仙台市地下鉄南北線
南北線(なんぼくせん)は宮城県仙台市泉区の泉中央駅から太白区の富沢駅を結ぶ仙台市交通局の地下鉄路線。路線記号は○N
事業名称は、仙塩広域都市計画 都市高速鉄道第1号 仙台市高速鉄道南北線。事業延長は15.56km(地下式11.65km)[1]。仙台に他の地下鉄路線がないことから(2011年12月時点)、一般的には単に「仙台市地下鉄」や「地下鉄」などと呼ばれている。
開業当初から全列車が4両編成で、ワンマン運転が行われている。他線と線路が繋がっていない独立した路線であり、直通運転はない。
路線データ[編集]
沿線風景[編集]
仙台市地下鉄南北線は、仙台市泉区の泉中央副都心にある泉中央駅から、北仙台、仙台市都心部、長町副都心を通って、仙台市太白区の富沢に至る路線である。路線の大部分は地下線だが、両端では高架線あるいは地上線となっている。地形との関係については仙台の地形の項目を参照。
- 泉中央 - 八乙女 - 黒松
- 泉中央と八乙女は泉中央副都心にある駅である。
- 泉中央駅は開業してから5年後の1992年に延伸開業して設けられた駅であり、地下に位置する。駅を出るとすぐに高架区間となり、ユアテックスタジアム仙台(仙台スタジアム)と七北田公園の間を走り抜ける。天候によっては遠くに泉ヶ岳の姿を望むこともできる。その後、七北田川を渡り終えると八乙女駅に到着する。この駅は高架駅で、かつての終点だった。
- 七北田川の南北両岸は、北から「将監団地がある富谷丘陵→泉中央がある七北田川北岸河岸段丘→七北田川→八乙女がある七北田川南岸河岸段丘→黒松がある七北田丘陵」というように「高・低・高」となるため、地下駅の泉中央を出ると地上に出て、七北田川を橋で渡河してそのまま八乙女が高架駅となり、同じ高さのまま丘陵地中腹にトンネルで入って黒松(くぼ地)で半地下駅となっていく。なお、七北田川北岸の泉中央と南岸の八乙女の両者は、一体的な都市機能を持っている。地下鉄開業前にほとんど開発されていなかったこの地区は、地下鉄の開業で業務・商業地区となり、かつマンションが林立する地区へと大きく変化した。
- 黒松 - 旭ヶ丘 - 台原 - 北仙台
- 黒松から台原までは七北田丘陵の住宅地となっている。八乙女駅を出ると短いトンネルがあり、それを抜けると森や沼、小規模な団地の風景を見ることができる。しばらく進むと黒松駅に到着する。この駅は半地下型の駅で、天気が良い日にはホームに薄く光が差し込む。黒松駅から先は地下区間となるが、旭ヶ丘では駅の構造上台原森林公園を文字通り垣間見ることができる(両駅間のトンネルの名称は「旭ヶ丘隧道」)。これは旭ヶ丘駅が七北田川の支流によって造られたV字谷の崖の一部を利用して建設されているためで、駅の西側にV字谷を作った小川と台原森林公園、駅のホーム上から東側が崖上の旭ヶ丘地区となっている。なお、このV字谷を通って仙台川沿いから八乙女駅方面に仙台鉄道が通っていた。旭ヶ丘駅を出ると完全な地下区間となり、終点の富沢駅付近までひたすら地下を走る。
- 北仙台 - 北四番丁
- 北仙台からは平地部分の地下となる。
- 北仙台地区は仙台城下町の北端に当たる。奥州街道(後の国道4号)が通り、仙台鉄道と国鉄が駅を設置し、仙台鉄道廃止後は宮城交通のバスターミナルともなって仙台の北の交通の要衝だった。現在、北の交通ターミナルの地位は泉中央に譲っている。
- 地下鉄開業前からマンションがいくつもあったが、地下鉄の開業で北仙台 - 北四番丁の地区はマンション林立地区に変化した。但し物販は最寄り品が中心で、買回品や専門品の商業の集積はあまりない。
- 北四番丁 - 勾当台公園 - 広瀬通 - 仙台 - 五橋
- この区間は仙台市都心部にあたり、駅間距離も短い。「都心駅」とも呼ばれる。
- 北四番丁から勾当台公園までの区間は県庁・市役所の北側の業務地区「二日町」となっており、公共事業関連業種や自治体外郭団体事務所、及び指定金融機関などの集中地区となっている。
