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朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、2006年10月9日10時35分 (KST) 、初めて地下核実験を行ったと宣言した。ただし観測された地震波の規模が小さく、また北朝鮮政府による核実験の映像の発表がないため、各国は実験は失敗だったとの見解を示している。成功した場合、通常は成果を誇示するために、核爆発の映像を発表するためである。北朝鮮の現在の技術では適切に作動する核起爆装置を作ることができないと見られている。
目次
背景[編集]
- 1980年代から、北朝鮮の核開発が懸念されていた。
- 1991年12月 朝鮮半島非核化共同宣言に韓国と同意。
- 1993年2月 国際原子力機関 (IAEA) が北朝鮮に対し特別査察を要求。北朝鮮は拒否。
- 1993年3月 核拡散防止条約 (NPT) からの脱退を宣言したが、後に留保を表明した。
- 1993年5月 北朝鮮、日本海で弾道ミサイル・ノドンの発射実験。
- 1994年6月 国際原子力機関 (IAEA) からの脱退を示唆。カーター元大統領が訪朝し金日成と会談したが、直後に金日成が死去。朝鮮半島エネルギー開発機構 (KEDO) が発足。
- 1994年10月 北朝鮮の核開発凍結、非核化を内容とした米朝枠組み合意を結ぶ。
- 1998年8月 テポドン1号の発射実験。日本上空を通過。
- 2002年12月 寧辺にある核施設の再開を表明。
- 2003年1月 核拡散防止条約 (NPT) からの脱退を宣言
- 2003年6月 第1回 六者会合(北京)
- 2005年2月 核兵器保有を公式に宣言。
- 2005年11月 KEDO解散、清算。
- 2006年7月5日 テポドン2号の発射実験。7発とも日本海に着弾。
- この後、日米による経済制裁などを強化
- 2006年10月3日 朝鮮中央放送にて核実験の実施を予告。
- 2006年10月9日 朝鮮中央放送にて、核実験を実施し、成功したとする報道がなされる。アメリカ・日本・韓国・中国・ロシアは事実関係や分析により、核実験の実施が行われたことを確認する。
- 2006年10月11日、 10月9日に核実験を行ったと日本のテレビ局が報道したが、気象庁は「北朝鮮北部周辺を震源とする地震波は観測されていない」とコメントを出し、安倍首相や麻生外相など、政府関係者もこの報道を否定、結局誤報であることが判明した。
- 2006年10月11日 米政府が、地下核実験を行ったことがわかったと表明(しかし、爆発の規模が1キロトン未満であったため、失敗とみられている)。
- 2006年10月17日 2度目の核実験準備が判明した。
- 2006年10月末 北朝鮮が六者会合への復帰を宣言。
- 2006年12月18日 北京で六者会合が再開(1日目)。
- 北朝鮮が「核放棄には、制裁解除や軽水炉給与などが必要と主張。そうでなければ、核実験を再開する可能性がある」と 強硬姿勢を示した。
- 2006年12月19日 六者会合(2日目)
- 北朝鮮の核問題を巡って北京で開催中の六者会合について、今週中に一旦終了し2007年1月に再開するとの見通し。
核実験の実施[編集]
朝鮮中央放送は、2006年10月9日12時前 (KST) に地下核実験を行ったと発表、「実験は成功し、放射能漏れは無い」とコメントした。爆発による地震波の測定から、10時35分 (KST) に咸鏡北道吉州郡付近にて実施したものとみられる。ただし以下のように、この核実験では十分な核爆発は起きず失敗だったという見解を各国は示している。
CTBTOに基づく地震波観測網および、津波早期警戒観測網の高感度地震計で、核実験によるものとみられる人工的な地震波が捉えられた。地震波を解析した結果推定された実験の規模は、CTBTOの観測網はマグニチュード (M) 4.0、気象庁はM4.9、アメリカ地質研究所 (USGS) はM4.2、韓国地質資源研究院はM3.58~3.7としている。震源の深さは0km(USGSの推定)で、通常の地震よりもかなり地表に近いところから地震波が到達したと推定されている。またロシア政府も、「同時刻に核実験を探知した」としている。
- なお、各機関によってマグニチュードに大きな差があるが、これは核実験がP波をパルス状に出し、その最大振幅によってマグニチュードが決定されることによる。1つのパルスは、観測点や観測状況によって大きく異なり、マグニチュードの誤差も大きくなる。
