片山祐輔
片山 祐輔(かたやま ゆうすけ、1982年5月10日 - )は、PC遠隔操作ウイルス事件の犯人。旧姓は丑田(うしだ)。学習院中等科&学習院高等科卒業、東京電機大学中退。猫好き。
証拠不十分につき一時保釈され警察の誤認逮捕かとも言われたが、保釈中の本人からの偽装メール送信により、犯人であることが確定し自供した。
父親はIBMのエリート社員で、数学・鉄道関連の著作もある丑田俊二氏(1950年~2009年)。
目次
- 1 東京・江東区の片山祐輔容疑者を逮捕
- 2 平成17年にも逮捕。大手レコード会社社長らの殺害予告容疑
- 3 「猫」「首輪」の検索履歴…PC遠隔(2013年7月)
- 4 現実空間に唯一残った痕跡、救われた警察。誤認誘う挑発。新たな「劇場型」異例の経過
- 5 捜査の壁にいらだつ捜査本部「ネコに首輪つけただけ」ウイルス一致で急展開
- 6 いじめのつらい過去。裁判傍聴ライター「裁判官の言葉、届かなかったのか…」
- 7 ちらつく過信と自己顕示欲。現実空間に現れて墓穴
- 8 片山の意見書
- 9 名門・学習院の中・高等科を卒業後、東京電機大学に進学、父親は元IBMのエンジニア丑田俊二
- 10 精神科女医のつぶやき 片田珠美(23)世の「非モテ男」に捧ぐ
- 11 警察、事実上の敗北宣言。ウイルス作成容疑での立件見送り(2013年6月)
- 12 2014年3月保釈
- 13 片山の犯行確定
- 14 裁判
- 15 関連項目
東京・江東区の片山祐輔容疑者を逮捕
PC遠隔操作ウィルス事件で、警視庁などの合同捜査本部は、2013年2月10日、威力業務妨害の疑いで、東京都江東区の片山祐輔(かたやま・ゆうすけ)容疑者(30)を逮捕した。
片山は、2005年にも、「エイベックス・グループ・ホールディングス」を標的とした殺害予告を大手掲示板サイト「2ちゃんねる」に書き込んだとして逮捕された前科を持つ。
同容疑者は、2012年、遠隔操作ウィルスに感染させた愛知県内の男性のPCを遠隔操作し、「2ちゃんねる」上に「コミケで大量殺人する」などと書き込み、運営者側の業務を妨害した疑いがもたれているため、今回の逮捕に至った。
同容疑者は、警察にメールを遠隔操作で送り、猫の首輪に遠隔操作プログラムなどが入ったSDメモリーカードを仕込み、警察関係者を挑発するなどしていた。
合同捜査本部は、遠隔操作ウィルスによりこれまで4名の誤認逮捕があったが、猫の首輪にSDメモリーカードを仕込む姿が防犯監視カメラに捉えられており、同容疑者とそっくりなため、犯人は同容疑者であると特定している。また、同捜査本部は、4名の誤認逮捕の経緯も含め、全容解明を目指すと発表している。
平成17年にも逮捕。大手レコード会社社長らの殺害予告容疑
遠隔操作ウイルス事件で、警視庁などの合同捜査本部に威力業務妨害容疑で逮捕された東京都江東区に住む片山祐輔が、平成17年にインターネット掲示板に大手レコード会社社長らの殺害予告を書き込んだとして、脅迫容疑などで逮捕されていた。
同罪などで起訴され、懲役1年6月の実刑判決を受けた。真犯人は神奈川県藤沢市の江の島で見つかった記録媒体に「以前、事件に巻き込まれたせいで、無実にもかかわらず人生の大幅な軌道修正をさせられた」などと残しており、合同捜査本部は警察などへの逆恨みから犯行を計画したとみて詳しい動機を調べる。
片山はネット掲示板「2ちゃんねる」に仙台市の女児の殺害予告を書き込んだとして、宮城県警に17年10月に脅迫容疑で逮捕。同様に大手レコード会社社長に対しても殺害予告などをしたとして、警視庁に同年11月に再逮捕されるなどしていた。
真犯人は昨年10月に報道機関などに送った犯行声明メールでも、「私の目的」として「『警察・検察を嵌めてやりたかった、醜態を晒させたかった』という動機が100%です」とつづっており、合同捜査本部が関連を調べている。
「猫」「首輪」の検索履歴…PC遠隔(2013年7月)
パソコン遠隔操作事件で、威力業務妨害罪などで起訴された元IT関連会社社員・片山祐輔(31)が今年1月、事件で使われたウイルスの情報が入った記録媒体を首輪に取り付けた猫の存在が公になるその3日前、携帯電話で「猫 首輪」などと検索していた形跡があることがわかった。
検察側が10日、立証予定事実を記した書面や証拠などを弁護側に開示し、判明した。
神奈川・江の島の首輪を付けた猫の存在は1月5日、「真犯人」から報道機関などに届いたメールで明らかになった。警視庁が片山の携帯電話を押収して解析した結果、同2日に「江の島」「猫 首輪」という言葉の検索履歴が残っていた。
このほか、片山の派遣先のパソコンに、ウイルス作成に使われたコンピューター言語「C#(シー・シャープ)」を利用するためのソフトをインストールした形跡があったことや、「被告が派遣先でC#を使っていたのを見たことがある」とする元同僚の供述調書も開示された。被告側はこれまで、「被告はC#を扱う能力もない」と説明していた。
現実空間に唯一残った痕跡、救われた警察。誤認誘う挑発。新たな「劇場型」異例の経過
知らぬ間にパソコンが乗っ取られ、犯人に仕立て上げられる遠隔操作ウイルス事件が、誤認逮捕の発覚から約4カ月を経て、「真犯人」とみられる片山祐輔の逮捕という新局面を迎えた。捜査は全容解明に向けて大きく動き出したが、事件は警察の捜査力に大きな疑問符を突き付ける結果に。警察をあざ笑い、捜査を振り回した「新たな劇場型犯罪」を振り返る。
すべての始まりは2012年6月29日、横浜市のホームページに書き込まれた、小学校への襲撃予告だった。神奈川県警はIPアドレスなどから東京都内の少年の犯行と断定。県警は7月1日、威力業務妨害容疑で逮捕した。少年は逮捕後も「何もやっていない」と否認したが、送検後に一転して容疑を認める上申書を提出。家裁送致され、保護観察処分が決定した。
7月29日には大阪市などのHPに無差別殺人予告が届き、大阪府警が8月、吹田市内の男性を逮捕。その後も警視庁が幼稚園への殺害予告メールで福岡市の男性を、三重県警がネット掲示板「2ちゃんねる」に伊勢神宮への爆破予告を書き込んだとして津市の男性を、それぞれ逮捕した。
「醜態さらさせたい」
だが、9月下旬、事態が一変する。襲撃・爆破予告の書き込みに使われたパソコンから新種のウイルスが検出され、遠隔操作できる状態だったことが判明。大阪、津に続き、東京地検も逮捕した男性を釈放した。
そして10月、サイバー犯罪に詳しい落合洋司弁護士と報道機関に、犯行声明メールが届いた。
「私が真犯人です」と題したメールは、13件の殺害・襲撃予告への関与を示唆。「『(警察に)醜態をさらさせてやりたかった』という動機が100%」ともつづっていた。
警察当局はメールに列挙された13件の犯行予告を実際に確認。10月18日には、警察トップの片桐裕警察庁長官(当時)が誤認逮捕を認める事態に発展した。
4都府県警は合同捜査本部を設置し、誤認逮捕された4人に相次いで謝罪。検察は男性3人の起訴取り消しや不起訴処分の手続きを取り、少年の保護観察処分も取り消された。
12月に公表された捜査の検証結果では、インターネット上の住所にあたる「IPアドレス」を過大評価し、供述を十分吟味しなかった不手際を、それぞれの都府県警が認めた。
初めて見せた「動揺」
真犯人は2012年11月、報道機関などに再度メールを送りつけた。「ミスをしました。ゲームは私の負けのようです」などとし、自殺をほのめかす内容だった。
この時点で、合同捜査本は真犯人が8月下旬、匿名化ソフトを使わずにネット掲示板に書き込むミスをしていたことをつかんでいた。真犯人が初めて見せた「動揺」だった。
その後、真犯人が動き出したのは、年の改まったばかりの元日午前0時すぎ。産経新聞記者などに「謹賀新年」と記したパズル形式のメールが送られてきた。解読していくと、袋に入れられた記録媒体の写真が出現。合同捜査本部は写真の位置情報などから東京都奥多摩町の雲取山の山頂付近を捜索したが、記録媒体は見つからなかった。
1月5日には「新春パズル~延長戦~」とするパズル付きのメールを送信。真犯人が示唆した通りに神奈川県藤沢市の江の島で首輪の付いたネコが見つかり、記録媒体が回収された。
