レクサス
レクサス(英語:LEXUS)は、トヨタ自動車が展開している高級車のブランド(プレミアムブランド)。1989年から北アメリカで展開が開始され[1]、2005年8月から日本でも展開された[2]。グローバルブランドスローガンは「EXPERIENCE AMAZING[3]」。
概要
1980年代までのアメリカ合衆国では、リンカーン(フォード)やキャデラック(GM)に代表される重厚で威厳を持つデザインの高級車こそが、アメリカンドリームを勝ち得た「成功者のシンボル」であり、日本車が普及した当時も高級車の市場は、2大ブランドや類似したデザインのアメリカ車が中心であった。しかしそうした威圧的なデザインの伝統的な車種を好まない富裕層が一定数存在すること、将来顧客の候補となる若年層にとっては「古臭い」と見えていることを、トヨタ自動車は市場調査で把握していた。
そこでトヨタは、伝統や威厳を前提とした旧来の高級車のあり方を否定し、機能性や高品質によるプレミアムを模索した。すなわち、メルセデス・ベンツやBMWなどの西ドイツ(現ドイツ)製高級車に匹敵する品質や安全性と、日本車ならではの信頼性や経済性とを両立させ、なおかつリーズナブルな価格設定、そして充実したアフターフォローを構築しようとした。
当時はまだ「壊れないが、あくまで安物の大衆車」とのイメージが強かった日本車に、日本国外の高級車市場への参入余地はないというのが自動車業界の定説であったが、トヨタは新たなテストコースの建設を始めとした開発体制・品質基準を策定し約5年間にも及ぶ長い開発期間を経た後、1989年に初代LSを発売した。
トヨタの目論見通り、レクサスが掲げるコンセプトは好評をもって迎えられ、LSは発売初年度だけで約11,600台、ESの約4,700台と合わせると、レクサス全体で約16,300台を売り上げ、大衆車メーカーによる高級車市場参入の成功例となった。特に、LSの持つ静粛性と内外装の組上げ精度は、他のメーカーにも大きな衝撃を与えた。またレクサス開発の中で培われたノウハウは、トヨタにとっても大きな収穫となった。
機能性とシンプルさを重視したレクサスのデザインは、落ち着きや品の良さを希求した反面、トヨタブランドと共に「退屈で地味」という印象を抱かれることもあった。そのため21世紀以降はモータースポーツに参戦したり、スポーツモデルの「F」を発表するなど方針を転換してきている。
当初はユーザー趣向の違い等の理由から日本国内でのレクサスブランド展開予定はなく、日本国外でレクサスブランドで販売される車種は日本向けに仕様変更やグレードの見直しをした上で、トヨタブランドから別名称で販売されていたが(LSは日本名「セルシオ」、同様にGS:「アリスト」、ES:「ウィンダム」、IS:「アルテッツァ」、SC:「ソアラ」、LX:「ランドクルーザーシグナス」、GX:「ランドクルーザープラド」、RX:「ハリアー」)、2005年の日本でのレクサスブランド展開開始以後は、順次レクサスブランドの全世界統一名称・品質基準へ変更の上、レクサス販売店での取扱いに変更されている。なお、後述の通りRXは2009年に3代目モデルがレクサスブランドで発売された後も、グレード整理のうえ旧モデル(2代目RX)が「ハリアー」としてトヨタブランドで継続販売されている。LXは「ランドクルーザー」、GXは「ランドクルーザープラド」、およびHSは「SAI」と、それぞれプラットフォームほか車体の基本構造こそほぼ同一であるが、品質基準を筆頭にサイズ・デザイン・装備品などが大きく異なる姉妹車である(GXは2019年現在日本国外のみでの販売となっている)。
ブランドの再構築と日本での展開
1989年のブランド設立以来、レクサスは主に北米の高級車マーケットにおいて一定の地位を築いた一方、ヨーロッパなどではメルセデス・ベンツやBMWといった強豪相手に苦戦を強いられたほか、日本でも根強い輸入車人気の影響もあり、高級車マーケットの中心は依然としてそれら欧州車の独擅場にあった。
また上記の通り日本国内ではトヨタブランドの別名称で販売されていたため、実態は同一車種でありながらユーザーが求める要素に国内外で徐々に乖離が生じた。日本では、同ブランドの代表的な高級車クラウンを筆頭とする、日本の一般ユーザーの趣向に基づく車種階層に組み込まれたため、例えばLS(日本名セルシオ)ではショーファードリブン(運転手付き)用途での使用も多かった一方、海外ではあくまでオーナー自ら運転することが前提のドライバーズカーが基本コンセプトであり、双方のニーズに対応させることが困難となってきていた[4]。
