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2014年8月28日 (木) 21:40時点における版
秩父鉄道株式会社(ちちぶてつどう)は、埼玉県北部に路線を有する鉄道事業、不動産業、観光事業を行う日本の会社である。本社は埼玉県熊谷市に所在する。
目次
概要
埼玉県北部を東西に横断する秩父本線(秩父線)と、貨物線である三ヶ尻線の2路線を保有・運営している。長瀞渓谷や宝登山を中心とする長瀞の観光開発を行ってきた会社でもあり、直営の「長瀞ライン下り」は大正時代からの歴史を有する[1]。
過去には、乗合バス、貸切バス事業、索道事業(三峰ロープウェイ)も行っていた。バス部門は秩父鉄道観光バスに分社している。三峰ロープウェイは廃止になっているが、子会社の宝登興業では現在も索道事業(宝登山ロープウェイ)を行っている。
太平洋セメントが筆頭株主であり、同社の前身である秩父セメント時代から行っている武甲山から産出される石灰石を運ぶ貨物輸送が盛んである(「諸井恒平」を参照)。
鉄道事業者では唯一のJASDAQ上場企業(証券コード : 9012)である。
会社の略称として「秩父[2][3]」「秩鉄」「ちちてつ[4]」「CTK[5]」(C.T.K.[6])が用いられることがある。しかし、駅での案内表示では「秩父線」や「秩父鉄道」が使われており、略称はあまり使われていない。
社紋は「上」の文字6つを円形に並べたものであり、「上武」を意味するとされる。上武鉄道として設立された時に作られたもので、秩父鉄道に改称した後も引き続き使われている。[7]
歴史
- 1899年(明治32年) 上武鉄道株式会社設立。本社:東京市日本橋区。
- 1901年(明治34年) 熊谷 - 寄居間を開業。
- 1916年(大正5年) 秩父鉄道株式会社に改称。
- 1921年(大正10年) 北武鉄道が羽生 - 行田(現在の行田市)間を開業。
- 1922年(大正11年) 熊谷 - 行田間が開業。秩父鉄道が北武鉄道を合併。
- 1930年(昭和5年) 羽生 - 三峰口間、全線開通。
- 1936年(昭和11年) 寄居自動車株式会社を買収。
- 1939年(昭和14年) 三峰索道(三峰ロープウェイ・第一次)開業。
- 1949年(昭和24年) 秩父自然科学博物館を開館。
- 1954年(昭和29年) 東武東上本線から乗入れ列車運転開始。
- 1964年(昭和39年) 三峰索道(第二次)開業。
- 1966年(昭和41年) 三峰索道(第一次)廃業。
- 1970年(昭和45年) 不動産業営業開始。
- 1979年(昭和54年) 貨物専用の三ヶ尻線(武川 - 熊谷貨物ターミナル間)開業。
- 1980年(昭和55年) 本社を熊谷市に移転。秩父自然科学博物館を閉館。
- 1988年(昭和63年) SL列車「パレオエクスプレス」運転開始。
- 1989年(平成元年) 秩父鉄道創立90周年事業として、三峰口駅に秩父鉄道車両公園を開園。
- 1989年(平成元年) 西武鉄道からの乗入れ列車運転開始。
- 1992年(平成4年) ATSを設置。東武東上本線からの乗り入れ中止。
- 1997年(平成9年) バス部門を秩父鉄道観光バスに分社。
- 2006年(平成18年) セメント輸送廃止。
- 2007年(平成19年) 三峰索道(第二次)廃止。
鉄道事業
鉄道2路線を有し、旅客・貨物輸送を行っている。PASMOは非加盟。現在、埼玉県内の鉄道会社でSuicaやPASMOなどのICカードが使えないのは当社だけである。現在の秩父本線終点・三峰口駅から秩父市大滝地区(旧大滝村)へ路線を延長する計画であったが中止となっている。三峰口駅の引き上げ線はその名残であり、かつては鉱山のホッパーまでつながっていた。また、大滝村方面にケーブルカーを建設する計画もあったという。
営業中の路線
廃止路線・区間
- 秩父本線 : 宝登山駅(現・長瀞駅) - 荒川駅(旧・秩父駅) … 1915年12月29日廃止、国神駅 - 荒川駅間に付け替え
- 秩父本線 : 国神駅(現・上長瀞駅) - 荒川駅(旧・秩父駅) … 1926年6月18日廃止
- 武甲線 : 影森駅 - 武甲駅 1.4km … 1984年2月1日廃止
未成路線
以下の路線の免許を得ていたが失効している[8]。白川村・大滝村とも現在は秩父市。
- 普通鉄道 白川村三峰口 - 大滝村 2.4km 1927年12月5日取得[9]、1936年2月19日失効[10](秩父本線の延長)
