一年戦争

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一年戦争(いちねんせんそう、One Year War)は、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズ作品の舞台となった架空の戦争の名称。作品中の勢力であるスペースコロニー国家・ジオン公国地球連邦政府からの独立を果たすため宣戦布告したことにより始まり、それから約1年後にジオン公国が敗北した事によって終結した。「ジオン独立戦争」とも呼ばれる。

ガンダムシリーズ第一作の『機動戦士ガンダム』は、この戦争の後半の4か月を描く作品である。一年戦争の名称は、1985年に制作された続編『機動戦士Ζガンダム』で設定されたものであり、それ以前の1981年に刊行されたムック「ガンダムセンチュリー」で、「ガンダム」以前のこの戦争の状況が詳述されていた。その後に制作されたTVシリーズやOVAゲーム等によってその内容の補足がなされ、現在に至っている。

近年、安彦良和の漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』において詳細が描かれている。

背景

宇宙世紀元年以降、人口爆発の解決策としてスペースコロニーへの移民が行われ、一年戦争開戦前までの時点で総人口110億人のうち約半数がスペースコロニーに移住していた。

しかし、宇宙世紀も半世紀に達する頃には移民熱は薄れ、地球連邦政府は地球に留まったままであり、宇宙移民へ重点をおくことはなかった。これに対し、スペースノイドと呼ばれる宇宙移民たちの間には、地球連邦の特権階級が地球を私物化し自分たちを支配しているという不満が鬱積していた。

これに応えるかのようにサイド3では、思想家ジオン・ズム・ダイクンが現れ、スペースノイドの間から「人類の革新『ニュータイプ』が生まれる」と説き、コロニー群の一つで月の裏側に位置するサイド3の独立運動を行った。ジオン・ズム・ダイクンは志半ばで変死(毒殺説濃厚)し、代わってデギン・ソド・ザビがサイド3をジオン公国として成立させる。

デギンの長子ギレン・ザビは、ジオン・ズム・ダイクンの思想を先鋭化してスペースノイドを扇動し、暴力的な手段による人類の大規模な粛正(どちらかと言えば粛清に近い)と支配を目論んでいた。さらに地球連邦軍に対する劣勢を克服する手段として、電磁波への強力な妨害能力を持つ「ミノフスキー粒子」と、機動性と汎用性に優れた人型有人機動兵器「モビルスーツ」を軸に軍備増強を推し進めていた。

一方、ジオン・ズム・ダイクンの遺児キャスバル・レム・ダイクンは、「ジオン・ズム・ダイクンは、ザビ家によって暗殺された」とランバ・ラルの父であるジンバ・ラルに教えられたことから、シャア・アズナブルを名乗ってジオン公国軍の士官となり、ザビ家への復讐の機会を窺っていた。

