「岐阜高校教師教え子殺人事件」の版間の差分

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鷲見敬子さん（22歳）

岐阜高校教師教え子殺人事件は、1986年（昭和61年）に起きた、岐阜西工業高校教諭・久世繁仁（当時38歳）による殺人事件。

概要[編集]

1986年(昭和61年)10月14日夜、岐阜県羽島市の中古車販売店の駐車場で、通行人から「何かが燃えている」と119番通報があり、消防署が駆けつけると、若い女性の黒焦げた焼死体が発見された。岐阜県警羽島署（現・岐阜羽島署）が、焼死体の指紋などを採取した結果、死体は元モデル・鷲見 敬子（すみ けいこ）さん（当時22歳）であることが判明。手首を縛られていたことから、警察は殺人の可能性が高いと見て捜査した。

10月19日、鷲見さんの銀行口座からキャッシュカードで現金36万円を引き出した男がいた。警察は、この男が犯人と断定し、防犯カメラに写っていた男を捜査した。その結果、岐阜西工業高校に勤務する美術担当の高校教諭の久世繁仁（当時38歳）であることが判明し、久世繁仁と共犯の元看護婦H（当時22歳）を殺人、死体遺棄容疑で逮捕した。

経緯[編集]

関係[編集]

久世は1979年に4月に他校から鷲見さんとHが通う郡上北高校に転任した。この時久世と2人は教師と生徒という関係になる（鷲見さんの1年後輩がH）。

久世は、一般の教諭とは異なり、服装から持ち物まで派手でいわゆるルックスが良いことで生徒に人気があった。一方、生徒に対するえこひいきが激しく、女性に対する性的暴力や強要が度々見受けられ、美術教師という立場を利用して女子生徒に「デッサンのモデル」と称してヌード写真を撮り、それをネタに脅迫する等、裏の顔を持つ問題教師でもあった。

鷲見さんは高校を卒業する1982年3月頃に久世と愛人関係になる。久世の勧めでモデル事務所に就職するが、僅か8ヶ月で退職。OLになるも1年で退職した。その後、久世の強い要請でソープランドで働くことになり、容姿端麗で若い鷲見さんはNo.1の売れっ子になりかなりの高給を得た。

しかし、久世はこの金をメルセデスベンツ、ランドクルーザーやローレックスの腕時計などを購入し、自身の給与取得額とは不相応な派手な生活をし、全て使い果たしてしまった。結局、鷲見さんは昭和61年までの約2年間で2000万円を久世に貢いでいた。

これに業を煮やした鷲見さんは久世に対し、今まで貢いだ金銭を返済するか、「奥さんと別れて一緒に暮らしてほしい」と結婚を迫るが、これを拒否すると「今までの関係を奥さんや学校にすべて告白する」と言い出したため、久世は鷲見さんに殺意を抱くようになる。

殺害まで[編集]

1986年10月11日夜、久世は自宅近くで愛車ランドクルーザーに鷲見さんを車に乗せ、「妻に見られたら困る」と騙して事前に購入した木箱（縦1m、横56cm、高さ70cm）に入れ、隠しておいた金槌で背後から頭などを数回殴打、さらに紐で首を絞めようとしたが抵抗されたため、箱に押し込めて施錠する。

その後、勤務先の学校の美術室まで木箱を運んで蓋を開けたところ、鷲見さんはまだ意識があり、「何でも聞くから、命は助けて」と哀願する鷲見さんに、久世は非情にも睡眠薬を飲ませ、両手首をビニール紐で縛ったうえ、タオルやクッション等を押し込み窒息死させた。

久世はそれから3日間、木箱を美術室に置いたまま平然と授業を続けるが、やがて死臭が気になったため、もう一人の愛人であるHを誘って手伝わせ、木箱を羽島市内の中古車販売店まで運び、鷲見さんの死体を木箱から出してガソリンをかけて火をつけた。

新聞各紙の報道[編集]

1986年10月20日（朝日新聞）[編集]

教え子殺人。犯行後、平然授業。「あの事件、お前じゃないか」現場の子に。「鑑識結果、何か知らんか」警官の子に

自分の職場である高校の美術教室で教え子を殺し、親しくしていた別の教え子に手伝わせて死体を焼く。元化粧品会社員鷲見敬子さん(22)が殺され遺体を焼かれた事件で、10月19日、殺人、死体遺棄の疑いで逮捕された岐阜県立岐阜西工業高校教諭久世繁仁(38)の犯行は、教育の現場を舞台にした異様な犯罪だった。

