と罵り合っていた。60年安保闘争時は、決してトロツキーの思想の影響下にあったわけではなかった共産主義者同盟および全学連を「極左冒険主義のトロツキスト集団」と非難していた。また、「トロツキズムを乗り越えた新しい体系=反スターリン主義」を標榜する革マル派中核派、さらにレーニン主義すら否定する解放派まで、一括りに「トロツキスト」と規定していた。「トロツキスト」は、口語では(新左翼党派構成員を指して)「トロ」と略されて、下部党員や民主青年同盟員の間で一般的に使用されていた。

用語の登場

1980年代に入り、日本共産党も不破哲三の著作『スターリンと大国主義』(新日本出版社、 1982年)でレフ・トロツキーの「ロシア革命への貢献」を一定認めるようになると、公式には新左翼党派を指す「トロツキスト暴力集団」は「ニセ「左翼」暴力集団」と呼称するようになった。カギカッコには「自称左翼だが、我が党はそうは認めない」「左翼を装った暴力集団」という意味が含まれる。

しかし、表向き「議会革命」を標榜するようになってからの日本共産党は自らを「左翼」ではなく「革新」と自己定義してきたわけで[誰?]、この「ニセ「左翼」暴力集団」という用語には、「左翼」という言葉・概念そのものを否定的かつ自らと無関係なものとして定義付けたい、という狙いも内包されているようで[誰?]、例を挙げると、フランスでの一般的な呼称としての用語に「左翼=Gauche」があり、フランス共産党も「左翼政党」と名乗っている為、政治的用語として使用しない場合でも、『赤旗』の報道では必ずカギカッコをつけている。

現在、日本共産党が「ニセ「左翼」暴力集団」と名指しするのは、現在でも暴力的な活動を肯定・あるいは行っている中核派革マル派革労協各派で、現在は穏健な活動をしている第四インターナショナル統一書記局系各派に対しては、「ニセ『左翼』集団」としている。

類義語

他に「ニセ『左翼』暴力集団」に類する用語としては「反党脱党者(グループ)」(「日中友好協会脱走派」など)や、共産党に批判的な市民運動に対する「反共市民主義」もしくは「反共市民運動」、「中国盲従反党集団」「毛沢東盲従集団」(毛沢東主義派)、「反党修正主義集団」(親ソ連派、構造改革派など)、「金日成盲従集団」(親朝鮮労働党派)などがあるが、これらの用語は現在ではほとんど使用されることはなくなった。

他方、新左翼側も「反革命日共」「スターリニスト日共」「日共スターリン主義」(反スターリン主義党派)、「修正主義・日『共』集団」「宮修(宮本修正主義)」(毛沢東主義党派)などの蔑称を用いている。『共』及び『共産』に括弧を付けるのは、「日本共産党は共産主義党派ではない」という意味を込めてのものである。

関連項目