はだしのゲンの登場人物

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当記事では中沢啓治自身による原爆被爆体験を元にした漫画、『はだしのゲン』(Barefoot Gen)の登場人物について解説する。なお映像化などが行われた際のキャストについては、親記事を参照。


注意以降に核心部分が記述されています。

中岡家

中岡元(なかおか げん)
この作品の主人公。通称「ゲン」。登場時は国民学校(小学校)2年生。以後は小学校4年生、中学校1年生、中学卒業後の順に章立てが成されていく。
父・大吉、弟・進次、姉・英子を亡くしながらも、たくましく生きる少年。生きることに精一杯でこれといった「夢」はなかったが、中学生の頃から画家を目指すようになる。
特技は絵画と浪曲(ラジオで覚えたらしい)と読経(友子が誘拐され、仏様に助けをもめるよう同級生に勧められて覚えた)。ケンカも強く、相手の股間への頭突きや手足への噛み付きが必殺技。中学生からは下駄も用いる。
戦時中、そして戦争直後における悲惨な体験から、その元凶として天皇制や軍国主義を嫌っている(現在も嫌っているようだ)。また、アメリカに対しても原爆を落としたことはもとより、進駐軍兵士の横柄かつ傲慢な振る舞いを目撃してきたために嫌悪している。ただし、朝鮮人には(自身も「非国民」として迫害されてきたためか)些か寛容な一面がある。
中岡進次(なかおか しんじ)
ゲンの本当の弟。原爆投下の際、燃えさかる家の下敷きになり、ゲンがガラス屋から貰った模型の軍艦(ガラス屋のエピソードが割愛されたアニメ版ではゲンの手製となっている)を抱いたまま焼死した。ゲンの浪曲に合わせて踊るのが得意。
テレビドラマ版では元とともに謡った浪曲を父・大吉に促され謡いながら焼死するエピソードになっている。
中岡君江 (なかおか きみえ)
ゲンの母親。優しく芯が強い。回想から察するに、元は裕福な家の生まれらしい。
原爆の猛火の中で末娘の友子を産み落とす。未亡人となりゲン達を抱えて辛苦を味わうが、ゲンの大きな心の支えであった。
1949年に、京都旅行の最中にてゲンたちに看取られ、原爆症による胃癌でこの世を去った。
中岡大吉 (なかおか だいきち)
ゲンの父親。下駄の絵付け職人。「踏まれても踏まれても真っ直ぐ伸びるのように強くなれ」とゲンら兄弟に言い聞かせて育てた。
戦時中から「日本は負ける」と戦争に強く反対していた為、特高警察に連行され激しい暴行を受ける。それに留まらず、自分はもとよりゲンら家族までが周囲から様々な迫害を受けたが、決して自分の説を曲げる事は無かった。原爆投下の際、燃えさかる家の下敷きになり、焼死する。
中岡英子 (なかおか えいこ)
ゲンの姉。国民学校5年生。体が病弱で、学校の集団疎開には行けなかった。鮫島竜吉に英子が財布を盗んだと先生に嘘の告げ口をされた為に、先生に犯人扱いされ、裸にまでされた事がある。原爆投下の際、燃えさかる家の下敷きになり、焼死した。
なお漫画版と実写映画版・テレビドラマ版では死に際して差異(ゲンが家に帰った時には既に亡くなっていた)があるが、作者の中沢の姉は原爆投下で柱に押し潰され即死状態だった。また裸のシーンは、実写映画版では上半身ヌード、テレビドラマ版では下着姿になっている。
中岡浩二(なかおか こうじ)
ゲンの長兄。登場時17歳。病理学の研究家を志していた。
戦時中は家族が「非国民」として迫害されるのを撥ね返す為、海軍予科練に志願。軍隊の内部から、戦争の悲惨さを実感する。
戦後は中岡家の家計のために工場に就職する。後に高い給金に惹かれて博多の炭鉱に出稼ぎに行く。後半は広島市近郊の工場に再就職し、広子と婚約する。それから、ゲンの勧めもあって弟達の中学卒業を待たずして結婚する。
アニメには登場しない。
中岡昭(なかおか あきら)
ゲンの次兄。登場時は国民学校3年生。原爆投下時は、学校の集団疎開により広島県山県郡の山間部にいた。
戦後は、中岡家の暮らしを支えるために家庭菜園をはじめとする食糧調達に勤しんでいた。浩二が博多に出稼ぎに行った後は、自分が父親・長兄の替りを務めねばならないと思ってか、いささかヒステリックな言動が目立つようになった。中学2年生のときに繊維問屋の商人を目指すため、大阪に行く。
浩二と同様アニメには登場しない。また、テレビドラマ版にも登場しない。
中岡友子(なかおか ともこ)
ゲンの妹。原爆投下後間もなくして誕生。「友達がたくさんできるように」との願いをこめてゲンが名づけた。しかし栄養失調のため1年後(テレビドラマ版では1945年8月)に死去(単行本では1947年8月6日と誤記されているのもある)。

