イギリス
産業革命以来の伝統的な工業国で、2015年現在の第2次産業人口は18.6%を占める。第1次産業人口は同1.1%程度であるが、食料自給率は60%近く、酪農製品や大麦・小麦・ホップなどを生産。また金融業ではロンドンのシティはニューヨークと並ぶ世界の金融の中心地とされている。
政治体制は立憲君主制。国家元首であるエリザベス2世は、英連邦の首長、16カ国の元首でもある。NATO加盟国で国連安全保障理事会の常任理事国。1973年にヨーロッパ共同体(EC)に加入したが単一通貨(ユーロ)には参加せず(通貨はポンド)、2016年に国民投票でEU離脱を決定した。
公用語は英語。民族は、ゲルマン系のイングランド人(83.6%)、ケルト系のスコットランド人(8.6%)、ウェールズ人(4.9%)など(2001年時点)。アフリカやインド・パキスタンなど旧植民地からの移住者も多い。宗教ではキリスト教の英国国教会派が71.6%でイスラム教(2.7%)がこれに次ぐ(同)。
目次
地勢
イギリスは、グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)の名のとおり、グレート・ブリテン島とアイルランド島の北部から構成される[1]。グレート・ブリテン島は、イングランド、スコットランドおよびウェールズの各地方から成る[2]。
島国で、北大西洋と北海に面し、ドーバー海峡を隔ててフランスと隣接しているが、アイルランドとは陸地で国境を接している[2][3]。
グレート・ブリテン島の地形は比較的平坦で、北部にはグランビア山地、中部にペニン山脈、西部にカンブリア山地などの古期造山帯の低い山脈が連なっている[2]。
総面積
気候
北大西洋のメキシコ湾流と偏西風のため、高緯度の割に温和な、温帯気候(西岸海洋性気候)にある[2][1]。
降雨量の季節による変動は少ないが[2]、天候は変わりやすい[6]。年平均気温は11.8℃、年降水量は640.3mm[2]。
気温は、冬期には東海岸よりも西海岸の方が高く、夏期には西海岸よりも東海岸の方が高くなる[2][6]。
主な都市
都市名 | 人口 2014年, 万人
|
---|---|
ロンドン(首都[4][1][6]) | 853.8 |
バーミンガム | 110.1 |
リーズ | 76.6 |
グラスゴー | 59.9 |
シェフィールド | 56.3 |
ブラッドフォード | 52.8 |
マンチェスター | 52.0 |
エディンバラ | 49.2 |
リバプール | 47.3 |
ブリストル | 44.2 |
カークリーズ | 43.1 |
資料:二宮書店 2017 329-330
人口
総人口
- 1990年頃 5,707万人[4]
- 1990年 5,721[7]
- 2000年 5,895[7]
- 2010年 6,207[7]
- 2011年 6,180[1]
- 2012年 6,278[7]
- 2013年 6,314[7][6]
- 2016年 6,511[2]
人口密度
動態統計
人口増加率
- 0.5%(2000年-2013年平均)[5]
出生率
死亡率
乳児死亡率
合計特殊出生率
- 2014年 1.8‰[2]
平均寿命
- 2014年 81.1歳[2]
年齢別人口
年度 | 0-14歳 | 15-64歳 | 65歳以上 | 出典 |
---|---|---|---|---|
2011年 | 17.6% | 66.0% | 16.4% | [10] |
2016年 | 17.4% | 64.7% | 17.9% | [2] |
労働人口
産業別人口
年度 | 1次 | 2次 | 3次 | 出典 |
---|---|---|---|---|
1990年頃 | 2.0% | 20.8% | - | [4] |
2013年 | 1.1% | 18.7% | 80.2% | [11] |
2015年 | 1.1% | 18.6% | 79.6% | [2] |
就業・失業
SNA
GNI
GDP
- 1970年 [14] 1,248億ドル
- 1980年 [14] 5,419
- 1990年 10,193[14]
- 2000年 14,936[14]
- 2010年 22,955[14]
- 2012年 24,716[14][6]
1人あたり
産業
主な産業
