ストーカー

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ストーカーとは、特定の他者に対して執拗に付き纏う行為を行う人間のことをいう。その行為は、ストーカー行為あるいはストーキングと呼ばれる。

概要

日本ではかつて、ストーカー行為はエスカレートになると名誉毀損罪脅迫罪で取り締まれる事例もあるが、そこまでエスカレートする前段階では拘留や科料しか罰が規定されていない軽犯罪法違反くらいでしか取り締まりができない事例があり、それでは不十分としてストーカー規制法2000年(平成12年)に制定された。また地方自治体でもストーカー行為を刑事罰に規定した迷惑防止条例が制定される例もでてきた。また、ストーカー規制法以外につきまとい行為を規制する法律としては、配偶者暴力防止法児童虐待防止法暴力団対策法がある。

以前から同様の行為は存在したが、『ストーカー』という呼称が定着したのは日本では1990年代に入ってからである。それまでは見知らぬ相手の場合は「変質者」、知り合いの場合は「痴情のもつれ」という言葉が使われていた。

ストーカー事案の認知件数は2001年平成13年)以降、1万2000件~1万5000件の間を推移しており、2009年は1万4823件であった。

ストーカー規制法の定義によれば、ストーカーとは同一の者に対し、つきまといなどを反復してすることを指し(第2条)、『つきまといなど』とは、『恋愛感情その他の好意』や『それが満たされなかったことに対する怨恨』により、相手やその関係者に以下のいずれかの行為をすることをさす(以下第2条の要約。カッコ内は警察庁による2009年(平成21年)の認知件数、複数計上)。

  • (1号)つきまとい・待ち伏せ等(7,607人 51.3%)
  • (2号)監視していると告げる行為(1,092人 7.4%)
  • (3号)面会・交際の要求(7,738人 52.2%)
  • (4号)乱暴な言動(3,069人 20.7%)
  • (5号)無言電話・連続電話(4,453人 30.0%)
  • (6号)汚物等の送付(139人 0.9%)
  • (7号)名誉を害する行為(793人 5.3%)
  • (8号)性的羞恥心を害する行為(987人 6.7%)

またストーカー規制法で規制されていない嫌がらせ行為などが294人、2.0%あった。

動機については、ストーカー規制法に抵触するものでは、好意の感情(9,322人 62.9%)、好意が満たされず怨恨の感情(3,791人 25.6%)がある。それ以外のものは非常に少ないが、精神障害(被害妄想含む。71人 0.5%)、職場・商取引上トラブル(8人 0.1%)、その他怨恨の感情(75人 0.5%)、その他(154人 1.0%)がある。

年齢については、被害者は20歳代(35.0%)と30歳代(29.2%)、40歳代(16.5%)を合わせて8割(80.7%)を占め、10歳代、50歳代、60歳代、70歳代以上はそれぞれ10%未満である。加害者は30歳代(25.7%)が最も多く、20歳代(18.4%)、40歳代(18.1%)、50歳代(10.7%)と合わせて7割(72.9%)を占め、10歳代、60歳代、70歳代以上はそれぞれ10%未満である。加害者はほかに、年齢不明が16.7%ある。

被害者と加害者の関係については、交際相手(元含む)の51.5%、配偶者〈内縁・元含む〉の8.2%を合わせてほぼ6割(59.7%)を占め、知人友人(10.5%)、勤務先同僚・職場関係者(8.7%)、密接関係者(3.0%)まで含めて、顔見知り、人間関係のあるものが8割(81.9%)である。その他(近隣居住者、タレントのファンなど)(4.2%)、面識のない相手によるもの(5.6%)、行為者不明(8.3%)は、合わせて2割に満たない程度(18.1%)である。

ストーカーにまつわる判例

  • ストーカー行為規制法2条1・2項・13条1項は、憲法13条・21条1項に違反しない(最判 2003年12月11日
  • 加害者とその両親へ計約8900万円の支払いを認めた例(名古屋高判 2003年8月6日
  • 桶川ストーカー殺人事件について国家賠償請求が認められた例(さいたま地判 2003年2月26日
  • ストーカー殺人の加害者に両親の監督責任を認めた例(名古屋地判 2003年2月4日
  • 300万円の慰謝料を認めた例(大阪地判 2000年12月22日
  • ストーカー行為を解雇事由に該当するとした例(東京地判 2001年6月28日
  • 裁判官が女性に匿名で「次はいつ会えるかな?」などとメールを16回にわたり送りつけた行為について、面会強要等のストーカー行為が認められたため、有罪であると認定され(2008年7月25日)、その裁判官は同年12月3日裁判官弾劾裁判所で罷免判決が下り、罷免された。