隆太軍団

近藤隆太(こんどう りゅうた)
ゲンの弟・進次と瓜二つの戦争孤児。登場時は国民学校1年生。原爆投下前は広島市水主町(かこまち、現:広島市中区加古町)に住んでいた。ゲンの弟と勘違いされがちだが、血もつながってない全くの他人である。
両親と3人暮らしであったが原爆により父は木の枝に体を貫かれ即死、母は家に挟まれ隆太を逃がした後に焼死し、天涯孤独の身に。その後、同じ境遇のムスビやドングリ達と出会い孤児グループのリーダー格となる。
ゲンを慕い、弟分としてふるまう。一時期は中岡家で実子同然に暮らしていた。しかし、ゲンを半殺しにしたヤクザを拾ってきた旧日本軍拳銃で射殺してゲン達の前から姿を消し、ヤクザの政に拾われて育てられた。
二年後、ヤクザの下働きを続けてきた為に、ゲンとの再会時は不良っぽくなっていた。再びゲンと袂を分かとうとしたが、結局は政に発砲して(政は負傷しただけで死ななかった)、ヤクザの世界と縁を切った。以後は家を手作りし、放浪していた元新聞記者・平山松吉を養父に、勝子、ムスビと四人で生活する。
病いに倒れた君江の入院費を調達すべく賭場荒らしをやったが、報復から逃れる為に警察に自首して感化院(少年院)に入所した。その後で感化院をノロと一緒に脱獄後、ノロの親戚への報復を手伝い、奪い返した財産を山分けされる。養父・平山松吉の最期を看取った後は、ノロから山分けされた財産を活用し、彼の小説を自費出版した。
最後は麻薬漬けにされて死んだムスビの復讐の為、バー「マドンナ」のマスターとヤクザ2人を射殺し、勝子と共に東京へ逃れた。
もとより学校に通える余裕はなかったが、平山から読み書きを教わる機会も自分から袖にしたため、新聞が読めなくて困ったことがあった。
プロ野球チーム「広島カープ」の熱狂的なファン。作中、チームは資金難により弱小で、巨人阪神などの球団に強い対抗心を抱いていた。「人のものはワシのもの、ワシのものはワシのもの」という自己中心的なセリフをスリをやった後などに発する。
アニメ版ではヤクザとの関わりは無く、ゲンと同じ学校にも通っている。
勝子(かつこ)
一歳下の隆太と共にいた原爆孤児の少女。顔の左半分と両手を火傷していて、そのため心無い人々に「オバケ」扱いされる。隆太とは恋仲で、共に物語終盤まで生き残った。
勤勉な性格で、養父・松吉から積極的に読み書きを教わっていた。後に夏江と共に洋裁店を開く望みを持つ。
1950年頃からスカート姿として描かれることから、当時の日本経済の立ち直りが伺える。
アニメ版では隆太ではなく政(アニメオリジナルキャラ)に付き慕っており、また頭にほっかむりをしていないなどキャラデザインも異なる。
ムスビ(むすび)
本名は勝二。隆太と共にいた原爆孤児の一人で警察の追っ手から逃れた少年。原爆投下前は両親と沢山の兄弟たちと共に暮らしていたが、彼以外の家族は原爆投下時に死亡した。
1953年、夜遊びがキッカケで、ヤクザに麻薬中毒にされてしまい、ゲンたちと貯めた貯金60万円を使い果たしてしまう。薬物依存症に耐えきれず、うっかりゲンたちの前でヒロポンを使おうとしてバレてしまう。「これはただのビタミン剤じゃ」といって誤魔化そうとするが通用せず、居たたまれなくなって家を飛び出す。ヤクザ(バーのマスター)宅に麻薬を盗みにいったがヤクザに見つかってしまい、内臓が破裂するほどの暴行を受けて川辺に投げ捨てられる。虫の息になりながらも隆太達のところに帰り着き、貯金のことなどを打ち明けるが、「金はまた貯めればいい」と自分を許してくれた皆に感激し、「ありがとう」と言いながら息を引き取った。
ドングリ(どんぐり)
隆太やムスビと共にいた原爆孤児の一人で、ムスビと共に警察の追っ手から逃れた少年。原爆投下前は紙屋町に住んでいた。後に隆太とムスビと共にヤクザの鉄砲玉の仕事をしていたが、仕事中に敵対組織のヤクザに撃たれて死亡。
ラッキョウ(らっきょう)
隆太やムスビと共にいた原爆孤児の一人。ある農家から芋を盗んで逃げる途中に追ってきた百姓に頭を殴打され、死ぬ間際に「梅干が食べたいよ」と言ったのち死亡。
カッチン(かっちん)
隆太やムスビと共にいた原爆孤児の一人で、ムスビと共に警察の追っ手から逃れた少年。侵入した進駐軍駐屯地から逃走中に銃撃を受け、出血多量で死亡。
タヌキ(たぬき)
隆太やムスビと共にいた原爆孤児の一人で、ムスビと共に警察の追っ手から逃れた少年。ゲンに隆太がヤクザの二人組を殺した事を伝えたが、その後の行方は不明。髪は伸びていた。

