グッドデザイン賞
グッドデザイン賞(グッドデザインしょう)は、公益財団法人日本デザイン振興会の主催で、毎年デザインが優れた物事に贈られる賞であり、日本で唯一の総合的デザイン評価・推奨の仕組みである。
工業製品からビジネスモデルやイベント活動など幅広い領域を対象とし、これまでの総受賞対象数は3万件以上にのぼる。2006年の応募総数は約2900点であり、毎年の授賞点数はおよそ700点から1300点になる。デザイン盗用問題を背景に通商産業省(現・経済産業省)が1957年に創設したグッドデザイン商品選定制度を前身とする。賞の受賞率は30%を越えており、第三者からの推奨ではなく当事者による出費を伴う応募製品の中から選定される賞である。
賞の内容[編集]
この賞は、生活や産業ひいては社会全体の発展を目的としているため、新しさや高度さ、価値観の創造や社会貢献などで評価を得る必要がある。地球環境などに特別に配慮したものには、サステナブルデザイン賞などの特別賞が用意されている。毎年、投票によって最も優れたものを決定し、投票数の最も多かった対象にグッドデザイン大賞が贈られる。元々は審査員のみによる投票で選ばれていたが、2011年度より一般の投票も受け付けるようになった。グッドデザイン大賞は2007年度より内閣総理大臣賞と位置付けられ、政府から授与される形式をとっているため、得票数が多くても日本政府の承認が無ければ認められず、政府が授与を拒否すれば2013年度のように該当無しとなる場合もある[1]。
1次審査に応募するためには1万円が必要であり、それを通過すれば5万5千円の審査料も必要となる。2次審査を通過し、晴れて受賞となれば展覧会への出展で11万5千円、年鑑への掲載料が3万円と定められている。(いずれも税別、2014年費用)[2] 審査員はデザイナーや建築家などが務め、審査の中心となる2次審査は東京ビッグサイトで行う。また、審査終了後には会場をグッドデザイン・プレゼンテーション展示会として一般公開する。2006年には3日半で学生や家族連れを含め約4万1,000人が来場した[3]。
受賞率は約30%ほどであり、2005年の公式記録では3,010件の審査対象に対して受賞数が1,158件となっている。特徴としては、特別賞や金賞が審査によって選ばれるのに対し、「大賞」は投票によって選ばれる。グッドデザイン大賞は、2005年度以降2010年度まではベスト15の中から選ばれ、大賞に漏れた場合は金賞となっていた。
また、社会全体の発展に対する活動の一環として、2007年度より受賞情報に対しクリエイティブ・コモンズを導入している。
歴史[編集]
1957年に通商産業省が「グッドデザイン商品選定制度」(通称Gマーク制度)を創設した。当時、日本企業による外国商品のデザイン盗用が外交問題となっていたため、デザインの創造を奨励することで、盗用の防止を図ったのである。当初は、審査員が自らデザインの優れた商品を探し集めていたが、1963年には公募形式になり、受賞点数が初めて百点を越えた。また、当初は一部の工業製品のみが対象だったが、1984年にはすべての工業製品が対象になり、受賞点数が初めて千点を越えた。その後も次第に枠を広げ、建築や公共分野など幅広い領域を取り扱うようになっていった。
1998年に民営化され、それまでこの制度の業務を委託されていた財団法人日本産業デザイン振興会(現・公益財団法人日本デザイン振興会)が主催者となった。同時に事業名が「グッドデザイン賞」に変更された[4]。
グッドデザイン大賞[編集]
年度 | 受賞対象 | 企業 | デザイナー |
---|---|---|---|
1980年[5] | レコードプレーヤー SL-10 | 松下電器産業 (現・パナソニック) |
松下電器産業 (現・パナソニック) |
1981年[6] | カメラ XA2 | オリンパス光学工業(現・オリンパス) | オリンパス光学工業 |
エレクトロニックフラッシュ A11 | |||
1982年[7] | ビデオテープレコーダ HR-C3 | 日本ビクター | 日本ビクター |
ビデオカメラ GZ-S3 | |||
ビデオモニター TM-P3 | |||
1983年[8] | カメラ T50 | キヤノン | キヤノン |
1984年[9] | 小型乗用車 シビック 3ドアハッチバック | 本田技研工業 | 本田技術研究所 |
1985年[10] | ビデオモニター αTUBE TH28-DM03 | 松下電器産業 (現・パナソニック) |
松下電器産業 (現・パナソニック) |
1986年[11] | 平机 Trygon TJ-1-128他 | 稲葉製作所 | 稲葉製作所 |
移動式キャビネット Trygon TJ-C2 | |||
1987年[12] | オーバーヘッドプロジェクター OHP313R | リコー | リコー |
1988年[13] | 小型乗用車 シルビア Q's | 日産自動車 | 日産自動車 |
1989年[14] | ビデオ付テレビカメラ HANDYCAM CCD-TR55 | ソニー | ソニー |
1990年[15] | パーソナルコンピューター NeXT MODシステム | NeXT Computer | frog design Hartmut Esslinger |
1991年[16] | モジュラー型ステレオ Beosystem 2500 | Bang & Olufsen | Bang & Olufsen Lab |
リモートコントローラー Beolink 5000 | |||
1992年[17] | 眼鏡 エア・チタニウム | Lindberg | DISSING+WEITLING architectfirm |
1993年[18] | パーソナルコンピューター ThinkPad 710T | 日本アイ・ビー・エム | 日本アイ・ビー・エム |
パーソナルコンピューター PS/55 T22SX | |||
パーソナルコンピューター ThinkPad 220 | |||
1994年[19] | 普通乗用車 Volvo850 Estate Series | Volvo Car | Lars Erik Lundin |
1995年[20] | スーパーコンピューター SX-4モデル32 | 日本電気 | NECデザイン |
1996年[21] | 工業化住宅 GENIUS 蔵のある家 | ミサワホーム | ミサワホーム |
1997年[22] | 金沢市民芸術村 | 金沢市 水野一郎 金沢計画研究所 |
水野一郎 金沢計画研究所 松本・斎藤建設工事JV 本田工務店 稲元工務店 |
1998年[23] | 自転車 トランジット T20SCX | ブリヂストンサイクル | ブリヂストンサイクル |
1999年[24] | エンタテインメントロボット AIBO ERS-110 | ソニー | 空山基 ソニーデジタルデザイン |