真犯人は5日のメールで「もうメールはしない」と終結を宣言したが、江の島の防犯カメラがネコと接触する片山をとらえていた。警察当局は結果的に「現実空間」に残した唯一の痕跡に救われる形となった。
捜査の壁にいらだつ捜査本部「ネコに首輪つけただけ」ウイルス一致で急展開
「ネコに首輪をつけただけで、何の罪に問えると言うんだ」
警視庁と大阪府警、神奈川、三重両県警の合同捜査本部はいらだっていた。
遠隔操作ウイルス事件の威力業務妨害容疑で逮捕された東京都江東区の会社員、片山祐輔(30)の存在は1月中旬、既に浮上していた。
同月5日に産経新聞記者などに送りつけられた「真犯人」からのメールに、神奈川県藤沢市の江の島のネコに首輪をつけたことを示唆する内容があり、防犯カメラの解析から片山容疑者が特定されたのだ。
「上層部が、『早く逮捕しろ』と注文をつけてきた。だが、防犯カメラで判明したのは、ネコに首輪をつけた人間であって、誤認逮捕してしまった4人のパソコンを遠隔操作した人物そのものではない。そんないらだちが、現場の捜査員にはあったんです」
警察関係者は、こう打ち明ける。
だが、警察は4人を誤認逮捕した上、2人には自白まで強いたことで、異例の謝罪や捜査の検証結果公表を余儀なくされたため、“メンツ”を保ち、起死回生を図りたい思いがあり、それが警察上層部の早期逮捕の指示の背景にはあった。
ウイルスが一致
「いくつかの新聞社やテレビ局が、片山の存在に気付きつつあるようだ」
警察幹部は、焦りを募らせていた。2月に入ると、片山が「ネコに首輪をつけた人物」として特定されたことに、報道各社が気付き、片山容疑者宅周辺の取材に動いていた。
だが、ウイルスの設計図とされる「ソースコード」を記録したマイクロSDカード(記録媒体)付きの首輪をネコにつけるよう、「知らない男に頼まれた」と片山が“言い訳”をすれば、それを覆すだけの材料を、合同捜査本部は持ち合わせていなかった。
それだけに、逮捕への決め手がないまま片山の存在を報道されることを、警察幹部は恐れた。
「片山がウイルスの『設計図』を持っていたことなどを根拠に、ウイルス保管罪の適用も考えました。でも、ウイルス保管罪は他人に“感染”させる目的があることを立証する必要がある。検察は首を縦に振りませんでした」
警察関係者は現場の苦悩を、こう振り返った。
しかし、ウイルスが愛知のPCを遠隔操作していたものと一致したことで、捜査は急転直下で進展することとなったという。
大きな十字架に
警視庁には現在、「捜査支援分析センター」という聞き慣れない部署がある。平成21年4月の組織改編で刑事部に置かれたものだが、その任務の中核の一つが「画像解析」だ。
2012年11月に東京都板橋区で主婦が刺殺された強盗殺人事件など、あまたの事件で防犯カメラが威力を発揮しており、その画像を解析して、事件解決に貢献しているのが、同センターなのだ。
「2005年にロンドンで起きた同時爆破テロでも、防犯カメラが威力を発揮した。防犯カメラは、捜査ツールとして世界中で必要不可欠なものとなっています」(捜査幹部)
だが、一方で遠隔操作ウイルス事件は、後手後手にまわったサイバー捜査に大きな課題も突き付けた。警察幹部はつぶやく。
「結局、従来通り防犯カメラに頼って容疑者にたどり着く捜査になってしまった。サイバー捜査で容疑者を割り出せなかったことは、警察にとって大きな十字架になるかもしれない」
前代未聞の誤認逮捕を生んだ遠隔操作ウイルス事件が、全容解明に向けて大きく動いた。汚名返上を図りたい警察当局の捜査は、どう進められたのか。その流れを追ってみた。
いじめのつらい過去。裁判傍聴ライター「裁判官の言葉、届かなかったのか…」
「いじめられていた」「殴られたり蹴られたり…」。
遠隔操作ウイルス事件で、威力業務妨害容疑で逮捕された片山祐輔は平成18年、脅迫罪などで実刑判決を受けたことがある。その公判では、片山が少年時代から経験したつらい過去の一端が明らかにされた。傍聴した裁判ライター、阿曽山大噴火さん(38)は、片山の更生を願う裁判官の姿を思い出すという。
「あの時の男か」。
阿曽山さんは片山逮捕を知り、かつて傍聴した裁判の記憶がよみがえった。当時の取材ノートには“生きづらさ”や“孤独”を抱えた姿が記録されていた。
法廷で証人となった母親は「中学に入ると学校での出来事を話さなくなり、表情もなくなった。逮捕後、初めていじめられていたことを明かされた」と証言。
片山も「殴られたり蹴られたり、のこぎりで頭を切られたりした」と話した。阿曽山さんは「心配させたくない気持ちもあったのだろうが、逮捕でいじめを知るなど親子のコミュニケーションは十分ではなかったようだ」と振り返る。
公判で片山は生きる苦しみを淡々と語った。起訴事実を認めた上で、
「大学でサークルに入ったが『空気が読めない。ノリが変』と言われ、友達ができなかった」
「自分は企業が求める人物像と違う。社会に必要ない人間だと感じ、むしゃくしゃしていた」
「ネットで注目されたかった」と打ち明けた。
そんな片山に対し、検察官は「人間関係を改善しようとする努力が足りない」などと厳しく批判。阿曽山さんは「検察官は一方的だった。片山は反抗的な態度こそ見せなかったが、検察への怒りが、今回の動機になった可能性がある」と推察する。
阿曽山さんの目には、裁判官は片山の更生を親身に願っているように映った。
「人付き合いが苦手なのは個性だ。できる仕事はある」
「世間に迷惑をかけない生き方をすべきだ」
「見えを張る必要はない」。そう諭し続けたという。
1年半の懲役後、片山はIT会社に就職し、職場には友人もいたとされる。裁判官の言葉通り、更生は順調そうに見えたが、やはり同じ過ちを繰り返したのか。
「裁判になれば傍聴したい」という阿曽山さん。片山が真犯人であったのか、そうであれば何が本人を突き動かしたのかを見極めるつもりだ。
ちらつく過信と自己顕示欲。現実空間に現れて墓穴
遠隔操作を行っていた直接的な証拠がない中、警視庁などが片山祐輔の逮捕にこぎ着けた。逮捕前日の9日夜まで「早期逮捕」を主張する警察と、「時期尚早」とする検察がぶつかり合う一方、片山は同じ日、後手後手の捜査を感じ取っていたかのように東京・浅草の「ネコカフェ」にいた。「サイバー空間」から「現実空間」に姿をさらすミスを犯したとみられる片山。その心中には「過信」と「自己顕示欲」がちらつく。
片山は9日、放し飼いにされたネコと自由に触れ合える空間で、ネコを抱きかかえ、猫じゃらしで遊ぶ姿が目撃されていた。2日前にも別のネコカフェを訪問。店の従業員は「ほかの客との接点はなかった」と振り返る。
真犯人は動機やウイルスの「設計図」など、証拠が詰まった記録媒体を「現実空間」である江の島のネコに託した。防犯カメラにはネコと片山が戯れる様子が写っていたという。
片山は、学習院中等科及び学習院高等科を卒業後、東京電機大学を4年で中退。
専門学校でパソコンを学んでいた平成17年には、大手レコード会社社員への殺害予告事件で逮捕された。
「『のまネコ』の使用を即時中止しろ。さもなくば社員を刃物で殺害する」。レコード会社のネコを模したキャラクターが、ネット掲示板「2ちゃんねる」に登場するネコのイラストに似ているとしてネット上で要求した。
両事件に共通するのは強い「自己顕示欲」だ。犯罪心理学に詳しい元東海学院大教授の長谷川博一氏は「人間関係が希薄で、思考や好みが偏りやすい性格」と推察。「人間関係が苦手な部分を、ネコで補っていたのではないか」と指摘する。
20年2月から勤務しているIT関連会社によると、片山は2012年12月から病気を理由に休職。社長の目にも「マニアックで思い込みが強い」と見えた。
報道機関などに送りつけられたメールは、警察を小ばかにする内容が徐々にエスカレートした。長谷川氏は「自己顕示欲が強まり、ミスするまで警察への挑発を続けざるを得なくなったのではないか」と話した。
片山の意見書
※誤字もそのまま掲載
この機会に、私の現在の率直な心境を、裁判官・検察官の方に聞いていただきたいです。私が2月10日に自宅から拉致され、監禁され続ける生活が、すでに227日目になります。家族と会うこともできません。私は絶対、犯罪になど関わっていません。227日。無実の人間を拘束することを許せる日数ではありません。この失った時間を誰が返してくれるのでしょうか?
