大型自動車
大型自動車(おおがたじどうしゃ)とは、日本における自動車の区分のひとつで、車両総重量11,000kg以上、最大積載量6,500kg以上、乗車定員30人以上の四輪車を指す。大型自動車第一種免許、大型自動車第二種免許(以下それぞれ「大型免許」、「大型第二種免許」と略記)の運転免許でのみ運転することができる。略称は大型。
なお2007年6月2日施行の法令改正により、区分の下限が従来の車両総重量8,000kg以上、最大積載量5,000kg以上、乗車定員11人以上から変更された(詳細は後述)。
道路運送車両法では四輪の「普通自動車」に分類される。
目次
免許制度[編集]
かつての自動車免許には、大型免許と言う区分は存在せず、普通自動車免許(以下「普通免許」と略記)を持っているだけで大型自動車相当の自動車を運転することができたが[1]、1956年8月1日に大型免許と普通免許に区分され、普通自動車のうち乗車定員11名以上の自動車及び最大積載量5,000kg以上の貨物自動車は普通免許で運転することができなくなった。このとき普通免許を所持していた者は第二種運転免許の新設と合わせて大型二種免許に免許区分が変更された[2]。ただし、道路交通取締法施行規則の運転できる自動車の種類では大型自動車ではなく普通自動車のままである。1960年の道路交通法制定時に大型自動車の区分が明記された[3]。
当初は18歳以上で普通自動車の運転経験がなくても直接大型から受験できたが、相次ぐ大型自動車の事故により、1967年試験方法を改正し、大型免許の受験可能年齢を20歳以上で、かつ普通免許あるいは大型特殊免許を取得後2年以上の運転経験をもつ者に限定することとなった[4]。
1994年の道路交通法改正により、それまで運転免許試験場での受験しか取得方法がなかった普通第二種免許と大型第二種免許について、普通自動車と同様に指定自動車教習所での教習が可能となり、卒業検定に合格すると技能試験が免除されるようになった。
2007年の法令改正施行による中型自動車免許(以下「中型免許」と略記)(第二種を含む)の新設に伴い、大型免許(第二種を含む)がなければ運転できない車両規模の下限が、改正前の特定大型車(政令大型車)に相当するものに変更された。この(新)大型免許については、21歳以上で3年以上の運転経験を持つ者が受験資格となる[5]。
この改正で試験車両が試験場・教習所いずれも変更となり、大型一種免許ではいわゆる増トン車(4トン車サイズで5.5 - 7トン積載、全長約7 - 8m)がそれまで多く使われていたがフルサイズ(全長約12m)の大型車両に変更となっている。また試験場での受験でもそれまでは場内(構内)のみの試験であったが、改正後は場内(構内)試験に合格して大型仮免許の交付を受けてから(大型免許取得3年以上か大型二種免許取得の経験者、或いは技能教習に従事する指定自動車教習所の教習指導員に同乗してもらい)1日2時間の路上練習5日以上が必要となった。この路上練習が終わってからでないと路上試験[6](構内+公道)を受けられない。路上練習に必要な大型免許所有者と大型車両を揃える事は簡単ではなく、このため改正前と比べて試験車両の車体サイズが大きくなったことと併せて試験のハードルが高くなった。
当該改正前に大型免許(第二種を含む)を受けている者は、改正後も新たに試験・補講等を受けることなく(新)大型自動車を運転できる。ただし、特定大型車の運転資格が無い場合には(新)大型自動車(従来の特定大型車)は運転できない[7]。なお、今回の改正前に大型自動車免許を取得したドライバーは、11t以上の大型やマイクロバスなど運転も運転できるにも関わらず免許証には「中型車は8t未満に限る」という表示がされる。旧普通免許保持者(8t未満限定中型)でも改正後に大型免許を取得した場合、8t未満限定の条件が無くなる場合がある。8t未満限定の条件のある大型運転手が更新時の適性検査で深視力などに不合格の場合は、8t未満中型免許に格下げになるが、改正後に大型を取得した運転手は総重量5tまでしか運転できない新普通免許に格下げとなる。改正前に大型免許を取っていた人でもその後、中型二種もしくは大型二種を取得した場合、8t未満限定が解除されることがあるので注意が必要。
大型免許(第二種含む)で運転できる車両は、牽引免許が必要な牽引自動車を除く四輪車及び50cc以下の原動機付自転車、小型特殊自動車である。大型特殊自動車は大型という名称が入っているが大型免許では運転できない。大型特殊免許でのみ運転可である。
大型自動車の特徴[編集]
- 車体が大きいため普通自動車に比べ機敏な動作が難しく、また車高の高さに伴う死角の大きさなどから、歩行者、特に小さな子供や高齢者の飛び出しなど予測不能な行動には対処しにくいとされる。
- ホイールベースが長いために内輪差が大きい。右左折時には車両内側の物と接触しないか確認が必要である。もちろん普通自動車でも確認は必要だが、内輪差が大きい分より慎重な確認が必要である。
- 車両前方のオーバーハングが大きいために乗用車ではあり得ない、車両前方を路面からはみ出させる運転操作が可能であり、また必要でもある。運転免許試験場や指定自動車教習所ではこの操作を必ず要求される。実際の路上では多くの場合ガードレールがあるためそれほど頻繁に行なう運転操作ではないが、それでも時に必要ではある。