- 「都心駅」では、一番町・中央通り・仙台駅西口や業務地区を縫うように走る。歓楽街の国分町は勾当台公園駅が最寄り駅である。
- 南北線仙台駅のホームは地下3階にある。その他の仙台駅地下構造については仙台トンネル参照。
- 五橋 - 愛宕橋 - 河原町 - 長町一丁目
- この区間は広瀬川北岸の川沿い地下を走る。江戸時代から続く老舗の店や職人町がある下町地区であるが、最近は都心部に近いため、マンション建設も活発化している。
- 長町一丁目 - 長町 - 長町南
- この3駅は長町副都心内にある。
- 長町一丁目から長町までは奥州街道の宿場町「長町宿」時代からの商店街の歴史がある。広瀬川左岸の「仙台城下町」地区に対し、広瀬川右岸の長町宿は江戸の内藤新宿のような立場であったため、歓楽街的要素も残る。長町副都心は仙台の南の商業中心であり、現在、大規模開発が進んでいる。
- 長町南 - 富沢
- 黒松駅から地下区間が続いていたが、富沢駅に到着する直前に再び高架区間となる。この付近は以前一面の水田地帯で、仙台市体育館以外は目立ったものがなかったが、現在は新興住宅街が形成されている。なお、車両基地(富沢車両基地)は富沢の南方に位置し、それに隣接して仙台市電保存館がある。
建設の目的と効果[編集]
1960年代以降の高度経済成長で仙台市郊外も住宅建設が急増していった。隣接する泉市(現在の仙台市泉区)における宅地開発はより加速度を増しており、増え続ける住宅団地に交通網が追い付かない状況だった。特に県道仙台泉線の渋滞は酷く、自動車だけではなくバスも需要が逼迫しており、これらの緩和には地下鉄が必要との仙台市の審議会の勧告を受けて1981年に着工された。
都心流入のバスを減らすために、郊外の駅にバスターミナルを併設し、バス・地下鉄乗り継ぎを促すバス系統と運賃体系が整備・運用されている。しかし、乗継割引があったとしても、バス・地下鉄を乗り継ぐ場合の運賃はかなりの額になるため、ターミナルとして成功したのは都心から離れた泉中央駅・八乙女駅の2つのターミナルくらいで、それ以外では地下鉄のみで都心に通勤・通学する人達の需要に応えた形で、沿線のマンション建設が活発化した。
開業時期は丁度バブル景気期であったため、都心の地価が高騰しており、地下鉄によって泉中央に業務機能が分散して地価上昇を抑える助けとなり、泉中央の都市化が進んだ。
開業前の仙台市による利用者数予測では、開業時点で一日当たり22.5万人、開業20年目の2007年には33万人となる計画だった。実際には、開業初年度は一日平均11万人で、その後は増加傾向で推移したものの、1995年の16.7万人をピークに微減傾向となった。近年は再び増加し、現在の一日平均乗車人員は16.6万人(年間約6,047万人。2013年度実績)となっている。
歴史[編集]
- 1980年(昭和55年)5月30日 - 工事事業免許。
- 1981年(昭和56年)5月7日 - 建設工事着工。
- 1987年(昭和62年)7月15日 - 八乙女駅 - 富沢駅間開業。
- 1989年(平成元年)
- 1992年(平成4年)7月15日 - 泉中央駅 - 八乙女駅間延伸開業。
- 2006年(平成18年)12月18日 - 富沢車両基地 - 富沢間で回送中の列車が脱線事故。
- 2007年(平成19年)5月26日 - 運行管理システムを更新。それに伴い駅の発車ベルが発車メロディーに変更、放送は富沢方面が女声で泉中央方面が男声となり、電車接近放送を英語でも行う。
- 2008年(平成20年)12月12日 - 列車停止位置の変更を完了。
- 2009年(平成21年)10月17日 - 富沢駅で可動式ホーム柵の運用開始。他の駅も以後順次設置・運用開始。
- 2010年(平成22年)2月20日 - 泉中央駅を最後に全駅に可動式ホーム柵設置完了。
- 2011年(平成23年)
- 3月11日 - 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)により、全線運休。