- アメリカ地震研究所 (IRIS) の地震計ネットワークでは、推定"震源"の近傍でしかその波が捉えられなかった。また日本の地震観測網(たとえばHi-net)は、"震源"の南東側しかカバーしきれず、満足な地震波形データが得られたとは言えない状況にある。
- 核実験と同時に、あるいは誘発されて自然地震が発生した可能性も指摘されており、これが核実験の解析を難しくしている。本来核実験ではほとんど発生しないS波も観測されている。
爆発の規模は高性能爆薬TNT換算で、USGSが0.5~5キロトン、日本の東京大学地震研究所が0.5~1.5キロトン程度ではないかとコメントしている。最も大きな見積もりでも15キロトン程度と見られる。
- しかし、日本やアメリカなどの各政府は、核実験であるかどうかの確認には数日かかるため、正式に「核実験が行われた」とは当初していなかった。地震波の測定結果などから推定される爆発規模は極めて小さく、通常核実験規模の指針とされる広島・長崎型原爆の威力にも全く達していないと見られている事や、放射能の拡散が検出されていない等から、プルトニウムの爆縮がうまくいかないなどしてに実験が失敗したとの見方や、大量の通常火薬を用いた偽装ではないかとする意見もあり、確認が急がれている。いっぽう、地下空洞を利用して大きな核爆発が周辺諸国で小さく感じられるよう巧みに偽装した可能性も指摘されているが、示威行為の側面が強い今回の実験を、わざわざ規模を小さく見せる必然性は薄い。また、小型核の開発に成功したとの意見もあるが、核の小型化には極めて高度な技術が必要である為、北朝鮮にそのような物を作れる可能性はほぼないとの見方が大勢である。
- その後、北朝鮮が初の核実験(地下核実験)を行ったが、失敗ということが確認された(米政府で、2006年10月11日に空中で採取したサンプルの分析から、放射性物質が検出されたことから判明された)。爆発規模は1キロトン未満とされている。爆発規模が小さいため、小規模な核爆発が起きたものの、核起爆装置は十分に作動しなかったと、各国とも推測している。しかし北朝鮮政府による映像の発表等がまったくないこともあり真実は不明である。各国の推測では、おそらく10トン前後ある巨大な核起爆装置を地下施設内で用いたが、技術的問題のため適切に核分裂が起きず、完全な核爆発にならなかったという見解が多い。北朝鮮北西部の寧辺郡にある黒鉛減速炉から取り出したプルトニウムを用い、長崎型原爆(ファットマン)と同様の起爆装置を用いたのではないかと推測されている。ただし北朝鮮の技術では、精密な部品を製造し、十分な品質管理のもと小型の核起爆装置を完成させるのは困難である。現状では、この装置は重すぎてミサイル搭載はおろか爆撃機に搭載することも不可能だが、将来的な開発成功の可能性については、専門家の見解も様々で情報も不十分であり不明である。
環境への影響[編集]
放射能漏れなどによる周辺諸国への影響は実験前から懸念されていたが、今のところ影響はないとされている。ただ韓国政府は実験後、放射能の監視体制を強化して変化があった場合は国民に知らせるとしており、これに関連して日本の外務省は韓国滞在者や渡航者に対して「スポット情報」を出し情報に注意するよう促している。[1]
また、放射能漏れを心配する声が多いことから、日本海産の海産物などへの風評被害も懸念されている。
金融市場への影響[編集]
為替相場では、円の対外相場がやや下落するなどの影響が出た。
株式市場では、韓国で影響が大きく、韓国証券取引所総合指数が2.5%、コスダック(ナスダックの韓国版)は急落のため取引を一時停止する措置がとられた。また、シンガポール、香港などアジアの新興市場でもやや下落が見られたが、日本や欧米の市場では大きな混乱はなかった。
各国などの対応[編集]
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北朝鮮[編集]
金永南最高人民会議常任委員長は、「今後の核実験の継続は米国の対応次第である。金融制裁を解除しなければ、六者会合にも応じない。」と述べた[2]。 朴吉淵国連大使が「わが国の科学者、研究者に祝辞を述べるべきだ」と語った[3]。 国境警備兵は「核実験の成功を誇りに思う」と話している[4]。
韓国[編集]
韓国政府は「朝鮮半島非核化宣言に反する行為」「対話を通じた問題解決に逆行する」として、強い非難の態度を取った。[5]北朝鮮に対して「太陽政策」を実施してきたが、一部の国民からの強い反発もある。