東京拘置所での毎日の暮らしは、「生活」とは言えません。1日の大半を部屋に閉じこめられ、ただ待たされているだけの毎日です。1ヶ月にたった1回のこの公判前整理手続も、あまり進展しているように思えません。1ヶ月、また次の1ヶ月、出口の見えないトンネルの中で前進すらしていない、そんな気分です。毎日が無為に過ぎていくこと、苦痛というより痛みそのものです。拷問と同じです。
健康上、必要な診察も、東京拘置所では満足に受けられません。歯科は申し込んで2ヶ月待たされました。また、私は斜視が進行中のため、半年に一度眼科で検査を受け、矯正用のプリズム入りメガネを処方してもらわないといけないのですが、東京拘置所の眼科では、そういった特別な検査はできないと言われました。
一体いつ「日常」に帰ることができるのか。父が死んでから4年、母と2人で生活してきました。その平穏な生活がこのような形で破壊されるなど想像もしていませんでした。現在私がいる立ち位置から見れば、これまでの平凡で平穏な生活が何より貴重で幸せなものだったのだと感じています。母は私の無実を信じてくれていて、帰りを待ってくれています。母のためにも、1日でも1秒でも早く帰りたい、帰らないといけないと、いつも強く思っています。
人生という観点から見ても、私は現在31才です。30代という時期、将来のために、キャリアを積み重ねなくてはなりません。その貴重な時間を、なぜ自分はこんなところで浪費させられているのか?という焦りでいっぱいです。
本当に、監禁された毎日が、ガマンできないレベルに達しています。
この裁判の争点は、「犯人性」の部分だということは、理解しています。雲取山や江ノ島に関する矛盾については、弁護人が主張してくれているとおりなので、ここでは触れません。私の使用したPCに、断片的ながらも何らかの痕跡があるとされていることについて、私から補足的にコメントしたいです。
まず、検察の証明予定事実には、全く覚えのない検索履歴や、ダウンロード・起動した覚えのないソフトウェアの記録について言及されています。それが1ヶ所1台のみのPCからではなく、私の職場、自宅から出ていて、またネットカフェからの通信記録もあるとのこと。片山が触ったPC複数がそう都合よく同じ犯人に利用されるわけがない、だから片山が犯人だ、というニュアンスが、検察主張からは読み取れます。
これについて、ひとつ心当たりがあります。私は、USBメモリによく使うポータブルアプリケーションをいくつも入れて持ち歩いていました。ポータブルアプリケーションとは、PCにインストールすることなく、USBメモリから起動できるソフトです。Webブラウザやメールソフト、圧縮解凍ソフト等です。自宅では複数のPCを使っていて、またネットカフェ等で使う際も、各ソフトの環境設定をそのまま使い回せるので重宝していました。職場ではUSBメモリの使用が禁止されているので、USBメモリの中身と同一のコピーを、オンラインストレージを利用するなどして職場PCに転送し、同様に使っていました。それら、よく使っていたポータブルアプリケーションの中のどれかがウイルス感染していたとしたら、複数のPCが感染してしまった可能性が高いです。iesysそのものなのか、もっと別のウイルスなのかは分かりませんが、遠隔操作および画面監視を受けていたのだと思います。私が雲取山や江ノ島に行こうとしていた、また行ったことを、犯人は把握できていたと思います。
私は無実です。無実である以上、証拠には、現時点で弁護人が指的してくれている部分以外にも、多数の矛盾が隠れているはずです。私は自分自身でそれら大量の証拠に全部目を通し、矛盾点を指的していきたいです。しかし囚われの身である現在、それは困難です。限られた面会時間に、フォークリフトでも無いと運べない量の証拠書類を全て打ち合わせすることは不可能に近いです。
保釈が認められ自由の身となれば、そういう積極的な活動をして無実を証明したいです。それをさせないために、「罪証隠滅の怖れが」などと理屈を付けて、保釈を妨害する検察に対しては強い怒りを感じます。隠滅できる証拠など無いということを検察も分かってはいるのでしょう。既存の証拠の矛盾を見つける活動まで、検察の論理では「罪証隠滅」と言うのでしょうか?
初公判が始まれば保釈を認めていただけると思っていますが、それでは遅いのです。争点整理が行われていて主張を固めなくてはならない現時点で自由に動けるようにならなければ、フェアな戦いができません。ここに来て「人質司法」という言葉の意味をよく理解できました。権力側が、無実を主張して戦おうとする人を鎖でしばりつけて一方的に殴り続けるのと同じ行為だと理解しました。
私のシンプルな今の願いは、早く解放されたい、家に帰りたい、日常に戻りたい、それだけです。
大野裁判長、北村裁判官、大西裁判官には、最終的には公正で完全な無罪判決を出していただけることを確信しています。どのような妨害があれど、私が無実である以上、無罪という決論に収束するものと確信しています。
名門・学習院の中・高等科を卒業後、東京電機大学に進学、父親は元IBMのエンジニア丑田俊二
オタク風の人物がひも状のおもちゃでネコをあやし、満面の笑みで膝に抱きかかえてなでる。時に生ビールをすすり、携帯電話でネコを撮影?。
逮捕前日、自らが報道機関に尾行されていることも知らず、東京・浅草の「猫カフェ」でくつろぐ容疑者の姿。NHKなど、大手メディアで紹介された「PCなりすまし事件」の真犯人、片山祐輔容疑者(30歳・以下呼称略)の映像や写真に驚きを覚えた人も多いのではないか。
無断で撮影された同店の店長が言う。「たしかに2月9日の午後3時頃から約1時間、ソファ席に座りました。生ビール1杯を注文して、ネコと楽しそうに遊んでいた。ネコ好きのお客様という以上の印象はありません。困惑しているのは、マスコミ3社に店内で盗撮されたことです。報道後、『お前の店が盗撮してマスコミに売ったのか』というクレームが殺到しています。うちは勝手に撮られただけなのに・・・・・・。NHKさんには『映像を使わないでください』と申し入れました。そもそも、逮捕前にもかかわらず、なぜマスコミは犯人をつけていたのか、疑問です」
なぜ犯人を知っていたのか。それは、他ならぬ警察が、マスコミに事前に伝えていたからだ。警察の捜査を嘲笑い、ついに逮捕された片山とはどういう人物なのか。
片山は名門・学習院の中・高等科を卒業後、東京電機大学に進学。4年時に退学してコンピュータの専門学校に進んだ。高校時代の同級生が印象を語る。
「当時の彼は存在感がありませんでした。こんな大きなことをしでかすような人とは思えなかった」
父親の丑田俊二氏はIBMにエンジニアとして勤めるかたわら、アマチュアの数学研究者として著述業も行っていた。福島大学経済学部経営学科→日本IBMにSEとして入社→人事部に異動したエリート社員。本業以外にも鉄道や数学関係の著書を出版している。
2009年1月定年を目前に急死。祐輔は父親が死亡した際に丑田から片山に改姓、それまでと同様に母親との生活を続け、2歳違いの弟は結婚して実家を離れた。
のまネコ事件でも父親は1800万円をエイベックスに支払ってる。父親は証人尋問でエイベックスの被害総額1800万円も「できる限り被害弁償したい」と述べた。
精神科女医のつぶやき 片田珠美(23)世の「非モテ男」に捧ぐ
遠隔操作ウイルス事件で逮捕された片山祐輔容疑者
2013年1月、この連載の19回目で取り上げた遠隔操作ウイルス事件で、容疑者の男が逮捕された。容疑を否認しており、真相は捜査の進展を待たねばならないが、モテなさそうというのが第一印象である。
そういえば、2012年10月に連載8回目で取り上げたiPS騒動男も、モテそうになかった。彼が性愛的に満たされていたら、虚言によって自己愛や自己顕示欲を満たそうとするようなことはなかったのではないか。
もちろん、モテないから反社会的行為に走るというのはあまりにも短絡的な発想だ。だが、モテるか、モテないかは、特に男性にとって、「レゾン・デートル(存在価値)」に関わる一大事のようである。