ストーカーの心理

精神科医福島章は、『新版 ストーカーの心理学』(2002年)にて、ストーキングを行う者の心理を以下の5つに分類して考察している。

  • 精神病系
精神病によって抱く恋愛妄想、関係妄想によってストーキングを行う。現実には自分と無関係の、スターに付き纏うようなタイプが多い。警察庁の統計によれば、ストーカーに占める精神障害者の割合は、0.5%である。
  • パラノイド系
妄想によりストーキングを行うが、妄想の部分以外は正常で、話すことは論理的で、行動は緻密であることが多い。現実の恋愛関係の挫折による付き纏い行為もあるが、現実には自身と無関係の相手に付き纏うタイプが多い。
  • ボーダーライン系(境界人格障害)
性格は外交的・社交的で、「『孤独を避けるための気違いじみた努力』が特徴」で、病気ではなく、人格の成熟が未熟で、自己中心的で、他人・相手の立場になってみてものを考えることが出来ないタイプで、このタイプの人は精神医学の専門家でない人が想像するよりも世の中に多いという。人間関係は濃く、相手を支配しようとするところに特徴があるという。
  • ナルシスト系(自己愛性人格障害)
自信・自負心が強く、拒絶した相手にストーキングするものが多く、行動的な分類からは『挫折愛タイプ』に属するものが多い。現実の人間関係は深い。
  • サイコパス系(反社会的人格障害)
被愛妄想を持つ(相手が自分を好きであると信じる)のではなく、自分の感情・欲望を相手の感情と無関係に一方的に押し付けるタイプで、性欲を満たすための道具として相手を支配するものが多い。「凶悪・冷血な犯罪者」「典型的な犯罪者」というイメージが特徴で、人間関係は強引で、「相手に『取り憑く』能力を持っている」ことが特徴であるという。

福島章の『新版 ストーカーの心理学』(2002年)によれば、すべてのタイプのなかで、男女を問わずストーキングを受けた者が最も困難に陥れられるタイプは、ボーダーライン型であるという。DSMで、境界人格障害(ボーダーライン系)・演技性人格障害・自己愛性人格障害(ナルシスト系)・反社会性人格障害(サイコパス系)は『不安定なグループ』に分類される。
福島は、ストーカー一般の特徴として、『被愛妄想(エロトマニア)』という言葉を挙げている。福島は、自分が相手を好きという感情は、どんなに強くても恋愛感情であって恋愛妄想ではない、妄想とは、証拠・根拠がないのに相手が自分を好きであると信じる、逆に相手が自分を嫌っている証拠・根拠があっても相手が自分を好きであると信じる、信じて疑わないことである、と述べている。また、ストーカー一般の特徴は、拒絶に対する過度に敏感な反応であり、すべてのタイプに共通するところは、相手の感情に想像力を働かせない、甘え、思い込み、欲求不満攻撃に替えて解消する、というところだという。

ほかにも、何人かの人がストーキングを行う者の心理の分類の試み/考察をしている。

ロバート・K・レスラーによる分類。

  1. 正常なストーカー
  2. 異常なストーカー
    1. リジェクション・センシティブ・タイプ … 拒絶に過敏な人。
    2. ボーダーライン人格障害タイプ … ボーダーライン人格障害。
    3. エロトマニア・タイプ … 関係妄想。
    4. スキゾフィニア・タイプ … 分裂病質。スキゾフレニアか?

町沢静夫による分類。

  1. ボーダーライン型 … 嫌われることに敏感。現代増えている。
  2. 妄想障害型 … 好かれているはずだと思い込む。昔から存在した。

影山任佐による分類。

  1. 誇大自信過剰型 … 好かれているはずだと思い込む。
  2. 未練執着型 … 別れた恋人や配偶者にストーキングする。
  3. ファン型 … 有名人にストーキングする。
  4. 妄想型 … 一方的な恋愛感情や被害者意識。
  5. 中核型 … 相手を支配しようとしたり、相手の心の中に『巣くおう』とする。最も現代的な型。

