分裂文
分裂文(ぶんれつぶん、英語:Cleft sentence)とは、単文の中のある成分(主語、目的語、その他)を強調するために抜き出し、コピュラ文を主節とする複文に変換した形の文をいう。
日本語の例を挙げれば「あいつが花瓶を割った」という代わりに「花瓶を割ったのは(が)あいつだ」という文である。
英語などSVO型語順を持つ言語では、主節の動詞をなるべく前に置くことが好まれるため、例えば
- We're looking for Joey.「私たちはジョーイを探している」
を言い換えて、
- Who we're looking for is Joey.「私たちが探しているのはジョーイだ」
というよりも、さらにダミー主語のItを用いて従属節を後に置いた
- It is Joey that we're looking for.
という方が一般的な語順となる。そこで後者を、文が2つの部分に分かれているという特徴から分裂文と呼び、前者を擬似分裂文(ぎじぶんれつぶん、Pseudo-cleft sentence)と呼ぶ。つまり英語では it + be動詞 + X + 従属節 という形が分裂文、 従属節 + be動詞 + X という形が擬似分裂文である。ここでXは名詞句、前置詞句、形容詞句や副詞句である。焦点はXに、もしくは(特に真正の分裂文で)従属節またはその一部に置かれる(発話では強調される)。日本語では分裂文と擬似分裂文に当たる区別は特にない。
疑問文[編集]
分裂文は言語によっては、疑問詞を強調するなどの形で疑問文にもよく用いられる。例えば日本語では「誰が花瓶を割ったか?」というより「花瓶を割ったのは誰だ?」あるいは「誰が花瓶を割ったのだ?」(のだ文)という言い方が普通である。
フランス語[編集]
現代フランス語では、次のような分裂文に由来する形式が疑問文(特に口語)で標準的に用いられている。
- Est-ce que(英語に直訳するとIs it that)...? 「...のか?」(疑問詞を含まない場合)
- Qu'est-ce que/qui*(What is it that)...? 「...のは何か?」
- Qui est-ce que/qui*(Who is it that)...? 「...のは誰か?」
(*:疑問詞が主語に当たる場合はqui、目的語に当たる場合はqueを用いる) これらは全体として複合的疑問詞とみなされ、平叙文(疑問詞に相当する部分を除いたもの)に前置することによって疑問文が作られる。フランス語の疑問文も参照のこと。
備考[編集]
言語によっては述語を強調するために目的語、補語を伴わない第I文型(S+V)においてあえて分裂文を用いる例も見られる。
- 英語での例
- What I am doing is walking.「私は何をしているのかというと歩いているのだ」