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2009年9月14日 (月) 12:09時点における版
ユアペディアの荒らしは、ユアペディアにおける荒らしをご覧下さい。
この項目では、インターネット上での荒らしについて説明しています。その他の荒らしの用法については「荒らし (曖昧さ回避)」をご覧ください。 |
荒らし(あらし、Troll)とは、物事の順列を無作為に乱す事、または無作為に奪う事を指す接尾辞であるが、単独で名詞的に用いられる場合専ら、チャットや電子掲示板、ブログその他の、人間が参加する形態のコンピュータネットワーク上のリソースに対して、その目的に適合しないメッセージの送出やその他の妨害行為を継続的に行っている者、あるいはその行為を指す。
解説
荒らしの多くは悪意からなされ、その場の議論・コミュニティを破壊し、機能不全に陥れることを直接の目的とする。荒らしになるのは多くは「場の支配欲」からである。
荒らしはネットワークの場にふさわしくない投稿を続ける者であり、自分が荒らし行為をしているということを認めたがらない場合も多い。周囲に注意されたり、たしなめられたりすると、さらに荒らし行為に走り出したり、自分は間違っていないと開き直って反撃をしたりする。参加者の追及により、いったん反省の色を見せても、あまり時を置かずに再度荒らしだすこともある。
荒らしにさんざん手こづらされた人間は、荒らしへの人格攻撃を始めることもあり、この場合知らない人から荒らしに同情を集めてしまうことも多い。周囲の善意の意見を全く理解せず、叩かれても叩かれても執拗に食らいつくため、匿名掲示板を中心に荒らしの書き込みは「放置」して返信しないことが推奨される。
荒らしを発生させやすい土壌を放置しているような掲示板やホームページなどの個人サイトの運営者は、自ら荒らしを招いているとして批判される。だが荒らしは運営者にも執拗に絡み、運営者は冤罪を被っていることも多い。
なお、本人に荒らしているつもりは無くとも、周りの人間に荒らしのレッテルを貼られ、結果的に荒らしに仕立て上げてしまう事もある。更に、自分は荒らしではなく不適切な(問題な)スレッドに鉄槌を下している、とあくまでも善意でやっているという態度に出る者さえいる(結局スレッドを潰しているのだから荒らしには変わりない)。これに関連して、当初は、確かに好ましくないスレッドを潰していたが、潰し切ると今度は似た話題の通常スレッドを潰しに入り、これも潰し切ると今度は有益なスレッドにさえ牙をむき、完全な荒らしに豹変するケースも多い。
人気のあるサイトや管理人がよく巡回などしていると荒らしには遭いにくいということがある。運営者や管理人には荒らし出身者も多い。
大抵、確立されたルールやそれに基づく徹底した不適切な投稿の削除、管理人が荒らしの詭弁には耳を傾けない方針をとるなど、場に荒らしを排除する風潮が成立していれば、居場所のなくなった荒らしは、根負けして自然に出ていくか、発言を抑えるようになる。逆に参加者が荒らしの詭弁を見抜けずに耳を傾けてしまうと、管理人の立場が荒らしにより悪化させられて思うように管理が出来なくなり、場が荒れたままになってしまうこともある。
英語ではvandal(vandalism)という。他に、釣り用語のトローリングに引っかけて、「煽り」(参加者の感情を逆撫でするような発言)や「釣り」(参加者の反応を誘うような発言)など暴言や詭弁を吐いて議論を別方向にずらす事をTrollと呼ぶ。小倉秀夫はブログにおいてのこの現象をメディアスクラムに因んでコメントスクラムと命名したが、用語が適当でないとする人も多い。なお、ウィキペディアにおける荒らしは vandalism と言い、多くの言語でこれに準じる語を用いる。
荒らしの犯罪性
悪質性が高いものと判断された場合は、犯罪(電子計算機損壊等業務妨害罪・脅迫罪・名誉毀損罪等)として刑事事件に発展する場合もあると思われるが、現在までそういった判例はない。これは荒らし行為がクラッキング等のような、明確な文章で定義出来る行為と成り得る可能性が低く、単なる迷惑な発言で終わってしまう事が多いためである。かつて掲示板荒らしの権化と呼ばれたアリス・リデルは自著の中で、「最も迷惑かつ最も犯罪となりにくい行為」と呼んでいる。
荒らしが犯罪となりにくい理由は次の通りである。
- 判別しにくい
- 表面上荒らしとしか思えない投稿などであっても、そのコミュニティの履歴をよく調べない限り、第三者には荒らしなのか普通の投稿なのか分かりにくい。
- 該当する刑法がない
- 荒らしの多くは不正アクセスに関する法律等に該当せず、長期間に渡る明らかな悪戯や卑猥、または脅迫めいた発言、画像の貼り付け等を除けば、荒らし自体を禁止する法律は存在せず、立法しにくい。
- 損害が発生していない
