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(あめ)とは、から水滴が落ちてくる天候のこと。また、その水滴。

雨の成因

雨は、気象学的には、地球上でが循環する過程(水循環)で起こる降水現象の一つと位置づけられる。

雨は、上空の気温(氷晶になるかならないか)により以下の二つに大別できる。すべての雨は空気中の水蒸気を起源とする(気体である)が、それ以降、液体固体の状態を経て降る雨が冷たい雨、液体の状態だけを経て降る雨が温かい雨である。

ただし、これらとは異なる機構で発生する降水現象もある。冷たい雨と同じようなプロセスを経るもので、はじめから気温0℃を大きく下回る空気の中に入っていて、水蒸気が昇華して氷晶となるところから始まるものもである。これは具体的には細氷を指すが、雨とは異なるのでここでは詳説しない。

冷たい雨

水蒸気が凝結してできた水滴が、気温0℃を大きく下回る空気の中に(上昇して)入って凍り、氷晶となって成長し、気温0℃を大きく上回る空気の中に(落下して)入って融け、降る雨。解けずに降れば雪など(その他に霰、雹が含まれる)になる。

「気温0℃を大きく下回る空気」で凍るとしているが、実際の空気中では、気温が0℃を少し下回ったくらいでは凍結が始まらないことが多いためである。温度0℃以下で凍らない状態を過冷却と言う。

雲の中で一部の水滴が凍って氷晶になり始めると、まだ凍っていない過冷却の水滴は蒸発して氷晶の表面に昇華するため、急速に成長する。

氷晶が落下する途中で、気温が摂氏0℃より高い領域に達すると氷晶は融け始め、完全に融けると液体となり、雨粒となる。融けきれない場合はとなる。地上の気温が摂氏2℃以上の場合、上空1500mで-6℃以上、または上空-5500mで-30℃以上で冷たい雨(または)である。

「気温0℃を大きく上回る空気」で融けるとしているが、これは、氷晶が0℃以上になっても、氷晶が昇華してその際に奪われる昇華熱により氷晶の温度が低下するため、0℃を数℃上回らないと完全に融けない。また、湿度が高いほどこのときの温度は低くなる。

日本の降雨の8割はこの「冷たい雨」の機構で起こるといわれている。

暖かい雨

水蒸気が凝結してできた水滴が、水滴のまま成長し、そのまま降る雨。こちらは気温0℃以上の場合の現象であるが、0℃以下であっても水滴が過冷却のまま凍結しない場合もある。

湿潤な空気が上昇すると、断熱膨張により冷却が起こり、凝結高度に達すると過飽和の状態になる。この際、大気中のエアロゾルを凝結核として雲粒が成長する。この成長はゆっくりしたものであるが、雲粒同士の併合過程により、一部の雲粒が急速に成長して重力に耐えきれなくなるほど大きくなる。この併合過程は、海洋性の積雲の場合に急速に成長する条件がそろっている。

雨粒

雨粒の大きさ

温帯地方の雨の水滴の大きさは、通常0.1~3mm程度である。0.1mm以下の雨粒は雲の中の上昇気流によって落ちなかったり、落下中に蒸発してしまい、消えてしまうことがある。3mm程度以上の大きさの雨粒は途中で分解してしまうことが多い。そのため、熱帯地方の雨の水滴の大きさは、小さい雨が少なく温帯よりも大きいものの、3mmを大きく超えるような雨は降らない。

雨粒の形状

雨粒が空気中を落下するときの形は、雨粒が小さい場合は球の形をしているといわれている。雨粒が大きいときは、落下するときに空気に触れる下の面がやや平らになり、下が平らになった球の形をするとされている(参考)。

雨粒の落下速度は、雨粒の大きさによって変わる。小さい粒は空気抵抗によって遅くなるが、大きな粒はおおよそ毎秒9m程度である。また、落下時は、空気の抵抗によって雨粒は平らなまんじゅうの形になる。涙滴と思われていたのは、木の葉の先から露が落ちるときや、窓ガラスを伝う水滴が涙形をしているためである。1951年北海道大学孫野長治博士が空中を落下する雨粒の写真撮影に成功し、「まんじゅう形」を世界で初めて確認した。

雨粒の大きさと粒の数の関係は、1947年に、マーシャルとパルマーが1ページの論文の中で、「マーシャル・パルマーの粒径分布」として表わせる、ということが発表された。実際には、全ての場合に適用できるわけではないが、おおよそ指数関数的な分布になっている。

日本の気象通報の区分

日本式の気象通報においては、水滴の大きさが直径0.5mm以上の場合を「雨」と呼ぶ。これよりも小さい場合は「霧雨」と呼び、天気記号も異なる。その他、時間雨量に換算して15mm以上の強度で雨が降る場合は「雨強し」、一過性の雨の場合は「にわか雨」に分類され、それぞれ天気記号が異なる。

雨の強さと雨量

詳細は 降水量 を参照

雨の強さは、単位面積に降った雨がたまった深さで表わす。通常は時間雨量(1時間あたりにたまった深さ)をmm単位で表記するが、短時間の降雨の強さを表すために10分間雨量などを用いることもある。