- 農業人口は総人口の1.1%程度だが、食糧自給率は高く[3]、約60%を自給している[2]。主な生産物は、酪農製品、大麦・大麦、馬鈴薯、ホップなど[4][1]。2012年の穀物生産量19,515kt[17]。世界の主要な漁業国の1つで、様々な種類の魚を水揚げしている[1]。
- 北海で原油と天然ガスを産出。エネルギー自給体制を確立し[3]、1980年に石油輸出国となった[2]。2011年の1次エネルギー自給率は69%[17]。
- 産業革命以来の伝統的な工業国で[2]、かつては毛織物・綿織物などの繊維工業が発達していた[1]。2013年時点でも羊毛の生産が多い[1]。主な産業は自動車、航空機、電気機器、エレクトロニクス、化学[6]。家電製品[4]。8つの国際的な自動車メーカーが存在[1]。先端技術産業も発達している[3]。工業国としては、最新の技術を備え、賃金水準の低い新興経済国に対して、不利な立場にある[3]。
- シティ・オブ・ロンドン(シティ)はニューヨークのウォール街と並ぶ世界の金融市場の中心地[2][3]。金融業はシティとドックランズに集中している[1]。
産業活動別GDP
- 2012年、億ドル[18]
- 農林水産業 143
- 鉱工業 3,184
- 建設業 1,314
- 卸売・小売業 3,608
- 運輸・通信業 1,785
- サービス業 11,850
- 産業計 21,884
- GDP(再掲) 24,716
貿易額
輸出額
輸入額
貿易依存度
- 2014年 輸出16.0%、輸入22.2%[2]
通貨
為替レート
外貨準備高
外交
- NATO加盟国[1]。
- 国連安全保障理事会の常任理事国[1]。
- 1973年にヨーロッパ共同体(現EU)に加盟したが、単一通貨制度(ユーロ)には参加していない[1]。
- エリザベス女王は英連邦の首長で、16ヵ国の元首[2]。
北アイルランド問題
- 1968年以降、プロテスタントとカトリック双方の過激派によるテロ事件が発生[3]。
- 1998年、北アイルランド包括和平合意、翌1999年、自治政府発足[2]。
- 2002年10月、直轄統治が復活[2]。
- 2005年7月、IRAが武装闘争終結宣言[2]。
- 2007年5月、自治政府が復活[2]。
- 2011年5月、自治政府議会選で民主統一党が第1党、シンフェイン党が第2党[2]。
政治
政治体制
国家元首
政権
議会
二院制[6]。
ウェストミンスター宮殿はロンドンの中心部、テムズ河の河畔にあり、英国議会が議事堂として使用している。ビッグ・ベンは同宮殿に併設されている時計塔。[1]
社会
- 所得水準、国民、経済の規模からみると、ECの中位の国[3]。
- 2011年の発電量367.8B(kWh)[17]。
- インフレーション、失業率の増大など多くの問題[3]。
- 身分制度のような古い社会の性格が新しい活力を生み出す障害になっている[3]。
- 識字率99%[4]。
- 1人あたりエネルギー消費量 4,641kg[4]。
- テレビ保有台数 435(台/千人)[4]。
- 乗用車保有台数 357.1(台/千人)[4]。
歴史
- 前6世紀頃、ケルト人が大陸から侵入して先住民を征服[1]
- 前1世紀、ローマ軍が侵攻してイングランド南部を支配[1]
- 5世紀、ゲルマン民族のアングロ・サクソン人が侵入してイングランドに小王国群を形成[1]。ケルト人はウェールズやスコットランドに移住[2]。
- 11世紀、ノルマン系デーン人の侵入[1]
- 1066年、大陸北西部から侵攻してきたノルマンディー公ウィリアム(ウィリアム1世〈征服王〉)がイングランドを統一した(ノルマン朝)。その後、断絶。[1]
- 1154年-1399年 プランタジネット朝[1]
- 1215年、貴族が結束し、王権を制限するマグナ・カルタ(大憲章)を認めさせる[1]。
- 1282年[2]または1284年[1]にウェールズを併合
- 1295年、身分制議会を形成[1]
- 1337年‐1453年、英仏百年戦争[2]
- 1343年、上下両院制となる[1]
- 16世紀前半、ヘンリー8世主導の宗教改革でイギリス国教会が成立。国王を首長と定めてローマ教皇の権威から離脱し、絶対王政も進展。[1]
- 1558年 - 1603年のエリザベス王朝時代には、1588年にスペインの無敵艦隊を撃破、1600年に東インド会社を設立した[2]。