- 鋼索鉄道(ケーブルカー) 秩父郡大滝村地内 1.8km 1927年12月5日取得[9]、1930年12月26日失効[11]
運賃
秩父鉄道秩父本線#運賃を参照。
車両
地方私鉄にも斬新な高性能車が多数登場した1960年代までは、自社オリジナルの車両も製造していたが、近年は他社からの譲渡車両のみとなっている。譲渡元は複数の鉄道会社に及び、廃車後も三峰口駅構内で保存している車両があるなど、保存鉄道的な色あいを帯びている。
塗装
電車は1960年代は茶色に白帯、1970年代は茶色のツートンカラーで、1980年代に入ると黄色を基調に窓下に茶(急行用車は紺)のラインを配したオリジナルデザインをタクシー・バス車両など、グループ全般にわたり導入したが、1990年代に入ると電車は白地に青を基調とした塗装が主流となっている。ただし、2007年の鉄道博物館開館記念イベントから2009年の設立110周年にかけ、1000系のうち5編成を国鉄101系を模したカラーリング(オレンジバーミリオン [1011F(2010年廃車)・1003F(2011年より)]、スカイブルー [1001F]、カナリアイエロー [1012F]、ウグイス関西線バージョン [1009F])に、2編成を旧塗装(茶色ツートン[1002F]、黄色に茶帯[1007F])にそれぞれ変更している。
電気機関車はデキ103、デキ201、デキ505以外は青を基調に正面と車体裾に白帯を配する。この塗装はデキ107・108が松尾鉱業鉄道から持ち込んだもので、それ以前は茶色に車体裾に白帯を配するものであった。
現有形式
- 電車 - 他鉄道事業者から譲り受けた車両を使用している。5000系は前所有事業者では全車廃車になっている。
- 客車
- 蒸気機関車
- 電気機関車
- 貨車
消滅形式
- 電車
- 電気機関車
- 貨車
なお、かつて「パレオエクスプレス」で使用されていた旧形客車はJR東日本から借り入れたものであり、秩父鉄道の車両ではない。
車両数の変遷
年度 | 100形 | 300系 | 500系 | 800系 | 1000系 | 2000系 | 3000系 | 5000系 | 6000系 | 7000系 | 7500系 | 12系客車 | 計(冷房車) | ヲキ・ヲキフ100形 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1982 -1985 |
20 | 6 | 18 | 20 | 64 | 180 | ||||||||
1986 | 20 | 6 | 18 | 20 | 6 | 70 | 180 | |||||||
1987 | 10 | 6 | 18 | 20 | 21 | 75 | 180 | |||||||
1988 | 6 | 6 | 18 | 20 | 21 | 71 | 162 | |||||||
1989 | 6 | 18 | 16 | 24 | 64 | 162 | ||||||||
1990 | 6 | 18 | 36 | 60 | 162 | |||||||||
1991 | 6 | 18 | 36 | 60 | 162 | |||||||||
1992 | 6 | 36 | 16 | 3 | 61(3) | 162 | ||||||||
1993 | 6 | 36 | 16 | 9 | 67(9) | 162 | ||||||||
1994 | 6 | 36 | 16 | 9 | 67(9) | 162 | ||||||||
1995 | 6 | 36 | 16 | 9 | 67(13) | 162 | ||||||||
1996 | 6 | 36 | 16 | 9 | 67(19) | 162 | ||||||||
1997 | 36 | 16 | 9 | 61(27) | 162 | |||||||||
1998 | 36 | 16 | 9 | 61(31) | 162 | |||||||||
1999 | 36 | 16 | 9 | 61(33) | 162 | |||||||||
2000 -2005 |
36 | 9 | 12 | 4 | 61(49) | 138 | ||||||||
2006 | 36 | 6 | 12 | 3 | 4 | 61(49) | 138 | |||||||
2007 | 36 | 12 | 9 | 4 | 61(49) | 138 | ||||||||
