限定免許 (運転免許)
限定免許(げんていめんきょ)とは日本の自動車運転免許において、道路交通法第91条の規定により運転に関する限定条件が付された免許の通称である。
車両の特性等を考慮し一定程度の需要があるとされる限定条件については道路交通法の下位法規である道路交通法施行規則において「AT車限定」、「小型二輪限定」などの既定枠(コース)が定められており運転免許試験場や指定自動車教習所で当初からその限定条件を念頭に置いた免許取得をすることが可能となっている。
一方、車両側の特性でなく運転者側の事情(視力・聴力・四肢等の身体障害など)を考慮した限定条件もあるがこちらは個々人により状況が異なるため同施行規則で包括的な区分や名称を定めず、免許を交付する都度その状況に応じて個別に条件を付すこととなっている。ただし、複数の身体障害等による複雑な限定条件でないもの(視力低下による「眼鏡等」など)は施行規則よりさらに下位の内部通達等で限定条件の記載例が定められている場合がある。
運転免許証の「免許の条件等」欄には「〜車は○○に限る」などのように記載される。○○の部分は運転可能な車両の様態が記される。
目次
限定免許一覧[編集]
道路交通法施行規則に明示されている限定条件[編集]
- AT車限定免許(制度発足当時の表記は「AT車」でなく「オートマチック車」)
- 普通自動車(第一種・第二種)・大型自動二輪車(排気量650cc以下)・普通自動二輪車(小型限定を含む)のうち、オートマチック (AT) 車に限り運転可能。
- 免許の条件等の欄は「○○車はAT車に限る」、第二種のみAT限定の場合は「○○車の旅客車はAT車に限る」(○○は普通・中型・大型が入る)の記載がされる。
- 中型自動車中型車 (8t) 限定免許
- 2007年(平成19年)6月2日、中型自動車免許新設に伴い、それまでの普通自動車免許(第一種・第二種)が限定付き中型自動車免許に移行。車両総重量8t未満、最大積載量5t未満、乗車定員10人以下に限り運転可能(改正前の普通自動車免許で運転できた範囲と同じ)。
- 免許の条件等の欄は「中型車は中型車 (8t) に限る」と記載され、さらにAT車限定が付される者には続けて「中型車 (8t) と普通車はAT車に限る」と記載される。
- 大型特殊自動車カタピラ車限定免許
- 大型特殊自動車のうち、カタピラ車(戦車、車両系建設機械等の履帯(クローラ)を有する車両)に限り運転可能。
- 大型特殊自動車農耕車限定免許
- 大型特殊自動車のうち、農耕車(トラクター等)に限り運転可能。
- 普通自動二輪車小型限定免許
- 普通自動二輪車のうち、排気量125cc以下の二輪車に限り運転可能。
- 牽引小型トレーラー限定免許(軽牽引)
- 被重牽引車のうち、750kg超 - 2t以下のトレーラー車(ライトトレーラー)を牽引可能。
- 限定免許の取得方法
制度改正時に時限的に交付された限定免許[編集]
- 大型自動車(第一種・第二種)マイクロバス限定免許
- 大型自動車のうち、マイクロバスに限り運転出来る免許。1970年(昭和45年)8月20日、マイクロバスが普通自動車から大型自動車に移行した際、一定の要件を満たす者に対し経過措置による試験が運転免許試験場において6か月間だけ行われた。
- 中型自動車運転免許の改正が行なわれた事により、「大型自動車はマイクロバスに限る」の条件を付与されていた人は旧法時代に運転できなかった特定中型貨物自動車の運転が出来る事となった。
- 普通自動車(第一種)ミニカー限定免許
- 普通自動車のうち、ミニカーに限り運転出来る免許。1985年(昭和60年)2月15日、ミニカーが原動機付自転車から普通自動車に移行した際、一定の要件を満たす者に対し経過措置による試験が運転免許試験場において6か月間だけ行われた。
- 中型自動車中型車 (8t) 限定免許
- 前述。
- 特定自動二輪車の運転を条件とする自動二輪免許