2000年[25] | 素材技術から出発した新しい商品デザインのあり方の提案 A-POC | 三宅デザイン事務所 | 三宅一生 藤原大 |
2001年[26] | せんだいメディアテーク | 伊東豊雄建築設計事務所 仙台市 |
伊東豊雄建築設計事務所 |
2002年[27] | モエレ沼公園 | 札幌市役所 | イサム・ノグチ イサム・ノグチ財団 ショージ・サダオ アーキテクトファイブ |
2003年[28] | 乗用車 プリウス | トヨタ自動車 | トヨタ自動車 テクノアートリサーチ |
2004年[29] | こども向けテレビ番組 「ドレミノテレビ」 | 日本放送協会 | 日本放送協会 |
こども向けテレビ番組 「にほんごであそぼ」 | 日本放送協会 | 日本放送協会 佐藤卓デザイン事務所 | |
2005年[30] | インスリン用注射針 ナノパス33 | テルモ | テルモ |
2006年[31] | 軽乗用車 i(アイ) | 三菱自動車工業 | 三菱自動車工業 デザイン本部 |
2007年[32] | ニッケル・水素蓄電池 eneloop universe products | 三洋電機 | 三洋電機 |
2008年[33] | 乗用車 iQ | トヨタ自動車 | トヨタ自動車 |
2009年[34] | 岩見沢複合駅舎 | 北海道旅客鉄道 | ワークヴィジョンズ 岩見沢レンガプロジェクト事務局 |
2010年[35] | エアマルチプライアー | ダイソン | ジェームズ・ダイソン |
2011年[36] | 東日本大震災でのインターナビによる取り組み「通行実績情報マップ」 | 本田技研工業 | 本田技研工業 インターナビ事業室 |
2012年[37] | テレビ番組 「デザインあ」 | 日本放送協会 | 岡本健(佐藤卓デザイン事務所) 阿部洋介(tha) 岡崎智弘(swimming) ミズヒロ |
2013年[38] | 該当なし[1] | ||
2014年[39] | 産業用ロボット 「医療医薬用ロボット VS050 SII」 | デンソー デンソーウェーブ |
折笠弦(デンソー デザイン部) |
Gマーク[編集]
グッドデザイン賞を受賞した製品等にはGマークを表示することができる。ただし主催者保有の商標のため販促活動に使用する際には使用料が必要である。使用料は、企業・団体の規模や販売価格ごとの設定に応じた措置はあるものの、最低20万円を支払わなければPOPやパンフレットに使用することはできない。(受賞発表後の1ヶ月間をのぞく、受賞後10年目以降は無料))[2] 家電量販店などに行けば、商品パッケージにグッドデザイン賞の名前とGマークが印刷されているのを見ることが出来る。 公式サイトに掲載された2011年の国内調査によると、Gマークの認知率は87.7%にのぼり、1億人以上の日本人に知られていることとなる。また、58.5%の生活者がGマーク商品を「魅力ある商品」として購入時の選択に影響を受けていることもわかり、宣伝効果は高いと思われる。 さらに、商品の販売促進だけではなく、受賞した企業自体の社会的価値の向上にも寄与し、好イメージをもたらす効用もあり、企業と生活者とをつなぐコミュニケーションの役割を果たしている。
審査委員長[編集]
- 深澤直人 2010年度-2012年度
- 内藤廣 2007年度-2009年度
- 喜多俊之 2004年度-2006年度
- 川崎和男 2001年度-2003年度
- 中西元男 1998年度-2000年度
- 川上元美 1997年度
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 グローバルデザイン2013選出過程 | 2013年度 | グッドデザイン賞受賞概要 | これまでの活動 | Good Design Award - 日本デザイン振興会 2013年11月7日閲覧
得票数ではGoogleマップが最多得票数となり、「グッドデザイン大賞」の候補だったが「最も優れたデザインとは認めがたい」と政府に判断され該当無しに、同候補は「特別賞(グローバルデザイン2013)」扱いとなった。 - ↑ 2.0 2.1 費用(2014年度グッドデザイン賞 応募、審査の概要)
- ↑ グッドデザイン・プレゼンテーション -GDP2006-
- ↑ () 沿革 日本デザイン振興会 [ arch. ] 2012-05-05
- ↑ (1980) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1980 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1981) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1981 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1982) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1982 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1983) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1983 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1984) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1984 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1985) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1985 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1986) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1986 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1987) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1987 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1988) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1988 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1989) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1989 