年表

  • 0079年1月3日:ジオン公国が、地球連邦政府に対して宣戦布告する。宣戦布告と同時の先制攻撃で地球連邦軍を攻撃。月面都市グラナダを制圧。攻撃・制圧終了後、サイド1・2・4へ奇襲を敢行。NBC兵器無差別使用。
  • 0079年1月4日:ジオン公国軍、サイド2のコロニー「アイランド・イフィッシュ」の軌道を外し、地球へ落下させる(=ブリティッシュ作戦開始)。
  • 0079年1月10日:地球連邦軍の防戦によって崩壊したサイド2コロニー「アイランド・イフィッシュ」の一部が、オーストラリア大陸シドニーを直撃する。(この一連の戦いを一週間戦争と呼ぶ)。
  • 0079年1月11日:サイド6中立宣言(1月17日の異説あり)。
  • 0079年1月15日 - 16日:サイド5宙域にて、ルウム戦役が発生する。この結果、地球連邦軍の8割が壊滅した他、レビル将軍が脱出時に黒い三連星によりランチを拿捕され、捕虜になる。また、この戦役でシャア・アズナブル中尉(当時)は、サラミス級4隻、マゼラン級1隻を撃沈させ、連邦将兵から「赤い彗星」とおそれられる。
  • 0079年1月17日:ジオン公国軍、プロパガンダ放送を使い、捕虜となったレビル将軍を全地球圏に公開。
  • 0079年1月22日:地球連邦軍、特殊部隊により極秘裏でレビル将軍奪還作戦を開始する。
  • 0079年1月28日:ジオン公国政府、サイド6を通し地球連邦政府に休戦条約の締結を打診。
  • 0079年1月31日:ジオン公国政府、地球連邦政府に休戦条約を交渉会談開始する。調印直前に捕虜となっていたレビル将軍がジオン本国を脱出し、ジオン公国軍の内情を暴露する「ジオンに兵なし」演説を実施。これにより休戦条約から軍事条約(=南極条約)に変更され、ジオン公国軍は地球侵攻作戦を開始。
  • 0079年2月1日:ジオン公国軍、地球方面軍設立を公表。
  • 0079年2月7日:ジオン公国軍、地球侵攻作戦を本格的発動。
  • 0079年2月13日:地球連邦軍、「V作戦」立案。
  • 0079年3月1日:ジオン公国軍、バイコヌール宇宙基地に宇宙基地制圧隊が降下(第1次降下作戦開始)。
  • 0079年3月4日:ジオン公国軍、オデッサに、マ・クベを中心とした公国軍資源発掘隊が降下。
  • 0079年3月13日:ジオン公国軍、第2次降下作戦にてキャリフォルニアベースを無血制圧。
  • 0079年3月18日:ジオン公国軍、第3次降下作戦にてオセアニア制圧。
  • 0079年4月1日:地球連邦軍、V作戦ビンソン計画を発動。
  • 0079年5月17日:ジオン公国軍、宇宙要塞ソロモン機能開始。
  • 0079年5月21日:ジオン公国軍、トライデントジャベリン作戦開始。
  • 0079年5月22日:地球連邦軍、ヘリオン作戦開始。
  • 0079年6月:ジオン公国軍、後のサイコミュ技術を開発するフラナガン機関設立。
  • 0079年6月:ジオン公国軍、ア・バオア・クーソロモングラナダを本土防衛ラインとして完成する。
  • 0079年7月:地球連邦軍、エネルギーCAP技術確立。ビームライフル発明。プロトタイプガンダムロールアウト。
  • 0079年8月:地球連邦軍、ガンダムNT-1開発開始。
  • 0079年9月15日:地球連邦軍のホワイトベースサイド7にてガンダムを含む試作モビルスーツを受領する為ジャブローを出航。しかし、シャア・アズナブル少佐(当時)率いる部隊に発見される。
  • 0079年9月18日
    • 不明:地球連邦軍のホワイトベースサイド7、1バンチに入港
    • 8時00分:ジオン公国軍のシャア少佐指揮下の偵察部隊がサイド7、1バンチに侵入。
    • 9時15分:同所にて史上初のモビルスーツ同士の戦闘が行われる。
    • 16時20分頃:地球連邦軍のホワイトベース、サイド7を出港。
  • 0079年9月20日:地球連邦軍のホワイトベース、ルナツー入港。シャア少佐補給を受ける(ホワイトベースによる補給艦攻撃説あり)。
  • 0079年9月22日:地球連邦軍のホワイトベース、ルナツー出港。
  • 0079年9月23日:地球連邦軍のホワイトベース、シャア少佐の搭乗するコムサイ並びにガンダムが大気圏に突入。シャアの攻撃によってジオン勢力圏の北米大陸に降下。
  • 0079年10月1日:地球連邦軍のホワイトベース、マチルダ率いるミデア輸送隊と接触。
  • 0079年10月4日:ニューヤークシアトル説もあり)での戦闘にてガルマ・ザビ大佐戦死。
  • 0079年10月6日:サイド3ズム・シティーにてガルマ・ザビ国葬。ジオン公国総帥ギレン・ザビが全地球規模で演説を行う。
  • 0079年10月30日:ジオン公国軍、マッドアングラー隊創設。