- 2009年(平成21年)3月27日に警視庁より法改正意見公募案件が公示され、これによると警視庁は現行法令上普通自動車免許となっている特定自動二輪車(前2輪・後1輪の自動二輪車)を自動二輪車とする免許区分を上記に併せ正式に自動二輪車免許へ区分を変更する法案の意見を募集した。2009年(平成21年)6月1日から特定自動二輪車の運転を条件とする自動二輪免許を施行した。
- 詳細は「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集についての資料7を参照
個人の状況に応じて個別に指定される限定条件[編集]
- 運転補助装置取付車限定免許
- 二輪車を除く全ての車種で、たとえば下肢に障害を持つ者が免許を受けようとする場合に右足が不自由なら左アクセルペダルを装着した車両に、両足が不自由なら手動アクセル・ブレーキを装着した車両(福祉改造車両)にそれぞれ運転を限定する免許。下肢だけでなく上肢その他の身体障害に対応した限定条件(上肢の場合、ハンドルにスピナー握りを装着するなど)もある。原則として手動変速機構(クラッチ)がなく自動変速(オートマチックトランスミッション)AT車限定と併せての条件記載となる。
- 上記の場合の免許書の書き方によっては、下位免許(原付・小型特殊)が運転できないことがある(「○○車はAT車で、○○に限る。」の場合は下位の車種の運転は出来る事となるが、「AT車の○○(車種)車で、○○に限る。」の場合は表記された車種(車両)の条件を満たすもののみが運転出来る事となる)。
- 原動機付自転車の限定免許
- 身体に障害を持つ方であっても障害の程度によっては原動機付自転車を安全に運転出来る事があるので、安全に運転出来る場合には条件を付して免許を与えることが出来る。この様な場合「原付車は3、4輪に限る」等の条件を付す事がある。
審査未済[編集]
審査未済(しんさみさい)とは法令改正に伴う免許区分の統廃合等により、運転可能な車両に一定の制約が科されることとなった者の「免許の条件等」欄に記載される条件をいう。前節の限定条件が解除審査時の手数料が有料となるのに対し、審査未済は公安委員会の試験場で審査を受ける場合は手数料のみ無料(車両使用料及び教習所で受ける場合は有料)になるという違いがある。「免許の条件等」欄には「審査○○未済」と記載される。○○には「小四車/普1/普1、2/普2/軽車」が示される。裏面備考欄に「〜車は○○に限る」と記載される場合もある。
この審査未済については「表示が簡略過ぎて制限される内容が分かりにくい」などの批判があり警察庁でも表示の改善を図るなどしてきたが、2007年(平成19年)6月2日施行の道路交通法(道路交通法施行令などの下位命令を含む)改正において全て限定条件方式へ移行することが規定され制度としては消滅した。免許証更新が未到来で表示上は審査未済となっていても、同改正施行以降は法的には限定条件に書き換わったものとして取り扱われる。
- 小四車
- 排気量2000cc未満・最大積載量2t未満の普通自動車に限り運転可能。小型自動四輪車免許の名残。
- 普1
- 排気量360cc未満の普通自動車、三輪の普通自動車に限り運転可能。
- 普1、2
- 排気量360cc未満の普通自動車、三輪の普通自動車(旅客車(タクシー等)含む)に限り運転可能。
- 普2
- 旅客車は三輪に限り運転可能。自動三輪車第二種免許の名残。
- 軽車
- 排気量360cc未満の普通自動車に限り運転可能。軽自動車免許の名残。
- 過去には第二種原動機付自転車免許(第二種とあるが現在の第一種運転免許・第二種運転免許区分の「第二種」とは別次元のものであり同区分に当てはめれば第一種運転免許に相当する)の名残で「自二」(排気量125cc以下の自動二輪車に限り運転可能)もあったが、現在は未済条件でなく小型限定普通自動二輪車免許となっている。
限定条件等の解除手続[編集]
これらの限定条件・審査未済を解除するには、限定解除審査を受けなければならない。原則として限定条件の解除審査は運転免許試験場・指定自動車教習所のいずれで受ける場合も有料となるが、審査未済の解除は運転免許試験場で受ける場合に限り試験手数料は無料である。ただし試験車両使用料(貸車料)は有料である。