- 荒らしプログラム等を使った荒らしであったとしても、使用者がその事を明かさない限り、判別は不可能である。また、コミュニティが利用者の投稿を使用法とする以上、単なる投稿でしかない荒らしは何の損害も与えない事になってしまう。(長期間に及ぶ嫌がらせ等を除く)
表面上を考えれば何らかの法律に触れそうなものであるが、荒らしそのものに対処出来る法律は今のところ存在せず、荒らし行為に付随した迷惑行為によって裁かれた判例しかない。また、仮に荒らしを禁止する法律を作ってしまえば、荒らしではない通常の発言等も巻き込んで該当させてしまう可能性を含むので単純には行かない。
発祥から今日へ
荒らし行為はその多くが、荒らし書き込みがしやすい事から、電子掲示板やブログなどに対してのものである。
掲示板"荒らし"やチャット"荒らし"などのように、Web上のコミュニケーションスペースにおいて、不快な参加者や書き込みに対して最初に"荒らし"と名づけたサイトは「サッカーカフェ」という電子掲示板であり、1996年春頃である。"荒らし"と名づけたヒントは、たまたま入居していたビル内の「ビル荒らしに注意」と書かれた掲示物が印象に残っていたためである。
荒らしの発祥は、インターネット電子掲示板の登場時期と重なる。パソコン通信の時代にも散見はされたが、当時は一般的利用者の通信料金が従量制であったがゆえに、参加者自らが多額の費用を支出して荒らし行為を行う事は少ないとも考えられ、少なかった。
近年は通信料の定額制の実現および普及とともに、一般的利用者による荒らし行為の増加を見ている。World Wide Webが普及する以前、ネットニュースにおいても、一部のニュースグループ(日本語のグループを含む)でコメントスパムが見られる事もあった。
インターネットにおいては、1995年にはすでに掲示板への悪戯で意地悪な書き込みが存在していた。しかしながら当時はまだ個人がCGI実行の可能なWebスペースを持てる機会が少なく、掲示板は専ら企業ベースでの情報交換や、ISP等がサービスとして運営するケースがほとんどで、匿名状態で閲覧投稿が出来る形式ではなかったことから、本格的な荒らしの被害は発生していなかった。
匿名での閲覧投稿が可能な、個人ベースもしくは小規模団体の運営する掲示板サービスがメジャー化してきたのは1996年に入ってからの事で、荒らしによる被害が具現化してきた時期も一致する。当時の荒らしはNetscape Navigatorのhelpファイルをコピーペーストするなど、巨大な文章を投稿するものが一般的であった。これは当時の通信環境が貧弱なものであり、また閲覧する環境においても、1MB程度のテキストを読み込んだだけでウェブブラウザがフリーズしてしまう脆弱性を悪用したものと思われる。
本格的に荒らしの被害が叫ばれるようになったのは1997年の初頭、当時のメジャー地下系webサイト、あやしいわーるど掲示板において、「ゲスッ」と名乗る荒らし集団が発生して以降の事である。彼らは自らを「インターネット愚連隊」と称し、目をつけた掲示板を様々な手法を用いて荒らし回り、次々と閉鎖に追い込んだ。同年冬頃に内部分裂で解散するまで、千数百の掲示板を破壊したと言われている。その中には、新聞沙汰にまで発展し国内初のサイバーテロ事件と呼ばれる「農水省オウムソング事件」等も含まれる。彼らの残した負の遺産は多大であり、「ゲスッ」消滅後も彼らの残した荒らし手法やプログラム等を悪用するスクリプトキディや、さらに高性能な荒らしプログラムを開発・配布する者の登場などにより、掲示板管理者は対策を立てることになった。
しかしながら「ゲスッ」消滅以降、集団で掲示板を攻撃するようなグループは今日に至るまでほとんど発生せず、また掲示板等のサイト等自体が荒らしに対抗する様々な措置を講じてきたため、今日において荒らしの被害は深刻な問題ではなくなってきている。しかし、その量は決して減っておらず、ネットワークの発達とともに逆に増加の一途を辿っている。ネットワークゲームの普及などもこれに拍車をかけている部分もある。
現在の荒らしとは、荒らし行為自体を趣味にしているようなグループによる犯行ではなく、そのネットワークの場の内容・主旨や参加している人々に反感を持った者が、一時的な感情に流されて行う迷惑行為がほとんどである。ただし、荒らし行為者の性質によっては執拗かつ大規模な荒らしを行うこともある。
また、組織的な荒らし行為が根絶されたと言う訳でもなく、現在も気に入らないウェブサイトを潰そうとしているネットウォーカーの集団は依然として活動しており、場合によってはエスカレートして攻撃目標の個人情報を不正に取得・公開する集団まで現れる事も時折ある。
荒らしの種類
- 場の目的にあわないメッセージの送出。例えば
- 意味不明な文字列や、意味のない文章の連続投稿。ただし「くぁwせdrftgyふじこlp」はインターネットスラングとして使われるので、荒らしと見なされることが少ない。