  • 0079年10月6日 - 11月6日:地球連邦軍のホワイトベース、ランバ・ラルの部隊と数度にわたり交戦(ラルの自決は11月5日で、最後の戦闘は11月7日以降とする説もあり)。
  • 0079年11月7日:地球連邦軍のホワイトベース、黒い三連星と交戦、これを撃破。オデッサ作戦開始。
  • 0079年11月9日:オデッサ作戦終了。ジオン公国軍、鉱山基地を放棄。敗残部隊は各地へ逃亡。ジオン公国軍地球侵攻部隊司令官マ・クベ大佐、宇宙へ離脱後、南極条約を破り水爆ミサイルを発射。
  • 0079年11月18日:地球連邦軍のホワイトベース、ベルファスト基地に入港。
  • 0079年11月21日:ジオン公国軍諜報員107号(=ミハル・ラトキエ)、ベルファスト基地より地球連邦軍のホワイトベースに潜入する。
  • 0079年11月22日 - 24日:地球連邦軍のホワイトベース、大西洋上にてマッド・アングラー隊と交戦。
  • 0079年11月27日:地球連邦軍のホワイトベース、ジャブローに到着。
  • 0079年11月30日:ジオン公国軍のシャア大佐率いるマッド・アングラー隊がジャブロー入り口を発見する。キャリフォルニアより部隊を派遣することでジオン公国軍がジャブローに対する攻撃を始めるものの失敗。同時に潜入した工作部隊による地球連邦軍のモビルスーツ工場の破壊工作も失敗。突入・降下部隊もほぼ全滅。
  • 0079年12月2日:地球連邦軍のホワイトベース、宇宙へ発進。このとき地球連邦軍は、ホワイトベースのために囮の戦艦を4隻出航させる。
  • 0079年12月3日 - 5日:地球連邦軍のホワイトベース、ジオン公国軍キャメルパトロール艦隊と交戦、これを撃破。
  • 0079年12月5日:地球連邦軍、アフリカ及び北アメリカ大陸における大規模なジオン公国軍掃討作戦を開始。地球上のジオン公国軍は宇宙への撤退を開始。
  • 0079年12月9日:ジオン公国軍サイクロプス隊、地球連邦軍北極基地襲撃。
  • 0079年12月14日:地球連邦軍、チェンバロ作戦開始。
  • 0079年12月15日:地球連邦軍、キャリフォルニアベース奪還作戦開始。
  • 0079年12月16日:ジオン公国軍が極秘に開発していたエルメス試作機完成。
  • 0079年12月19日:サイド6にてジオン公国軍のサイクロプス隊ケンプファーが地球連邦軍の駐留部隊軍と交戦(ルビコン計画)するが撃破される。新兵バーナード・ワイズマン以外の隊員戦死。
  • 0079年12月22日:ジオン公国サイド3のコロニー「マハル」にて住民の強制疎開が行われる。(ソロモン陥落後説、8月説の異説あり)
  • 0079年12月24日:地球連邦軍、ソロモン攻略戦を開始し翌日制圧完了、ドズル・ザビ中将戦死。制圧後、名称をコンペイトウに変更。
    • ジオン公国軍、フラナガン機関の少年・少女候補生(というより実験体)たちだけを乗せたコムサイが、大気圏に突入。母艦のムサイは撃沈される。
  • 0079年12月25日:コンペイトウ宙域の地球連邦軍艦艇に対する正体不明の攻撃が発生。ギレン・ザビ総帥、デギン・ザビ公王よりソーラ・レイ計画に関する裁可を受ける。
    • サイド6にてジオン公国軍のバーナード・ワイズマン伍長がガンダムNT-1と交戦(クリスマス作戦)。ワイズマン伍長戦死、ガンダムNT-1は中破。
  • 0079年12月30日21時05分:ジオン公国軍、ソーラ・レイ発射。デギン公王、レビル将軍死亡。地球連邦軍艦隊、3分の1壊滅。
  • 0079年12月31日
    • 0時00分:地球連邦軍、星一号作戦の強行を決定。
    • 1時17分:ジオン公国ギレン総帥、出陣演説を行う。ジオン公国軍将兵の士気が頂点に達する。
    • 5時00分:地球連邦軍、残存艦隊の再編成を完了。
    • 8時10分:地球連邦軍、パブリク隊による第1波攻撃を開始。ア・バオア・クー攻略戦開始。
    • 9時25分:ア・バオア・クーの司令室において、ジオン公国軍のキシリア・ザビ少将がギレン総帥を射殺。
    • 9時40分:ア・バオア・クー防衛宙域Nフィールドにて、ジオン公国軍ドロス級大型空母1番艦「ドロス」撃沈。
    • 10時10分:同じく防衛宙域Sフィールドにて、ジオン公国軍ドロス級大型空母2番艦「ドロワ」撃沈。一部の部隊は、暗礁宙域・小惑星に向かうため戦線離脱を開始。
    • 12時05分:ジオン公国軍キシリア少将、ア・バオア・クーから脱出を計るも、乗艦のザンジバル級機動巡洋艦が撃沈される。キシリア少将死亡、ザビ家は事実上壊滅。
    • 18時00分:ジオン公国ダルシア・バハロ首相、デギン公王生前からの内密の依頼により、ジオン公国を共和制に移行。サイド6を通じて地球連邦政府へ終戦協定の締結を打診。
  • 0080年1月1日15時00分:月面都市グラナダにて、地球連邦政府とジオン共和国政府の間に終戦協定が締結される。

