倍管

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倍管(ばいかん)は、クラシック音楽オーケストラに関する用語。特に指揮法の専門用語。

概要[編集]

倍管は、主に二管編成の木管楽器の人数を2倍にして編成すること。大方の目的は、コンサート・ホールの大きさに応じて音量を増すためことにある。

弦楽器の場合、1つのパートを複数人で弾いているので、パートごとの人数を単純に増やしていくことになる。一方、管楽器は原則として1パートを1人で演奏するため、通常はスコアに指示されているパート数分の人数がステージに乗ることになるが、倍管では音量的なバランスを取るためにもう1人がユニゾンで重なって吹くことになる。ただし、ピアニシモの箇所やソロの場合は、本来の指定通り1人ずつで演奏する。

音響学的には、全く同じ楽器が同じ音量・音色・奏法・音高などで同時に吹いた場合、約1.5%しか音は大きくならないといわれている。従って同じ最大音の100デシベルで2人の奏者が全く同時に同じように奏した場合、全体の音量は約101.5デシベルにしかならないと言われている。また、ユニゾンで奏するので、余程優秀なオーケストラ・奏者でない限りピッチが合いにくく、濁りが発生しやすくなる原因にもなる。

目安としては、16型(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラチェロコントラバスがそれぞれ16・14・12・10・8人)の弦に対して木管楽器(フルートオーボエクラリネットファゴット)をそれぞれ4人ずつの割合で配置する。事実上の四管編成になり、ダイナミックな響きになる。

グスタフ・マーラーがウィーンでベートーヴェン交響曲を演奏する頃から始まったと言われる。マーラーはまた、それらやシューマンウェーバーの作品でマーラー版と呼ばれる独自の版を編集している。こうした倍管による演奏は、その後もフルトヴェングラーらによって行われた。

通常はカール・ベームのように木管楽器だけを各4本にするが、カラヤンなどは金管楽器ホルントランペットトロンボーン)やティンパニブルックナーの交響曲で)も倍にしている。バーンスタインにはさらに、シベリウスの交響曲でアシスタント等を付けて、本来4本のホルンを9本にした例がある。

「3倍管」以上[編集]

最近のピリオド・オーケストラでは当時の手紙や批評の記述に習って「巨大編成」で演奏する団体が増えている。例えば当時のヘンデルの「水上の音楽」や「王宮の花火の音楽」の演奏は書かれているスコアの3倍以上の編成によって演奏されたという記述から、ヨーロッパの祝典や野外の演奏などではそれで習ってよく演奏・上演される。古典派ではハイドンべートーヴェンの交響曲の一部にそういう記述がある。従がって彼らの音楽の今日の倍管による演奏はその当時から全くなかったわけではなく、時々戦勝記念日などに演奏されていたと考えるのが自然である。ベルリオーズ巨大編成の作品はそれを具体的に書き留めたスコアといえる。