- 3月14日 - 台原駅 - 富沢駅間で運転再開。台原駅 - 泉中央駅間は修復工事のため運休、5月までの予定でバス代行。
- 4月29日 - 泉中央駅 - 台原駅間で運転再開。JR東日本の技術協力等により工期を短縮、予定より1か月早く「震災復興キックオフデー」に合わせて全線再開を実現。
- 2014年(平成26年)12月6日 - IC乗車カード「icsca」導入[3]。
- 2015年(平成27年)2月4日 - 駅ナンバリング表示工事開始[4]。3月上旬に全駅完了。
運行形態[編集]
全列車が、泉中央駅 - 富沢駅間を通しで運転される。運転間隔は、平日日中が7分間隔、休日日中が8分間隔、平日朝ラッシュ時が3-6分間隔、平日夕方ラッシュ時が5-6分間隔となっている。
なお終電は通常、富沢方面行きが23:43泉中央発、泉中央方面行きが23:47富沢発であるが、金曜日と金曜が祝日となる場合の木曜日に限り、23:55泉中央発富沢方面行き、23:59富沢発泉中央方面行きが運転される。これは、その日には東京駅発東北新幹線の臨時列車「やまびこ249号」(仙台駅23:52着)が運行されるため、これに連絡するためである[5](なお、通常の東北新幹線の下り最終列車「やまびこ223号」(仙台駅23:48着)には、通常の地下鉄線最終列車が連絡している)。
車両[編集]
駅一覧[編集]
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 地上/地下 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
行政区 | |||||||
N01 | 泉中央駅 | - | 0.0 | 地下 | 泉区 | ||
N02 | 八乙女駅 | 1.2 | 1.2 | 地上区間 | |||
N03 | 黒松駅 | 1.3 | 2.5 | ||||
N04 | 旭ヶ丘駅 | 0.8 | 3.3 | 地下区間 | 青葉区 | ||
N05 | 台原駅 | 1.0 | 4.3 | ||||
N06 | 北仙台駅 | 1.1 | 5.4 | 東日本旅客鉄道:仙山線 | |||
N07 | 北四番丁駅 | 1.2 | 6.6 | ||||
N08 | 勾当台公園駅 (県庁 市役所前) |
0.7 | 7.3 | ||||
N09 | 広瀬通駅 (一番町 中央通り) |
0.6 | 7.9 | ||||
N10 | 仙台駅 | 0.6 | 8.5 | 東日本旅客鉄道:東北新幹線、東北本線、常磐線、仙山線、仙石線* 東日本旅客鉄道/仙台空港鉄道:仙台空港アクセス線 | |||
N11 | 五橋駅 | 0.9 | 9.4 | ||||
N12 | 愛宕橋駅 | 0.6 | 10.0 | 若林区 | |||
N13 | 河原町駅 | 0.9 | 10.9 | ||||
N14 | 長町一丁目駅 (市立病院前) |
0.8 | 11.7 | 太白区 | |||
N15 | 長町駅 | 0.7 | 12.4 | 東日本旅客鉄道:東北本線、常磐線 東日本旅客鉄道/仙台空港鉄道: 仙台空港アクセス線 | |||
N16 | 長町南駅 | 0.9 | 13.3 | ||||
N17 | 富沢駅 (仙台市体育館前) |
1.5 | 14.8 | 地上 |
- *印の仙石線は、地下鉄駅コンコース北端で接続しているあおば通駅で乗り換えるのが一般的。ただし、西口中央地下歩道や東西地下自由通路、あるいはペデストリアンデッキを経由してJR仙台駅で乗り換えることも可能である。