経過

緒戦期

一週間戦争

宇宙世紀0079年1月3日午前7時20分、ジオン公国は地球連邦政府に対して突如宣戦を布告する。

その直後、ジオン軍のドズル艦隊モビルスーツ部隊は、各サイドに駐留する地球連邦軍艦隊を攻撃。キシリア艦隊に属するモビルスーツ部隊は、月面都市グラナダを制圧。各軍の攻撃・制圧終了後、地球連邦側に立ったサイド1、2、4の各スペースコロニーを急襲。住民をNBC兵器で虐殺し、その際にサイド2のコロニー1基を地球に落下させ、未曽有の被害をもたらすこととなった(ブリティッシュ作戦及びコロニー落とし)。この1月10日までに行われた戦いは特に一週間戦争と呼ばれ、全人類110億人のうち28億人が死亡した(「ガンダム」のナレーション等では総人口の「半数」が死んだと表現)。

ブリティッシュ作戦

ブリティッシュ作戦の名称は、植民地(コロニー)を喪失したことで大英帝国が衰退した故事にちなんだものとされる。

南アメリカ大陸のジャブローにある地球連邦軍総司令部は、天然の地下空洞を利用した難攻不落の大要塞であった。ジオン公国はこれを撃滅する方法としてスペースコロニーを落下させる事を決定した。

宇宙世紀0079年1月4日、サイド2の第8番コロニー「アイランド・イフィッシュ」に核パルスエンジンを装着して正規の軌道から離脱させ、地球へ落下させるコースへ移動させた。

落下目標はジャブローであったが、落下軌道をとるコロニーに対して地球連邦軍はティアンム艦隊による直接攻撃や地上からの核ミサイルの発射など迎撃を加え、コロニーをアラビア半島上空で崩壊させジャブローへの直撃だけは阻止することに成功した。

しかし1月10日、地球連邦軍の迎撃で崩壊したコロニーの残塊が相次いで地球に落下。大きく3つに崩壊したコロニーの前部分はオーストラリアシドニーに(アニメ『機動戦士ガンダム』冒頭で描かれているシーンはこの部分である)、残りの部分はバイカル湖、北米大陸にそれぞれ落着した。

これによってオーストラリア大陸の16パーセントが消滅し落下地点のシドニーはほぼ跡形なく消滅(シドニー湾と呼ばれる直径500kmのクレーターができた)、崩壊の際に発生した無数の小さな破片はユーラシア大陸やアメリカ大陸など地球全土に降り注いだ。さらに2次被害として衝撃波津波異常気象などが発生し、地球に対して長年にわたって多大な悪影響を及ぼし続けた。また、地球の自転速度すら速めたとされる(1時間あたり約0.1秒加速)。なお、シドニー湾はOVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の冒頭に登場する

ルウム戦役

先の一週間戦争ではジャブローの破壊という最大の目標を果たせなかったため、ジオン軍はコロニーのジャブローへの落下を再度目論み、それまで攻撃を仕掛けていなかったサイド5 ルウムへ狙いを定める。地球連邦軍はこの情報を事前にキャッチし、1月15日に出撃可能な艦艇をかき集めてジオン軍に総力戦を挑んだ。

近年製作された『機動戦士ガンダム MS IGLOO』では実はコロニー落としそのものは地球連邦軍艦隊を誘い出すための囮であり、ルナツーなどに残存していた地球連邦軍宇宙艦隊の壊滅こそ真の目的だったという解釈が取られている。IGLOOでの映像化によりこの解釈がルウム戦役の目的の公式設定となった。

戦力比はジオン1に対し連邦3。[1]しかし宇宙戦艦と戦闘機のみで構成された地球連邦軍はジオンのモビルスーツに対して有効な迎撃手段を持たず、徐々に地球連邦軍が押されていく。

さらには、大破した地球連邦軍艦隊の旗艦・マゼラン級戦艦アナンケからレビル将軍が脱出に用いたランチがジオンのモビルスーツ部隊「黒い三連星」の乗るザクIC型あるいはS型と言われる)に拿捕され、レビル将軍はジオン軍の捕虜になってしまう。

結局この戦いはジオン軍がモビルスーツの活用により3倍の戦力差を跳ね返して優位に立ち、地球連邦軍宇宙艦隊はほぼ壊滅した。地球連邦軍は記録的な大敗を喫し、宇宙でジオン軍の大規模行動を阻止することは不可能になった。ジオン軍はレビルを捕虜に取るなど予想以上の戦果を挙げたが、ジオン側の損耗もまた大きかった。

ジオンは先のコロニー落としとルウム戦役での戦果を背景に地球連邦政府と和平交渉に臨み、戦争の早期終結を図ったが、事実上の全面降伏に等しい強気の要求と連邦軍によるレビル将軍の奪還成功等によりその意図は頓挫する。

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では第二次コロニー落とし計画が無く、連邦の宇宙軍撃滅が目標だった戦いという解釈がとられている。キシリア機関によりレビルに偽の情報を届けて油断させ、さらに陽動作戦により彼我の戦力差を2対1にし、それをモビルスーツによって撃破する戦術が採られていた。

