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2022年9月5日 (月) 13:11時点における最新版
土石流(どせきりゅう、英語:debris flow)とは、土砂が水(雨水や地下水)と混合して、河川・渓流などを流下する現象のこと[1]。土砂災害の原因の一つ。山津波(やまつなみ)ともいう。
なお、日本の法令上は「土石流」について「山腹が崩壊して生じた土石等又は渓流の土石等が水と一体となって流下する自然現象」と定義されている(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律2条)。
発生のメカニズム[編集]
土石流は、集中豪雨が主要因となる[2]。発生のメカニズムは大きく次の3つに区分される場合が多い。
- 渓流内に堆積している不安定な土砂が、集中豪雨等による異常な出水のはたらきで流動化し、土石流となる場合。
- 集中豪雨、あるいはその他の自然現象が原因となり発生した山腹崩壊(土砂崩れ)の崩壊土砂が、多量の湧水や表流水を得て流動化し、渓流内に流れ込みそのまま土石流化する場合。なお、このケースの物理的なメカニズムは未だに解明されていない。
- 集中豪雨、あるいはその他の自然現象が原因となり、地すべりや山腹崩壊が発生した際、その崩壊土砂により河川が一時的に閉塞されて天然ダムを形成する。その後、湛水に伴う水位上昇により、それが決壊して土石流化する場合。
また、火山の噴火に伴う融雪[3]、火山湖の決壊、地震による山体崩壊[4]などに起因することもある。
鉄砲水との区別[編集]
流れてきたものが土砂の割合が多ければ土石流、水分の割合が多ければ鉄砲水と区別される。
対策[編集]
土石流の発生や流下する区間は、河川の勾配により推測することができる。一般に土石流の発生区間は、河床勾配15度以上の勾配を有する区間であり、8度を下回ると堆積が始まり、3度以下で水と土石が分離して停止する。ただし、実際に流下する際には、渓流幅の変化や流体中の石レキ成分比、含水率によって変化する[5]。
砂防事業による砂防ダム、治山事業による治山ダムなどの発生源対策、流下抑止対策。雨量観測及びデータ送信システムの整備、地域住民の伝達等の避難態勢の構築等が対策となる。
避難の目安[編集]
土石流の発生は、雨量計で把握できない局所的な集中豪雨が引き金となる場合もあり、地元自治体からの避難勧告はもとより、自発的な判断による早期の避難が安全につながる。特に、上流域での突発的な雷雨は危険である。現在地では天気が良くても、上流域で集中豪雨などがあった、山の方から聞いたこともない音(地鳴り、山鳴り)がする、普段は水が流れていない箇所から水が噴き出した、急に河川の水量が減ったなどの見慣れない現象は避難の目安となる。
また、一概には言えないものの、大川よりも、普段は流量も少なく幅も狭いが傾斜が急である河川で発生することが多い。土石流危険渓流に指定されている河川には特にその危険が大きい。
その他[編集]
文献にない土石流・泥流の痕跡を把握する方法として、地質層の上下関係の年代が逆転していないかを調査することで、発生したエリアと年代を特定することができる。
脚注[編集]
- ↑ 国土交通省トップ > 政策・仕事 > 水管理・国土保全 > 砂防 > 土石流とその対策 土石流とは
- ↑ 山口県土石流災害対策検討委員会(平成21年7月21日豪雨災害)の例
- ↑ 過去の災害に学ぶ(第15回)1926年十勝岳泥流災害(こうほう防災№42)
- ↑ 山地災害の記録-平成20年岩手・宮城内陸地震-(林野庁東北森林管理局パンフレット)
- ↑ 鮏川登『河川工学-土木教程選書』鹿島出版会、p.158、ISBN 4-306-02230-7
- ↑ 長野県建設部砂防課「蛇ぬけの碑」2013年8月25日更新、2014年7月10日閲覧。
- ↑ 宮澤清治「宮澤清治の防災歳時記 37 悲しめる乙女の像」『消防科学と情報 2004年夏号』消防科学総合センター、2014年7月10日閲覧。