経営管理論

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経営管理論(けいえいかんりろん、英語:business management、management administration)は、組織・団体(主に企業)の管理についての実践的な技法(経営管理)の確立を目指す学問であり、経営学を構成する分野の一つ。 20世紀初頭、科学的管理法を提唱し、「経営学の父」と呼ばれたフレデリック・テイラーがその始まりとされており、また「管理原則(管理過程論)の父」と呼ばれたアンリ・ファヨールによる研究により、学問として成立。その後、主にアメリカで研究が発展した。

現在では、企業経営の大規模化・複雑化に伴って組織を構成する要素及び経営に関わる要素は多岐に亘るようになった結果、経営管理の扱う範囲がたいへん広くなり、また専門性が強くなったため、一般に、その管理対象に応じて細分化されている。例えばヒトの面の管理は人事労務管理(人事管理)論、カネの面の管理は財務管理論など。

経営管理の定義[編集]

西村林・小林信雄・秋山義継『経営管理入門』p4-5より

  • 経営管理は、広義に解釈すれば、“経営システムの維持・存続のための全成員のダイナミック(dynamic)な情報活動”であって、それは人間の頭脳活動を含む神経系統の活動に相当するものである。

塩次喜代明・高橋伸夫・小林敏男『経営管理』p8-9より

  • 経営管理とは、人に働きかけて、協働的な営みを発展させることによって、経営資源の転換効率や環境適応の能力と創造性を高めて、企業の目的を実現しようとする活動である。(中略)経営管理は、個性的で具体的な人間が組織的な人間として振る舞い、組織の活力や創造性を高めるように働きかけようとする。こうして企業の協働的な営みは組織として展開され、個人の能力の総和以上の生産を実現するのである。

また、「管理原則の父」と呼ばれるファヨールは、経営管理を計画組織指揮調整統制の5要素と定義している。

簡単にまとめると、経営管理とは、企業活動を円滑に行うとともに、企業の目的を達成するために、「ヒト・モノ・カネ・情報」の4つの経営資源を調達し、効率的に配分し、適切に組み合わせる、といった諸活動のことである。特に、主体的に行動する「ヒト」(人的資源)が重要であり、これに上手く働きかけて、組織化し協働させたり、活性化させ(もしくは能力を発揮させ)たりするようなシステムを如何に構築するかということが主要な課題となる。

経営管理論の発展[編集]

19世紀後半から、第二次産業革命と呼ばれる工業化の進行・資本主義の発展や経済の拡大により、企業は経営資源を効率的に運用し、生産力を増強することを目指すようになった。そのような状況の下、20世紀初め、アメリカの技術者・テイラーが「科学的管理法」を、フランスの経営者・ファヨールが管理過程論」の原型をそれぞれ発表、経営管理の研究が始まった。 一方、ドイツの社会学者・マックス・ヴェーバーは、組織の支配形態[1]を分析し、合法的・合理的な組織は官僚制組織であるとした。その上で組織の合理的・機能的側面に注目、組織構造という概念を考え出し、「官僚制組織論」を提唱した。これらの3人の研究が、経営管理論の出発点と言える。

その後、人間的側面を軽視する[2]科学的管理法への批判から、人間関係や人間の持つ欲求、特に自己実現欲求に注目する、「人間関係論」が生まれた[3]メイヨー、レスリスバーガーによるホーソン実験や、マズロー欲求段階説(自己実現理論)マクレガーXY理論などが知られる。

さらにその後、マックス・ヴェーバーの組織の理論を経営に応用し、組織全体を分析する議論(システムズ・アプローチ)がバーナードによって唱えられ、後にサイモン意思決定論に繋がった。 一方、1960年代以降、従来の普遍的な法則を見出そうとする議論では抽象的で現実の経営に対応できないとして、経営環境に応じてそれぞれに異なる最適な組織形態・管理法が存在するとする見解(コンティンジェンシー理論)が登場した。