この戦闘ではジオン側が試作艦隊決戦砲・ヨルムンガンドを実践投入したが観測データが送られなかったために大きな戦果を上げることが出来ず、また砲自体も破壊されている。

また、この戦いの際にシャア・アズナブル(当時中尉)が自身のパーソナルカラーであるに塗装された指揮官用ザクII に搭乗し、地球連邦軍の戦闘艦艇5隻を撃沈するという戦績を上げている。これにより彼は二階級特進して少佐になった。それ以後シャアは自機のパーソナルカラーから「赤い彗星」と呼ばれ、地球連邦軍に恐れられる事となる。

膠着状態

南極条約の締結

緒戦における圧倒的な勝利を後ろ盾に、ジオン公国は地球連邦政府に休戦条約(南極条約)を持ちかけた。

内容は事実上の降伏勧告であったが、地球連邦軍には、これ以上の抗戦を行う戦力が残っておらず、条約をのむしかないと思われた。しかし、レビル将軍が収容されていたジオン本国から脱出に成功し(影武者説・連邦の特殊部隊による救出説・戦争継続を望むキシリアが故意に逃がした説などあり)、条約締結のための会合が開かれていたそのときに全地球規模での演説を行い、地球連邦軍以上にジオン軍も疲弊していることを訴えた(「ジオンに兵なし」演説)。

このとき、会合に出席していた地球連邦政府首脳は徹底抗戦を決意。このとき締結された南極条約は、捕虜の取り扱いや核兵器の使用禁止などを定めた戦時条約に留まる結果となる。

地球侵攻作戦

講和に持ち込むことも独立を認めさせることもできず、長期戦になると判断したジオン軍は速やかに地球侵攻作戦の決行を決定した。2月7日に作戦を本格的に発動し、同月中旬から月面から地球に向けてマスドライバーでの攻撃を実施し、目的基地の対空防衛を弱体化させた。

3月1日に宇宙基地制圧隊、3月4日に資源発掘隊を第一次降下作戦にて天然資源の多いカスピ海及び黒海沿岸部、コーカサス地方のオデッサバイコヌールに降下させて占領する。3月11日の第2次作戦では北米大陸に降下し、これを占領。このとき、キャリフォルニアベース鹵獲したVIII型潜水艦数隻を改修してユーコンとし、ハワイ攻略作戦で多数が使用された。引き続く3月18日の第3次降下作戦では、アジアオセアニアに降下し、アジアの拠点の一つペキンを占領。さらに別の作戦でアフリカキリマンジャロも勢力下に置いた。2月から3月までに三度ほどHLV(大気圏内外への輸送機)による戦力降下をおこない、地球の約半分がジオン軍に占領された。

この後、地球連邦軍、ジオン軍共にこれまでの作戦で疲弊し、ジオン軍は補給線が伸び切ったために物資が末端まで届かないことが起こるようになる。また、完全に調整されたスペースコロニー育ちにとっては慣れない地球での生活に直面した。

ジオン軍がジャブローの入り口を確定できないことなどもあって、大きな衝突は起こらず、各地で両軍の攻防作戦や地元ゲリラなどの小競り合いが発生するのみであったが、水面下でジオン軍はモビルスーツ部隊、陸上部隊、航空部隊の戦力増強並びに新型モビルスーツ、拠点攻略及び防衛用のモビルアーマーの開発を行っていた一方、地球連邦軍では、レビル将軍が大艦巨砲主義にこだわり続ける反対勢力を振り切り、ジオン軍のモビルスーツに対抗するためのV作戦を4月1日に発動した。モビルスーツの開発を主とするRX計画と一週間戦争及びルウム戦役で失われた艦隊を再編成するための建艦計画であるビンソン計画を同時進行させ、戦力の増強と一大反抗作戦のチャンスを狙っていた。

地球連邦軍の大反抗作戦期(主にアニメで描かれた部分)

サイド7遭遇戦

9月18日、地球連邦軍唯一の宇宙基地であったルナツーに近いサイド7にて、極秘にテストを行っていた地球連邦軍の試作モビルスーツ群が、シャア・アズナブル少佐指揮下のモビルスーツ偵察部隊に発見され襲撃を受ける。

この時、RX計画によって試作されていた機体の多くを破壊されるが、試験のため稼働待機状態にあった試作モビルスーツ「ガンダム」に偶然民間人の少年アムロ・レイが乗り込み、ザクII 2機を撃破した。これが人類史上初のモビルスーツ同士の実戦と言われている。

この戦いでモビルスーツの母艦であるホワイトベースは、正規乗組員(特に幹部乗組員)の大半を失い、士官候補生を艦長代理とした外、訓練兵や下士官、民間人の協力者を主な構成員として再編成し、攻撃を免れた試作モビルスーツ3機(ガンダム、ガンキャノンガンタンク)を積み込み、サイド7の難民多数が同乗した状態でルナツーへ向けて出航する。

