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2013年5月26日 (日) 18:28時点における最新版
豊田商事事件(とよたしょうじじけん)は、金の地金を用いた現物まがい商法の会社による悪徳商法事件。
目次
概要[編集]
被害者数は数万人、被害総額は2000億円近くと見積もられている。被害者の多くが高齢者であったこと、解約に応じない強引な手口、会長の永野一男の刺殺、またこの殺人犯に対する温情判決などにより大きな社会問題となった。
年表[編集]
- 1981年、豊田商事の前身である、大阪豊田商事株式会社が設立。1982年に、豊田商事株式会社に改名。
- 1985年、その悪徳商法が社会問題化。国民生活センターなどにより豊田商事関連の110番が設置された。
手口[編集]
客は金の地金を購入する契約を結ぶが、現物は客に引き渡さずに会社が預かり「純金ファミリー契約証券」という証券を代金と引き替えに渡す形式を取った。このため客は現物を購入するのか確認できず、証券という名目の紙切れしか手許に残らない現物まがい商法(ペーパー商法)と言われるものであった。一応、豊田商事の営業拠点には金の延べ棒がこれ見よがしに積まれていたが、後の捜査によってそれは「ニセモノ」であったことが明らかになっている。
また勧誘に於いては主に独居老人が狙われたのも特徴的だった。まず電話セールスで無差別的に勧誘し、脈ありと判断すると相手の家を訪問する。家に上がると線香をあげたり身辺の世話をしたり「息子だと思ってくれ」と言って人情に訴えるなど、徹底的に相手につけ込み、挙句の果てにインチキな契約を結ばせていった。
豊田商事の同系会社の鹿島商事株式会社も、販売対象物を金からゴルフクラブ会員権に変えて、現物まがい商法に会員権商法を組み合わせた商法を行っていた。客が購入した会員権は自分ではプレーせず、これを豊田ゴルフクラブという別会社に賃貸してその賃貸収入を得るということを謳っていた。だが、当のゴルフ場は申し訳程度に営業しているだけであり、会員権には全くと言っていいほど資産価値は無かった。また同系会社のベルギーダイヤモンド株式会社は、マルチまがい商法によって資産価値の殆ど無い屑ダイヤを販売していて、催眠商法の手口も悪用されるなどして豊田商事本体と並んで多くの被害を出した。頓挫した事業としては、インドネシア海軍の機材納入企業の設立やハイチ共和国の国軍向け被服工場建設(ともに現地側の都合により実現しなかった)のほか、大洋商事(たいようしょうじ)という会社を設立して、オーストラリアや沖縄に陸海空に亘る総合レジャークラブを設立し、会員権を売り出そうとしていたが、オーストラリアでは外国人による土地取引に関する規制、沖縄では地元住人の反対運動により話が進まず、販売体制ができる前に豊田商事が行き詰まり、計画は頓挫した。
こうした詐欺的商法を行う会社の一方で、新聞を発行する海外タイムスや航空会社の公共施設地図航空、更には競輪の場外発売所賃貸及び投票券の販売代行を行う公営競技施設株式会社(会社は設立したが、競輪低迷により実現できなかった)などの企業が同系会社として存在し、グループの事業に実態があるかの様に装っていた。これら一連の企業を統括する親会社として銀河計画株式会社(ぎんがけいかく・「銀河の星の数ほどグループ会社を作りたい」というのが名前の由来)があり、更にその上に白道(びゃくどう)という統括会社(一説には宗教団体を目指していたと言われている)が存在した。
詐欺ではないと見せかける為、幾つかの信用力のある企業やブランド名の悪用やトヨタゴールドテレビCMを放映したり、芸能人をイベントで起用した事でも知られており、「豊田商事」という社名は、トヨタ自動車がバックについていると錯覚させるためのものであったが、トヨタを盗用した理由は、永野一男が中学校を出て最初に就職した先がトヨタグループの自動車部品メーカーである日本電装(現デンソー)であったためと言われている。当然のことながら、トヨタグループとは全く関係ない。