中岡家のご近所さん

朴(ぼく)
中岡家の隣に住んでいた朝鮮人の男性。徴用のため、朝鮮から広島に移り住んでいる。妻と子供がいる(1巻で「妻や子供に会いたい」と語っている)。朝鮮人である事で差別されていたが、隣の中岡家とは親しい付き合いがあり、大吉やゲンら兄弟が親切な態度で接してくれたことに恩を感じている。非国民と迫害されても戦争に反対している大吉を尊敬していた。近所では彼だけが中岡家の味方だった。大吉が警察から帰ってきた時に米を分けてくれた(テレビドラマ版ではサツマイモ)。原爆投下の際、夫と子供が目の前で焼け死ぬ姿を見てパニックに陥っていた君江に逃げるように説得し、ゲンと一緒に嫌がる君江を無理矢理担ぎ上げて避難させる。後に彼は火傷で重傷になっていた父親を見つけ救護所で治療を要求するが、診察していた医師(軍医)から「朝鮮人か」と差別され、傷の手当てをしてもらえず死亡してしまった。その事が原因で日本人を憎むようになるが、ゲンが一緒に父親の棺桶を作った事で、ゲンら中岡家への感情は変わらなかったようである。戦後は闇市で財を成し『朴商店』という店を経営し裕福になり、以後度々ゲン達を助ける。
ドラマでは「パク」と朝鮮語の発音で呼ばれていたが、当時の表現としては不自然である。また、「永甫」という下の名前が与えられた。
アニメ版では「近所の人のいいお兄さん」といった感じで登場する端役で、原作での彼の背負う苦悩は一切描かれなかった。
鮫島伝次郎(さめじま でんじろう)
原爆投下前は町内会長を務めていた。猛烈な戦争支持者で、戦争に反対する中岡家をいじめていた。大吉が警察に逮捕されたのが伝次郎の陰謀である事を知ったゲンと進次は彼の息子の指を噛み千切った。さらに君江は子どもを守る一心で包丁で伝次郎を殺そうとして、朴が止めた。この事から鮫島や近所の人は中岡家を非国民扱いし、大切に育てた麦を荒らすなど嫌がらせをエスカレートさせる。原爆投下の際に竜吉と共に家の下敷きとなったが、ゲンに助けられた。その後、ゲンから大吉・英子・進次の救助への協力を頼まれたが、そのまま逃亡。戦後は、盗みを働きつつ、ヤクザと結託したり、闇市で商売をして資産家になり、商店会会長に就任。その後は戦争反対派(戦前から戦争に反対していた事にしている)に鞍替えし、市会議員を経て県会議員となる。なお第1巻から登場し、被爆し戦後も登場した人物で、死亡していない数少ないキャラである(他にはゲンと朴のみ)。この作品においての悪役的な描写をされている象徴的な人物。
鮫島竜吉(さめじま りゅうきち)
鮫島伝次郎の息子。国民学校6年生。父同様にゲンや英子を非国民扱いし、いじめていたり、ゲンに指を噛み千切られた。原爆投下後は父同様に助かっていたが、その後どうなったかは不明。テレビドラマ版では名前を「たつきち」と読む。
鮫島伝次郎の妻(さめじまでんじろうのつま)
原爆投下前、「中岡さんをいじめない方がいい」「中岡さんが言っていることが正しいような気もする」と伝次郎をいさめようとした。原爆投下後、伝次郎と竜吉が逃げる際には姿が見えなかったため、死亡したと思われる。
堀川(ほりかわ)
原爆投下前、ゲンの近所に住んでいたガラス屋。戦争で片足を失い、愛息も予科練に志願して戦死、妻も病気がち、おまけに借金に苦しんでいた。自分を助けようと他人の家のガラスを割っていたゲンに感激し、予科練に志願して戦死した息子の物だった玩具の軍艦をゲンにプレゼントする。原爆投下後の消息は不明である。実写映画版では原爆投下後も無傷で生存し、ゲンと一緒に死亡した妻を荼毘に付す。