たとえば、今日はバレンタインデーだが、チョコがゼロだったらどうしようという不安を抱いている男性が多い。こうした男性心理を利用して、キャバクラなどでは、「あなただけよ」という甘いささやきとともにバレンタインチョコが手渡されるらしい。
なかには、「バレンタインデー粉砕デモ」を実施する「革命的非モテ同盟」のような団体もある。「日本におけるリア充(=現実生活が充実している人)バレンタイン文化に反対するため」という目的には、モテない男の恨みつらみがこめられているように見える。
警察、事実上の敗北宣言。ウイルス作成容疑での立件見送り(2013年6月)
一連のPC遠隔操作ウイルス事件で逮捕・起訴された元IT関連会社員・片山祐輔(31)が6月10日、2012年8月に他人のPCを操作してAKB48への襲撃予告を書き込んだとして追送検された。
これまで片山は威力業務妨害やハイジャック防止法違反など7件の事件で逮捕・起訴されていたが、この追送検で捜査は事実上の終結。事件の本丸である「ウイルス作成容疑」での立件は見送られることになった。
片山が関わったとされる事件は、当然ながら全て遠隔操作ウイルスが絡んでいる。にもかかわらず、肝心のウイルスの出どころが解明できなかったのは致命的だ。確かな物証を得られないまま捜査が終了したことは、警察の事実上の敗北宣言ともいえるが、これについて捜査関係者は「片山が取り調べを拒否し、供述を得られなかったため」と説明している。
だが、これは事実と異なる。片山は取り調べそのものは拒否しておらず、あくまで「録画・録音しなければ取り調べに応じない」と頑なに主張していただけだ。それを拒んで実質的に取り調べを拒否していたのは当局側である。
「証拠が完全にそろっていない状態で見込み逮捕し、取り調べで心理的プレッシャーを与えて自白を引き出すという昔からの手法から脱却できていない。取り調べ可視化は現在議論中の案件ではあるものの、実際にこういった自白ありきの案件で録画・録音されて困るのは捜査側。そんな強引な取り調べは現在も行われている。たび重なる再逮捕で4ヶ月も勾留し、彼の社会的地位を脅かすことでプレッシャーを与えたが、片山は最後まで折れなかった」
2014年3月保釈
5日夜、東京拘置所に勾留されていた片山祐輔が保釈され、司法記者クラブで会見を行った。片山被告は、伊勢神宮への爆破予告など10件の事件ーいわゆるPC遠隔操作事件で逮捕・起訴されていた。
4日の段階で一度認められていた保釈だったが、検察側の不服申し立てで停止に。さらにきょうになって検察側の手続き上のミスが発覚し、高裁があらためて勾留の停止を決定した。
冒頭発言
この1年間、本当に緊張と、いろんなことの連続で本当に疲れ果てました。まだまだ闘いは長いですけれど、頑張って闘っていきたいと思います。無罪を取るところがゴールということで、現時点はまだ道半ばだと思います。
質疑応答 ー保釈された、今の印象は。
片山被告:やっぱり正直に申し上げるとストロボが眩しいです(笑)。拘置所を出るところから目が痛いです。そういった意味でも、気持ち的な意味でも、自由というのは眩しいものだなと。夜なのに眩しいです(笑)。
佐藤博史弁護士:ジェットコースターのようだったよね。
片山被告:昨日、午後2時くらいに小池弁護士の面会がありまして、高裁が保釈を認めるということで、「今日中に出られる」という風に思っていたところ、呼び出しが来ない来ない来ない…。もう夕食も抜いて、悶々としていたところ、午後7時過ぎくらいに刑務官から告知があって、高検の検事が最高裁に特別抗告したので、保釈が止まっちゃったと言われ、それでもうがくっときて。
昨日の午後から、今まで情動の上下が激しいという状況でしたが、出てくることが出来てよかったです。
佐藤弁護士:朝からの経緯は?
片山被告:今朝、裁判所に着いて、弁護人と面会して、特別抗告されて執行が停止されたという経緯の説明は受けました。 お昼を食べて出廷した後でOKが出たというところで、良かった〜、という感じですね。
ー無罪を訴える気持ちをお話いただきたいのですが。
片山被告:私はやってない、身に何の覚えもない。本当に1年と20日くらい前ですね…毎日ノートに日数を書いていたので、今日で389日目になりますが、まさに"寝耳に水"の家宅捜索と逮捕でした。昨年の2月10日は。警察とマスコミから尾行を受けていたことすら全く気づいていなくて、前日に行った猫カフェで正面から写真を撮られていることにすら気が付かなかったです。寝耳に水の逮捕でした。
ー裁判では他に真犯人がいて、むしろ遠隔操作されていたと主張されていましたが。
片山被告:身に覚えのないアクセス履歴のようなものが多すぎる。たとえば事件に関する報道についてものすごく多く見ていると。検察側は「多数」とか「頻繁に」アクセスしたと主張していているんですが、遠隔操作事件が騒がれ始めた頃、Yahoo!ニュースのヘッドラインをクリックして見ていたことはありますが、多数と言われるほどは見ていない。記録を精査してもらったところ、何万回という、人力では不可能な回数、報道記事をアクセスして見ているということだったとか、落合弁護士のブログや部落解放同盟のサイトを見たとか、全く覚えがないんです。そういう見に覚えがないアクセス記録があるということは、やはり遠隔操作されていた可能性が高いのではないか、それしか考えられない。
ー真犯人が別にいると?
片山被告:はい。
ー真犯人に言いたいことは?
片山被告:自首して欲しいですが、それが無理なら、「片山さんが犯人ではないですよ」的なアクションをしてくれることを1%くらいは期待しているのですが、結局1年経っても何もしてくれないわけで。ラストメッセージで言っているとおりで、犯人は何が起こっても静観するのかなと、そんなふうに思っちゃったりもしています。
ーメディアにも随分いろいろなことを書かれてきたと思います。例えば首輪付けるところの決定的な場面があるとか、そういうような今までの報道について思うこと、メディアの人達に言いたいことは?また、これからやりたいことは?
片山被告:メディアの方に対しても、ちょっと、正直な気持ち、怒りたい気持ちはあります。でもやはり警察発表ですね、「嘘の大本営発表」と私は呼んでいますけど、ありもしないものが出たと、そうやってメディアの人を騙した警察が一番悪いのではないかとも思います。もちろん一番悪いのは真犯人だと思いますけど…。
これからのことは、やはり、私はIT業界で仕事をしてきて、私に出来る仕事といえばITくらいしかないので、この先どうやって生きていこうか、IT業界に戻るのは難しいのではないかと思っていますが、しばらく執筆なり講演するなり、そういったことで食べていけたらいいなと思っています。
ーこれから数日は?
片山被告:おいしいものを食べて、ゆっくりお風呂に入って、自由を満喫したいです。
佐藤弁護士:去年、2月10日に逮捕されたあと、私に「桜の花見はできますか」と言っていましたが、今度は本当にできそうですね。私が庭の桜の枝を折ってきて、今年の花見はこれだよって、接見室で花を見たんですけど(笑)。
ー2回の公判出られて、検察の主張への感想は。
片山被告:これまでの公判前整理手続きが多数回行なわれて、証明予定事実というのが出てきていて、検察の主張はすでに見ていて、新しい事は言っていないなと。なので、公判が始まったから、検察の言っていることに対して印象が変わったといったことはないですね。
ー検察が言っていることを聞いていて、ああいうことで犯人にされちゃうのかなという不安があったと思いますが。
片山被告:そうですね。いろいろな面で証拠上矛盾しているところがあると思う。たとえば江ノ島の猫の首輪から出てきたDNAは別人のものだったりとか。様々な面の矛盾点がそこかしこにあるにも関わらず、屁理屈で誤魔化していると。「他人のDNAが混入しただけだ」とか。そもそも私のDNAが出ないことが重要なわけで、他人のDNAはどうでもいい。そういう論調で、屁理屈で証拠の矛盾をごまかしていると思います。
ー今後、そういうことも積極的にメディアに対しても発信していきたい?