トヨタグループの総合商社で豊田通商があるが、「豊田商事」と名前が似てしまったばかりに事実無根の風評被害をうけ、大損害を被った(因みに商法12条及び13条における「他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止」により類似商号を使用することは禁止されている)。また関連企業の鹿島商事は鹿島建設の系列企業を装い、ベルギーダイアモンドでは国内で仕入れた二束三文のダイアモンドしか扱わないにも拘らず、ベルギー大使館が新規開設のダイアモンド販売業者に対し、業者側から申し入れが有った場合に礼儀的に発行される挨拶文を掲載するといった、2000年代の詐欺や悪徳商法、セクトの手口としておなじみとなっている手法が使われていた。
背景[編集]
当時、金に対する国民の関心は高まっており、1981年に国内金輸入量は史上最高を記録。このため私設の先物取引市場が横行し、それに伴う被害も多く社会問題になっていた。豊田商事の前身の大阪豊田商事も私設市場を舞台に先物取引を扱っていた業者の一つだった。
このため商品取引所法が改正され、商品先物取引は政府が公認した市場で指定した品目に於いてのみしか認められない様にするなど、先物取引を規制する政策が打ち出された。この法規制を切っ掛けとして豊田商事は現物まがい商法へと商法を変えたと言われている。
被害者救済[編集]
破産時、売り上げの半分は従業員への給与の支払い(支店長クラスで基本給90〜140万+役職手当90万これに支店の売り上げの0.5%が加算される)会社の運営資金として、残り半分は永野個人の先物取引での損失や会社としての事業の失敗により殆ど消えており、豊田商事には資産といえる資産は皆無だった。永野一男個人も、殺害されたときの所持金はわずか711円だった。しかし、管財人となった中坊公平の率いるチームによって、今まで豊田商事が浪費した金が回収される。
中坊チームの資金回収は徹底しており、家賃敷金や高額の給料を貰っていた豊田商事の従業員が納めた税金まで回収し、その金額は100億円を越えた。回収に対する妨害行為も多々発生しており、一部の暴力団や金融機関等は、管財人チームへの詐欺行為による回収された資金の奪取や建物占有行為を実行した。
その後、特定商品等の預託等取引契約に関する法律が制定された。この法律により、金などの預託取引契約に対して、一定期間内なら、理由の如何を問わず契約を解除できるクーリングオフ制度が導入された(なお預託取引契約は、一般的なクーリングオフ制度と異なり、店舗外での契約だけでなく、店舗内での契約に対してもクーリングオフ制度の適用がある)。
報道機関[編集]
テレビ中継では、永野会長への「公開処刑」、及び、瀕死となった永野会長の姿が映り、暴力表現に関する問題に繋がった。
また一部の週刊誌(フォーカスなど)が殺害した犯人と血まみれとなった永野会長を載せ、社会的非難を浴びた。
なお、事件が起こる前後に事件現場前に多数のマスコミがいたため、各所で「マスコミは凶行を阻止できなかったのか」と言った自己批判の論調がマスコミに当時多かった。
当時はこの凶行には心情的理解を示す者も少なくなかった。それほど豊田商事の手法と被害の酷さは有名であった。その「殺人犯」2人に対して「10年以下の懲役」という温情とも思える判決が出た事実の背景には、そのような事情があったのではないかとの意見もある。
なお、逮捕された犯人たちは当初「騙された老人たちに依頼されやった」などと供述していたが、後に現場にいた報道陣が「やれやれ」と煽り立てたため犯行に及んだという旨の主張をし、報道機関に対し裁判も起こしている。
豊田商事に関連する事項[編集]
豊田商事の所有していた施設[編集]
- 慶良間空港
- 豊田商事の関連企業・公共施設地図航空が建設した空港。現在は、沖縄県が管轄する公共用飛行場(第三種空港)となっている。なお公共施設地図航空は路線撤退後も会社自体は現在も存続しており、福井空港での遊覧飛行などを行っている。
豊田商事から資金提供を受けていたスポーツ団体[編集]
- 全国マラソン後援会
- UWF
- 「第1次UWF」時代の後期、豊田商事がメインスポンサーになったことがある。この時は団体名を「海外UWF」と名乗った。
- 協栄ボクシングジム