当日、安倍晋三首相がソウルを訪問し、韓国の盧武鉉大統領と会談する予定が組まれていた。首脳会談は予定通り実施されたが、その多くの時間が核実験による対応に割かれた。
中国[編集]
中国政府は、核実験の数十分前に北朝鮮から実験を行う旨の通知を受けたという[6]。また、その通知を受けて中国政府は、核実験の数分前に在北京日本大使館にも連絡を行っていたという[7]。
従来は北朝鮮の核開発疑惑に対する制裁措置に慎重な姿勢を見せていたが、今回の核実験実施の報を受け、王光亜国連大使が一定の制裁を容認する見解を示した[8]。
2006年10月17日、中国政府は、北朝鮮への送金を停止したことなどを事実上認めた[9]。
日本[編集]
安倍晋三首相が訪韓中に起こったことであり、対応は遅れた。核実験および弾道ミサイル開発に対し、「安全に対する重大な挑戦」「厳重に抗議し、断固として非難する」と発表された[10]。
国連の安全保障理事会議長国として、国連憲章第7章による制裁決議を進めていくほか、日本独自の制裁を実施を決定した[11]。
- 2006年10月11日発動
- 北朝鮮国籍を有する者の原則入国禁止。
- 2006年10月14日発動[12]
- 特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法に基づいて、北朝鮮船籍のすべての船舶の入港を禁止。(期間は2006年10月14日 - 2007年4月13日)
- 輸入貿易管理令、外国為替令に基づいて、北朝鮮からの輸入の全面禁止。
尚、貨客船万景峰号はミサイル発射実験があった2006年7月5日から入港を禁止されている。
秋葉忠利広島市市長は、10月9日、「強い怒りを覚える。被爆地ヒロシマを代表して厳重に抗議する」とのコメントを発表した。10日、北朝鮮に抗議文を送った[13]。
伊藤一長長崎市市長は、10月9日、北朝鮮首脳に対し「核兵器開発の即時中止を求める」との抗議文を送ると共に、日本政府に毅然とした対応を求める要請文を送ったとのコメントを発表した[14]。
ロシア[編集]
ロシア政府は、核実験の約2時間前に北朝鮮から通知を受けたという。国営のイタル・タス通信は、「100%核実験である」と報道した[15]。
プーチン大統領は、軍事バランスの崩壊は容認できず、無条件で非難すると述べた[16]。また、コサチョフ国際関係委員長は、核実験は米国の圧力が原因であると述べた[17]。
アメリカ[編集]
ブッシュ大統領は、北朝鮮への物理的攻撃ではなく、外交的に話し合いで解決していくと述べた。[18]。
また、イギリス軍が沖縄の嘉手納基地に、放射能測定航空機を派遣するなど、米軍に軍事協力をしている。
フランス[編集]
イギリスBBCによると、爆発の規模が異常に小さく、核実験は失敗したもしくは通常の火薬を爆発させたのではないかとフランス国防相がラジオインタビューで話したとのこと[19]。
国連[編集]
国際連合安全保障理事会決議1718を採択し、国連憲章第7章第41条に基づく経済制裁実施を決めた。北朝鮮は「この決議は、わが国を崩壊させようというアメリカのシナリオであり、わが国に対する宣戦布告とみなす」と、朝鮮中央テレビを通じて発表した[20]。
二度目の核実験準備に対し[編集]
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中国[編集]
- 2006年10月20日、日米中韓露の5カ国が北京で開かれることが決まったので、北朝鮮にも参加するように説得をしている。
日本[編集]
- 麻生太郎氏は18日午後に来日した米国ライス国務長官と会談
- 安倍晋三首相は民主党、小沢一郎代表と、これらの北朝鮮核実験を含め、憲法改正をするべきか、しないべきか論戦していた。(18日、国会で)
- 安倍晋三首相は19日にライス国務長官と会談をし、麻生外相とともに、日本、アメリカ、韓国(中国、ロシアも訪問する予定)これらの5ヵ国のメンバーを中心とし、北朝鮮を含め、6ヵ国外相会合をする予定が決まった。
- 塩崎恭久官房長官は、「中国に大いなる期待をし、中国と連携をとっていく」と述べた[21]。
- 民主党、鳩山由紀夫幹事長はロシア訪問中に、「北朝鮮が(宣戦布告)をして、2回目の核実験を行うのは、1回目の核実験とレベルが違う。2回目の核実験なら周辺事態と見ることは、否定しない」と、述べた[22]。(日本時間18日、19日)
政府は北朝鮮が2度目の核実験を行った場合、
- 北朝鮮の船の出入り港、航空機の離陸、着陸の禁止
- 北朝鮮のすべての製品・産品の輸入禁止