北アメリカ大陸、中央アジアでの戦い

ホワイトベースは、その後ルナツーへ寄港し、大気圏を突破して地球へ降下する。

しかし大気圏突入の際、シャア・アズナブルの攻撃によって軌道をずらされ、本来であれば南アメリカ大陸のジャブローに直接降下する予定がジオン軍が席巻する北アメリカ大陸東海岸近辺に降下してしまった。

北アメリカ大陸では、シャア・アズナブルの謀略にも助けられてザビ家の末子ガルマ・ザビを討ち取り、中央アジアではガルマの仇討ちとして追撃する「青い巨星」ことランバ・ラルの率いる部隊を全滅させた。

そして、オデッサ作戦直前には、オデッサ近郊で黒い三連星のモビルスーツ部隊を撃破した。

オデッサ作戦

ホワイトベース隊がランバ・ラル隊や黒い三連星と対峙していた頃、連邦軍は反攻の第一歩として、オデッサ作戦を発動し、マ・クベ指揮下のジオン軍が占領する鉱山地帯の中核オデッサの奪回を図った。

地球連邦軍は、ヨーロッパ・中東・アフリカ方面の地上・航空戦力を結集してジオン軍の数倍の戦力[2]を投入、激戦の果てにオデッサを奪回した。ジオン軍はエルラン将軍の内応工作に失敗して防衛線を突破され、宇宙・東南アジア・アフリカ・キャリフォニアなどへの退却か降伏を余儀なくされるが、この退却の際にジオンのマ・クベユーリ・ケラーネなど一部の司令官は南極条約で禁止された核兵器を使用している(ただし、ケラーネ中将に関しては、核ではなく燃料気化爆弾使用説もある)。なお、この時使用された核は戦略核(『THE ORIGIN』では戦術核)の可能性が高いと思われる。

TV版・劇場版ともに、映像で見る限りは黒い三連星以外のジオン軍のモビルスーツ戦力は映像に一切登場していないが、後のゲーム等では他にも複数のMSが参戦しているとされる。

ジャブロー上陸作戦

ホワイトベースは、北アイルランドベルファストを経由して南米のジャブローへ向かう。

ジオン側は、シャア・アズナブルが送り込んだ工作員によりホワイトベースの行き先を知っており、シャア指揮下の潜水艦隊マッドアングラー隊に尾行させつつジャブローへ戦力を集める。そしてホワイトベース入港によりジャブローの正確な位置及び侵入口が明らかになったため、ジオン軍はオデッサ作戦での敗北以降劣勢となっていた地上での軍事バランスを一発逆転すべく、地上軍を大量に投入してジャブロー攻略を決断する。

11月30日、ジオン軍はザクやグフドムなど、多数のモビルスーツを降下させ、地上から攻撃する一方、水陸両用モビルスーツからなる工作隊が水中からジャブローの奥に侵入、完成したばかりの地球連邦軍の量産型モビルスーツジムの工場に時限爆弾を設置するものの失敗に終わる。またジャブロー側の抵抗も激しく、投入したモビルスーツ部隊もシャアの駆るズゴックを除く殆どが撃破され、ジオン軍は撤退する。

オデッサ作戦での敗北、そしてこのジャブロー攻略の失敗によって、地球上のジオン軍は戦力を大幅に喪失し、地上での劣勢は決定的となり、以降は守勢に回らざるを得なくなる。

その後、地球連邦軍はビンソン計画により建造していた戦艦群を大量に宇宙へ打ち上げる。宇宙における一大反抗作戦のための戦力である。

チェンバロ作戦(ソロモン攻略戦)

12月24日、地球連邦軍は、練度は低いものの大規模な集団で援護しあうモビルスーツ隊の戦術や、ソーラ・システム等の投入による対宇宙要塞戦術等を複雑に組み合わせて高度にシステム化した上、地球連邦軍の底力とも言える数の力の助けを借りた戦術を駆使し、ホワイトベースを始めとする数隻の艦艇をおとりに使って本隊の侵攻ルートを隠すという周到な準備の後、ジオン軍の宇宙要塞ソロモンへ侵攻する。

地球連邦軍はこの戦いでソーラ・システムを使用。多数のミラーで巨大な凹面鏡を造り日光を一点に集めるという、太陽炉の原理を応用した原始的なものだったが、ジオン軍は正面の第三艦隊(おとり艦隊)に気をとられてソーラ・システムや主力の第二連合艦隊に気付かず、さらにキシリアからの増援を拒否していた。その結果、ソーラ・システムの照射を浴び、ソロモンのジオン軍は甚大な被害を受け、ソロモンの司令官ドズル・ザビ中将はソロモンの放棄を決定する。