- 上記と同じく、関連企業の「海外タイムス」が一時スポンサーとなっており、この時は団体名を「海外タイムス・ジム」と名乗った。
豊田商事から献金を受けていた宗教法人[編集]
- 浄土真宗親鸞会 - 昭和33年設立の富山県射水市に現在本部のある宗教法人。昔は高岡市にある会館が本部であった(新宗教)。
- 永野会長は、昭和57年6月頃、菊池商事の社長から勧められて、同社長が入会していた浄土真宗親鸞会の講話を聴きに行ったり、浄土真宗親鸞会の出版物『白道燃ゆ(高森顕徹著)』等を購読するようになった。その後、永野会長は、多くの人に迷惑をかけているのは事実だから、罪ほろぼしに社員にも浄土真宗親鸞会の講話を聴かせ、できるだけ財施もしたいと同社長に言い、浄土真宗親鸞会に献金を行っていた。
- ベルギーダイヤモンド名義で昭和59年3月24日から昭和60年3月28日まで、10回にわたり毎回300万円づつ計3000万円を浄土真宗親鸞会に寄附、昭和59年12月上旬から大体週1回位の割合で東京と大阪で、浄土真宗親鸞会から講師を招いて社員に法話を聴かせる会を催していた。そして昭和59年12月下旬頃の銀河計画の役員会議で賛成を得た上で、昭和60年4月11日頃銀河計画の名義で4000万円を、同月15日頃ベルギーダイヤモンドの名義で1000万円を、豊田ゴルフクラブの名義で5000万円を浄土真宗親鸞会に寄附していた(なお、寄附金の名義が分かる合計1億3000万円は、豊田商事破産後の昭和60年7月20日、浄土真宗親鸞会から破産管財人に返還された)。
- また、豊田商事では、昭和58年3月期に、大阪駅前第4ビル19階に多数の仏像を並べて、宗教法人を作る準備を進めていたが、工事が完成したものの、浄土真宗親鸞会のトップに据えようとしていた人物と永野が不和となって計画が中止され、結局取り壊されて、工事に要した費用約3億2700万円余は全く無駄使いに終っている。
- 判例時報1321号 豊田商事詐欺被告事件第一審判決 より分かることは以上であり、週刊現代1987年4月18日号には、「惨殺事件から1年10ヶ月で発覚!被害者憤激『豊田商事永野一男会長』から大量献金受けていた謎の「教団」の正体」」と名義分より多額の献金があったという記事が載っている。なお銀河計画の上に企業グループ全体を統括する「白道(株)」は、永野一男の株保有率が100%の会社となる予定であった。
豊田商事のCMやイベントに出演経験のある芸能人[編集]
- 千昌夫 - 販促イベントに出演経験があり、1983年2月21日のイベントで、純金を購入していると発言している(実際に購入していたかは不明である)。
- 中原めいこ - 豊田商事のテレビコマーシャルに出演経験がある。
- 春日八郎 - 販促イベントに出演経験がある。
- 西崎緑 - 販促イベントに出演経験がある。
- レツゴー三匹 - 販促イベントに出演経験がある。
- 石坂浩二 - 販促イベントに出演している所を写真週刊誌に掲載された。この当時トヨタ自動車のCMに出演していたため話題になった。
- 長門裕之・南田洋子 - 盛岡支店開設イベントに出演
元幹部が関与している企業[編集]
豊田商事事件を主要な題材とした作品[編集]
- 地獄の黄金 小説・豊田商事
- 豊田商事事件を題材とした大下英治の小説。取引の有った暴力団や新宗教団体の名称は、何らかの事情により仮名となっている。ただし、モルモン教(この企業にオーストラリア進出を進めた人物が所属していた企業の親会社スーザンインベストメントと関連が深い)の様に名称が出ている場合もある。
- 映画「コミック雑誌なんかいらない!」
- 土曜ワイド劇場15周年特別企画「金の夢は血に濡れて」- 片岡鶴太郎らが出演。
- 小説『マネーゲーム』久間十義(1988年1月、河出書房新社/1990年10月、河出文庫)
類似業者[編集]
債権回収や問題提起に拘った人物[編集]
豊田商事破産事件管財人弁護士団[編集]
- 中坊公平
- 豊田商事破産事件管財人弁護士団管財人。活動が「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」で採り上げられたが整理回収機構の不適切な債権回収の責任を取って弁護士廃業
- 坂本堤