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'''民営化'''(みんえいか、{{lang-en-short|Privatization}})とは、[[国家|国]]や[[地方公共団体]]が経営していた[[企業]]および[[特殊法人]]などが、一般民間企業に改組されること、運営が民間委託されること、さらには民間に売却されることなど、さまざまな形態を指して用いられている政治的な言葉である。
 
'''民営化'''(みんえいか、{{lang-en-short|Privatization}})とは、[[国家|国]]や[[地方公共団体]]が経営していた[[企業]]および[[特殊法人]]などが、一般民間企業に改組されること、運営が民間委託されること、さらには民間に売却されることなど、さまざまな形態を指して用いられている政治的な言葉である。
  

2020年1月15日 (水) 23:07時点における最新版

テンプレート:経済システムのサイドバー 民営化(みんえいか、Privatization)とは、地方公共団体が経営していた企業および特殊法人などが、一般民間企業に改組されること、運営が民間委託されること、さらには民間に売却されることなど、さまざまな形態を指して用いられている政治的な言葉である。

Privatization とは別な言葉である Corporatization も民営化と日本語訳される。

多くの場合、根拠法の廃止又は改正により商法上の会社となることを指す。一般には、公社公団現業事業などが特殊会社に移行することも「民営化」と呼ばれる。また、PFIによる半官半民の公営事業の委託も民営化ということがある。民営化の目的は効率化、サービスの向上、透明化、税金の納入による国民負担の軽減、債務の切り離し、労働組合の弱体化などである。総じて、政府による経済介入を減らす小さな政府政策に関連している。

逆に、国又は国の出資する特殊法人が民間会社の議決権の過半数を取得することを国有化という。

民営化の効果が出る仕組み[編集]

政府活動が肥大化していくことは、経済全体の資源配分を歪める結果となることがある[1]。民営化の動きは、公共部門が持っている非効率性を競争原理によって是正するといった狙いがある[1]。また公共部門の非効率性は、経営の赤字といった形でよくあらわれる[1]。経営の赤字から生じる財政負担が、民営化への原動力になっている[1]

自然選択からのアプローチ[編集]

国営企業と民間企業の違いは、根拠法に依って定められた独占市場の有無である。新規参入の激しい自由市場では自然選択説が適用でき、企業は市場環境により適応した別の企業に置き換わる。根拠法の廃止又は改正により、国営企業から独占市場を奪い市場環境を適切に定めれば、自然選択の力で最適化された企業を得る。 新規参入企業が国営の場合がある。民営化#諸外国での民営化のニュージーランドポストを参照。

株式市場からのアプローチ[編集]

民営化された国営・公営企業は通常株式公開される。段階的に株式を放出し、やがて市場がすべてを保持するようになった(国有分の株式が完全に放出された)場合、完全民営化と言われる。国によっては時限的に黄金株をつけるなどの工夫により市場の安定化を図るケースもあった。

市場によって保持される企業は利益増大が必須命題となる。このため各企業は利益をあげるよう企業努力をするようになる。利益が増大できない場合、市場から経営者の交代を求められる可能性もある。

また、利益が極めて薄い場合、株価が低迷し買収により効率化が図られることも考えられる。

資源配分からのアプローチ[編集]

完全な民営化のプロセスが整った場合、企業は価格と利潤の関係を適正化する。価格機構が正常化すれば、市場への供給に対して過剰や過少がなくなり、経済全体が効率化する。

供給過剰だった場合は、使用していた資源(リソース)を解放するようになるため、他の産業の活動を支援することになる。供給過少だった場合は、必要とされる量が供給されるようになるため、利用者の経済活動が活性化する。

実施例[編集]

民営化の一覧 も参照

諸外国での民営化[編集]

ロシア
ユコスなどのロシア国営企業
急進的な民営化(実質的な官有物払い下げ事件の連続)はミハイル・ホドルコフスキーの逮捕によって一時的に食い止められたが、2013年末に釈放されたこともあって、今なお政治的な駆け引きは続いている[2][3][4]
ドイツ
ドイツポスト
郵便、貯金、通信の3部門に分割され民営化。郵便部門のドイツポストは、ドイツの枠を超えて、国際的物流企業となったが、同社は、通常郵便の独占利潤をもって小荷物部門への国際事業展開を行っており、通常郵便に競合他社が事実上クリームスキミング[5]的に参入している日本とは事情が大きく異なる。
アメリカ
カリフォルニア州
電力事業
民営化に失敗し、カリフォルニア電力危機を引き起こした。
イギリス
イギリス国鉄
1994年に施設管理を行うレールトラック社と25の列車運行会社、13の軌道メンテナンス会社に分割民営化された[6]。レールトラック社は株主への配当を重視するあまり施設管理への投資を怠ったため、多くの重大な鉄道事故を引き起こし2002年に倒産、施設管理事業は国営企業のネットワーク・レールに引き継がれた。
ニュージーランド
ニュージーランド・ポスト
1987年に旧郵便電信省が郵便、金融、通信の3つに分割され、金融と通信部門は民営化され郵便部門は公社化された。金融部門はその後オーストラリア資本のオーストラリア・ニュージーランド銀行グループへ売却され、通信部門はアメリカ合衆国資本のベル・アトランティック社とアメリテック社へ売却された。郵便局の店舗数削減により国民へのサービスが低下したため、郵便公社傘下で国営銀行「キーウィ銀行」が2002年に設立された。
ボリビアの上下水道
世界銀行の指示により民営化したが、大幅な値上げにより反発を呼び、コチャバンバ水紛争を引き起こした。
韓国
大韓航空公社
1969年に韓進グループが引き受け大韓航空に改名、民営化。
韓国タバコ人参公社
2002年KT&Gに社名変更。民営化。
浦項製鉄
2000年韓国産業銀行が所有していた株式を全株売却。民営化。2002年にポスコに社名変更。