江波地区の人々

吉田政二(よしだ せいじ)
県美展で何度も入賞する程の絵の達人。原爆によって全身に火傷を負ったせいで、家族はもとより街の人からも「オバケ」と罵られ、「ピカの毒がうつる」として介護も受けられず放置されていた。1日3円(テレビドラマ版では1週間100円、アニメ版では一日10円)で身の回りの世話の仕事を始めたゲンと隆太の叱咤を受けて奮起するも病気が悪化し、未完成の絵をゲンに託して肺病で亡くなる(アニメ版とテレビドラマ版では生存)。
吉田英造(よしだ えいぞう)
吉田政二の兄。路上で仕事を求めていたゲンに政二の世話を託す。政二を避けながらも、一方で身を案ずる場面もあるなど、(実兄だからか)家族の中では唯一政二の事を気にかけている。なおテレビドラマ版では酒問屋の主である、
吉田ハナ(よしだ はな)
吉田英造の妻。「ピカの毒がうつる」と言って政二を忌み嫌っている。テレビドラマ版では花子という名前で登場している。
吉田秋子・冬子(よしだ あきこ・ふゆこ)
英造・ハナ夫妻の娘で政二の姪。かつては政二に絵を教わるなど仲が良かったが、政二の被爆後は一転して忌み嫌うようになる。政二が死んだ時には母と共に喜んでいた。最後にはゲンに家の塀に「秋子のあほんだら、冬子のきちがい」と落書きをされる。
林キヨ(はやし きよ)
君江の親友。君江とは小学校からの友人。ピカで家が無くなった君江たちに家を貸す、優しい人である。夫・正造は沖縄で戦死。テレビドラマ版では清子(きよこ)という名前で登場している。
林辰夫(はやし たつお)
キヨの息子。竹子の兄で、昭とは同学年。ゲンたちを嫌い、祖母から許しをもらって苛めていたが、最後にはゲンや隆太によって馬糞を食らわされる仕返しをされた。
林竹子(はやし たけこ)
キヨの娘。辰夫の妹。兄と同様にゲンたちを苛めていたが、兄と同様にゲンや隆太に仕返しされた。
林キヨの姑(はやしきよのしゅうとめ)
冷たい婆さんで、ゲンを叩くなどして苛めていた。ゲンが似島で貰ってきた米を、君江が林家から盗んだものと主張し、君江を派出所につきだす。君江が米を盗んでいない事がわかっても、謝るどころか開き直ってゲン達のせいにする。浩二が帰ってきた時は、沖縄で戦死した息子(正造)を思い出してムカムカすると言って君江たちを追い出したりと僻み根性も一級品。後に辰夫や竹子と共にゲンや隆太によって肥溜め落としの仕返しをされた。テレビドラマ版ではセツと名前が与えられている。