その後、ドズル・ザビは自らモビルアーマー ビグ・ザムに搭乗し出撃、ソロモンから脱出する艦艇の時間稼ぎのため、地球連邦軍第二連合艦隊を攻撃、ソロモン攻略部隊司令ティアンム中将の乗艦を撃沈するなど艦隊に大損害を与えたが、ビグ・ザムは撃破されドズル・ザビも戦死、ソロモンは陥落する。

なお、戦いの経過の詳細については、ソロモンの項が詳しいので参照されたい。

ソーラ・レイ照射

地球連邦軍は、ソロモンを占領し、コンペイトウと名付け、引き続く星一号作戦に備える。

そして再編成が完了した地球連邦軍は、星一号作戦に参加するレビル将軍率いる艦隊をコンペイトウから第一艦隊を出撃させた。その後、第二艦隊、第三艦隊も順次出撃している。

一方、ジオン公国のギレンは、ソロモン陥落頃からサイド3のコロニーの1つ「マハル」の住民を強制退去させ、コロニーレーザー(直径6Kmのコロニーそのものを転用した超巨大レーザー砲)「ソーラ・レイ」に改造し、ソロモン陥落直後の12月25日、公王のデギン・ソド・ザビから、その使用に関する裁可を得た。

ギレンに必ずしも賛成でなかったソーラ・レイ計画に関する書類への裁可の署名を押し切られ、無力な傀儡と化したことを悟ったデギンはギレンの暴挙を懸念し、和平のため地球連邦軍の遠征部隊の最高指揮官であるレビル将軍と接触を図ろうとする。しかし、このデギンの動きはギレンに筒抜けだった。

12月30日21時05分、レビル将軍直属の艦隊とデギンの乗艦「グレート・デギン」が接触した時、ジオン軍のソーラ・レイがギレンの命令によりレビル将軍の第一艦隊に(というよりグレート・デギンに)向けて発射され、レビル将軍とともにデギン公王も死亡した。ギレンにとって、父デギンはもはや有害無益な存在だったのである。

これによりレビル将軍とデギン公王は死亡、地球連邦軍は戦わずして全軍中枢の30パーセントを遠征部隊の司令官と共に失い、また要塞攻略の切り札、ソーラ・システムを搭載していた輸送艦も消滅してしまう。

星一号作戦(ア・バオア・クー攻略戦)

12月31日、地球連邦軍は現地の最高指揮官を失った混乱の中、艦隊を再編成した。星一号作戦は、宇宙要塞ア・バオア・クーをやり過ごして直接サイド3本土に侵攻する作戦だったが、地球連邦軍本部は、機密とされた作戦内容を知る現地の最高指揮官であるレビル将軍を失ったこと、ソーラ・レイを再度使用される事への恐れなどから、迅速かつ決定的な戦果を得るために作戦計画を変更、作戦時間を大幅に繰り上げてア・バオア・クーに目標を変更した。

ア・バオア・クーは、月面基地のグラナダとともにジオン本国防衛の最後の拠点であることから、ギレン・ザビは妹キシリア・ザビと共にここで直接指揮を執り、この戦闘は両者の総力戦となった。

当初ジオン軍は、Nフィールドで地球連邦軍本隊の攻撃を退けて優位にたっており、勝利の兆しが見えたとする余裕すらジオン軍司令部には見られた。しかし、その時点で「父親殺しの大罪を犯した」としてキシリアが司令席のギレンを殺害、文字通り「後釜に座って」司令席に着いた。

このことは、指揮系統の混乱を発生させ、ジオン軍の防戦に一瞬隙を作ることになった。

地球連邦軍は激戦の中、ギレン殺害に伴うジオン軍指揮系統の混乱に乗じてジオン軍における防衛の要である2隻のドロス級大型空母(ドロス、ドロワ)を撃沈し、さらにSフィールドの別働隊もガンダムの勇戦もあってア・バオア・クー内部に侵入、ジオン軍は勝利の兆しどころか敗色が濃厚となった。

ザビ家最後の指揮官であったキシリアも脱出準備中にシャア(キャスバル・レム・ダイクン)により暗殺(公式記録では乗艦の撃沈による戦死)される。これによりザビ家は事実上滅亡、ジオン軍も壊滅状態となった。一方の地球連邦軍も、主戦力のほとんどをこの戦いで使い果たしてしまう。ホワイトベースとその搭載MS隊もア・バオア・クーに不時着の末撃破されるが、乗組員たちはかろうじて脱出に成功した。

なお、戦いの経過の詳細については、ア・バオア・クーの項が詳しいので参照されたい。

終戦

その後、月面都市グラナダにて、地球連邦政府とジオン共和国政府との間に終戦協定が締結され、0080年1月1日15時00分をもって停戦が成立し、一年戦争はジオン共和国の降伏という形で幕を閉じた。