酔って口から血を流し座り込んでいる男性を女性が発見119番。救急隊員が女性の個人情報伝えストーカーに

救急隊員個人情報伝え通報女性がストーカー被害 損賠訴訟が和解

119番した女性の名前や住所を救急隊員が救助された男性に教えたため、自宅に押し掛けられるなどのストーカー行為を受けたとして、通報した女性が坂戸・鶴ケ島消防組合を相手取り、100万円の慰謝料を求めた損害賠償訴訟の弁論が2013年6月4日、さいたま地裁川越支部(松田浩養裁判官)であり、和解が成立した。

現場で「お礼のため相手方が通報者の名前などを知りたい場合、教えてもいいか」という救急隊員の問いに対する女性の回答が争点になったが、和解内容は争点を留保したまま、組合側が女性に慰謝料50万円を支払うことで合意した。

訴えなどによると、2012年3月28日午前11時50分ごろ、坂戸市東坂戸の路上で、酒に酔って口から血を流して座り込んでいる男性を30歳代の女性が発見し、119番した。

男性は救急車に運び込まれ、女性は指示に従って氏名や住所、電話番号などを用紙に記入。この際、救急隊員は「相手がお礼をしたいと言った場合、個人情報を教えてもいいか」と尋ね、女性は2回にわたり「伝えないでほしい」と断ったという。

男性は救急車で病院に運ばれたが、酒に酔って転倒し顔に軽傷を負った程度で治療後に帰宅。翌日、女性方に電話を掛けた上、自宅に押し掛け「好きになった」と話した。

同日夜、女性が消防組合に電話すると、個人情報を伝えたことを一度は謝ったものの、その後「女性の了解があったために男性に教えた」と主張したとされる。

女性は2012年8月に提訴したが、裁判官は和解案を提示。女性と消防組合は2013年4月に承諾し、組合側は5月21日の臨時会に和解内容を議案として上程。全会一致で可決していた。

女性側の弁護士は「裁判官から『女性が個人情報を教えることを承諾したかどうかよりも、住所を教えたことは行き過ぎ』という指摘があり、それと和解案が解決に導いた」と話している。

このままでは平行線 坂戸鶴ケ島消防組合本部庶務課の話

女性の承諾に基づいて男性に回答したとして、過失はないと考えているが、このままでは平行線となるため、女性が承諾したかどうかは別にして、救急隊員が個人情報を教えた事実を捉え、和解に応じた。

年の差40歳…23歳女性にストーカー、容疑で63歳逮捕(2013年10月)

知人の女性会社員(23)に繰り返し手紙を送るなどしたとして、千葉県警我孫子署は21日、ストーカー規制法違反で、我孫子市布佐平和台、介護施設職員、木村誠(63)を逮捕した。容疑を認めている。

8月25日から9月18日の間、女性の勤務先で待ち伏せしたり、好意を示す手紙を複数回送りつけたりするなどのストーカー行為をした。

昨年10月ごろ、木村は自動車教習所の送迎バス運転手をしていた際に、教習所に通っていた女性と知り合いになった。度重なる電話や、待ち伏せ行為があったため、女性は今年5月に県警に相談。県警が木村容疑者に警告して一旦は収まったが、8月ごろから再び、行動を監視する内容や好意を寄せる手紙が送られてきた。

ストーカーが題材となった作品

映画
地獄門(1953年)
おとうと(1960年)
異常性愛記録 ハレンチ(1969年)
恐怖のメロディ(1971年)
アデルの恋の物語(1975年)
危険な情事(1987年)
不法侵入(1992年)
ザ・ファン(1996年)
Jの悲劇(2004年)- イアン・マキューアンの小説『愛の続き』の映画化
テレビドラマ
ずっとあなたが好きだった(主演:賀来千香子佐野史郎 TBS系列、1992年)
ジェラシー(主演:石田純一黒木瞳日本テレビ読売テレビ系列、1993年)
誰にも言えない(主演:賀来千香子佐野史郎TBS系列、1993年)
ストーカー 逃げきれぬ愛(主演:高岡早紀 日本テレビ読売テレビ系列、1997年)
ストーカー・誘う女(主演:雛形あきこ陣内孝則 TBS系列、1997年)
音楽
「ストーカーと呼ばないで」オオタスセリ(2006年)
「誰よりもあなたを」ミドリカワ書房(2008年)
漫画
うわさももち麗子
座敷女望月峯太郎、1993年)
おそるべしっっ!!!音無可憐さん鈴木由美子、1998年)

参考文献

関連文献

原著:Paul E. Mullen, Michele Pathe, Rosemary Purcell, Stalkers and Their Victims, Cambridge University Press, ISBN 0521669502

関連項目

外部リンク

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