- ハンドルを切れば、後輪より前の車体部分がハンドルを切った方向に曲がると同時に、後輪より後ろの車体部分はハンドルを切ったのとは反対の側に振れる。例えば、左折時には後輪より後ろの車体部分は右側に振れ、時として右隣の車線にはみ出る。この事は普通自動車も同様だが、普通自動車ではオーバーハングが短いためにこの事をそれほど意識しなくてもよいのに対し、大型自動車ではオーバーハングが長いために強く意識する必要がある。
- ボンネットバスのような例外もあるが、現代の大型自動車のほとんどはキャブオーバー形態であるため、操舵輪である前輪はトラックでは運転者のほぼ真下、バスでは後方にある。そのため運転者から見たハンドルを切り始めるタイミングは普通自動車に比べ、かなり遅くなる。
- 後二軸の車両では、旋回時にも後輪は直進を続けようとする力が強い。そのため状況によっては前輪が負けてしまってハンドルを切っても切ったようには曲がらない事がある。広さだけから見ればハンドルを大きく切りさえすれば曲がれるはずの角でも、積載・路面・勾配によってはあえてハンドルを少ししか切らずに前後進を繰り返しながら何度かに分けて曲がる必要がある。
- ナンバープレートは大板サイズになっている。
自動車重量税を基準とした大型自動車[編集]
自動車重量税は、一般的に、自動車購入時や車検の時に同時に納付する。また、自動車重量税は、同じ乗用車(ナンバープレートの分類番号の上1ケタ目が3・5・7)でも、500kg毎に納付額が異なるため、車検の料金表などでは、車両重量が1500kgを超え、かつ、2000kg以下の乗用車のことを、大型自動車、または、大型乗用車と表記されていることが多い。なお、貨物車については車検の料金表などで大型貨物車と表記されることはなく、道路運送車両法に基づき小型貨物車(4ナンバー車 : 分類番号の上1ケタ目が4・6)と普通貨物車(1ナンバー車 : 分類番号の上1ケタ目が1)で分類し、さらに重量で細分化されている。
高速道路料金区分における大型車[編集]
高速道路の料金区分における「大型車」は道路交通法における大型自動車という意味ではなく、高速道路独自の区分によるものである。 高速道路によって料金区分が異なるが基本的には次の車両が大型車となる[8]。
- 普通貨物自動車(3車軸以下) 最大積載量5t以上または車両総重量8t以上[9]
- 普通貨物自動車(トラクタ単体で3車軸) 全車両
- 普通貨物自動車(単体で4車軸で車両制限令限度以下) 車長12m以下・幅2.5m以下・高さ4.1m以下・車両総重量(車軸に応じて)20-25t以下
- バス(中型) 車長9m未満・車両総重量8t以上・乗車定員29人以下
- 路線バス 車両総重量8t以上又は乗車定員30人以上
メーカー[編集]
日本のシャシ製造業者[編集]
- 日野自動車
- いすゞ自動車
- UDトラックス(ボルボの完全子会社)
- 三菱ふそうトラック・バス(ダイムラーの連結子会社)
日本以外[編集]
ヨーロッパ[編集]
北米[編集]
中国[編集]
- 東風商用車
- 一汽解放汽車/FAW
- 済南中国重型汽車
- 広汽日野汽車
韓国[編集]
東南アジア[編集]
- サムコ
- アショック・レイランド
- アイシャー・モーターズ
- アダム・モーター
脚注[編集]
- ↑ 1933年11月1日から小型免許が存在している。(1948年に小型自動車(第一種)、1949年に小型自動四輪車免許に名称変更。
- ↑ 道路交通取締法施行令附則2項の1(1956年7月31日政令255号)ただし、この時点で満21歳未満の者は大型免許に免許区分が変更され、21歳になった時点で大型二種免許に変更された。
- ↑ 乗車定員30名以上、車両総重量8,000kg以上、最大積載量5,000kg以上で特殊自動車、自動三輪車、自動二輪車、軽自動車以外の自動車(道路交通法施行規則第2条(1960年12月20日施行))
- ↑ ただし、特例として自衛官に限り19歳以上で普通自動車の運転経験がなくても受験可能とされた。この場合、当該自衛官は一定の年数を経るまでは自衛隊用でない一般の大型自動車は運転できない。
- ↑ 自衛官のみ19歳以上・本来教習で使用されている73式大型トラックは法改正後中型免許の範囲であるが、特例により部隊内に設置されている自動車教習所で受験する場合に限り、改正後も部隊運用の関係上大型免許として取得する。この場合取得免許の条件欄に「大型車は自衛隊用自動車に限る」と記載され、民間の大型自動車に乗るためには自衛隊車両の限定解除を公安委員会で受ける必要がある。
- ↑ 公道試験が導入されたのは平成13年4月受講開始者以降であり、平成13年3月末受講開始者は構内のみの試験で2種を含む大型免許を取得できた
- ↑ この場合に運転できる車両は事実上中型自動車までとなるが、改正前の特定大型車の運転資格を満たせば運転できる。
- ↑ 基本的な料金車種区分表 ドラぷら(東日本高速道路が運営)
- ↑ 4tトラックの増トン車(積載5t~12t)などが該当