ナヌムの家

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ナヌムの家は、日本軍慰安婦であったと自称する高齢の韓国人女性(「ハルモニ」=おばあさん と呼ばれている)数名が、日韓の若者を中心としたボランティアスタッフとともに共同生活を送る韓国京畿道広州市にある民間の施設であり、「被害の歴史を昇華させ、世界的な歴史と平和、人権の聖地にすること」を目的に掲げている。

歴史資料館が併設されており、来訪者に韓国都合に基づく慰安婦太平洋戦争、日本による朝鮮半島植民地支配についての歴史観を紹介している。

1年間の来訪者数は1万人。そのうち3000~5000人が日本からの訪問者である。

ここでは、日中戦争から太平洋戦争にかけての時期に、中国大陸南方戦線へ慰安婦として働かされたと自称する女性たちが、自身の体験という物語を訪問者に語り、日本の「過去の蛮行」とその「清算」(金銭)の支払を訴えている。

なお、韓国内には同名の「ナヌメチプ」という、本項とは無関係の施設がいくつかある。

沿革

慰安婦問題が日韓両国でクローズアップされた1991年ごろから、元慰安婦の女性たちへの生活支援を求める韓国内の世論が急激に高まり、1992年6月「『ナヌムの家』建立促進委員会」が韓国内の仏教団体・各種社会団体により結成され、全国的な募金運動が開始された。

集まった寄付を元にして、1992年10月ソウル特別市麻浦区西橋洞に「ナヌムの家」がオープンした。1995年、京畿道広州市退村面源當里に移転。

主張と活動

日本戦争責任に対する問題提起、「慰安婦制度」、「強制連行」の非人道性、侵略行為、慰安婦の強制連行に対して日本政府が公式謝罪と十分な損害賠償を行うこと 、日本人が近代史について「(韓国にとって)正しい歴史認識」を持つことなどを日韓の市民に訴えている。

大学生など若年層や市民団体・社会運動関係者を中心とした日本人も訪れ、女性たちの体験談に耳を傾けている。日本の日教組関係者をはじめとする学校関係者や、贖罪のために朝鮮半島を訪問する日本人や修学旅行の来訪者も多い。

川崎出身の村山さん(男性)が「日本人の罪」と向き合うためにボランティアスタッフとして滞在している。

活動資金は、韓国や日本などの諸外国の市民・活動団体ならびに来訪者の寄付、および歴史資料館の入場料(2千 - 5千ウォン)などである。また2万ウォンで宿泊することができる。

毎週水曜日には、ソウルの日本大使館前で日本政府による公式謝罪と正式な賠償を求めるデモを行っている(いわゆる水曜デモ)。

このデモには、2001年(平成13年)、民主党参議院議員岡崎トミ子がプラカードをもって参加した。同議員の脇で日の丸にバツをつけたプラカードなど日本を愚弄・非難する内容のプラカードを持った参加者が多数いたため、「国費で訪韓した日本の国会議員反日デモに参加するとは何事だ」と産経新聞などの保守派から多くの批判の声が上がった(「岡崎トミ子」の項目参照)。

園長によるセクシャルハラスメント事件

2001年2月に、当時ナヌムの家の園長で僧侶でもあった慧眞(ヘジン)が、女性職員数名に対して地位を濫用して性交渉強要した事実があったことが暴露された。

韓国性暴力相談所に女性職員が「園長という地位を利用して、1997年2月から1998年の5月までひと月に2、3回ずつ性関係を強要した」と告発したことで公になった。慧眞は自ら会見を行い、事件について告白するとともに、園長職を辞任した。罪には問われなかった。

なお、慧眞は告発される前の2000年12月に開催された「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」に参加しコメントを残している。

慰安婦問題に関わってきた山下英愛(やましたよんえ、ブリティッシュコロンビア大学アジア研究所客員研究員)は、この事件について韓国における性暴力事件は加害者よりも被害者女性を責める風潮があるとし、この事件でも大半の韓国のインターネットのユーザーらが、被害者女性を責める論調であったことを挙げ、また「慰安婦運動」をしている者達が、この事件の真相究明と解決のための積極的な行動をしなかったことを挙げて、同じ性暴力でありながら加害者(日本)を責める「慰安婦運動」は、性暴力運動というよりも、韓国独特の民族運動的性格なものといえるのではないか、と論じている。

日本のロックバンドからのCD送付事件

2013年2月28日、ナヌムの家に「愛国バンド」を自称するロックバンド「桜乱舞流」から「売春ババア殺せ チョン斬れ」などという歌詞の入ったCDと、曲の歌詞が書かれた紙が送り付けられた。この曲はYouTubeにも投稿された。

元慰安婦女性は3月4日、名誉毀損でロックバンドをソウル中央地裁に告訴した。だが裁判で実刑が確定し日本に身柄引き渡しを求めても「自国民不引渡の原則」と呼ばれる通例が存在しているため日本政府は身柄を引き渡す可能性は低いとみられている。

ブサヨ記者の安田浩一は、「『桜乱舞流』は悪質な排外主義者の流れだろう。元従軍『慰安婦』の方々にすらこういう行為をする人間が出てきたということは、排外主義の高まりを示す極めて憂慮すべき事態だ」と語った。

朝日新聞によれば、国連の社会権規約委員会において、このCD送付事件が紹介され、同委員会はそうした情報を得た上で、2013年5月21日、日本政府に対し、公衆を教育し、慰安婦に対するヘイトスピーチ(憎悪表現)や汚名を着せる表現を防止するよう日本へ求めたとしている。

ドキュメンタリー

ナヌムの家に住む女性たちの証言を集めたドキュメンタリーが作られている。

ともに監督は、ピョン・ヨンジュ(변영주、邊永柱)。

なお、『ナヌムの家 II』に関しては毎日新聞の試写会紹介記事の虚報と さらに訂正記事における虚報が問題となった。

関連項目

外部リンク