元川小学校の関係者と家族たち

雨森頑吉(あまもり がんきち)
ゲンの同級生。通学途中にお腹が痛くなり、中岡家の前で野グソをしようとしたところをゲンに注意され、「クソ森」と呼ばれるようになった。野村道子をカツラのことでからかった事からゲンと仲が悪かったが、友子の一件以降は悪友に。中学卒業後は高校に進学。ボンクラ(不良)の兄がいる。
野村道子(のむら みちこ)
ゲンの同級生。原爆症のため髪が全部抜け落ち、亡き母親の手製のカツラを着用している。雨森らにバレてからかわれる。尚、声優の野村道子とは一切関係ない。
野村澄子(のむら すみこ)
妹の道子と市営住宅に住んでいる。両親や親類が全員原爆で死亡し姉妹のみ生き残り、物々交換で生活していた。通りすがりの米兵に強姦された事をきっかけに、姉妹の生活とアメリカへの復讐のためにパンパンになり生計を立てている。

波川中学校の関係者と家族たち

太田先生(おおた)
ゲンの中学の時の担任で、数学担当。他の教師のように体罰を加えず、熱心な教え方から生徒たちに慕われていたが、戦争反対派で警察予備隊(現:陸上自衛隊)の設立に反対を唱えていた為にレッドパージで学校を去る事に。後に私塾を開く。
相原勝男(あいはら かつお)
ゲンの中学の同級生。野球のピッチングのコントロールがよく、球威も抜群。その球威を使ってヤクザを懲らしめたこともあるが、そのヤクザに後頭部を殴られて医者に「今夜がヤマ」と言われる程の大怪我を負った。すべては原爆症の発症で医者から余命の宣告を受け生に対する虚無感を抱いたためだが、ゲンや隆太に「お前はプロ野球の大投手になれる」と励まされ、生きる勇気を持つ。
相原トミ(あいはら とみ)
相原の義母。相原とは焼け跡で出会い、相原に「死んだ自分の母親に似てるから一緒にいたい」と言われて生きる勇気を持ち、自身も同年代の息子を失った事もあって一緒に暮らし始めた。しかし相原が自ら死ぬ事を願うようになると、彼を説得してはいたものの、最後は「あの子は死なせた方がいいのよ」と諦観した物言いでゲンの怒りを買う。
横道徹(よこみち とおる)
ゲンの中学の同級生。学校で問題を起こして少年院に行かされたため、ゲンとは面識が薄い。中学3年生になって釈放され、校長や他の教師たちに少年院に入れられたのを怨み、卒業式終了後、校長や他の教師たちを呼び出して仲間と共に集団でリンチする。
天皇制や戦争を嫌悪するという点ではゲンと相通じるものがあり、卒業式の時点では、それらを批判するゲンに同調した。しかし、どんな理由にせよ集団でのリンチ行為を嫌うゲンにパンチ一発でやられて逃げた。ちなみに横道の怪我は鼻骨粉砕らしい。
波川中学校の校長
波川中学校の校長で、名前は不明。共産主義に偏見を寄せており、レッドパージの対象とされた太田先生を共産主義者と決め付ける。
それから、卒業式終了後に部下たちともども横道徹にリンチされ、結果的にはゲンに助けられた。その際にゲンに礼を述べるが、逆にゲンから「憎しみを買うような教育を行うからこういう事態になった」と言われ、返す言葉を失くした。

ヤクザ

大場・三次(おおば・みつぎ)
ヤクザのコンビ。かつては島田組の所属だったが終戦当時は無所属だった。ゲンや隆太を騙し、進駐軍駐屯地から盗ませた粉ミルクを闇市で売りさばく。真相を知ったゲンに暴行したあと、怒りにかられた隆太に射殺される。
政・秀(まさ・ひで)
暴力団岡内組幹部。大場や三次を殺し逃走していた隆太たちを匿い、ヤクザの一員として働かせる。後に隆太に撃たれ、負傷する。それに懲りて隆太たちのことは諦めたようで姿を現さなくなった。
打山組の親分
暴力団打山組の親分(一介の幹部なのか、組全体の責任者なのかは明言されていない)。隆太が荒らしに入った賭場を主催していた。

