膣内射精
膣内射精(ちつないしゃせい)とは男女の性交において、男性が女性器の中(膣内)に射精することである。なお男性が陰茎にコンドームを被せたまま女性の膣内で射精した場合、基本的に膣内に精液は注入されないので、膣内射精とは言わない。
目次
概要
膣内に精液が入ると女性は妊娠する場合があるので、子供が欲しい場合以外は、避妊を確実に行う必要がある。
子供を養える経済環境、子育てが可能な体力・気力がない場合、中絶することになるが、中絶の女性の精神的・身体的負担は相当なものである。計画のない妊娠は、女性にとって負担であることも考えると、確実な避妊をする愛を持つことが望ましい。しかし現実には男性が一方的に衝動的な膣内射精をする場合があり、女性にとって危険な行為と言える。
膣内射精する場合は、性器の直接接触による性行為感染症にかかる危険性がある。不特定多数の相手と性行為をした場合感染すると思われることが多いが、特定の相手としていてもかかる性感染症もある。コンドームは性感染症予防の道具でもある。
また強姦などの犯罪行為は男性が自己の性欲を満たす目的であるため、避妊をしない膣内射精を行うことがほとんどである。女性が強姦により妊娠させられることはその女性の生涯に渡り、著しく精神的な障害を与えることになる重大な問題である。最近では警察の科学捜査の向上により、精液から血液型やDNAが判明するため、犯人の顔がわからなくても検挙されることが多い。
アダルトビデオの「中出し」
1990年代前半、日本のアダルトビデオでは膣外射精(外出し)がほとんどを占めていた。これは精液が目に見える形で外に出されることにより、見せ場となる射精の瞬間を明瞭にできるという演出上の効果が高いと考えられていたからであると言われる。それまでにも見せ場が膣内射精になる演出の作品も一部存在したが、主流ではなかった。しかし1990年代後半になると膣内射精を好む客層がいることが製作者サイドに認識され始め、”中出し”がジャンルとして登場した。近年のアダルトビデオや出版物においては自然な性交感を演出したり、鑑賞者の性的興奮をより高めるために膣内射精が用いられることがある。
これらのシーンの演出は大きく2つに分けられる。1つは女優が膣内射精を許容する演出の作品で、2000年代前半から半ばにかけてアダルトビデオ作品で広く見られるようになってきた。もう1つは膣内射精に際して激しく抵抗して半ば強姦され、妊娠の可能性に対する恐れや女としての自信の喪失のために泣き叫ぶ様子を演出する作品があり一例として死夜悪レーベル作品(2006年現在)が挙げられる。
擬似精液の使用
「中出し」のアダルトビデオは膣から精液が糸を引いて流れ出すシーンが魅力であるがAV女優の性感染症および妊娠の危険を避けるため、ほとんどの作品が実際には膣内射精を行っていない擬似精液を用いた偽物の中出し(擬似中出し)といわれる。この理由については「妊娠はピルによって回避できるものの、性感染症については検査をしていても潜伏期間が存在するため、性病感染の恐れがあるから」とする見方もあるが、性感染症についてはフェラチオや精液を口腔内に入れることでも罹患する可能性があるのでこの説は理由になっていない。むしろ、中出しに対する心理的な拒絶に起因するものと考えられる。
疑似精液を使った場合、本物の精液と比較して色合いが不自然(白すぎる場合が多い)、量が多すぎる、粘度が低くサラサラですぐに膣から流出するなどの点で見分けがつきやすい。「中出し」か「擬似」であるかを簡単に判別する方法としては、シーンのカット割(映像の分割)があるかないかでも確認できる。擬似中出し作品の場合、膣から流れ出る擬似精液を撮影するため膣から陰茎を完全に抜いた後、擬似精液を膣に注入し、これを撮影する。そのため射精シーン直後に映像が分割されている場合、「擬似」である場合が多い。
しかしこうした手法は鑑賞者にはすでによく知られているためカット割をせず、疑似精液を使用する手法もある。これも射精シーン直前に不自然な抽送停止時間があったり男優が射精直前に股間で不自然な手の動きをする場合、あるいはスポイトから擬似精液を注入する際に生じる「ブチュッ」といった音が生じることなどで「擬似」であることをある程度見分けることができる。このような作品の中には故意に出演女優を騙す演出の後、本当の中出しと勘違いさせ女優が怒る演技を織り込む場合がある。女優の戸惑う演技が中出しシーンのリアリティを向上させている。
実際の「中出し」
しかし、より臨場感を求める作品では実際に膣内射精をしている場合がある。特に月経があがった熟女女優や妊婦女優など妊娠の心配のないAV女優の出演作では、実際に膣内射精を行っていることが比較的多い。また最近は性交後に服用する避妊薬のモーニングアフターピルが海外から輸入されたり、1999年に低用量ピルが認可されるようになってから実生活でも膣内射精が一般化するに伴い本物の中出し撮影が増えたと言われている。
近年では膣内射精人気の高まりを受け、真正中出しにこだわり擬似中出しとの差別化を図るメーカー(モブスターズ)も登場している。
演出
擬似精液の使用に対する鑑賞者の厳しい目を受け射精は意識的に停止させることが難しい点を利用し射精の最中に膣から陰茎を抜き、本物の中出しであることを強調する作品もある。これは「半中半外」と言われる手法でありAVメーカーのモブスターズがその元祖とされ、現在では他メーカー作品でも採り入れられている。上述のように中出しを偽装している作品も多いので、真正な中出しであることを証明するために特別な演出・撮影を行うことがある。
- 半中半外
