デトックス
デトックス (detox) とは、体内に溜まった毒素を排出させるという健康法で代替医療に分類される。この呼び名は "detoxification"、つまり「(体内から毒素や老廃物を)取り除く」、「解毒」の短縮形。
現代社会を暮らしていく上では、「体内に人体に悪影響を及ぼす化学物質(主に重金属や合成化合物、薬物のうち、特に有害なもの)が蓄積され、また自身の体内からも活性酸素などが生成されている」と喧伝されている。デトックスとは、「サプリメントの摂取や入浴などで、こういった体内の有毒な物質を排出しようとする方法」とされている。これら有害な物質の多くが脂肪に蓄積されることから、提唱者の一部はダイエットと関連付けてその効能を標ぼうしている。
食物繊維はダイオキシン類を吸着して排泄させることで、排泄速度を2~4倍に高めダイオキシン類の健康への影響を減少できる可能性があるとされているが現段階で科学的な立証はされていない。
問題点[編集]
全ての重金属や合成化合物などが有害であるとする偏見も多いが、例として取り上げられることのある水銀、カドミウム、鉛が日常的に摂取され続けることはほとんどなく、食品添加物についても実際には動物実験によって得られた毒性値の数百から数千分の1の量しか用いられていない。また一部の重金属はミネラルを構成する大切な栄養素である。さらに、合成化合物は構造が同じ天然化合物と全く性質は変わらず、安全性に何ら差はない。合成化合物は有害なものと捉えることで、天然製品を宣伝する販促に踊らされないよう注意が必要である。
健康的に生活していれば、人体は副腎機能の正常化を条件に肝臓・腎臓をはじめとした体にとって有害な物質を取り除く機構を備えている。なお、確かに有害な重金属やダイオキシン類は体内に蓄積され、出産を除いて大量に排出される機会はほとんど無いが、それは人体に密接に結びついているためであり、仮にそれらを短期間に大量排出する方法があったとしても、身体には大きな負担を伴うと言えよう。
ゆえに、科学的根拠に乏しい、いわゆる疑似科学を用いたものも数多く存在する。こうした根拠の無い効果を提唱した製品を販売する業者はもとより、同様に根拠の無い効果を提唱して客に利用させ対価を得ている一部のエステティックサロンなども、景品表示法に違反する可能性が高いものもある。尚、この代替医療により毒素が排出されたという医学、科学的精査に基づいた事例は報告されてない。
デトックスを推奨する者は、患者に対し、毒素の排出のノウハウを教えると同時に分別ある食生活や生活環境の改善、軽い運動や休養も指示する。体調を崩していた者が指示に従い一定期間後に症状が改善するが、これは自然治癒によって症状が軽くなったもので、デトックスそのものに疾病を治療する医学的効果は全く無い。代替医療の中でも生命の危険がほとんど無い療法ではあるが、時間と金銭的な浪費が伴う。
事例[編集]
- 足裏から重金属などの毒素を排出する効果を提唱するフットバス製品(イオンデトックス)が存在し、これを使用すると容器内の水の色が変化する。業者の説明ではこれは体内の毒素が水に溶け出したために生じたものとされるが、実際には水中の電極に使用されている金属が変化し、イオン化したものが水に溶け出した結果生じたものである(すなわち単純な電気分解である)。
- イギリスでは、体内の毒素を出すために栄養士の指示のもと毎日約2リットルの水を飲んだ女性がナトリウム欠乏症となり、脳に回復不能な損傷を負ったという事例がある。
方法[編集]
- 食生活の改善
- 食物繊維の摂取
- ミネラルウォーター、ハーブティの飲用
- 各種サプリメント、薬剤の摂取
- キチン・キトサンの摂取(カニなど甲殻類の骨格を形成するキチンは、汚水の浄化にも使われる吸着力があるため、腸内の過剰脂肪などの汚物をキチンが吸着・排出することによってデトックス効果が得られると期待される。)
- 入浴剤を用いた入浴、ゲルマニウム温浴など広義での湯治
- イオンデトックス
- 岩盤浴
- マッサージ、電磁気器具を用いたエステティックサロン
- 絶食
- キレーション療法は、デトックスを目的として行われる場合がある
- 鍼灸、腎臓・肝臓を刺激して新陳代謝を活発にする
その他[編集]
アルコール依存症や麻薬中毒の社会的サポートまで含めた治療をデトックスと言う場合もあるが、日本ではあまり一般的ではない。また人工透析も広義のデトックスであるが、医療として行われるものとは通常区別される。