- 地下鉄の乗継指定駅(上の表で背景が緑色の駅 =泉中央・八乙女・旭ヶ丘・台原・北仙台・長町・長町南)からバスの乗継指定停留所に乗り換えると、バスの利用運賃から40円(地下鉄30円、バス10円)割引される。バスから地下鉄の場合も同様で、地下鉄の運賃から40円割引される。乗継指定駅は、バスターミナルがある駅である。ただし、バスターミナルを持つ富沢駅や、北仙台駅の北仙台停留所では乗り継ぎ割引の適用外となっている。なお、宮城交通のバス路線では乗継割引の区間が限定されている(吉岡方面は「湯船沢」バス停、秋保方面は「生出橋」バス停、岩切方面は「台原」バス停まででそれ以遠は乗継割引適用外となる。また、乗継駅バス停から仙台駅行方面以遠は乗継割引適用外。ただし泉中央駅、八乙女駅→虹の丘団地経由仙台駅方面は「水の森公園キャンプ場入口」バス停まで)。
- 上記の表で色が付いていない地下鉄駅(上記以外の駅)やバス停を利用しても、乗継割引は受けられない。
泉中央以北への延伸構想[編集]
かつては仙台鉄道が通り、現在は仙台のベッドタウンとなっている黒川郡の富谷町や大和町からは、国道4号等の幹線道路が慢性的渋滞に悩まされるようになったことから泉中央以北への延伸の要望がある。近年、トヨタ自動車東日本や高度電子関連企業の進出が相次ぎ、企業の従業員の足を確保するためということで延伸構想が熱を帯びてきている[7]。
2002年2月、黒川郡の4町村の首長・議長で組織する「緑の未来産業都市くろかわ建設推進協議会」が、南北線を泉区泉ケ丘に延長して大衡までをライトレール (LRT) で結ぶ構想を発表した[7]。しかし、実現には500億円前後の費用がかかり、仙台市は「需要が増える見通しが不透明。費用対効果があるだろうか」と冷ややかである[7]。
その他[編集]
乗車券参照
- 4両編成の列車が運行されているが、各駅のホーム長は6両編成まで対応している。2003年度を目途に一部の4両編成の列車を6両編成に増結する計画があったが見送られ、事実上凍結となっている。
- 仙台市を走るJR線のうち、仙石線とは同じ直流電化であるが、信号等の運転・保安上のシステムが異なり、仙石線以外のJR線とは、電化方式も運転・保安上のシステムも異なる。また現在建設中の仙台市地下鉄東西線とは、車両の規格が異なる。仮に他路線への直通運転を行う場合には、これらの相違を解決する必要があるが、南北線の計画段階より現在まで、他路線への直通運転構想はない。
- 建設当初からワンマン運転を前提にしていたため、運転士による安全確認を容易にするために、全駅、直線の島式ホームで統一し、車両も、運転席が進行方向に対して右側に設置されている。
- 駅構内ではBGMが流れる。BGMは季節ごとに流れる曲が変わる。ただし、時報代わりに流れる『荒城の月』は年中使用されている。
- 地上部の架線(電車線)には[8]自動饋電区分装置が設けられており、パンオーバーを防いでいるだけではなく、安定した回生ブレーキ動作に寄与している。
脚注[編集]
- ↑ (XLS) - 国土交通省
- ↑ 仙台市消防概況(平成20年版)の統計資料「沿革PDF 」
- ↑ イクスカ出発進行 仙台市地下鉄で利用始まる - 河北新報(2014年12月7日)
- ↑ 仙台市地下鉄に「駅ナンバリング」を表示します - 仙台市交通局(2015年2月2日)
- ↑ 平成15年度業務監査実施結果報告に関する取り組み状況(平成17年度) 仙台市交通局の取り組み状況PDF - 国土交通省
- ↑ 地下鉄東西線開業に合わせて新たな運賃制度を導入します - 仙台市交通局、2014年1月27日。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 「黒川に鉄路を」熱再び 企業進出で「好機」. 河北新報. (2009年6月2日).オリジナルの2009年6月5日時点によるアーカイブ。 2015年5月14日閲覧。
- ↑ 『鉄道ピクトリアル』525号(鉄道図書刊行会)
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 仙台市交通局
- 財団法人地方自治研究機構理事長 石原信雄の講演録 - 地下鉄南北線の泉中央延伸と、泉市の仙台市編入のバーターについて、政府側当事者としての内情が一部記載されている。(2003年8月23日時点のアーカイブ)