フォルクスワーゲン・シロッコ
フォルクスワーゲン・シロッコ(Volkswagen Scirocco )は、ドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲンが1974年に発売した、3ドアハッチバックの乗用車である。1992年に一旦モデル廃止となったが、2008年に新型の乗用車として再発売された。
1992年までの第1、第2世代はカルマンによる製造であり、2008年に登場した第3世代はポルトガルのオートヨーロッパによる製造である。
目次
概要
初代(1974年 - 1981年)
1974年、ロングセラーとなっていた乗用車・ビートルに代わる乗用車としてゴルフIが発売された。ビートルをベースとして1950年代以来生産されてきたクーペモデル、カルマンギア・クーペの世代交代もまた不可避となり、ゴルフIをベースに開発され、ゴルフIに数ヶ月先立つ1974年3月に発売された。
メカニズムはゴルフをベースとしていたが、より低い車高とスポーティーな操縦性のために大幅に手が加えられていた。長いノーズ・大きく傾斜したフロントスクリーン、短くカットされてスポイラー風に処理されたハッチバックテールが斬新なスタイルは、パサート・ゴルフIなどの一連の新世代フォルクスワーゲン車同様、イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロのデザインであった。車体寸法は全長3855mm・全幅1624mm・全高1309mmであった。
エンジンは水冷直列4気筒SOHCで1100cc60馬力と1500cc70/85馬力の3種が用意され、1975年にはゴルフGTI同様の1600cc燃料噴射版の「GTI」も追加された。アメリカ向けの排気量は排気ガス対策のため後に1700ccに拡大された。1500cc85馬力の「TS」版以上とアメリカ向け車両には丸型4灯ヘッドライトが与えられたが、「LS」以下のグレードは角型2灯式が装備されていた。
1976年後半のモデルからフロントウィンドウのワイパーがそれまでの2本アームから1本に変更された。1978年にマイナーチェンジを受けてフロントのウィンカーランプが大型化され、バンパーも黒のプラスチック製に換えられた。
初代シロッコは、オペル・マンタやフォード・カプリなどのライバルをしのぐ販売台数を記録、1981年までに504,153台が生産された。
2代目(1982年 - 1992年)
1982年に登場した2代目はゴルフII同様、ジョルジェット・ジウジアーロの手を離れ、フォルクスワーゲン社内でデザインされた。初代モデルが7年間で50万台以上生産されたのに対し、この2代目モデルの販売は10年間で29万1497台にとどまった。
ボディデザインは大幅に変わったが、プラットフォームは初代を流用していた。デザイン上の特色として、当時流行のリアスポイラーがテールゲートのウインドウ下端より上に装着されていたことが挙げられる。装備は充実し本革シートやパワーウィンドーが選択可能となったが、初期型ではパワーステアリングが未設定であった。
1984年にはマイナーチェンジされ、ブレーキ系統の改良、スペースセイバー型スペアタイヤ採用による燃料タンク容量拡大、エアコンの改良などが行われた。1986年にはDOHC16バルブエンジン搭載車が追加された。これはゴルフGTI-16Vと同じエンジンであったが、外観上の変化はエンブレム程度であったゴルフとは対照的に、シロッコGTI-16Vではオーバーフェンダーを含むフルエアロキットも装備され、外観のスポーティー度を高めた。
ゴルフIIIをベースにしたより本格的なスポーツクーペ・コラードが1988年に登場すると、シロッコはアメリカや日本など大半の輸出市場で消滅したが、ドイツ国内向けには1992年まで生産が続行された。
3代目(2008年 - )
2006年のパリサロンで「フォルクスワーゲン・アイロック」(Iroc )というコンセプトカーが発表された。その二年後の2008年、3代目シロッコは発売された。2代目の後継モデルとなったコラードも1995年に消滅していたため、フォルクスワーゲンとしては13年ぶりのクーペモデルとなった。ドイツでの販売価格は、21,750ユーロ(税込み)から[1]である。北米市場では、「GTI(北米で販売されるゴルフGTI)の販売に悪影響する」との理由によって[2]、導入見送りとされた。その後スポーツグレードとして2L TSIエンジンをチューンした256PSのシロッコRが発売された。
全長4256mm・全幅1810mm・全高1404mmという幅広く短い、ロングルーフを特徴とする独特なそのスタイルを持つ。搭載されるエンジンはゴルフVIと共通の、ツインチャージャー直列4気筒1400cc120-158馬力、2000cc197馬力、2000TDI140馬力などである。
名称の由来
シロッコとは、北アフリカの砂漠地帯から地中海地方に吹き込む、粉塵を含んだ熱風の総称[3]である。フォルクスワーゲン車には他にも、パサート(貿易風)、ゴルフ(メキシコ湾流)など、風に因んだ名称の乗用車がある。
イタリアの自動車会社マセラティがかつて生産していた乗用車にマセラティ・ギブリがあるが、「ギブリ」は「シロッコ」の、リビアにおける呼称である[4]。
日本での販売
初代・2代目はヤナセによって輸入販売されていた。
3代目は、フォルクスワーゲン グループ ジャパンによって2009年5月25日に発売された。販売は、1400ccツインチャージャーエンジン搭載の「TSI」(392万円)と、2000ccターボの「2.0TSI」(447万円)の二種類で開始された。シロッコRは2010年2月5日より515万円で発売された。
2010年9月15日に仕様変更が行われ、「TSI」が「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」と「平成22年度燃費基準+15%」を同時に達成し、環境対応車普及促進税制に適合した他、ナビゲーションをオプション化するなど装備内容の見直しも行われたため、44万円値下げされ、348万円となった。一方、「2.0TSI」はリアビューカメラ「Rear Assist」を新たに装備するなどされた為、13万円値上げの460万円となった。なお、タイヤは両タイプとも突起物が貫通した場合でも、特殊高分子ポリマーの粘着特性により瞬時に穴を塞ぎ、継続走行が可能な「モビリティタイヤ」となった。
2011年8月24日特別仕様車「R-Line」を発売。「TSI」をベースに、専用フロント&リアバンパー、サイドスカート、18インチアルミホイール、専用ファブリックシートなど、「R-Line」専用の内外装を装備(379万円)。併せて、「TSI」の仕様変更も行い、パドルシフト、リアパークディスタンスコントロール、RCD310オーディオを追加装備するとともに、セットオプションとして「アダプティブシャシーコントロール"DCC"パッケージ」と「レザーシート、パノラマガラスルーフパッケージ」を新たに設定。なお、追加装備に伴って2万円値上げとなり、350万円となった。
脚注
- ↑ http://www.autoblog.com/2008/03/04/geneva-2008-volkswagen-scirocco-blows-into-geneva/
- ↑ http://blogs.motortrend.com/6207263/car-news/volkswagen-wont-bring-scirocco-to-the-us/index.html
- ↑ http://www.weatheronline.co.uk/reports/wind/The-Sirocco.htm
- ↑ http://www.weatheronline.co.uk/reports/wind/The-Ghibli.htm