戦後処理とその後の影響

ジオン共和国に対する戦争責任の追及は、終戦処理の過程で地球連邦政府の懐柔という形でうやむやにされ、責任は旧公国、すなわちその指導者だったザビ家一党にあると見なされた。その責任を負うべきザビ家(の直接的戦争加担者)が全員死亡しているため、戦争責任は発生しないというのが地球連邦政府の方便であった。

地球連邦軍では戦時中、最も活躍したホワイトベース隊を英雄に祭り上げ、戦争のプロパガンダとして最大限に利用し、「独裁専制のジオン公国をうち破った解放者」としての軍隊を宣伝する。

しかし、一年戦争後の地球連邦政府の前途は難問が山積みであった。開戦前110億人だった人口は55億人に減少し、地球はコロニー落下の影響により異常気象に見舞われ、農業が奮わず食糧自給率が低下。ほとんどの若年層は兵士に徴用されて(年少兵も多かった)労働力も激減し、銃後の老人や子供の死亡率もけっして少なくなかった。加えて地球連邦政府及び軍の上層部でも、レビル将軍はじめ有能かつ良識的な人材が戦場で数多く失われたのに対して、レビルが「ジャブローのモグラ共」と評していた腐敗した高級官僚や上級将校は生き残って再び自らの権益の確保に腐心した事から、行政、治安は悪化の一途を辿った。

高まる民衆の不満の矛先をかわすため、地球連邦政府は旧ジオン国民を始めとするスペースノイドに対する憎悪と差別を煽って彼らへの弾圧を強め、遂には一部のアースノイド至上主義者により結成された特務部隊ティターンズによるスペースノイド虐殺事件・30バンチ事件に至る。対してスペースノイド出身者を中心に反体制の動きが強まり、エゥーゴ(反地球連邦運動組織)の誕生に至る事になる。

宇宙ではジオン共和国のサイド3、中立施策によって戦火を免れたサイド6、不可侵とされていた月の各都市以外は壊滅的な打撃を受けた。こうした諸問題に対し地球連邦政府が取った政策は再び強権的とも言える各スペースコロニーへの支配力強化と搾取であった。戦争は終結したものの、後の戦乱の火種は既に生まれていた。

また、ジオン軍の多くは拠点を失い(ソロモンは地球連邦軍基地、ア・バオア・クー、サイド3はジオン共和国の管理下になった外、地球上において占領した基地は地球連邦軍に奪還された)地球連邦軍に投降したが、ア・バオア・クー攻防戦参加部隊、グラナダやサイド3の駐在部隊には、投降を良しとせず逃亡し、戦力を維持したまま潜伏する者達も数多くいた。また、地球上で終戦を迎え、投降を良しとしなかった者は、そのままアフリカなどでゲリラ化した。

残存艦隊の一つデラーズ・フリートは、宇宙の暗礁空域(戦争により壊滅したサイドのあった宙域)で戦力を保持したまま潜伏する。シャアをはじめとするグループは小惑星帯の宇宙要塞アクシズにドズルの娘ミネバ・ラオ・ザビを伴って逃亡し、それぞれ捲土重来の機会を窺うことになった。

地球連邦軍は、一年戦争で疲弊し、こうした地球連邦政府にとっての非合法武装組織の掃討を徹底できなかったため、宇宙世紀0083年のデラーズ・フリートの蜂起デラーズ紛争)や、0088年のハマーン戦争第一次ネオ・ジオン抗争)、0093年のシャアの反乱第二次ネオ・ジオン抗争)など、ジオン派の武装勢力による争乱はその後も繰り返されることになった。そして、ミノフスキー物理学時代の主力兵器としての地位を確立したモビルスーツも、それらの戦乱を通じて活躍し、進化を遂げていったのである。

脚注

  1. この戦役に際してジオン軍は戦艦4隻・巡洋艦78隻・その他艦艇34隻・モビルスーツ2920機とガトル戦闘爆撃機400機を投入したのに対し、連邦軍の戦力は戦艦48隻・巡洋艦163隻・その他艦艇202隻・戦闘機300機というものであった。確かに戦闘艦艇では連邦軍が三倍弱の数を投入しているものの、航空兵力では逆にジオン側が8倍の戦力を投入している計算であり、一般的に言われる『三倍の戦力差』の実態にはやや疑わしい点もある。
  2. 連邦軍が後方支援を除いて400万を投入したのに対し、ウクライナ地方に集結したジオン軍は90万の兵力であった。後方支援の370万と併せて、連邦軍は地上兵力の三分の一をこの作戦に投入したとされる。

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