巨乳

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巨乳(きょにゅう)とは、巨大な乳房)であり、またその女性人物。対概念は貧乳

概要[編集]

1989年頃よりよく使われるようになった(風俗:俗語)。それまでは「ボイン」「デカパイ」などと言われていた。巨乳は現代、造語であり俗語である事から、乳房の大きさにおける尺度は使用者によってまちまちであり、基準を規定する事は困難である。以前はDカップでも巨乳と呼ぶ場合もあったが、日本のブラジャー表示の基準変更や女性の胸に対する意識の変化(胸の大きさを強調することを羞恥とせず、むしろ積極的に誇示する者が増えた)もあって、現在のところ、Eカップ、あるいはFカップ以上の乳房(胸)を指す事も多くなったものの、明確な定義はない。

巨乳にする方法[編集]

乳房を巨乳と呼ばれる程度まで大きくするには、豊胸手術による方法、ブラジャーなどの下着による矯正などがあるが、豊胸手術を受けなくても食生活の改善(大豆イソフラボンプエラリアコラーゲンタンパク質チアミンリボフラビンローズヒップビタミンAビタミンE を多く含む食材を摂取)や乳房のマッサージ大胸筋筋力トレーニング女性ホルモンを活性化させる薬品(アメリカでは、胸以外の脂肪を胸に集めて巨乳にする薬もある)などで乳房が大きくなる事がある。特に第二次性徴期(特に乳房に脂肪組織の蓄積が活発になる乳房の成長の第2・3段階)にこれを行うと効果が大きい(ただし、この時期の乳房は硬く、乳房マッサージ等、乳房を無理に動かすと痛みを伴うことがある)が、第一次性徴期や閉経後は女性ホルモンの分泌が少ないため、効果が現れにくい。

牛乳をよく飲むと大きくなるという説は、タンパク質を多く摂取することで体全体の成長に繋がるものの、乳房の成長に特別な効果は無いため迷信に等しい。牛乳よりむしろ豆乳の方が大豆イソフラボンが多く含まれる為、効果的とされている。

なお、タレントのMEGUMIは第二次性徴期にレバーを毎週のように食べた頃から胸が大きくなったと語っている。ちなみにレバーにはビタミンAが豊富に含まれている。

来歴[編集]

女性の豊かな乳房の魅力を発見したのは、有史以前と20世紀の米国である。古代においては豊満な乳房は豊穣のシンボルとして希求された。だがその後、古代エジプトヘレニズムからルネッサンスを通して女性の美の対象として関心が向けられたのはむしろ臀部であった。

「巨乳」という言葉が登場するまでは、同様な乳房の大きさを示す言葉として「ボイン」、「デカパイ」という言葉が使われていた。1960年代前半頃より成人向け雑誌にてその表現が散見されていたが、一般に広く知られるようになったのは、1967年大橋巨泉テレビ番組11PM」にて、朝丘雪路の乳房の大きさをボインと表現し、転じて朝丘をボインちゃんというあだ名で呼び始めたのがきっかけである[1]。「ボイン」は「ヒッピー」などと共にその年の流行語となった。また、1969年月亭可朝が「嘆きのボイン」を発表しヒットしたこともあり、ボインという呼称が定着した。ボインは 1970年代には小島功の『ヒゲとボイン』のように漫画のタイトルにもなり、1980年代に入っても人気アニメまいっちんぐマチコ先生』で「ボインタッチ」の語が使われた。しかし、「巨乳」という言葉の登場と普及に伴って急速に廃れ、2010年現在ではほぼ死語となっている。近年では、巨乳を形容するのに上記の概要で記述されているように様々な表現方法が用いられている。

アイドル界においては長らく「豊満な胸」をタブー視していたが、1970年代後期に榊原郁恵が「健康的なお色気」という形で「アイドル性」との両立を果たし、その後のいわゆる「巨乳アイドル」の先駆けとなった。

「巨乳」という言葉は、1985年6月に日本で劇場公開されたアメリカの成人映画"Raw Talent"1984年製作、監督ラリー・レヴィーン)の邦題『マシュマロ・ウェーブ/巨乳』に使われたのが一般に向けての最初の使用例であると見られる。1985年12月には、ラス・メイヤー監督作の"Beneath The Valley of The Ultra-Vixens"1979年製作)が『ウルトラ・ビクセン/大巨乳たち』の邦題で公開された(後に『ウルトラ・ヴィクセン』に改題)。

しかし日本においては、当時、豊満なバストを持つ女優AV女優に対して「Dカップ」「Eカップ」といったバストサイズによる表現が好んで用いられ、「巨乳」という言葉はすぐには定着しなかった。日本製作の映像作品のタイトルにおける初期の使用例としては、1986年4月に発売されたアダルトビデオ『SM巨乳奴隷』(STUDIO 418、主演:吉沢まどか)や、1986年8月に成人映画・アダルトビデオとして同時公開された『巨乳』(新東宝、監督:細山智明、主演:菊池えり)などがある。