片山被告:そうですね。
ー佐藤弁護士:データの解析を特別弁護人と行なわなければならない。片山さんのパソコンの中から出たものをデータベースの形で持っているので、その解析の作業がとりあえずのすごく大事な作業で、きょうの証言を破る、自分が遠隔操作されてたんだという根拠を見つけていくんだ、という話をしていた。
片山被告:自分もあまりウイルスとかセキュリティの知識は無いですが、自分の使っていたパソコンのことですので、やはりおかしいところがあれば、特別弁護人ではなく、まず自分で気づくべきだと。何かおかしいところを少しでも探してきたいと思っています。
ー犯人への心当たりのようなものは?
片山被告:ないですね。
ー検察側は、パソコンにウイルスを作成した途中の形跡が残っていると。
片山被告:やはり私のPCが遠隔操作されていた以上、何が合ってもおかしくないわけです。ファイルを置くのも盗むのも、消すのも自由だったわけですから、犯人が使ったウイルスはiesys(アイシス)だけとは限らないと思います。そこら辺で拾ったウイルスを亜種みたいな形にして使っていたのかもしれませんし、今後解析してみなければわかりませんけれども、何らかの形で、iesysまたはiesys以外のウイルスで操られていたことが100%だと思います。
ーそのときは、自分のパソコンが遠隔操作されていると、そんなことは夢にも思わなかった?
片山被告:全くわからなかったです。
ー検察側としては遠隔操作は無い、という主張をしている。ありえないことはないと思う?
片山被告:そもそも「ファイル・スラック」という言葉自体は今日知ったのですが…まあ原理を聞いた限り、上書きされて残ったスペースなわけなので、遠隔操作されて、ファイルを置かれて、消されて、他のファイルが上書きされて、残ったスペースにデータが残るということは十分ありうることだと思うんです。遠隔操作ではファイル・スラックのスペースは自由に残せないという主張は良くわからないというのが正直なところです。
佐藤弁護士:さきほどiesysを作成する途中のファイルが見つかったと言ったけれども、私たちの理解が正しければ、iesysのソースコードが送られてきために、iesys自体の保存先のフォルダがFというのがはわかってた。それで、片山さんの派遣先のPCを見たら、本来のフォルダと違うFがあったという説明があって、それが極めて特殊なフォルダだと言ってたんだけど、片山さんからは見えないフォルダですよ。そこに上書きをすると、ファイル・スラックというところに残るだけの話なので。だからFにいかにも意味がありそうで結びつくんだけど、片山さんからは全く見えないフォルダですからね、そこに犯人がそこにアクセスして何度か上書きしてれば、ファイル・スラックに痕跡は残ると。iesysたどり着く文字列が共通してたからiesys関連のものだと言っているだけですよ。
片山被告:まあ、Fに心当たりが無いわけではないんです。一応、自前で持ち込んでいたポータブル・アプリケーションを起動するのに、TrueCryptボリュームを使ったり、サブストコマンドを実行してりして、仮想ドライブという形で使うことはしていたんです。その際にFドライブというのに心当たりがないわけではないんです。ただ、vprojフォルダなどは隠しフォルダになっていたので、自分では見えなかった。佐藤先生の主張を訂正させていただきます。
佐藤弁護士:それが検察の主張のキーだということは今日の証人でわかったのだが、犯人がそういうことをすれば断片は残る。
片山被告:そうですね。
ー無罪を取る自身はありますか?
片山被告:もちろん。それ以外は考えていません。
ー片山さんと面識のある人物と言う可能性は。
片山被告:ないのではないかなと。私が想像しているのは、犯人がiesysではないウイルスを何十人にもばらまいていて、その何十人かを調べていたところ、前科のある私を見出した、じゃあこいつをスケープゴートにしようと、仕立てあげていったのではないか。
ー江ノ島と雲取山についての説明は?
片山被告:ただ普通に行っただけなんです。冒頭陳述でも言いましたが、雲取山については1ヶ月前からネットで下調べしていたので、犯人が私の画面を監視していたりすれば、私がそこに行こうとしていることを掴むことはできると思います。
ー1時間の冒頭陳述をなぜ自分でやりたいと?
片山被告:弁護人の勧めですが、自分で言いたいこともいくらでもありましたし、やってよかったと思っていますけども、前例の無いことだという説明は受けました。
佐藤弁護士:片山さんは相当努力してくれたんですね。テーマも与えて、少しずつ作って行って。面会もして。いい経験になったと思う。
ーもし自分が犯人だったら絶対これは無いなと言えるようなものはあれば。
片山被告:まあ、雲取山ですね。埋められなかった。スコップなんか持ってなかった。山頂に複数の人がいて、それなりに交流もあって、人が横で鍋出している所で穴を掘っていたら目立ちますよ。私が滞在してた3、40分に、最初は3人、多い時には6、7人にはなっていて、山頂で一人になったことはない。私はコンビニおにぎりで食事を済ませたんですけど…。
ー検察から特別抗告という手続きが踏まれたことについて
片山被告:やはり最後の悪あがきという風にしか思えませんでした。何がなんでも外には出すまいという姿勢が感じられます。
ー勾留が長くて、気持ちが折れそうになったことは?
片山被告:ないですね。早い段階で佐藤弁護士と知り合えたことが大きかった。とりあえず拒否しなさいと。検察の取調官と人間関係を形成するまえに、弁護士と仲良くなっておけたので、いい方向になったのかなと思う。
佐藤弁護士:ほんとに感謝しないといけないのは隣の竹田真弁護士ですからね。
片山被告:たまたま当番弁護士として来て頂いて、最初の2ヶ月間、土日も休まず、一日も休まず面会にきてくださいまして。
佐藤弁護士:私は厳しい父親みたいな感じだったんだけど、甘えられる竹田さんのサポートがあったんだね(笑)。
ー検察が外に出したくないのはなぜだと思う?
片山被告:冒頭陳述でも言いましたが、「鬼殺銃蔵(おにごろしじゅうぞう)2」のアカウントは生きている。仮に私が犯人だったら、そのメールアドレスを使って、私が真犯人ですよというようなメール出すような工作をするのではないか。検察はそこを恐れているのだろうな思います。でも私はパスワードも知らないので、何の手出しもできない。検察の言葉で言うなら、虚偽の真犯人を作り出すおそれがあるということではないか。
自分のパソコンには各種アカウントのパスワードをメモしてテキストにして置いてあったんで、それが盗まれてたならやりたい放題ですね。たとえば、iesysのテストに使われた、「したらば」のオート6682のアカウント、確かに私が開設したものなんですが…。
ー保釈保証金1,000万の原資は?
佐藤弁護士:それはお母さんが出してくださいました。昨日連絡を受けて、すぐ用意してくださいと。事前に裁判所から言われたのは1000万円で大変だったんですけど、すぐお母さんが準備してくれて、私のところに振り込まれて。
ーいま、法廷に立たれている際のご心境は?
片山被告:まだ本格的に追及はされていないといいますか、今後、被告人質問なんかでの追及は心にダメージを受けそうですけど、捜査段階では早い段階で取り調べを拒否してしまっていたので、検察官からの追及という点で、このひと言ってることおかしいというのは、去年の3月5日…まさに今日ですね。水倉検事の取り調べだけですね。
今後検察官が私と直接対面して、どう言って来るのか、それにどう対応するか、ちゃんと心構えをしなければいけないなと思っています。
佐藤弁護士:3月5日、ものすごく疲れましたと言ったので、ダメージ受けたのかなと思ったんですけど、随分反論をしたんですけどいろいろなことを言われちゃったと。
ーどんなことを?