一方、日本では長く続いた平成不況を一旦脱し、後に「いざなみ景気」と呼ばれる景気回復期に差しかかりつつあった経済情勢も受け、日本国内でもレクサスブランドを展開することが2003年2月にトヨタ自動車から正式発表された。それを契機に、後述するデザイン基本理念「L-finesse(エルフィネス)」といったブランド再構築が行われ、全世界で通用する日本発の高級車ブランドとして新生「レクサス」を展開し、今後の経済成長が見込まれるアジア圏ほかを含めた展開を目指すこととなった。
2012年6月にはトヨタ自動車の社内組織改編が行われ、従前の「レクサス本部」が社内カンパニーに近い「レクサスインターナショナル」へ改組された。デザインや開発、マーケティングなどの機能が統合強化され人員も倍増されるなど、レクサスブランドにおけるヘッドクオーターとなる[5]。
また、翌2013年4月には「レクサスインターナショナル」のほか、トヨタブランドの「第1トヨタ」(日本・北米・欧州を所管)・「第2トヨタ」(新興国を所管)および「ユニットセンター」(部品の企画開発や生産技術・生産機能を集約)の計4つのビジネスユニットが設置され、第1トヨタ・第2トヨタ・ユニットセンターはそれぞれを所管する副社長を事業責任者とする大幅な組織改編が行われたが、レクサスインターナショナルについては「日本発のグローバルプレミアムブランドとしてのイメージ確立に向けた変革が急務」との認識から、トヨタ自動車社長の豊田章男自らが事業責任者となる別格の位置付けがなされた[6]。
更に、2018年9月には「クルマに留まらない驚きと感動の提供」と言う新たな提案として、ラグジュアリーヨット「LY650」を発表。2019年後半に初披露予定[7]。従来から付きまとう「レクサスは退屈」のネガティブイメージ払拭に努めている[8]。
上述のようにアメリカで始まったブランドではあるが、日本で正規販売される車はすべて日本国内で製造されている[9](元町工場、田原工場、トヨタ自動車九州)こともあり、左ハンドル車の正規販売は存在せず、国内の日本車同様にハンドルの右側のレバーはウインカー、左側はワイパーとなっている(一部に個人で並行輸入された個体も存在する)。
国産車ブランドとしては珍しくV8エンジンを国内向けにも多数ラインナップしており、2017年時点でその数6車種にも上る[10]。
関連項目
- トヨタ自動車
- レクサス・F - レクサスが展開するスポーツモデル。
- メルボルンカップ
- ザ・チャンピオンシップ・バイ・レクサス(通称:レクサス選手権) - 2008年から2010年まで開催された日本ゴルフツアー機構(JGTO)公認による男子プロゴルフトーナメント。
- 松山英樹 - プロゴルファー。2013年12月より同ブランド所属。
- くま吉 - モータースポーツ活動におけるマスコットキャラクター。
- 室屋義秀 - チームスポンサーとなっている。2021年10月からはチームパートナーシップを締結し、「LEXUS / PATHFINDER AIR RACING」として新生エアレース選手権に参加する[11]。
脚注
- ↑ レクサスから紐解く過去・現在・未来
- ↑ 【ヒットの法則80】レクサスISはブランドのスポーツイメージを牽引する期待の星だった
- ↑ LEXUS > BRAND - lexus.jp
- ↑ 三栄書房「LEXUSのすべて」 2005年
- ↑ レクサス伊勢プレジデント「遠慮せず思い通りにやろう」、Response、2012年7月6日
- ↑ 新体制を公表 | ニュース - トヨタ自動車 2013年3月6日
- ↑ LEXUS、ラグジュアリーヨット「LY650」を発表-LEXUSが提供する、新しい海のモビリティ- - トヨタグローバルニュースルーム(トヨタ自動車) 2018年9月8日(2018年11月27日閲覧)
- ↑ 井元康一郎 (2016-04-15) 井元康一郎 豊田章男社長「レクサスを熱いブランドにする。もう退屈とは言わせない」 プレジデント プレジデント社 [ arch. ] 2021-02-08
- ↑ トヨタ、高級車「レクサス」の国内生産3カ所に (写真=共同) :日本経済新聞
- ↑ 国産は全滅寸前! V8エンジンはもはや不要なのかベストカーweb 2017年4月26日
- ↑ エアレース・パイロット室屋義秀選手とLEXUSが共に挑む、新たな歴史への挑戦を発表 - パスファインダー・レクサスインターナショナル 2021年10月21日(2021年10月21日閲覧)