などの決議案を提出する方針を定めた[23]。(18日)
アメリカ[編集]
- ライス国務大臣は18日午後に日本を訪れ、日本の外相、麻生太郎氏と会談し、麻生太郎外相が「北朝鮮がテポドン2発射、第1回核実験をしたのに引き継いで、第2回核実験に対し、北朝鮮の船舶検査を行うことや、北朝鮮が無条件で六者会合に復帰できるように呼びかけたい」と、述べたのに対し、ライス国務長官も「北朝鮮の行動は許せない(容認できない)、日本、アメリカが他国と協力しながら、決議の措置を迅速に実行する」と、語った[24]。(18日)
- 19日には、日本、久間章生防衛庁長官、塩崎恭久官房長官、安倍晋三首相とも会談をした。
参考文献[編集]
- ↑ 「韓国:北朝鮮による地下核実験実施発表について」。外務省、2006年10月9日。
- ↑ 「核実験継続は米次第 日朝平壌宣言は有効」。共同通信、2006年10月11日。
- ↑ 共同通信「北朝鮮国連大使、核実験「祝福すべきだ」」。日本経済新聞、2006年10月10日。
- ↑ 「「核実験、誇りに思う」 あっけらかんと国境警備兵」。朝日新聞、2006年10月10日。
- ↑ 「北韓(北朝鮮)は核実験計画を直ちに取り消さなければならない(外交通商部) 」。大韓民国外交通商省、2006年10月4日。
- ↑ 「北朝鮮、中ロに事前通告」日本経済新聞、2006年10月10日。
- ↑ 「北朝鮮、中ロに事前通告」日本経済新聞、2006年10月10日。
- ↑ 共同通信「中国、北朝鮮制裁を容認 日米、決議案一本化へ」。U.S. FrontLine、2006年10月10日。
- ↑ 「中国の銀行が送金停止 対北朝鮮、外務省認める」。西日本新聞、2006年10月18日。
- ↑ 「北朝鮮による地下核実験実施発表に対する内閣官房長官声明」。首相官邸、2006年10月9日。
- ↑ 「北朝鮮制裁、閣議決定 あすから輸入全面禁止」。産経新聞、2006年10月13日。
- ↑ 平成十八年内閣告示第四号、平成十八年経済産業省告示第三百八号から第三百十一号
- ↑ 秋葉忠利(広島市長)「北朝鮮の核実験実施の発表に対する抗議文」。2006年10月10日。
- ↑ 伊藤一長(長崎市長)、山口博(長崎市議会議長)「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核実験への抗議」。2006年10月9日。
- ↑ 北朝鮮核実験、9日のドキュメント。朝日新聞、2006年10月11日。
- ↑ 「北朝鮮の核実験、各国が非難」朝日新聞、2006年10月10日。
- ↑ 北朝鮮核実験、9日のドキュメント。朝日新聞、2006年10月11日。
- ↑ "United States Committed to Diplomacy with North Korea, Bush says"。在日アメリカ合衆国大使館、2006年10月12日
- ↑ "N Korea raises threat of new test"。BBC NEWS、2006年10月11日。
- ↑ 「北朝鮮、制裁は「宣戦布告」と声明」。TBS News-i、2006年10月17日。
- ↑ 「塩崎官房長官、中国対応を評価」。産経新聞、2006年10月18日。
- ↑ 「再実験なら「周辺事態」認定も 民主・鳩山幹事長」。朝日新聞、2006年10月19日。
- ↑ 「再核実験なら新決議案/政府方針、北朝鮮けん制」。四国新聞、2006年10月21日。
- ↑ 「日米外相会談後の共同会見(概要)」。外務省、2006年10月19日
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- ウィキニュース - 朝鮮民主主義人民共和国が核実験
- 気象庁 - 北朝鮮関連の地震波形分析結果
- Google マップ - 地下核実験場があると言われている豊渓里(プンゲリ)
- 九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センターの地震波解析
de:Nordkoreanisches_Kernwaffenprogrammfi:Pohjois-Korean_ydinkoe fr:Essai_nucléaire_nord-coréen_du_9_octobre_2006 ko:2006년_조선민주주의인민공화국_핵_실험 sv:2006_års_kärnvapentest_i_Nordkorea zh:2006年朝鲜核试验 zh-yue:2006年北韓核試