「螺鈿紫檀阮咸」の版間の差分
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− | 鹿頚(棹)には弦を手で押さえるための14の柱が取り付けられている。阮咸は「[[竹林の七賢]] | + | 鹿頚(棹)には弦を手で押さえるための14の柱が取り付けられている。阮咸は「[[竹林の七賢]]」の一人で、晋代の文人の名前である。阮咸は琵琶を善くし、音律に精通しており、好んでこの楽器を弾いたことから、楽器に阮咸の名がついた。[[奈良時代]]から世に現存する阮咸は正倉院にある螺鈿紫檀阮咸と[[桑木阮咸]]の2つだけである<ref name=nara>[[奈良国立博物館]](2021)『第73回正倉院展』仏教美術協会</ref>。 |
日本では[[奈良時代]]から[[平安時代]]に用いられた。[[唐楽]]の楽器として、宮廷や寺院における法要で用いられた。楽器としては阮咸(ルアンシェン)は清代にも作られている。[[月琴]]と似ているが、阮咸は月琴より棹が長い。中国では宋代から明代にかけて、短棹円形胴となり月琴の名称となった。 | 日本では[[奈良時代]]から[[平安時代]]に用いられた。[[唐楽]]の楽器として、宮廷や寺院における法要で用いられた。楽器としては阮咸(ルアンシェン)は清代にも作られている。[[月琴]]と似ているが、阮咸は月琴より棹が長い。中国では宋代から明代にかけて、短棹円形胴となり月琴の名称となった。 |
2021年12月4日 (土) 11:21時点における版
螺鈿紫檀阮咸(らでんしたんのげんかん)は、円い胴部に長い棹と螺鈿による装飾がある奈良の正倉院に保管されている4絃琵琶である。かって「秦琵琶」「秦漢子」とも言われた。唐で作られたものと考えられており、唐から遣唐使がわが国にもたらしたと推定される。
概要
鹿頚(棹)には弦を手で押さえるための14の柱が取り付けられている。阮咸は「竹林の七賢」の一人で、晋代の文人の名前である。阮咸は琵琶を善くし、音律に精通しており、好んでこの楽器を弾いたことから、楽器に阮咸の名がついた。奈良時代から世に現存する阮咸は正倉院にある螺鈿紫檀阮咸と桑木阮咸の2つだけである[1]。
日本では奈良時代から平安時代に用いられた。唐楽の楽器として、宮廷や寺院における法要で用いられた。楽器としては阮咸(ルアンシェン)は清代にも作られている。月琴と似ているが、阮咸は月琴より棹が長い。中国では宋代から明代にかけて、短棹円形胴となり月琴の名称となった。
正倉院
正倉院の管理番号は「北倉 30」。聖武天皇の遺愛品である[2]。
形状と構造
全長は約1メートル、棹約60センチメートル、円形胴の直径は約40センチメートルである。 腹板が円盤状であり長い鹿頚が特徴である。表面の皮の捍撥に男女四人の奏楽を描く。 胴部背面はヤコウガイや玳瑁、琥珀などを象嵌した螺鈿細工である。花形、授を加えた2羽のインコを螺鈿で表し、翼に玳瑁、琥珀を用いている。天平時代の優美で華麗な様式を表す。 槽(胴部背面)、鹿頚、海老尾(頭部)、転手(弦巻)に紫檀材を用い、胴部正面の腹板はトネリコ属のヤチダモまたはシオジを用いる。ヤコウ貝を用いた螺鈿、玳瑁や黄銅製の金属線を用いた象嵌で装飾し、赤と白の珠を連ねた飾りを咥える二羽のインコを宙に旋回させる。腹板に丸く皮を張り、阮咸を演奏する女性と聞き入る男女を描く[1]。
出展歴
第13回正倉院展・第50回正倉院展(1998年)で出品された。また第73回正倉院展(2021年)に出展された[3]。
注
- ↑ 1.0 1.1 奈良国立博物館(2021)『第73回正倉院展』仏教美術協会
- ↑ 螺鈿紫檀阮咸(模造)文化庁
- ↑ 正倉院展は10月30日から朝日新聞,2021年8月27日