気象庁では、時間雨量によって次のように分類している。

  • 弱い雨 - 3mm未満
  • やや強い雨 - 10mm以上20mm未満
  • 強い雨 - 20mm以上30mm未満
  • 激しい雨 - 30mm以上50mm未満
  • 非常に激しい雨 - 50mm以上80mm未満
  • 猛烈な雨 - 80mm以上
  • 小雨 - 数時間続いても1mm未満(分類上は弱い雨に含まれる)
  • 大雨 - 大雨注意報の基準雨量以上の雨(地域によって基準値は異なる)

なお、降水が雨のみの場合は雨量といい、雪や霰などの雨以外による降水も含めた場合は降水量という。

雨水の化学成分

雨水は大部分が水であるが、微量の有機物無機物、特に重金属類を含んでいる。これらは雲が発生する際、あるいは雨となって地上に落ちてくる際に、周囲の空気や土壌から集めてくる。雨自体に臭いはないが、オゾン、湿度が上昇することによって粘土から出されるペトリコールや、土壌中の細菌が出すゲオスミンが雨が降るときの臭いの元だと言われている。

通常でも雨水は大気中の二酸化炭素を吸収するため、pH(水素イオン指数)は5.6とやや酸性を示す。雨が亜硫酸ガスなどを大気中から取り込み、強い酸性を示すものもある。日本では目安として、 pHが5.6以下のものを酸性雨と呼ぶ。

雨の観測

ファイル:Hurricane Rita Lake Charles radar.gif
ハリケーン・リタのレーダー画像。赤いところほど雨が強い

レーダーによる観測

降雨状況、あるいは降雨強度を知ることは、気象予報災害対策に重要である。そこで、レーダーを使い、レーダーからの反射状況を見て、降雨状況を観測することが行なわれている。気象観測用のレーダーは特に気象レーダーと呼ばれることが多い。

レーダーを使う場合、広い地域の降雨状況を観測することができる。個々の雨粒は、その直径の6乗に比例して電波を反射する。このことを利用して、降雨状況を調べている。強い雨には大きな雨粒が多いので、反射が強いと言うことは、大きな雨粒が多い、と言うことができる。但し、反射強度と降雨強度は比例するわけではなく、レーダーの観測状況から正確に降雨強度を求められないという問題がある。

一方雲の粒は雨粒に比べるとかなり小さい。そのため、直径の6乗に比例する反射強度にはほとんど影響しない。雲の状況を見るときには、雨の状況を見るときよりも波長の短い電波を用いる必要がある。

さらに、雨粒以外のものによって、雨と誤解される状況が存在する。たとえば、鳥、昆虫などの小動物や空気の乱れなどがあげられる。このような、雨でない観測結果を「エンジェルエコー」と呼ぶ。

「雨」と文化・生活

雨の概念や雨に対する考え方は、その土地の気候によって様々なものがある。イギリスドイツフランスなど西洋の温暖な地域(西岸海洋性気候の地域)では「雨」を悲しいイメージで捉える傾向が強く、いくつかの童謡にもそれが表現されている。

一方、雨が少ないアフリカ中東中央アジアの乾燥地帯などでは、雨が楽しいイメージ、喜ばしいものとして捉えられることが多く、雨が歓迎される。

雨が多く、水田山林など生活に雨が大きく関係している日本では、古くから雨が少ない時には雨乞いなどの儀式が行われて雨が降ることを祈った。しかし、大雨は洪水をもたらし田畑を壊す事から、降った雨を上手に扱う治水の技術も重要視された。また、西洋と同じく雨に対する悲しいイメージもある。同時に、季節を感じさせるものとして四季それぞれの雨に対する感性が大きく異なり、古来より雨は多くの文学や芸術のモチーフに叙情的に描かれてきた。行友李風作の戯曲の中で月形半平太が、三条の宿を出る際に言った「春雨じゃ、濡れて参ろう」のせりふは春の雨に対する日本人の感性をあらわすものとしてよく知られる。

雨により、人間の活動が制限されることもある。野外で予定されていた行事が、雨天で中止になったり変更される例はよく見られる。ただし、「少雨決行」のように弱い雨の場合には雨天に関わらず行事が行われる場合がある。