片山被告:もう証拠の評価からすると有罪だ。君はどうするのが得か考えてみなと。やっているけど認めないか、やっていないから認めないか、いくつか選択肢があるけれど、どうするのが得か考えてみなとというところから始まって。
その前の私は特捜部所属だ。今は刑事部に応援に来ていると。それ自体は威圧的ではなく、ただの自己紹介だったかもしれないが、その後もいろいろと…例えばC#に関するスキルも、僕はウイルスなんか作る能力ないと言っても、こっそり勉強してた可能性もあるっていうので、そんなの悪魔の証明ですよって言い返してやったんですけどね。
そもそも水倉検事は雲取山を知らなかった。あまりメジャーでない山に、犯人と同じ山に偶然に登った、おかしいじゃないかと言ったんですけど、いや雲取山知らないんですか?東京都最高峰ですよ?と言い返してやりました。
そういうことの言い返しの連続で疲れました。
ーお母様にはどんなことを?
片山被告:まあ…ただいまと。
佐藤弁護士:家族で最初に会ったのは、車の後部座席で握手した弟さんです。
ー弟さんとは?
片山被告:世間話程度ですね。
ー過去の冤罪について勉強したことは?
片山被告:はい。たとえば足利事件、松本サリン事件についても、本を差し入れてもらったり、国策捜査関連ですね。鈴木宗男さんや佐藤優さんの。読書はここ1年で500冊は超えていると思います。江川さんの書かれた村木さんの事件も熟読しました。本の差し入れは竹田先生が…。
竹田弁護士:だいぶ漫画も多かったですが(笑)
ー体調はどうですか?
片山被告:悪くはないですが、歯の治療が……穴が空いている。拘置所は3ヶ月待ちだったので早く行きたい。会社の保険はもう使えないので、早く国民健康保険に入って必要な診察をうけないと。
ー逮捕されて容疑者になって、今も裁判が継続中で、世の中的には疑いもあると思うが、今、一番誰に対して何を言いたい?
片山被告:まあ、家族に対して、今も信じてくれていて、ありがとうと言いたいです。
PC遠隔操作事件「片山被告人の身柄拘束は懲役刑よりひどい」江川紹子さんが批判弁護士を探す
パソコン遠隔操作事件で威力業務妨害罪などで起訴され、東京拘置所に勾留されていた片山祐輔被告人が2014年3月5日、保釈された。逮捕されたのは2013年の2月だから、身柄の拘束期間は1年以上に及んだことになる。
片山被告人の裁判は、地裁の第2回公判が終わったばかりで、本格的な審理はこれからだ。片山被告人は「私は遠隔操作の被害者だ」と主張し、無罪を訴えている。保釈直後に開かれた記者会見でも「私はやってない」と述べ、自らの主張の根拠をしっかりした口調で語った。
その会見には、弁護人経由で片山被告人にインタビューした記事を公開するなど、この事件に関するレポートを精力的に発表しているジャーナリストの江川紹子さんも参加していた。会見が終わった後、1年以上にもわたった片山被告人の勾留について聞いた。
「裁判所の保釈許可の判断は遅すぎた」
1年以上となった片山被告人の勾留について、どうお考えでしょうか?
- 江川紹子さん(以下、江川) - 本当に長かったなと思います。それと、やっぱり検察側が少し異常じゃないか、という感じがしますね。
保釈が決まったあとに検察が特別抗告し、いったん保釈の執行が止められたものの、検察側の手続きミスが判明し、結局、東京高裁によって保釈が許可されました。
- 江川 - それは慣れないことをやるからでしょう。つまり、異常なことをやるから、こういうミスもするんじゃないでしょうか。ふだん、高裁が保釈決定を出しているのに、そんな特別抗告をするなんてことはあまり聞いたことがないですよね。弁護人が特別抗告するのは聞いたことがあるけど。そういう異常なことをやろうとするから、こういうミスをするんじゃないですかね。
- 南アフリカで、殺人罪で起訴されているオスカー・ピストリウス選手なんかは、たしか昨年2月14日に逮捕されて、22日に保釈されているんですよね。8日間くらいで保釈されているんですよ。
片山被告人の逮捕(昨年2月10日)と同じ時期でした。
- 江川 - そうなんですよ。だから、あのケースとの差があまりにも大きい。やはり日本では、まだまだ「身柄拘束」を、検察が自分たちの有利に運ぶように使っている気がします。彼(片山被告人)なんかは接見禁止もついていましたから、弁護人以外、誰とも会えない、しかも新聞も読めないと。これって、懲役刑よりひどいですよ。
- やはり日本の「人質司法」というか、長期間の「身柄拘束」って罰だと思うんですよね。だから、裁判をやる前から罰を加えるということを、もうちょっと改めるべきだと思うんですよね。
- 今回、ようやく高裁が(保釈許可について)まともな判断をしたけれども、やっぱり遅すぎた気がしますよね。今回の高裁の決定は非常に筋が通っていて、まっとうだと思うので、こういう判断をもう少し早くできるように、裁判所にやってもらいたいと思います。
片山の犯行確定
「真犯人」メール、片山被告が自ら送信か(2014年5月)
パソコンの遠隔操作事件で、16日、自分が「真犯人」だとするメールが報道機関などに送られたが、このメールは、現在公判中の片山祐輔被告が自ら送ったとみられることが分かった。東京地検は片山被告の保釈の取り消しを求めることを検討している。
元会社員の片山祐輔被告は、他人のパソコンを遠隔操作し、殺害予告メールを送った罪などに問われているが、裁判で無罪を主張していて、片山被告は今年3月に保釈されていた。
この事件をめぐって、16日、片山被告の裁判が開かれている時間帯に、自分が「真犯人」だとするメールが報道機関などに送られ、メールには、自分が片山被告のパソコンをウイルスに感染させ、片山被告の犯行に見せかけたなどと書かれていた。
しかし、捜査関係者によると、片山被告が16日の裁判よりも前に、都内の河川敷で不審な行動をとっているのが捜査員に目撃され、片山被告がいた場所にスマートフォンが埋められているのが見つかったという。さらに、このスマートフォンを解析したところ、真犯人を名乗るメールのアドレスの痕跡があったという。時間をずらしてメールを送信するタイマー機能を使うなどして、片山被告自身が、真犯人を装うメールを送ったとみられている。
こうした事態を受けて、東京地検は片山被告の保釈の取り消しを裁判所に対して求めることを検討している。
パソコン(PC)の遠隔操作ウイルス事件で、威力業務妨害などの罪に問われて公判中の元IT関連会社社員片山祐輔被告(32)=保釈中=と弁護側との連絡が取れなくなっていることが19日、分かった。主任弁護人の佐藤博史弁護士が記者会見で明らかにした。
佐藤弁護士によると、同日午前10時20分ごろの電話を最後に連絡が取れない状態になっているという。事件をめぐっては、「真犯人」を名乗るメールが16日、報道機関などに届いた。片山被告は「送ったのは私ではない。真犯人から送られた信ぴょう性は高い」と主張。検察側に公訴取り消しの申し立てをした後、19日午後2時から佐藤弁護士とともに記者会見する予定だったが現れなかった。申し立ては予定通り行われ、会見には同弁護士のみが出席した。
佐藤弁護士によると、メールが片山被告の自作自演だとする報道を受けて電話した後、音信不通になった。片山被告は電話で、やや驚いた様子だったが、「これから弁護士事務所に向かう」と答えていたという。
遠隔操作事件の片山被告「私が真犯人」と認める
パソコンの遠隔操作事件で、19日から連絡が取れなくなっていたインターネット関連会社の元社員、片山祐輔被告から19日夜、弁護団に連絡があり、片山被告は「私が真犯人だ」と認め、先週、報道各社などに届いたメールを自分が送ったと話した。
パソコンの遠隔操作事件では、インターネット関連会社の元社員、片山祐輔被告(32)が威力業務妨害などの罪に問われ、ことし3月に保釈され、裁判では一貫して無罪を主張。この事件について、自分が真犯人と主張するメールが今月16日、片山被告が裁判に出廷中に報道各社などに届き、警視庁などは、片山被告がその前日に、都内の荒川の河川敷に埋めたとみられる携帯電話で送ったとみていた。
片山被告は19日の午前10時20分すぎの電話のあと連絡が取れなくなり、午後に予定されていた会見にも姿を見せなかったが、19日午後9時半ごろ、弁護団に連絡があった。その中で、片山被告は「自分が真犯人だ」と認め、今月16日に届いたメールを自分が送ったと話した。
東京地方検察庁は19日、被告に対する保釈の取り消しを請求し、裁判所は早ければ20日中にも保釈を取り消すかどうか判断を示すとみられる。東京地検は、保釈の取り消しが認められた場合には、被告の身柄を拘束して直ちに勾留することにしている。
誤認逮捕の4警察本部。執念の尾行2カ月半
PC遠隔操作事件で、無罪を主張し続けた片山祐輔(32)に一連の事件への関与を認めさせたのは、誤認逮捕という苦渋を味わった警視庁、大阪、神奈川、三重の4警察本部の合同捜査本部による執念ともいえる追跡劇だった。
2014年5月15日夕、東京都江戸川区の荒川河川敷。合同捜査本部の捜査員の目は、不審な動きをする片山に注がれていた。地面に何かを埋めるような仕草。後で掘り返す時のためか、歩幅を測るようにして埋めた場所を確認している。捜査員らは、この一部始終をビデオに収めていた。
「まさか警察官に見張られているとは思わなかった」。
片山は、真犯人を装うメールを送ったスマートフォンを埋める姿を目撃されていたことを知り、佐藤博史弁護士にそう漏らした。
実は、合同捜査本部は複数の捜査員で片山が保釈された2014年3月5日から行動確認を続けていた。警視庁から投入されたのは、捜査1課で誘拐などの捜査に当たる精鋭の「特殊班」の捜査員。相手に感づかれずに尾行するプロだった。
翌16日午前11時37分。片山が東京地裁の公判に出廷中、「真犯人」からのメールが報道関係者らに一斉に届いた。前日の不審な行動との関連にぴんときた捜査員が同日午後3時ごろ、河川敷の現場を掘り返すと、ポリ袋に入ったスマホが見つかった。令状を取った上で確認すると、真犯人メールと同じ内容のメールが同時刻に送信されていた。スマホの付着物からは片山のDNA型も検出。「真犯人」とつながった瞬間だった。
一時は大きく揺らいだ威信。ある警察幹部は「被告は公判のたびにタイマー機能で真犯人メールを送るつもりだったのでは。これで一区切りだ」と話した。
片山被告「2ちゃんねるのニュース速報プラスのスレッドを見て、『バレた』とパニックになった」
――19日午前10時頃、NHKと日本テレビで報道があったが、その頃の心境は?
