電子計算機使用詐欺
電子計算機使用詐欺罪(でんしけいさんきしようさぎざい)とは、財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録を作る等の手段により、財産上不法の利益を得ることを内容とする犯罪類型。刑法246条の2に規定されている。コンピュータ犯罪への対処を目的とした、昭和62年(1987年)改正において新設された。「コンピュータ詐欺罪」ともよばれる。
概要[編集]
財産権の得喪や変更が電磁的記録に基づいて自動的に処理されている場合、仮に不法の利益を得る行為があったとしても、占有の移転が伴わないため窃盗罪には該当せず(利益窃盗)、また、人に対する欺罔行為が存在しないため詐欺罪(狭義)にも該当しない。本罪は、この処罰の間隙を埋めるために創設された。行為態様が詐欺罪に類似しているために詐欺罪(広義)の一類型として規定されている。
実行行為[編集]
本罪の実行行為としては、2種類の類型が定められている。
- 不実の電磁的記録の作出(前段)
- 人の事務処理に使用する電子計算機(コンピュータ)に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて、財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録を作る行為。
- 「虚偽の情報」とは、当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が事実に反する情報をいい、「不正な指令」とは、事務処理の目的に照らし、与えられるべきでない指令をいう。
- また、財産権の得喪・変更に係る電磁的記録とは、その作出・変更によって財産権の得喪・変更が生じるものをいい、オンラインシステムにおける銀行の元帳ファイルの預金残高の記録や、プリペイドカードの残度数の記録等はこれにあたるが、キャッシュカード等は含まれない。
- 例えば、銀行員がオンラインシステムの端末機を操作して、入金の事実がないにも拘らず、自己の口座に入金があったとする情報を入力する行為はこれに該当する(参照:東京高判平成5年6月29日高刑集46巻2号189頁)。
- 電磁的記録の供用(後段)
- 財産権の得喪・変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供する行為、すなわち、内容が虚偽の電磁的記録を他人のコンピュータで使用する行為である。
- 例えば、通話可能度数を虚偽のものに改竄した変造テレホンカードを公衆電話に挿入して電話をかける行為がこれに該当する(参照:岡山地判平成4年8月4日)。
不法利得[編集]
本罪の成立には、財産上不法の利益を得、又は他人をしてこれを得させるという結果の発生が必要である。
法定刑[編集]
その他[編集]
本罪は未遂も処罰される(250条)。また、親族相盗例の規定は本罪にも準用される(251条)。
横領金6億円貢いだ男「自首する前に会いたい」 女「会えないけど最後に1300万円お願い」[編集]
6億円貢ぐ、送金350回。キャバクラ女性「がん治療費を、会えないけど」
勤務先の金をだまし取ったとして、警視庁が4月11日に電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕した埼玉県朝霞市の元会社員栗田守紀(もりとし)容疑者(33)は、キャバクラの女性店員(30)に総額約6億円を送金していた。「がんで闘病中」と治療費を求める女性の言葉を信じ、ほとんど会うこともなく約7年間にわたり計350回以上、金を振り込んでいた。
警視庁によると、栗田容疑者は2000年からゴム製造会社「シバタ」(東京都中央区)の経理部に所属。逮捕容疑では、自ら管理する会社の口座から2億3000万円を自分の口座に送金し、だまし取ったとされる。
シバタ関係者や訴訟記録によると、栗田容疑者は2001年ごろ、葛飾区のJR亀有駅前のキャバクラで、当時20歳の女性店員と知り合った。何度も店に通い、2002年からは月に数回デートをするようになった。
2003年ごろには、女性から「胃がんになった」と相談され、医療費として女性の口座に振り込みを始めた。2004年からは「面会謝絶になった」と言われ、女性にほとんど会えなくなった。 2006年以降はメールのやりとりだけの関係だった。
犯行が発覚する2010年7月まで、振り込みを続け、最終的に会社からだまし取った6億3900万円のうち、女性への振り込みは5億9400万円に上った。警視庁は公訴時効(七年)にかかる約1億円を除き、立件する方針だ。
女性はメールで「個室に入るので金がかかる」「無菌室を使ったので支払いが高額になる」などと、月に何度も金を要求した。栗田容疑者が請求書を見せるよう言うと「疑われたら生きている意味がない、自殺する」とごまかしていた。
発覚直後、栗田容疑者は女性に「会社の金を横領していた」と告白した。「自首する前に会いたい」。だが、女性は面会を断る一方で「最後に1300万円お願いできないかな」などと要求した。
会社側が確認したところ、女性に入通院の記録はなく病気の話はうそと判明した。栗田容疑者がただすとメールで「本当に本当にごめんなさい」。以後、連絡が取れなくなった。
女性は「闘病中」と説明していた間、新宿の高級マンションを借りて住み、金は旅行や飲食などに使ったという。シバタの担当弁護士は「女性からも回収を試みたが、ほとんど使われて残っていなかった」としている。
栗田容疑者は、女性を相手取った民事訴訟(既に和解)の中で「普通に考えると不自然だが、当時は病気のことも治療のことも信じていた」と陳述した。女性は「認めます、すみませんでした」と謝罪している。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]