日本[編集]

一覧[編集]

詳細は 日本の民営化の一覧 を参照

民営化をめぐる事件[編集]

過去に民営化が検討された機関[編集]

公共職業安定所
関連事業分野が市場化テストの対象となっていた。当時盛んに政府の「改革」会議、経済財政諮問会議等で民営化が叫ばれていた(途中で叫ばれていた場所が改革会議から経済財政諮問会議に移動したのは、当時推進を主張していた八代尚宏民間議員が途中で経済財政諮問会議に移ったからである)。また、日本経済新聞など一部新聞中には社説等で民営化賛成論調での記事(八代尚宏民間議員が「経済企画庁」→「日本経済研究センター(日本経済新聞社と同じフロアにある組織)」の経歴であることと関係している)が書かれており、当時民営化を鼓吹し誘導記事で推進運動する日本経済新聞のような一部マスコミも過去に存在した。リクルート等が職業紹介事業に参入している中セーフティーネットの構築について国会で検討すべき課題は多い。リクルートは官民比較時に就職困難者をハローワーク側に誘導するなど不正行為もあったが、2006年市場化テスト評価委員会(座長=佐藤博樹・東京大学社会科学研究所教授。前述の八代尚宏も評価委員会のメンバーである)は2007年11月26日、2006年度に市場化テストモデル事業として実施した求人開拓事業の実績評価を行い、民間実施地域では、開拓求人件数、開拓求人数、充足数のすべてにおいて、国の比較対象地域の結果を大きく下回った。民間実施地域では、それぞれ同地域における平成17年度の国実施時の実績を下回り、開拓求人数1人当たり、充足数1人あたりのコストは国の比較対象地域よりもはるかに高くなっている、と公式に結論づけた。「民に任せた方が、サービスの質の向上とコスト削減を同時に実現できる」という民営化推進論者の主張に反し、民営化テストは国の連戦連勝の結果に終わった。
公立病院
岡山市では、すでに不採算だった岡山市立吉備病院が済生会に売却され済生会吉備病院となった。岡山県立岡山病院は地方独立行政法人化し、岡山県精神科医療センターとなった。今後も増加すると思われる。また、PFI方式(半官半民方式)では、県立中央病院と高知市立市民病院の機能を統合して、高知医療センターが開院している。しかし、前院長と民間会社社員が贈収賄で逮捕されており「官民癒着の温床」、民間のみ黒字で病院本体が赤字であることや、「下請け、孫請け」企業の悲惨な雇用実態などから「医療分野では失敗」の指摘もある[7]
一部の独立行政法人
一部報道では、造幣局印刷局等、収入に占める政府からの補助金の割合が低く、政府の補助の必要性が低いとされる法人の民営化が検討されている、と報じられた。この事態に関して、両法人は貨幣流通という国家の存立にかかわる事業を行っているから、民営化にはなじまないとする見解がある。
刑務所
民間企業が運営に一部参加するPFI方式による刑務所が美祢社会復帰促進センターを皮切りに現在までに全国で4ヶ所開所している。なお、PFIは民間活力を利用した半官半民方式であり、ここでいう「民営化」には該当しない。
日本放送協会(NHK)
詳細は NHK民営化 を参照
大阪市交通局など、各自治体が直営している公共交通事業

日本における民営化への反応[編集]

マスコミ報道における社会保険庁による相次ぐ不祥事や、いわゆる天下りの問題、高級官僚による接待などの官民癒着で公務員に対する印象の悪化もあって「身分保障のある公務員は仕事をしていない」、あるいは「民間より給与が不正に高い」との認識が広まり、日本では政治家が「○○を民営化する」とした場合「改革」をしていると好印象でとられることが多かったが、近年 いつ?では安易な民営化による弊害も顕著になっていることから、必ずしも歓迎されるとは限らなくなっている[誰?]。なお、公務員の労働環境は部署ごとに大幅に違い、選挙管理委員会など時期により極端に仕事が少なくなる部署がある一方で、かなりの激務である部署も少なからず存在する。