- 今のところ順調だろうと。全くばれていないだろう、と
――マスコミから弁護人に問い合わせがあり、10時22分にあなたに電話をして、検察が保釈の取り消し請求をするらしいと伝えたが、弁護人の事務所に向かうと言ったまま行方を断った。その後午後9時半すぎまでに何をしていのか。
- 佐藤弁護士の電話を聞いて、びっくりした。その場でスマホのネットニュースのヘッドラインと2ちゃんねるを見た。2ちゃんねるのニュース速報プラスにスレッドが立っていた。「元会社員自身が送信か」とあり、「今、テレビに出た」「河川敷に埋めたんだって」「片山の自作自演だって」とあったのを読んで、「バレた」とパニックになった。スマホを握りしめたまま、選択肢を考えたが、すぐに「もう死ぬしかない」と思った。
- パニックになって、訳も分からず自転車で走り回って、気がついたら錦糸町の公園にいた。その前に酒を大量に買っていた。トイレで首を吊ろうとしたら、バックルが破断してしまった。亀戸のドンキホーテでベルト2本ネクタイ1本を買って、JRに乗って山の方に行って、人がいないところで死のうと思った。中央線で高尾まで行って、京王線に乗り換えた。酔っ払っていて、このまま山に登るのは無理だと思った。電車に飛び込むことも考えたが、リフトを使って山を登った。しばらく歩いて谷に入った。斜面を使って首を吊ろうと、滑り落ちたり転げたりしてみたがダメだった。
- 辺りが暗くなったので、やっぱり電車に飛び込んで死んだ方が早いと思い、月明かりを頼りに下山した。どこで飛び込もうかと思案した。快速がとまらない小さい駅がいいと、1つ1つ降りて確かめた。カメラもなさそうな駅があったので、ホームの下に入って、首を数十センチ差し出せば死ねる、次の電車が来たら死のう、次の電車が来たら死のうと思いながら迷って踏み出せないまま2時間近くが経った。佐藤先生に謝ったら死ねるのか、と思って電話をした。
――その駅は?
- 酔っ払っていたので曖昧だが、おそらく「山田」
――電話では何と言ったか。
- 「すいません。全部僕が犯人だったんです。今までだましていました。死のうと思ったが死ねない」と。佐藤先生からは「そうか、でも死んじゃダメだ」と強く諭された。
――自殺未遂も演技だと言う人がいるが。
- もう、本当に死ぬしかないと、本気で考えていた。
――警察に目撃されていなかったらどうなったと思うか
- 見つけられなかったと思う。
佐藤博史弁護士会見
PC遠隔操作事件で、連絡が取れなくなっていた片山祐輔の保釈が取り消され、その身柄が拘束されたことを受けて、主任弁護人をつとめる佐藤博史弁護士が5月20日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。片山が一連の事件の犯行を認めたことについて、無罪を主張してきた佐藤弁護士は「完全にだまされた」と述べながらも、「否定的な感情はない」と心境を語った。
佐藤弁護士によると、19日午前10時すぎから連絡が取れなくなった片山は、公園で自殺を図ったものの死にきれず、電車で東京の高尾山に行って、チューハイを飲みながら山中をさまよっていた。その後、駅のホーム下の避難スペースから電車に飛び込んで自殺を図ろうとしたが、思いとどまり、同日夜に佐藤弁護士に電話をかけてきたという。翌20日になって佐藤弁護士の事務所に入り、そこで東京地検に身柄を拘束された。
16日に真犯人を名乗るメールを送ったことについて、片山は、母親から「一日も早く前のような平和な生活が送りたい」と言われたことが動機になった、と佐藤弁護士に明かした。しかし、メールを送ったスマートフォンが荒川の河川敷から見つかったとの報道を聞いて、一連の事件の真犯人しか知りえないパスワードを使った事実が発覚すると思い、すべて認めることを決意したという。
記者会見で、佐藤弁護士と報道陣との間にあった主なやりとりは次の通り。
片山被告人はどんな言葉で犯行を認めたのか?
- 「すいません、私が真犯人です」ということだった。今回の真犯人メールだけでなく、それ以前の事件もやったということだ。
今日、身柄が拘束された時の片山被告人の様子は?
- (行方不明になった)昨日は動揺していたが、今朝会った時に変わった様子はなかった。「昨日はチューハイの缶を飲みっぱなしで山をさまよった」と言っていた。食事も昨夜、寝る前にとったが、今朝はとってないようだった。
佐藤弁護士の率直な感想は?
- 片山さんに「申し訳ありません」と言われたが、正直なところ、全く裏切られたような否定的な感情はない。片山さんは「今までの弁護人を解任して、国選弁護人を頼もうと思いました」と言っていたが、私は即座に「あなたを見捨てない」と応じた。私自身は、否認している被疑者が「実はやってました」と告白することに何回か遭遇している。それをもとに弁護するのが弁護士だ。裏切られたと非難するものでもない。意外なほど冷静でいられた。
事件を起こした動機は?
- (16日に送られた)ラストメッセージに警察や検察への恨みを書いているが、最初(の動機)はそういうものではなかったそうだ。16日の会見では、「真犯人はサイコパス」と言っていたが、今日は「自分がそうなんだ」と言っていた。サイコパスは嘘が平気でつけるということだ。意図的ではなく、ごく自然にできている。
母親は何と言っているか?
- 今日、(片山被告人が)私の事務所に着いてから、電源を切っていたスマホをあけて、読んでみたところ、その中に母親から、「あなたが真犯人だったとしても受け入れる」ということが書いてあった。(片山被告人は)「母親に合わせる顔がない」と言っていた。
片山被告人は、涙を見せていたのか?
- 涙はまったく見せてない。変な感じではなかった。ただ、お母さんに電話していた時にちょっと涙ぐんでいた。
昨日の会見では、無実は揺るがないといっていたが、正直どう思っているか?
- 昨日の段階では、「(送られてきたのは)真犯人からのメールで間違いない」と言った。片山さんが送ったものではないということも確信していたので、無実の確信も揺るがなかった。その半分は正しかったが、半分は完全に裏切られた。特別弁護人の指導のもとに、(片山被告人は)市販のPCを買って、アクセスのデータも残していたが、真相としては、別に秘密のPCを持っていた。さらに埋めたスマホをもっていた。完全に私たちを欺いていた。それまでに私たちが知らされていた事実を前提にすれば、無実の主張を続けることができたのだが・・・。
一連の犯行の動機が分からないが?