これらの諸議論を基礎に、リーダーシップ論、モチベーション論、組織文化論、企業間関係論など様々な議論に広がっている。

占部都美は、最近の経営管理論は、意思決定論的アプローチ、行動科学的アプローチ、システムズ・アプローチを取っているとしている[4]

20世紀の終わりには、マネジメントの項目は以下の6つのサブカテゴリーから成るとされていた。

  1. 人材マネジメント Human resource management
  2. オペレーションマネジメント w:Operations or production management
  3. 戦略的マネジメント w:Strategic management
  4. マーケティングマネジメント w:Marketing management
  5. 財務管理 w:Financial management
  6. ITマネジメント w:Information Technology management


21世紀の現在では、この6つのカテゴリーのみでとらえることがますます困難となってきている。 多くのプロセスが同時にいくつかのカテゴリーを含んでいるためである。 現在では6つのカテゴリーの代わりに、一人が管理できる様々なプロセスタスクおよびオブジェクトの単位で考える傾向にある。

経営管理の諸学説[編集]

ハロルド・クーンツは著書『経営の統一理論』にて、経営管理の学説を以下の6つに分類している。

  • 管理過程学派(普遍学派)
経営管理を「組織を構成する人々に、あることをしてもらう過程」と捉え、そのための管理の諸原則を明らかにしようとする。
  • 経験学派
経営管理に関する事例研究(ケーススタディ)を通じて、最も有効な経営管理技法を構築する。
  • 人間行動学派
経営には多くの人々が関わっていることに着目し、構成員・関係者の行動や相互関係を研究する。行動科学や人間関係論など、心理学的アプローチ。
  • 社会システム学派
経営管理を人やその行動からなる一つの社会システムと捉え、社会学的見地から研究する。人間的側面を重視することから、人間行動学派と共通する点を持つ。バーナードに代表される。
  • 数理学派
数学や統計学、計測可能なデータなどを駆使して、数理的アプローチから経営管理を把握しようとする。そのための手段として代表的なものにオペレーションズ・リサーチがある。この学派の研究は経営科学とも言われる。
  • 意思決定学派
企業内の意思決定システムを研究し、合理的な意思決定を行うにはどうすべきかを追究する。サイモンに代表される。

経営管理の語源[編集]

経営管理すなわち「マネジメント」の由来は「」を意味するラテン語「manus」であり、もともと何かをモノを扱うという意味である。その名残として馬を扱う乗馬学校の練習場や調馬場を指す言葉として「マネージュ」が国際的に使われいる。すなわちマネジメントには行き届いた管理、つまりすべての資源、とくに資金を効率的かつ効果的に使うという含みがある。またマネジメントの概念は、はるか昔からあるリーダーシップの概念と違って科学の時代に生まれ育ち、システムに対する信頼、特にシステムを導入して維持する能力と、財政を管理して統御する能力が高く、ビジネスには不可欠である。

一方で、人を機械やお金のように「マネジ」できるものと見なす習慣に陥りやすい。[5]

注釈[編集]

  1. カリスマ支配、伝統的支配、合法的支配の3つ。
  2. これらは「経済人モデル」に立脚した考え方である。
  3. これらは、人間を欲求・感情で動く「社会人モデル」(メイヨーによる)や、自己実現を欲する「自己実現人モデル」(マズローによる)で捉えている。
  4. 占部都美『経営学辞典』(中央経済社)
  5. ジョン・アデア/ペーター・リード『NOT BOSSES BUT LEADERS』(1987年) Kogan Page Publisher UK ISBN-10-07494-4632-3

関連分野[編集]

一覧[編集]

参考文献[編集]

  • 西村林・小林信雄・秋山義継『経営管理入門』 (中央経済社 2001年)ISBN 4502359238
  • 塩次喜代明・高橋伸夫・小林敏男『経営管理』(有斐閣アルマ 1999年)ISBN 4641120676
  • 芦澤成光・日高定昭 編著『現代経営管理論の基礎』(学文社 2007年)ISBN 9784762015731
  • 秋山義継『経営管理論』(創成社 2006年)ISBN 4794422288

関連項目[編集]