20日までの捜査本部の調べや学校関係者らによると、久世は犯行後も殺害現場の美術室で平然と授業を続け、生徒達に「あの事件、お前がやったんじゃないか」などと冗談めかして話していたという。

生徒の話では16日の美術の授業の時に、久世は「羽島の者はいないか」と話し始め、羽島市内の生徒を見つけて「あの事件、お前がやったんじゃないか」と笑いながら話した。クラスには警察官の子共が一人いるが、この子共には「鑑識の結果を何か知らないか」などと話しかけ、生徒達を笑わせていた。

1986年10月25日（読売新聞）[編集]

教え子殺しの久世。別の女性脅してた。ハレンチ写真タネに

岐阜県羽島市の元モデルの女性(22)の殺人事件で、岐阜県警羽島署捜査本部は、殺人、死体遺棄容疑で逮捕した元県立岐阜西工業高校教諭久世繁仁(38)が、他の教え子の女性についても、いかがわしい写真をタネに暴力団顔負けの悪質な脅しをしていたことを25日までに突き止めた。

これまでの調べだと、久世は美術教師の立場を利用、「君を見ていると、芸術意欲をかき立てられる。ぜひ、デッサンをしたいので写真を撮らせて欲しい。ネガは残らない」などと言葉巧みにインスタントカメラでヌード写真などを撮り、後で複写してネガをつくり、脅していた。

被害者はいずれも久世の教え子で4、5人。中には写真をバラされたくなければ2、3千万出せ。なければ特殊浴場で働け」と脅迫されたり、この写真で結婚話を壊された女性もいた。

1986年10月20日（読売新聞）[編集]

岐阜の女性焼死体、高校教師が教室で殺害。教え子の愛人と捨てる。

岐阜県羽島市の中古車展示場で今月14日、元モデル鷲見敬子さん(22)が絞殺され、遺体が焼き捨てられていた事件で、岐阜県警と羽島署は鷲見さんの高校時代の美術担当教師、岐阜西工業高校教諭久世繁仁(38)が、同校美術室で鷲見さんを殺害、鷲見さんと同じマンションに住む教え子で愛人の元看護婦H(22)と一緒に捨てたことを突き止め、2人を殺人容疑などで逮捕した。

<岐阜西工業高校教師　教え子殺人事件>

10月11日の夜、久世は敬子を自宅近くで、ランクルに乗せ、「妻に見られたら困るから」とだまして荷台に用意しておいた木箱に敬子を入れ、隠しておいた金づちで背後から敬子の頭などを数回、殴打。さらに、ひもで首を絞めようとしたが、抵抗されたため、箱に押し込めて施錠した。

久世は凶器になるような物が岐阜西工業高校にあると思い、一旦、同校へ行くが、このまま、敬子が死んでくれないかと思い、名古屋市内に戻って、再び、同校に行き美術室に入って、ふたを開けると、敬子が生きていて、「言うことを聞く。先生のことは誰にも言わない」と哀願した。敬子に睡眠薬を飲ませ両手首をビニールひもで縛った。

敬子は「先生に尽くしてきた。先生が私の夢を摘んだ」と訴えた。

裁判[編集]

• 1987年12月8日 - 岐阜地裁は久世に対し懲役15年、Hに対し懲役1年6ヶ月・執行猶予3年の判決。久世の両親が遺族に慰謝料を渡したことが大きな理由であったが、検察側は不服として控訴。
• 1988年6月21日 - 名古屋高裁は慰謝料が貢いだ金銭の返済分でしかないと認定し、一審の判決を破棄。改めて久世に対し無期懲役の判決。だが、久世が不服として上告。
• 1990年2月23日 - 最高裁は久世の上告を棄却、無期懲役が確定。

参考文献[編集]

• 斎藤充功・土井洸介『TRUE CRIME JAPANシリーズ４　情痴殺人事件』（同朋社出版、1996年）
• 下川耿史『殺人評論』（青弓社、1991年）
• 下川耿史『男性の見た昭和性相史 PART4』（第三書館、1993年）