クラッシャー上司

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クラッシャー上司(クラッシャーじょうし)とは、労働問題にまつわる用語の1つ。気分の浮き沈みが激しく、部下のミスを執拗に責め、あるいは暴言を吐いたりして次々に部下をと休職や退職に追い込むなど、その言動で部下を次々と潰してしまう上司のことを指す[1]

元・東京慈恵会医科大学精神科教授の牛島定信筑波大学社会医学系教授の松崎一葉が命名した。

概要

言葉の暴力で部下を威圧し、執拗に攻め立てることにより自身の部署内の存在感を示そうとしたり、組織内での自己保身を図る[2]。自身に非があったとしても、それを認めることが絶対にできない性格であり、自身の非を指摘された場合は脅迫まがいの攻撃性を他者に向ける。職場で問題が起こった場合には、代わりに部下などを徹底的に責めることで自身の立場を守ろうとする[2]。業務能力自体は高い事も多く、クライアントや上司との間に問題が生じても、仕事量や論理構築能力(弁舌の能力)や過去の業務経験を利用して徹底的に論破し相手を黙らせ、マインドコントロールすることで物事の捉え方まで上司と同じになるように変えさせて強引に解決する能力も持つ。しかし、自分はその様な問題に陥った時でも不適応状態に陥ることはないため、目下の者に膨大な論理を使って説得を繰り返し、他人や部下を不適応に追い込んでしまう傾向が見られる[1]。かくして、部下として配属された者は日常的に強烈なプレッシャーストレスに苛まされ、次々と心を病んで辞職して行く[2]

人格が未成熟であり、極めて高いプライドを持つ反面、精神的に傷つきやすく気の小さい人物に多いとされ[2]、このような人物には、自身が鬱病に追い込んだ人数を武勇伝のように誇ったり、家庭においても配偶者を鬱に追い込んだりするなどの問題行動を起こしている場合が頻繁に見られる[3]

企業コンプライアンスの重要性が広く知られる以前の時代の会社組織では、この様な人物は「モーレツ社員」の一種として扱われ、組織内部の必要悪として黙認され、往々に社内で出世を果たしたタイプであった[1]。しかし、現在では貴重な人材を次々と食い潰すこのような人物の存在が組織に与える害悪が認識されており、部下を次々と潰してしまうクラッシャー上司の存在がパワーハラスメントとして問題視されるようになり、得てして退職者などにより「ブラック企業」という企業全体を問題視する表現と密接に結び付けられて語られる傾向が見られる様になった。ひいては企業が地元やインターネット上などで「ブラック企業」呼ばわりされる一因にもなりかねないため、企業にとってはコンプライアンスリスクマネジメントの推進、企業イメージの維持などの観点で障害と成り得る存在である。だが、「クラッシャー上司」本人自体は個人的な職務や営業実績という評価査定や人事考課に係る部分だけを見れば優秀な「やり手」ということも多く、得てして、その能力の高さや言葉の強さゆえに上司や同格の同僚も迂闊に手を出せず、対処に苦慮している間に、部内の雰囲気が著しく悪化したり、その人物が出世してしまい他の部署や管理職などさらに組織の広範囲にハラスメントを振りまくなど、結果的に放置したことで企業・組織にとってもより深刻な事態に発展してしまうことも起きる[1]など、時として会社組織にとって非常に悩ましい存在となることもある。

特徴

  • コミュニケーションに偏りがあり、上司から部下への一方向のみである
    • 部下が業務上の失敗をすると、長時間にわたり非難する。
    • 部下が過去に犯した失敗や、約束事などを引き合いにし、何度も非難する。
    • 上司の主張は実績や経験に裏打ちされた内容で、論理的には外見上正しいため、その内容自体への部下からの反論は非常に難しい。たとえ反論をしたとしても、それを上回る勢いで否定し持論を押し付ける。部下が少しでも自身のイメージと異なる行動をした時点で即刻矯正しようとする。
    • 自分の主張は長々と部下に伝えるが、部下の言葉は聞こうとしない。
    • 自分の過去の経歴や実績をやたらに持ち出し、部下の経歴や実績を執拗に非難する。
    • もっともらしい理屈をつけて業務命令を下すが、不備を指摘されて行き詰ると根性論を持ち出す。
    • 内容は正しくても言い方が攻撃的だったり、部下の能力ややる気を疑ったり否定するような話し方であることがあり、部下の心のうちに感情的な反発、強いストレスを引き起こすことがある。また、部下の自信を喪失させたり、自尊心を傷付けたりすることで、業務への前向きな気持ちや積極性まで萎えさせたりすることがある。
    • 部下が仕事の内容や過程を説明しようとすると話を途中で遮って、「言い訳するな、人のせいにするな、お前の考えは間違っている、だからダメなんだ」など輪をかけて激しい攻撃をしてくることが多い。そのようなことが重なると部下は上司に対し心を閉ざし、必要最低限以外のことは話さないようになり、それが部署内のコミュニケーション不足と業務効率の低下を引き起こしてしまう。
    • 論理や弁舌の面では優秀でも人格や情緒の面では未成熟であるため、部下に対する自分の指示や説教内容は完璧だと信じて疑わず、部下の気持ちを傷付けても全く気が付かない。
    • 自身は現場から離れて時間が経っている場合もあり、理想論を述べたり抽象的な話をする力には長けているが、指示に具体性や一貫性が欠けていたりすることも多く、それが原因で部下が混乱して業務の遂行に困難が生じる場合がある。そのような場合でも自身の非は一切認めず、部下にすべての原因があるかのような言い方をする。
  • 部下に過大なノルマや無理難題を突きつけ、達成できないものを無能者として扱う。
    • 仮にノルマを達成しても、その成果を褒めたり、または認めようとせず「できて当たり前」という認識でしか受け止めない。
    • 個人レベルでは人一倍優秀な上、自分と同じノルマを能力の劣る部下や新人にも当然のように押し付ける為、自分の課すノルマが不適当と気づかない。
  • 自分の指示による失敗を部下のせいにして、会社に報告する。
  • 部下を鬱に追い込んでも罪悪感を覚えず、むしろ自分こそ被害者だと感じる
    • 現在のクラッシャー上司に多い4〜50代が学生〜新入社員の頃は鬱病などの精神疾患をちゃんとした病気だと捉えず、ただの甘えや弱気でしかないと考える人が多いことも拍車をかけている。
    • 他の社員からは、なぜあんなに部下を潰しておきながら自らは出世するんだ、と不条理の代表例のように語られることもある。
  • 強烈なモーレツ社員であることも多く、誰よりも遅くまで残って業務に専念したり、熱心に勉強を行ったりして人一倍努力している場合もある。そのため言動は自信に満ち、専門的知識や業務知識は豊富で、個人としてプレーする場合は極めて高い能力を発揮する。そのため昇進する機会が多いが、マネージャーとしては致命的な問題が見られ、部下を精神的・肉体的に疲弊に追い込んでしまう。
  • いわゆるブラック企業では、クラッシャー上司ならぬクラッシャー経営者であることも少なからずある。この場合、被害者となりうる部下は中間管理職層である。

脚注

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 部下を潰して出世するクラッシャー上司は 「人格の未成熟さ」を抱えた危険な存在 - ダイヤモンド・オンライン
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 怒鳴る上司は扱いやすい 「気の弱さ」見抜き対処
  3. 「クラッシャー上司」

関連項目

外部リンク