- 射精直前に膣から陰茎を引き抜き膣外で射精を始めてから陰茎を膣へ挿入し直し、引き続き射精すること。男性の射精は始まると本人の意思で止められないため、膣内で射精していることを証明できる。
- 金玉アングル
- 男女の性器結合部分を撮影する際、男性の精巣を画面中央に大写しに据える撮影アングルのこと。男性が射精すると精巣およびその周囲の筋肉が不随意運動で動くのが確認でき、膣内で射精していることを証明できる。
- チンピク
- 男女の性器結合部分を撮影する際、男性の陰茎を画面中央に大写しに据え男性の射精に伴い陰茎が不随意運動で動くのが確認でき、膣内で射精していることを証明できる。
「中出し」した精液
男性は女性の膣の中へ直接射精することに精神的満足感を覚える人が多いため、アダルトビデオにおいても本当に中に出しているのかどうかに拘った作品が多い。しかし精液は妊娠させるための物質であり、膣内に留まり子宮へ向かう性質があるので実際の性行為で膣内射精してもただちに膣から精液が流れ出すことは少ない。アダルトビデオ作品でも膣から精液がうまく流れ出てこないときにはAV女優に力ませて精液を膣外に流出させようとしたり、AV男優が膣の中に指を入れて精液を掻き出したり、あるいは膣内にカメラを入れて精液が満たされている様子を撮影するなどの工夫が見られる。
射精量や膣の状態(深さや締まり具合)により個人差が大きいが膣の奥のほうで射精した場合、膣分泌液と精液が混じった液体が膣口に滲み出す程度である。子宮へ向かえなかった膣内の精液は一部が女性の体内に吸収されるが、それ以外は射精後数時間(そのまま就寝した場合は翌朝まで)かかって徐々に膣から排出される。膣口近くで射精すればただちに精液が膣外に流れ出す可能性は高まるが、精液が外に流れ出す様子をアダルトビデオ作品のようにうまく見られるとは限らない。
欧米およびキリスト教文化圏における「中出し」
元来膣内射精を生殖行為と見るキリスト教的な考えが支配的だった欧米、とくにカトリック系では婚外性交渉における膣内射精は長らく表向きはタブーとされていた(もちろん実際の性行為では行われてはいた)。しかし昨今では出演者の民族・宗教の多様化などの進展とピルの普及により、海外のポルノでも膣内射精の作品が多く見られるようになっている。なお海外の多くの国では性器にモザイク処理を施す義務が法律で定められておらず、交接部が隠されることのない状態で性行為が撮影される。男優が実際に射精する様子を鑑賞者が視認することができるので、疑似精液を膣に注入するなどの小細工は利かない。英語圏では膣内射精と肛内射精を併せて "Internal Cumshot" や "Creampie" などと呼び、後者は膣や肛門から精液が溢れ出す様子を指すのに用いられることもある[1][2]。
性風俗業界の「中出し」
性風俗業界(特にソープランド)ではコンドームを使わないという意味でNS(ノースキン)と呼ばれる。コンドームなし・膣内射精の「生入れ中出し」を略して、NN(もしくはND)とも「生中出し」(略して「生中」)とも言われる。
ソープランドでは、地域によってNNを含むNSサービス(以下NS)をする店を高級店と称し、他の原則コンドーム着用接客サービス店(S付き店:Sとはコンドームのこと)と区別している。その場合、高級店のサービスといえば、NSのことを指す。しかしながら、川崎堀の内のように、入浴料の高い高級店を含めてほとんどの店がS付き店という地域もある。また、接客担当のコンパニオン(姫)によって、S付きの姫とNSの姫が混同して所属している店もあり、その中でも広告等でわかるように公表している店と非公表の店がある。
S付き店でも、接客担当のコンパニオン(姫)が独自の判断でNSサービスを行うことがある。この場合、姫の好みや他の姫との差別化・競争意識、その場の惰性で行うことが多い。主に馴染みにしたい客に対して、数回目の接客の時に客もしくは姫の申し出により行い、その後の接客サービスはほぼNSサービスとなる。一見さんからNSサービスを許すことは、よほどのことがない限り難しい。この姫の独自判断でのNSサービスは、店に内緒で行っている場合と黙認されている場合、公認されている場合がある。公認されているのは、主に前述の混在店において、S付き嬢からNS嬢へ立場が公に変わる場合がそれにあたる。
漫画等での「中出し」
現実の人間が直接リスクを負う気遣いの無い成人向け漫画(あるいはアダルトゲーム、アニメ)においては、中出しは当初から主要なシチュエーションである。漫画表現につきものの誇張として、いかにも液体を注入しているような擬音と共に射精し、現実にありえない多量の精液が溢れ出す場面が描かれるのがセオリーである。 2000年代以後頃から、膣内で射精しているペニスを描く断面描写が一般的表現として定着した。
脚注
- ↑ Michael Thomas Carroll (2000) Michael Thomas Carroll Popular modernity in America: experience, technology, mythohistory ニューヨーク州立大学出版局 2000 0791447138 p. 119
- ↑ Eric Partridge, Tom Dalzell, Terry Victor (2006) Eric Partridge, Tom Dalzell, Terry Victor The New Partridge Dictionary of Slang and Unconventional English: A-I テイラー&フランシス 2006 0415259371 p. 507
関連項目
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