- (スレッドフロート型掲示板において)意味もなくスレッドを上げ続ける、age(上げ)荒らし。
- またはスレッドを人の目に付きにくくしながら、そのまま使用不能に陥れようとする、sage(下げ)荒らし。
- 新しく立ったスレッドに行われる、一番乗りまたは、特定の番号取得だけを目的とした無意味な投稿。スラッシュドットでは「First post」、Yahoo!掲示板では「キリ番ゲット」、「2ちゃんねる」等では「2ゲット」と呼ばれる行為。(2ちゃんねるでは、スレッドを立てた利用者の連続投稿を妨害する場合を除いて、荒らしと見なされないことが多い)
- 「書けるかな?」、「テスト」など、テスト行為の不適切な書き込み。
- 無意味、または見た人を不快にさせるアスキーアートやコピー・アンド・ペーストの貼り付け。
- これら行為を、レス数やデータ量上限が決められているスレッドで繰り返しスレッドを潰す、埋め荒らし。
- 荒らし行為を排除するため自主的に活動した際に結果として自分が荒らしになる行為。
- 活動理念そのものに違法性は無いが、経過によっては管理者よりも発言権が増し、電子自警団的に他のユーザーの書き込みを管理・削除等をするため、自由な投稿ができず結果として場を荒らしてしまう。
- 煽りや釣り行為を含む、その場の参加者・運営者への誹謗中傷。
- 上記の行為に反応して行われる、過剰な叩き(非難・指弾)行為、及びそれに便乗する行為。
- 自作自演行為。主に第三者のふりをして自分を擁護する発言をし、自らの行為を正当化しようとする場合に行われる。
- そのコミュニティの中核を成している人物のハンドルやそのサイトの管理人を騙り、意図的に他の参加者を錯乱させようとする、成りすまし行為。
- 意図的に、かつ過度に繰り返されるマルチポスト行為。
- ある特定の者や人物に執拗にまとわりつき、嫌がらせなどを繰り返す粘着行為。
- 荒らしプログラム(PerlDUKE・ドールリカ等)を使用した長時間に及ぶ迷惑投稿、またはDoS攻撃を行い、サーバをダウンさせ、ネットワークを使用不能に陥れようとする行為。
- 無修正ポルノ画像、児童ポルノ画像等、わいせつな画像を投稿する行為。管理者が掲載を放置しているとスポンサーサイト、サーバーユーザー側のほうで強制的に閉鎖させられる場合がある。ただしこれらは荒しを逸脱した完全な犯罪である。
- 浅はかな人による批判など
- 管理者による横暴な編集保護
対処法
一般的な荒らしに対しては、「警察に通報します」「やめてください。こんな事をして何が楽しいんですか?」などと反応するのは逆効果である。場の空気を乱す事が荒らしの目的だからである。また、対策を取った後で「荒らしさん、もう終わりですか?」と煽るのも良くない。掲示板の管理者はログを保全したうえで、無言で荒らしの投稿を消去すべきである。そして一時的に掲示板を停止し、荒らしが去るのを待つ。再開時にURLを変更するのも効果がある。スクリプトキディが繰り返し荒らしているのであれば、よりセキュリティの高い掲示板システムを使用することでも被害を防げる[1]。
- 荒らしは他人の反応を楽しみにしているもの、或いは逆恨みによるもの、特定の団体への信仰心等が殆どの為、相手にするとかえって喜ぶか逆上し、余計エスカレートする可能性がある。その為、全く相手にせず、ひたすら無視するのが最善と思われる。
- 無視し続けてもなお旺盛な活動を継続する荒らしも居るが、そのような場合でも、いずれにせよ相手にしてもしなくても、無視してもしなくても荒らし行為を続けるので、その場では相手にせず、別の管理的な対処が必要である。
- 比較的軽微なものについては、「その手の話題はメールへどうぞ」と軽く水を差すのも一手(各参加者のメールアドレスが分かる場合)。
- 運営者・管理者等に、荒らしメッセージの排除(削除、スレッド等の停止、書き込み規制など)を依頼する。
- 但し、荒らし行為の直後に排除行為を行うと、面白がって同じ行動を繰り返す事もあるので、緊急性が無ければ冷却期間をおいてから対処した方が良い場合もある。
- より悪質な荒らしに対しては、掲示板やチャットプログラム、及び関係機関を利用し、これ以上荒らし行為を行えなくする為の措置を講じる。例えば
関連項目
- 荒らしプログラム
- DoS攻撃(F5アタックなど)
- ネチケット
- 炎上 (ネット用語)
- 荒らし大王の一覧
脚注
- ↑ ばるぼら『教科書が教えないニッポンのインターネットの歴史教科書』「第2章 インターネットブームの光と影」153頁 これは、アンダーグラウンドでない一般的なサイトの掲示板が荒らされた場合の対策方法について述べられたものである。
参考文献
- ばるぼら『教科書が教えないニッポンのインターネットの歴史教科書』、翔泳社、2008年。ISBN 4798106577。