ゲンの人生に関わった人々

ゲンを校門前で呼び止めた女性(げんをこうもんまえでよびとめたじょせい)
中年女性で名前は不明(2007年8月放映のTVドラマ版では大野実の母と名乗っている)。1945年8月6日8時10分過ぎ、校門に入ろうとしたゲンを呼び止め、その日の授業はどこで行なうかを聞く。この時ゲンは塀を背にした為、直後に投下された原爆の閃光や爆風の直撃を浴びずに済むことになり、逆にこの女性は爆風の直撃を受けて即死した。この女性がゲンを呼び止めなければゲンは死亡していた可能性が高く、ある意味ゲンの命の恩人である。作者の中沢の原爆投下時の実体験に基づくエピソードであり、中沢は「この時呼び止められたのが生死を分けた」と述べている。アニメ版では若い女性(ゲンと同じ小学校の生徒)になっている。
鉄男・さち子(てつお・さちこ)
ゲンと隆太が、疎開中の昭を迎えに行く道中で出会った兄妹。鉄男がさち子を殴って人々から食料をせしめる。初めはゲン達を追い払うが、後に代役を務めてくれた事で感謝する。
大原夏江(おおはら なつえ)
ゲンが似島へ米を貰いにいった際に出会った踊り子の少女。姉の英子に似ており、ゲンらに慕われる。顔全体の火傷で虐められて何度も死のうとするが、ゲンに止められ叱咤され、勝子らと洋裁店を開く決意をする。しかし、盲腸で入院後に再び死を考えるようになり、広島市郊外の五日市町(現:広島市佐伯区)に住む陶芸家に自分の骨壺を作りたいと訪れた事もあった。ゲンの叱咤で立ち直ったのも束の間、直腸ガンでこの世を去るが、医者は胃潰瘍で亡くなったという。なお、彼女も勝子同様、1950年にはスカート姿となる。アニメでは失禁をしているシーンがある。
民吉(たみきち)
雨森の家のご近所さん。原爆投下時の大怪我で左足を失っている。原爆症で死期にある娘の春の「死ぬ前に、生き別れた娘の泰子(たいこ)に会いたい」という願いをかなえる為、赤ん坊を貸してくれるよう奔走するがことごとく断られる。そこで、ゲンの家から友子を拉致し、泰子が生きていたと嘘をついて春を元気づけようとする。初めは鉄達にゲンを追い払ってもらっていたが、ゲンの強い訴えで自分の身勝手さを恥じて友子を引き渡すことにした。
春(はる)
民吉の娘。原爆投下当時、夫の達二(たつじ)と民吉、2週間前に生まれた娘の泰子と暮らしていた。原爆投下で達二は死亡。泰子を連れて民吉と共に逃げる途中、火にまかれて泰子を見失う。泰子に会いたいという願いを持ったまま原爆症で死の床に倒れ、民吉が連れてきた友子を泰子と信じ、子守唄を歌いながらこの世を去る。
鉄・銀太・三吉・幸吉(てつ・ぎんた・さんきち・こうきち)
いずれも雨森の家のご近所さん。みんな、原爆で家族が死亡し、原爆症の死の恐怖から酒と喧嘩に明け暮れる日々を過ごしていたが、民吉が拉致してきた友子によって生きる希望を持ち始める。初めは雨森ともども友子を取り戻すゲンを因縁を付けてまで追い払っていたが、ゲンの強い訴えで改心して友子を引き渡すことにした。最後はゲンと共に友子を弔う。
鉄夫・三郎(てつお・さぶろう)
