石油ストーブ

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石油ストーブ(せきゆストーブ)とは灯油燃焼させる暖房機器である。上部にやかんを載せて湯を沸かしたり、鍋物などを煮炊きする用途にも利用できる[1][2][3]などの特徴がある。

構造による分類[編集]

構造は部屋の端に置く反射式と部屋の中央に置く対流式があり、一般には反射式が多く販売されている。

熱の伝播に関わる構造による分類[編集]

反射式[編集]

燃焼筒の奥に熱の反射板を持ち、機器正面へ集中して熱が放射される。室内の空気に対流も起こるため、機器正面に限らず部屋全体も暖房することができる。

芯は使用によって先端が炭化するため、シーズン中に1~2度と収納時に灯油を抜いた状態で点火して、残存灯油とともに炭化部分を燃やし切る「空焼き」を行うと良い。空焼き処理によって芯は消耗するため、メーカーから補修部品として替え芯が販売されている。火力の調節は芯の露出長さ(芯の上下)で行うが、短くなって芯が上がり切らなくなった場合に芯の寿命と判断される。

対流式[編集]

機器の中心に燃焼筒があり、機器全周にわたって熱が放射される。部屋の中心に置くと空気の対流がよくなり効率よく暖房することができる。反射式と同様に炎は燃焼筒の中で立ち上がる。

燃焼に関わる方式による分類[編集]

芯(しん)式[編集]

通常、燃焼筒の下部にはガラス繊維など不燃性繊維でできた芯が露出しており、芯の下端は灯油に浸っている。毛細管現象によって上昇する灯油を芯の先端で燃焼させる。炎は燃焼筒の中で立ち上がり、燃焼筒上部の金網を赤熱させる。この金網と燃焼筒全体から赤外線が放射される。

一般的な芯式ストーブの場合、円筒状に織られた芯が、燃焼筒(または燃焼室)下部にある金属製の外筒と内筒の間に挟まれるかたちで挿入されている。ストーブの筐体前面に設けられた調整用ダイヤルを回すことで、芯が円筒内を昇降する。点火と消火、炎の大きさの調節は芯の上げ下げによって行う。この構造から「芯上下式」と呼ばれる。

以前には芯が上下せず一定の高さに固定され、ポット式ストーブと同様に送油量を調節することで炎を調節する構造のものも存在した。

近年の反射式では燃焼筒を耐熱ガラス張りとし、赤外線の輻射効率を高めると共に、視覚効果を与える形態が標準的になっている。

対流式では機器の外装自体が燃焼筒となっているものがほとんどで、耐熱ガラスの覗き窓から、芯で灯油を燃焼させる炎の様子が確認できる。俗に金冠燃焼とも呼ばれる。炎の色により「白光炎式」(ホワイトフレーム、もしくはゴールドフレームとも)と「青炎式」(ブルーフレーム)がある。ただし、反射式同様の燃焼筒を採用した対流式ストーブも、かつてはトヨトミ(後述)やサンヨーから発売されていた。

芯式ストーブは石油ファンヒーターに比べ暖房能力は劣るが、構造が簡単で故障が少なく騒音も出ない。また動作に商用電源が不要[4]なため、どこでも利用できる。災害等による停電時には非常に便利である。

ダブルクリーン[編集]
ダブルクリーンは、トヨトミが開発した燃焼方式で、同社の特許及び登録商標である。芯で発生させた灯油の燃焼ガスを従来の耐熱ガラス燃焼筒に通して赤外線輻射を発生させた後、その上部に従来の対流式類似のバーナー部を設けて未燃ガスを燃焼させきる構造になっている。
特徴として高い熱効率、低NOx、低CO、広い燃焼火力調整幅を謳っている。ただ構造上高コストになるため、ファンヒーターに比して低廉な価格が求められる従来型の石油ストーブとしては、商品的にデメリットとなる部分も大きい。
この為、同様の効果を謳うレーザーバーナーが同社製ファンヒーターのほぼ全てに採用されているのに対し、ダブルクリーンの採用は上位機種のみに限られている。また、かつては対流式もラインアップされていたが、一般家庭よりも企業や公的機関で使用されることの多い対流式は滅価償却の観点からイニシャルコスト低減を求められることが多かったため、現在は絶版となっている。

ポット式[編集]

芯を用いず、燃焼室内に直接灯油を流し込み、燃焼させる方式である。石油ファンヒーターでも使われた方式だが、以下ではそれ以前の(ファンヒーターのように温風を吹き出す機能のない)ストーブについて説明する。

燃焼室の皿形になった底部(ポット)に灯油を流し込み、電熱線で点火する。燃焼室には電動送風機による強制給気で空気が送られ、燃焼室外周や内筒に空けられた空気孔から吹きつけることで燃焼を助ける。火力の調節は、燃焼部の脇に置かれた油量調節器のダイヤルを回して行う。油量調節器は給気口の開度調節板と連動しており、不完全燃焼や立ち消えを防ぎ、油量に応じ効率よく安定した燃焼が得られるよう調整されている。また、停電などで送風機が働かない場合も、ある程度油量を絞れば、煙突による自然吸気でそのまま使用することが可能である。

燃焼室は耐熱塗装を施した薄鋼板製の外板で覆われ、外板からの輻射熱で部屋を暖める構造であった。家庭用でも10〜30畳用と、芯式に比べ発熱量の大きい製品が主流で、部屋の中央に設置するのが普通だった。壁際に置けば輻射熱による火災の恐れもあった。形状は円筒型の他、外板を四角柱の形に替え、更に上部を逆L字に折り曲げた構造の角型も販売された。全高が低く抑えられ外観がコンパクトになり、更に天板の面積が広がったことで、やかんや湯沸かし鍋、煮物の大鍋などを一緒に載せられるという利点もあり、積雪寒冷地の家庭用として普及した。

のちに芯式同様、耐熱ガラスで覆った燃焼筒の上部を反射板の前部に露出させることで輻射熱を得る、反射式の製品が発売された。伝熱部である前面の燃焼筒と反射板、やかん等を載せられる天板以外は塗装した薄鋼板のカバーで覆われており、接触による火傷の危険が少なくなり、壁際への設置も可能となった。だが石油ファンヒーターが主流となった現在、煙突が必要な従来型ストーブの需要は僅かである。

石油ファンヒーターや芯式ストーブに比べると構造が簡素で、灯油以外の燃料で使用することも比較的容易である。古くなったストーブに小改造を施し、廃油を燃料に使用している例(いわゆる廃油ストーブ)が稀に見られる。

使用上の注意[編集]

  • 耐震自動消火装置を正しく作動させるため、水平に設置しなければならない。その目安として簡易な水準器を備える機種が多い。
  • 使用する灯油の品質についても注意を要する。不良・不純灯油の問題を参照。

脚注[編集]

  1. しかし、1995年PL法施行以後に発売された製品には地震等でやかんや鍋が揺れて火傷や吹きこぼれによる故障などにつながるおそれがあるため、製品本体のラベルや説明書に「ストーブ上にやかんや鍋をのせて使わないこと」などの表示がなされるようになった。
  2. PL法の関係もあり、現在のファンヒーターではこれは不可能になっている。ただしかつては「ウォームトップ式」と呼ばれ、同様のことが可能なファンヒーターもごく少数ではあるが存在した。
  3. そのような使い方を想定したコンロのような石油ストーブも存在する(石油火鉢などと呼称されている)。
  4. 着火時のみ乾電池による電気火花(スパーク点火という)で着火するものが主流になりつつある。以前はニクロム線による電熱着火がほとんどだった。電池切れの際にはマッチライターで点火できる。

関連項目[編集]