- わかりやすく説明するのは、彼自身にも難しいのではないか。給料が安かったと言っているが、そんなに極端に仕事に不満があるようにも思えない。母親と一緒にささやかに暮らすのが彼の日常だ。何の不満もないはずなのに、何らかの出来心でやってしまった。
犯行は一人でやったことなのか?
- 直接は聞いてない。だけど、間違いなく彼一人だと思う。もし複数人いれば、今回みたいなことを自分でやる必要もない。ほかの人にさせればいいだけだ。
片山被告人を信じた理由は?
- 当初、「片山さんが犯人」という徹底的な証拠があるように言われたが、裁判の間も決定的な証拠が示されなかった。悔しまぎれではなく、今回の真犯人メールがなかったら、私は自信をもって無罪弁論をしただろう。刑事弁護の怖さかもしれない。
スマホからはDNAが出た。なぜそんなものを埋めたのか?
- 15日に自転車でバス停に向かい、そこからバスに乗り込んだ。一緒に乗り込む人も降りる人もいなかったそうだ。河川敷は見晴らしがいいので、尾行はなかったと思った。ポールが50メートル間隔で立っていて、150メートル先に本を読んでいる男性がいたが、その人は自分が到着する前からいたので、大丈夫だと思って、埋めたと言っている。ただ、下見に2、3回行っているので、そこが(発覚した)真相ではないか。
今回の(真犯人メールに使った)スマートフォンは、どうやって入手したのか?
- (SIMカードは)秋葉原で手に入れたと言っていた。まったく足のつかないものを買った、と。
なぜ河川敷にスマートフォンを埋めたのか?
- 彼が法廷に臨んでいるときに発信させる目的だったからだ。発信した基地局がわかるので、別の場所でなければいけなかった。警察が自宅に捜索に入るということや、スマホの回収も考えないといけないので、河川敷になった。
メール送信の詳しい方法は聞いているか?
- 名前は聞いていないが、スマートフォンにソフトをインストールしたと言っていた。
「自作自演のメール」を送ることを考えた時期は?
- 保釈される前から考えていたと言っていた。保釈後、与えられた以外の秘密のパソコンを持っていて、それでメールを作り続けていた。
片山被告人は最後までだまし続けるつもりだったのか?
- 有罪判決に備えて、収監後にメールが届く設定をしておくというのが、元々の計画だったと言っていた。最後までだますつもりだったんだろう。
保釈後、捜査当局から行動確認されることについて、佐藤弁護士は注意をしたのか?
- 行動確認はされているよ、と伝えた。今から話すとマンガみたいな話だが、真犯人からのメールがやがて届くと、この事件は「サドンデス」になると話していた。そのときに向けて万全の体制もとっていた。本当は、われわれにとって「デス」だったわけだが・・・。
- だけど、彼の真意はまったく違った。逆に言うと、彼は、私たち以上に尾行とかを計算していたと思う。
それならば、なぜ?
- 河川敷に下見に行ったときも、ものすごく警戒していたが、誰もいない安全な場所だと考えたようだ。(捜査陣が)スマートフォンを掘り返したのはたぶん、埋めた直後ではない。真犯人メールが届いたから、片山の行動を振り返ってみようということで、真相が明らかになったのだと思う。すばらしい勘だ。
スマホを河川敷に埋めた以外に、「自作自演」したとは言っていないのか? たとえば落合洋司弁護士に何かが送られたり・・・。
- 「あれはまったく自分ではない」と。まったく無関係だと思う。
検察側の立証と、片山さんが今回話された真実と違うところはあるか?
- (遠隔操作に使用されたプログラムの)iesys(アイシス)を作ったのが、乙社のパソコンであるというのも、「そうだ」と言っていた。アイシスをつくるくらいの技術はあったんだと。
パソコンの遠隔操作など細かいことはやるが、肝心なところで感覚が鈍いというか、ぬけているという面はあったか?
- ものすごく子どもっぽいと言うべきだと思う。母親を安心させるために「真犯人メール」を送って、裁判を「ジ・エンド」に導くという考えは、ちょっとどこかがぬけている。
サイバー犯罪に一石を投じた今回の事件を、どう考えるか?
- 彼はリアルな空間である江ノ島に姿を現して、尻尾を捕まえられたわけだ。今回もスマホを埋めたところを地道な捜査官が目撃して、掘り当てたために見つかった。
- 片山さんは、江ノ島に行ったときに「まさか防犯カメラがあるとは思わなかった」という。どう考えても、マンガみたいな弁解で、予想しろよと言いたくなるが・・・。
- サイバー空間で行動していた間は尻尾を捕まえられなかった。サイバー空間の犯罪には、まだ残念ながら有効な手立てはない。
保釈金はどうなる?
- 1000万円は母親が出した。生活のための蓄えだから、彼はすごく気にしていた。
- 彼には「没収されないようにするけど、おそらく今回の証拠隠滅は破格の行為なので、保釈金の召し上げがない、ということは考えられない」と伝えた。彼はすごく悔いていた。そこにも考えが及ばないというか、後悔先に立たずというやつだ。
最後の最後に、佐藤さんのところに連絡がきたということについては?
- 私は片山さんの無実をずっと信じていた。片山さんとしても、私に電話するのは、ずいぶん勇気がいったと思う。叱られるんじゃないかということも含めて、最後の別れのつもりで電話をかけてきている。だけど、私はさっき言ったように、片山さんをそのまま受け止めることができた。
- こうなった以上は取り調べの可視化は求めないで、起訴後の取り調べに応じる。片山さんにもそういう必要なことはやろうと伝えた。捜査機関を翻弄したわけだから。捜査側としても、どこで捕まえ損ねたかという問題が多分あると思う。そういうことについて、片山さん自身が協力すべきだ、と。
別れるときに声をかけたのか?
- 「お別れだよ」って、握手した。彼に触れることは、たぶんないので
裁判
片山被告人の最終意見陳述「私自身が弱く未熟だった」
PC遠隔操作事件で、威力業務妨害などの罪に問われている片山祐輔被告人。弁護側の最終弁論が2014年11月27日、東京地裁で開かれ、片山被告人の最終意見陳述もおこなわれた。
以下、最終意見陳述の全文。
先日の検察官の論告を受けて、私は改めて、自分の罪を重く受け止めています。被害者の方々には筆舌に尽くしがたい苦痛を与えてしまい、人生を狂わせることをしてしまったのだと改めて思い知らされました。
私は逮捕されてから長いこと否認をし続けていました。
一転して認めるに至った発端は確かに、真犯人メールの件で言い逃れができなくなったことです。再収監されてしばらくは、「あれさえバレなければ」という気持ちを、正直、捨てることができないでいました。
しかしその後、被害者の方々の調書を読み、また証言を聞き、心理カウンセリングを受け、また、家族と本心から語り合うことで、内省を深めることができました。
半年前の私とは異なり、今では「こうなって良かった」と思っています。もし仮に、間違った無罪を獲得することに成功しても、一生心の中に矛盾をかかえて生きていかなくてはならず、ずっと心に闇をかかえたまま生きていく人生になっていたと思います。
検察官の論告の中で、再犯の可能性について言及されています。9年前の事件の時、私は確かに反省して懲りたはずなのに、再びあやまちを犯してしまいました。その理由が自分でも分かりませんでした。
カウンセリングを受けた結果、自分の中にあった怒りやトラウマの正体や、あるいはもっと幼い頃から他者とは何かが違うと思ってきた障害の正体が分かり、自分でも分からなかったこの事件の動機を正しく把握することができたと思います。私は、自分の中にあった怒りの矛先を、全く間違った方向に、しかも犯罪という間違った方法で、向けていました。その怒りの正体も分からず、手段のためには目的を選ばないような犯行をくり返したのは、他の誰が悪いわけでもなく、私自身が弱く未熟だったからです。
昔の事件の時とは異なり、自分の中の何が問題だったのかを理解した今、そしてこれから先、犯罪に走ることはもうしません。
これからは自分の罪と正しく向き合い、社会復帰を目指したいと思います。