その後1987年に入ると、黒沢ひとみ速水舞北村美加などの女優、AV女優の出演作で「巨乳」を含むタイトルが増加し、夕刊紙などの大衆メディアにおいても「巨乳」という言葉が次第に用いられるようになった。1987年7月10日付の読売新聞朝刊は、女性解放団体「行動する女たちの会」が、「巨乳」などの性的用語が氾濫する夕刊紙をシンポジウムにおいて糾弾したと報じている。

「巨乳」という言葉がより一般レベルで定着したのは、AV女優界では松坂季実子1989年2月デビュー)の登場によるところが大きい。他のAV女優に比べ、圧倒的に胸が大きかった。発売元のダイヤモンド映像が毎月1日を「巨乳の日」と名づけて出演作をリリースし、これが爆発的なヒットとなったのに加え、松坂自身がテレビのバラエティ番組や雑誌などの一般向けメディアにも数多く出演したことで、「巨乳」への認知度が飛躍的に高まった。

グラビア界ではかとうれいこが登場(1988年デビュー)。その後細川ふみえ(1990年デビュー)も登場し、かつてない巨乳ブームが到来した。かとうや細川が在籍していたイエローキャブ社長(当時)の野田義治は、(もともと、ダイヤモンド映像系列のパワースポーツでプロデュースを担当していた)バストの大きいタレントを多く所属させ、自社のタレントを表現する際に「巨乳」という言葉を多用し、「巨乳タレント」という呼称の浸透に一役買う形となった。

なお、この巨乳ブームの仕掛け人として、芸能評論家(元『FLASH』誌記者)の肥留間正明や、元ダイヤモンド映像プロデューサーの本橋信宏の名が挙げられるが、一部で流布されている彼らが「巨乳」という言葉を最初に使い始めたとする説は、誤りである。

平成初期には少年向け漫画雑誌でも「巨乳」や「超乳」の描写を含んだ漫画が連載されていたが(『巨乳ハンター』(安永航一郎)や『彼女はデリケート!』(カジワラタケシ)など)、近年は雑誌やテレビ番組での性描写などが問題視され表現を抑えるようになった影響からあまり見られなくなった。

言葉としての巨乳[編集]

1993年には「爆乳」という言葉が派生、さらに1990年代後半、杉作J太郎が「貧乳」と言う言葉を用いだした。「貧乳」という用語自体は1989年に連載が始まった安永航一郎のコミック「巨乳ハンター」で巨乳の対義語として多用されているなど、1980年代に使用例がある。同作では「盆地胸」など定着しなかった用語を含め、胸に関する多彩な表現が試みられている。スラングとしては「ホルスタイン」などがある。

風俗史研究者である井上章一は、従来は「-乳」と言えば牛乳、母乳など液体の乳状のものを差していたところ、「-乳」と言った語によって乳房の形状、状態を表す熟語となったことは、日本人にとっての言語感覚の転機となったとも言い得る、としている。

問題点[編集]

  • バストサイズ自体の正確な計測は難しい(ブラジャーの項を参照)。それは一日の時間帯や時季、計測時点の呼吸の仕方でも変化するためである。また、本人の意識の仕方によっても影響される。例えば、「大きく見せたい」女性は必然的に大きく見せようとし、大きいことにコンプレックスを感じている女性は過少に見せようとする。
  • 実際、巨乳の女性では「肩こり」に悩む人も多い。但し、巨乳でも肩が凝らない人、貧乳でも肩が凝る人がいる為、巨乳と「肩こり」の因果関係は断言できるものではない。なお、肩こりはサイズに関係なく着用しているブラジャーのサイズが正しくないときに起き易い。
  • シリコンジェルはレントゲン撮影の際には影となり支障を来す上、発癌性も指摘されているため、日本では豊胸手術生理食塩水パック又は自分の余分な脂肪を注入する方法が普及している。
  • ギャルゲーアダルトゲーム)等の創作上の女性キャラクターでは、体格上無理のある「巨乳」「貧乳」の設定がかなり存在する。そのような設定では、総じてカップサイズではなくトップ値で乳房の大きい・小さいを判断する傾向にあり、一般に、標準的なサイズに対して90cmを巨乳の基準、80cmを貧乳の基準に位置づけやすい。例えば、
  • 例:身長174cm、トップ値92cm、ウェスト59cm の場合。
そもそもこのウェスト値にかなり無理がある。この身長ならば、ウェスト値は64-68cm程度が適当(俗にいうゴールデンカノンの理想値)である。この値を採用した場合、作品中では際立って大きいように表現されていても、バストカップはだいたい75D程度しかない。

脚注[編集]

  1. 出典:米川明彦編『日本俗語大辞典(第3版)』東京堂出版 2006年 583頁

関連項目[編集]