雨をテーマにした音楽

海外の音楽

日本の音楽

そのほか

雨の様々な表現

雨の強さや降り方による表現
  • 霧雨 - 霧のように細かい雨。雨粒の大きさが0.5mm未満の雨(気象庁の定義)。
  • 小糠雨(糠雨) - 糠のように非常に細かい雨粒が、音を立てずに静かに降るさま。
  • 地雨 - あまり強くない雨が広範囲に一様に降るさま。
  • 細雨 - あまり強くない雨がしとしとと降り続くさま。
  • 小雨 - 弱い雨。あまり粒の大きくない雨が、それほど長くない時間降って止む雨。
  • 微雨 - 急に降り出すが、あまり強くなくすぐに止み、濡れてもすぐ乾く程度の雨。
  • 時雨 - あまり強くないが降ったり止んだりする雨。秋から冬にかけてよく見られる。
  • にわか雨 - 降りだしてすぐに止む雨。降ったり止んだり、強さの変化が激しい雨。
  • 村雨 - 降りだしてすぐに止む雨。群雨、業雨などとも書く。
  • 驟雨 - 降りだしてすぐに止む雨。降ったり止んだり、強さの変化が激しい雨。
  • 慈雨 - 恵みの雨。少雨や干ばつのときに大地を潤す待望の雨。
  • 涙雨 - 涙のようにほんの少しだけ降る雨。また、悲しいときやうれしいときなど、感情の変化を映した雨。
  • 天気雨 - 晴れているにもかかわらず降る雨。
  • 通り雨 - 雨雲がすぐ通り過ぎてしまい、降りだしてすぐに止む雨。
  • スコール - 短時間に猛烈な雨が降るさま。熱帯地方で雨を伴ってやってくる突然の強風に由来する。
  • 大雨 - 大量に降る雨(一般的な認識)。大雨注意報基準以上の雨(気象庁の定義)。
  • 豪雨 - 大量に降る激しい雨(一般的な認識)。著しい災害が発生した顕著な大雨現象(気象庁の定義)。
  • 雷雨 - 雷を伴った雨。普通は短時間に激しく雨が降る場合が多い。
  • 風雨 - 風を伴った雨。
  • 長雨 - 数日以上降り続くような、まとまった雨。
季節による表現
  • 春雨 - 春に降る、あまり強くなくしとしとと降る雨。桜の花が咲くころは、花を散らせるので「花散らしの雨」とも呼ばれる。
  • 菜種梅雨 - 3月から4月ごろにみられる、しとしとと降り続く雨。菜の花が咲くころの雨。
  • 五月雨 - かつては梅雨の事を指した。現在は5月に降るまとまった雨を指すこともある。
  • 走り梅雨 - 梅雨入り前の、雨続きの天候。
  • 梅雨 - 地域差があるが5月~7月にかけて、しとしとと長く降り続く雨。
  • 暴れ梅雨 - 梅雨の終盤に降る、まとまった激しい雨。「荒梅雨」とも言う。
  • 送り梅雨 - 梅雨の終わりに降る、雷を伴うような雨。
  • 帰り梅雨 - 梅雨明けの後に再びやってくる長雨。「戻り梅雨」ともいう。
  • 緑雨 - 新緑のころに降る雨。
  • 夕立(白雨) - 夏によく見られる突然の雷雨。
  • 秋雨 - 秋に降る、しとしとと降る雨。秋霖。
  • 秋時雨 - 秋の終わりに降る時雨。
  • 秋入梅 - 秋雨。秋雨の入り。
  • 液雨 - 冬の初めの時雨。立冬から小雪のころの時雨。
  • 山茶花梅雨 - 11月から12月ごろにみられる、しとしとと降り続く雨。山茶花が咲くころの雨。
  • 氷雨 - 冬に降る冷たい雨。のことを指すこともある。
  • 淫雨 - 梅雨のようにしとしとと長く降り続き、なかなか止まない雨。

比較的新しい雨に関する言葉も生まれている。明確な定義はないものの、微妙に異なった意味で使用されている。

  • 集中豪雨 - 限られた場所に集中的に降る激しい雨(一般的な認識)。警報基準を超えるような局地的な大雨(気象庁の定義)。局地的豪雨。局地豪雨。
  • ゲリラ雨・ゲリラ豪雨 - 限られた場所に短い時間集中的に降る、突然の激しい雨。
  • 短時間強雨 - 短い時間に集中的に降る強い雨。
  • ゲリラ雷雨 - 雷を伴ったゲリラ雨・ゲリラ雷雨。

特異な雨

水だけが降ってくる、あるいは透明な色をしている通常の雨とは違い、さまざまなものが雨と一緒に降ったり、色がついた雨が降ることがある。

突風を伴った嵐の場合は、土壌の成分を含んで茶色がかった雨が降ることがある。また、黄砂などの大気中の浮遊粒子(エアロゾルなど)を含んだ黄色がかった雨、みがかかった雨、を含んだ雨が降ることがある。これらは珍しい現象ではあるが、時々起こるものである。

しかし、ほとんど報告されないような珍しい雨もある。例えば、カエルが一緒に降るような雨が、世界各地で報告されている。特に動物の雨は「レイニング・アニマルス」とも呼ばれる。以下にいくつかの例を挙げる。

また、核爆発に伴う雨の例もある。1945年8月15日には、広島市原子爆弾投下の後、高レベルの放射能を持つ放射性降下物を含む黒い雨が降った。この雨は触れただけで放射線障害の原因となり、二次被曝を引き起こした。核爆発では、大量の熱が放出されるため強い上昇気流が起こって雨粒が成長するとともに、雨に大量の放射性物質(粉塵)が混じり、雨自体も強い放射能を有することになる。これは長崎市の原爆投下後や、他の核実験の後においても確認されている。

関連項目

Wiktionary
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外部リンク

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