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1990) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1990 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1991) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1991 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1992) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1992 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1993) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1993 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1994) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1994 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1995) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1995 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1996) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1996 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1997) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1997 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1998) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1998 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (1999) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 1999 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2000) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2000 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2001) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2001 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2002) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2002 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2003) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2003 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2004) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2004 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2005) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2005 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2006) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2006 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2007) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2007 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2008) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2008 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2009) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2009 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2010) 受賞対象一覧 財団法人日本デザイン振興会 2010 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2011) 受賞対象一覧 公益財団法人日本デザイン振興会 2011 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2012) 受賞対象一覧 公益財団法人日本デザイン振興会 2012 [ arch. ] 2013-07-07
- ↑ (2013) 受賞対象一覧 公益財団法人日本デザイン振興会 2013 [ arch. ] 2013-11-07
- ↑ (2014) 受賞対象一覧 公益財団法人日本デザイン振興会 2014 [ arch. ] 2014-11-04
関連項目[編集]
- iFデザイン賞 - 国際的なデザインコンクール。
- 世界ウルルン滞在記 (2001年に審査委員長特別賞/メディアデザイン賞を受賞している。テレビ番組として初の受賞)
- 東京ミッドタウン(2007年度からの公益財団法人日本デザイン振興会の所在地)
- 明和電機 (人間として初の受賞)
- 塊魂 (ゲームとして初の受賞)
- 1/60イングラム (プラモデルとして初の受賞)
- 稲川淳二 「車どめ」で受賞。