小泉純一郎総理大臣時代、いわゆる「郵政解散」の際に「郵便局の職員がなぜ公務員でなければならないのか」と訴え議席を伸ばしたことからも日本における国家機関の民営化あるいは公務員非公務員化は歓迎されたといえるが、安倍政権になり、中川秀直幹事長(当時)等がマスコミを通じ同様の公務員批判を行っていたが、参院選で議席を減らす大敗を喫していることから、公務員の非公務員化を必ずしも歓迎しているとは限らない[誰?]

一部の勢力・識者(特に対象とする国家機関が民営化されることによって利益を得る業界関係者)が主導となって「国家機関や公務員は民間より優遇されていて十分働いていない。民営化を推進する勢力は国民に利益をもたらす真の改革勢力」・「民営化によりサービス向上とコスト削減が確実に実現する」と主張している向きもあり、民営化が全てがうまくいくようになる「特効薬」ととらえられている部分も否めない[誰?]。そのため民営化は公務員の数を減らし改革の成果をアピールするための数合わせとなっている側面がある[誰?]

実際のところ、民営化は「官僚主義の脱却」→「競争原理の導入」→「サービスの向上」に繋がるとして肯定的なイメージがあるが、代償として(民間会社としては当然のことではあるが)利益優先主義に陥りやすく安全メンテナンスにどうしてもコストを割きにくくなる。その結果、恒常的に事故のリスクを伴う状況が発生する場合がある(実際にイギリスやドイツでは、鉄道民営化後に大事故が続発し批判されている。ただし日本に限ってはこの傾向は当てはまらず、JALJRでは民営化後に事故率は減少している)。よって民営化に際しては監視機関を設けたり、法による規制で一定の利潤追求の歯止めをかける努力が必要である[誰?]

民間企業は一度不祥事や大事故を起こすと消費者の信頼を失い淘汰への道を歩むことになる(食品偽装事件など)ため、安全性を向上させようというインセンティブが働くという主張もある[誰?]。利益が上がれば安全投資に回せる金額も増加するはずであるため、利益を上げることが問題なのではなく、利益を安全投資に回さず株主への配当などを優先してしまうことが問題なのだという指摘もある[誰?]。また、これも民間会社としては当然であるが、誰もが公平・平等にサービスを受けられるとは限らなくなり、会社にとって客側の要求を受け入れてサービスを行うメリット(対価など)があるかどうかで判断されるようになり、サービスに対するニーズがある人が対価を支払えずに受けられないと言った事態も容易に想定される[誰?]

防災・軍事・警察・消防といった、国民の安全・安心にかかわる分野は、現時点 いつ?では民営化になじまないとの見解が一般的であり[8]、社会保障などの「セーフティーネット」についても公営事業として行うかはともかくとして、国が責任を持つべきであるとする考えが一般的である。また民営化できると考えられる分野についても、単なる市場化が善という前提でよしとすることなく、民営化することによって国民へのサービスを向上させることが目的であるというのが本来の姿勢であるべきであるが、経済財政諮問会議の議事録などをみると、民営化により新たな公共事業の創造や、公務員の数を削減すること自体が目的となっている側面があることが指摘されている[誰?]

経済学者伊藤修は「民間委託が、低い人件費の非正規雇用の多用によるコスト削減であるのなら、喜んでいる場合ではない」と指摘している[9]

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 伊藤元重 『はじめての経済学〈下〉』 日本経済新聞出版社〈日経文庫〉、2004年、39頁。
  2. ロシアNOW ユコス元株主の訴訟の影響は 2014年7月31日
  3. 産経ニュース 露政府に5兆円支払命令 ユコス破綻めぐり 2014.7.28 21:43
  4. Bloomberg.co.jp ロシアに500億ドル支払い命令、ユコス問題で-常設仲裁裁判所 ロシア政府側の上訴方針 2014/07/29 02:47
  5. 利益の多いところだけに参入していいとこ取りをすること
  6. 民営化の後、減少の一途を辿っていた旅客数は過去最高のレベルに達したが、これについては民営化による効果によるのか、イギリス経済が好調である結果なのか、議論がある。
  7. 2007年10月17日付東京新聞
  8. これらの分野についても、日本では消防団、駐車禁止取締り活動など民間の協力によって担われている部分が少なからずあり、どこまで行政が責任を持つべきなのか議論となっている。
  9. 伊藤修 『日本の経済-歴史・現状・論点』 中央公論新社〈中公新書〉、2007年、258頁。

関連項目[編集]