米兵に骸骨を売り歩いていた兄弟。原爆投下前は大豪邸に住んでいたが、原爆で家と両親を失い、弟の三郎も失明に至った。骸骨を売るのは、アメリカへの復讐と三郎の眼の手術費を稼ぐためであった。
廣川千恵(ひろかわ ちえ)
男の子にいじめられていた所をゲンに助けられる。
廣川清吉(ひろかわ せいきち)
千恵の父。ABCCにて調査用死体の収集の仕事をしている。献体を募る為にあちこちの家を廻るたびに「死体をあさるハゲタカじゃ」と罵られ、そのため娘の千恵がいじめられている。娘のために、仕方なく汚れた仕事をしており、ゲンも彼を責めようとはしなかった。ゲンに、ABCCと医者との癒着関係を話す。(献体をABCCに紹介したらABCCからアメリカの新薬を無料進呈され、その新薬を患者に高く売りつける)
倉田(くらた)
倒れた君江を診察した医師。ABCCでの診察を薦める。廣川清吉から真相を聞いたゲンに糞尿責めの仕返しをされる。その後も鮫島と一緒にヤクザのサイコロ賭博をするなど悪事を続けている模様。
天野星雅(あまの せいが)
ゲンに絵について教えた絵描き。ゲンが絵描きを目指すきっかけとなった。
天野達郎(あまの たつろう)
星雅の孫。生活苦により絵の描けない祖父の為にゲンの持っていた骨壷を金品と勘違いして盗むが、星雅に諭されて以降はゲンを兄のように慕う。
黒崎(くろさき)
ゲンがアルバイトをしていた看板屋の正社員。国民学校6年生のときに原爆で家族親類を失い、戦災孤児となる。その後、広島郊外の島にある寺の住職に拾われたが、住職による強制労働や嫌がらせ(牛の糞まみれにされるなど)を受けて、ひねくれた性格になってしまった。後に島を脱出した後、看板に書かれた「人工の虹」を見て看板屋になり、社長の中尾重蔵の暴力を受けながら働く。ゲンを僻み、友人を使って襲わせた事もあったが失敗に終わる。
大月徹(おおつき とおる)
ゲンがアルバイトをしていた看板屋につとめる広島一の絵描き(だが中尾重蔵曰く、天野星雅のほうがよっぽと上手いらしい)。性格は悪い。ゲンに投げ飛ばされて利き腕の右腕の骨を折ってしまう。
鉄・重(てつ・しげ)
黒崎の友人。黒崎に唆されてゲンの腕を切断しようとしたが、逆にゲンにコテンパンにされる。
中尾光子(なかお みつこ)
女子学生。ゲンが中学を卒業後、広島市内の左官町電停(現・本川町電停)で出会い一目惚れし、後に交際を始める。原爆投下時に母と弟の悟を見殺しにしてしまったことを後悔していたが、ゲンに励まされ立ち直る。また、ゲンと同じくらいに気が強く、ヤクザをもこらしめた。しかし、交際から数週間後、白血病で死去。
中尾重蔵(なかお じゅうぞう)
光子の父。ゲンがアルバイトをしている看板屋の社長。元大日本帝国陸軍軍曹。隻眼(片目に丹下左膳のような刀創がある)。当初熱心な戦争支持者でゲンとは犬猿の仲だったが、娘の死を境に核兵器を憎むようになり、平和主義者へと転ずる。後にゲンとも和解し、ゲンが東京へ旅立つ際、大金を渡してゲンを見送った。また、ゲンと和解するときから、サングラスを外した。