2008 | 36 | 12 | 9 | 4 | 61(49) | 138 | ||||||||
2009 | 30 | 12 | 9 | 6 | 4 | 61(51) | 138 | |||||||
2010 | 27 | 12 | 9 | 6 | 3 | 4 | 61(52) | 128 | ||||||
2011 | 21 | 12 | 9 | 6 | 9 | 4 | 61(54) | 128 |
- 1982・83年は1月1日現在、84年以降は4月1日現在
- 『私鉄車両編成表』各年版、ジェー・アール・アール
保存車両
三峰口駅構内にある秩父鉄道車両公園で保存されているほか、同公園外でも以下の車両が保存されている。
- デハ102 - 埼玉県長瀞町・長瀞オートキャンプ場
- クハニ22要出典 - 埼玉県熊谷市・スナック
- クハニ20形 - 埼玉県長瀞町・長瀞オートキャンプ場
- クハ602 - 埼玉県熊谷市・秩父鉄道広瀬川原駅(留置、後に解体)
- 2000系(車番不明) - 埼玉県秩父市・資材置場
- デキ3 - 埼玉県熊谷市・運送会社敷地
- デキ4 - 埼玉県熊谷市・運送会社敷地
- デキ5 - 埼玉県秩父市・資材置場
- デキ101 - 埼玉県熊谷市・秩父鉄道広瀬川原駅(留置)
他にも貨車が多数売却されており、その数は把握できない。 各形式の項目も参照。
ロケ撮影など
鉄道線は、映画、テレビドラマ、CM撮影などで使用されることが多い。広瀬川原車両基地構内や熊谷駅構内、三峰口駅のプラットホームなどが撮影に使用されている。
- やしがにのウインク
- 東映の特撮ヒーロー番組には1970年代後半以降、多く登場している。
- 広瀬川原車庫
- 砂の器(ドラマ)
- 九死に一生スペシャル(ドラマ)
- 新幹線大爆破(映画)ただし設定は北海道夕張となっている
- テレビ朝日のスーパー戦隊シリーズ
- 仮面ライダーシリーズ
- 行田市駅 - ローソン (CM) 「行田駅」として撮影
- 皆野駅 - 黄泉がえり(映画)、ドラッグストア・ガール(映画)
- 野上駅 - 天体観測(ドラマ)
- 上長瀞駅
- 恋するハニカミ、大塚愛・金魚花火PV
- 烈車戦隊トッキュウジャー(特撮)第5話 シャドーラインに侵略されているときは「腹ペコ駅」で、怪人を倒した後は「大盛駅」に看板が変わっていた。
- 武州日野駅 - 時効警察(ドラマ)
- 熊谷駅 - 感染列島(映画)
- 秩父駅 - Gメン'75(ドラマ)第337話
索道事業(廃止)
関連会社
- 宝登興業 - 宝登山ロープウェイ運営
- 秩父鉄道観光バス - バス
- 秩鉄タクシー - タクシー
- 秩鉄ハイヤーが、(旧)秩鉄タクシーを吸収合併し、商号変更
- 熊倉高原センター - 飲食業
- 秩鉄かんぽサービス - 飲食業
- 秩鉄商事 - 卸・販売
- 秩父建設 - 建設・電気工事
- 秩父観光興業 - 旅行代理
- 長瀞不動寺奉賛会(非連結子会社)
- 秩父観光(非連結子会社)
脚注
- ↑ 秩父鉄道・長瀞ライン下り - 皆野町観光協会
- ↑ ヲキ・ヲキフ100形貨車では、社紋の下に「秩父」である。
- ↑ 秩父鉄道が発行している沿線情報誌「秩父鉄道ニュース」は、以前は「秩父沿線ニュース」という名前であった。現在もパンフレット等で「秩父沿線」という表現が使われている。
- ↑ 例として、公式通販サイト名が「ちちてつe-shop」である
- ↑ 急行用の6000系電車には、乗務員室近くの車両側面に「CTK」と描かれている。
- ↑ 100形電車には車両側面に「C.T.K.」と描かれており、保存車両を三峰口駅の鉄道車両公園で見ることができる。
- ↑ 秩父鉄道110年の軌跡(秩父鉄道)
- ↑ 森口正之著『鉄道未成線を歩く』 2001年 JTB p.187 の「大正・昭和期」における未成鉄道の失効路線一覧4
- ↑ 9.0 9.1 「鉄道免許状下付」『官報』1927年12月7日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ↑ 「鉄道免許失効」『官報』1936年2月19日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ↑ 「鉄道免許失効」『官報』1930年12月26日(国立国会図書館デジタルコレクション)
関連項目
外部リンク