隆太の人生の途上にいた者たち

平山松吉(ひらやま まつきち)
新聞記者。原爆投下前は広島市の十日市に住んでいた。原爆で一家7人全員(両親、妻、3男1女)を失い、放射線障害の影響で疲れやすく、まともに働く事が出来ない。その為に親戚からも嫌われ行く当てもなく呆然としていた所をゲンたちに拾われ、以降ゲンたちと行動を共にする、孤児の施設への強制収容(孤児狩り)から守るため隆太たち孤児の父親代わりになる。一時は隆太たちとの交流で元気を取り戻したが原爆症が悪化、自らの被爆体験に基づく小説『夏のおわり』を遺し、この世を去る。ゲンや隆太からは「おっさん」(勝子とムスビからはお父ちゃん)と呼ばれ慕われていた。過去に自分の書いた小説で一等を取り、賞品のメダルを獲得した事がある。なお、遺作『夏のおわり』はゲンや隆太の奔走により無事出版された。
ノロ(のろ)
本名は中里年男(なかさと としお)。隆太と一緒に感化院から脱獄した。原爆投下前は油屋の息子だった。原爆で両親が死亡し、妹と共に生き残る。その後、親戚の叔父を頼るが嫌がらせをされ、妹は虐待の末に死亡。盗みに入ろうとして捕まり、警察に突き出されて感化院に収監される。脱獄後、叔父を殺そうとして、叔父の飼い犬タロウに噛まれて重傷を負ってしまう。川岸で倒れているところをゲンと隆太に助けられ、協力して叔父を懲らしめた。
ノロの叔父(のろのおじ)
ノロの財産を奪い取ったり、虐待をしていた。戦争で全てを犠牲にして戦ったが、敗戦を機に何もかも信じられなくなり、鬱憤晴らしにノロにつらく当たっていた。理由を聞いたゲンや隆太は叔父を許し、ゲンに説得されたノロと和解するようになり、奪い取った財産も返した。
バー「マドンナ」のマスター(ばー「まどんな」のますたー)
麻薬の売人で、ムスビに「ビタミン剤」と騙して麻薬中毒にし、金を奪っていった。お金が無くなっても麻薬を欲しがるムスビを暴行して川に捨て、ムスビは死亡。隆太にその復讐として射殺される。
大場ミチ(おおば みち)
バー「マドンナ」の女給で、マスターの愛人。マスターと共にムスビを麻薬中毒にした。ムスビが死亡した後、隆太に拳銃で手を撃たれ重傷を負うが隙を見て逃げ出した。

その他の人々

広子(ひろこ)
浩二の婚約者。浩二らの家が壊される前に、アパートに浩二と共に移り住んだ。後に浩二と結婚する。
熊井大二郎少尉(くまい だいじろう しょうい)
浩二が予科練の赴任途中に出会った、出撃を5日後に控えた特攻隊員。学徒出陣で海軍に来たため、母校にやり残した研究があった。また母親と婚約者への未練が残っている。呑んだくれて、生に対する思いを浩二に託す。その後の消息は描かれていないため不明。
花田照吉(はなだ てるきち)
浩二の予科練での同期生。訓練で連日失敗を繰り返し、教官には殴られ他の同期にはバカにされる日々を送っていた。唯一浩二が励ましてくれた。あまりの辛さに脱走を図るが失敗し、トイレの個室で首吊り自殺する。その死は表向きには訓練中の事故として処理されたため、照吉の両親は「名誉の死」として喜んだ。
大河原兵曹(おおがわらへいそう)
浩二の予科練の教官。花田の失敗で浩二をはじめ、他の予科練生にも連帯責任として棒で尻たたきの罰を行うなどの鬼指導を行った。花田の自殺後も何事も無かったかのような涼しい顔をしていた。
マイク・ヒロタ(まいく ひろた)
進駐軍将校。日本人のような顔つきだが実は日系アメリカ人の二世である。『夏のおわり』を無償で配っていたゲンたちを監禁し、洗脳しようと企むが、ゲンたちが拷問に備えた特訓(洗面器で尻を叩き、その痛みをこらえる特訓)をしているところを見て、恐怖のあまり狂ったと勘違いして釈放する。
倉持勇造(くらもち ゆうぞう)
ゲンと隆太が道を歩いていたところ、倉持の乗っていた車が泥を跳ね、泥まみれになったゲンと隆太をバカにした。その後、レストランで再び出くわす。いわゆる成金男。歯は全部純金の金歯、上着はロンドン製、靴はイタリア製の物を身につけており、外車に乗っている。かつては元日本軍の兵士で、満州にいたらしい。終戦後に鉄くずを売って大金持ちになる。しかし性格は残忍で戦争を賛辞している。朝鮮戦争特需で大儲けしたという倉持の自慢話に怒ったゲンは、倉持にソースを振りかけ「吸血鬼」と罵りケンカを売る。ケンカは倉持が勝ったが、ゲンの金玉突きを食らって逃走、その後ゲンと隆太は倉持の愛車を石でボコボコにした。

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