- 1642年-1649年、宗教的・社会的対立からイギリス革命が起こり、1649年-1660年にかけて王政廃止。[1]
- 王政復古後も国王との対立は止まず[1]
- 1688年の名誉革命の後、1689年の権利章典によって議会主権の立憲君主国となる[2][1]。次第に「国王は君臨すれども統治せず」の原則が生まれる[1]。
- 16世紀後半以降、海外植民地を拡大。[1]
- 1707年、スコットランドを併合し、グレート・ブリテン王国成立[2][1]。
- 1714年、ハノーバー朝が発足し、議院内閣制が成立[2]。
- 18世紀後半、木綿工業から始まる産業革命を達成。広大な海外植民地とあわせて「世界の工場」と称される。[1]
- 1801年、アイルランドを併合してグレートブリテン・アイルランド連合王国となる[2][1]。
- 1837年 - 1901年、ヴィクトリア王朝時代[2]。
- 1830年、リバプールとマンチェスターを結ぶ、世界初の鉄道が開通[1]。
- 19世紀後半、選挙法改正など自由主義的改革が進む。[1]
- 19世紀後半の「帝国主義時代」の開始期に絶頂期を迎える。[1]
- 1922年、第1次世界大戦の後でアイルランドの大部分が独立。グレートブリテン・北部アイルランド連合王国となる。[1]
- 1931年、海外植民地と英連邦を形成[1]
- 第2次世界大戦の後、植民地の独立が相次ぐ[2]。
- 1949年、NATOに加盟[2]。
- 1945年-1951年、労働党政権の下で基幹産業の国有化や保健サービスの拡大など、福祉国家建設の道を歩む。[1]
- 経済の停滞と米・ソ両陣営の冷戦で世界政治における発言力は低下[1]
- 1965年、ポンド危機が深刻化[1]
- 1966年、賃金・物価統制令を発布[1]
- 1973年、ヨーロッパ共同体(EC)に加盟[2][1]。
- 1979年、保守党のサッチャーがイギリス史上初の女性首相に就任(1990年まで在任)。民営化路線を軸とする新自由主義的政策を導入して経済基盤回復を実現。[1]
- 1982年、アルゼンチンとのフォークランド紛争勃発[2]。
- その後も保守党と労働党の政権交代が生じる。[1]
- 2003年、労働党のブレア政権(1997年-2007年)はアメリカのイラク戦争に追随して一部から批判を受ける[1]。
- 2008年、EU新基本条約を批准[2]。
- 2010年、下院の総選挙で労働党が敗れ、保守党と自由民主党の連立政権が成立[2][1]。
- 2016年、国民投票でEU離脱を決定[2]。
言語
主な言語、公用語は英語[3][1][6]。アイルランド語、ウェールズ語、(スコットランド)ゲール語などの使用地域も[2][1]。少数言語にコーンウォール語、スコットランド語、マン島語がある[2]。
国名
宗教
2001年時点で、キリスト教の英国国教会派が71.6%、イスラム教2.7%、ヒンドゥ教1.0%、シーク教、ユダヤ教[2]。
民族
- 2001年時点で、イングランド人83.6%[2](ゲルマン系のアングロ・サクソン人[1])。
- スコットランド人8.6%、ウェールズ人4.9%[2](ケルト系[1])。ウェールズやスコットランドでは、自治権を拡大し、伝統文化を守る運動も盛んになっている[3]。
- 北アイルランド人2.9%[2]。
- 黒人2.0%、インド人1.8%、パキスタン人1.3%[2]。アフリカやインド・パキスタンなど旧植民地からの移住者が多い[1]
国旗
祝祭日
月日※ | 祝祭日 |
---|---|
1月1日 | 新年 |
4月19日 | 聖金曜日 |
4月22日 | 復活祭月曜日 |
5月6日 | アーリー・メイ・バンク・ホリデー |
5月27日 | スプリング・バンク・ホリデー |
8月26日 | サマー・バンク・ホリデー |
12月25日 | クリスマス |
12月26日 | ボクシング・デー |
資料:ジェトロ > ヨーロッパ > 英国 > 祝祭日 ※2019年の場合。地域により異同がある。
日本との関係
特徴
世界順位 | データ | 統計年度 | 出典 | |
---|---|---|---|---|
特許の国際出願件数が多い国 | 第7位 | 4,865件 | 2013年推計値 | [19] |
原子力発電所の原子炉の数が多い国 | 第9位 | 16基 | 2012年 | [19] |
日刊紙の発行部数が多い国 | 第6位 | 1,280.5万部 | 2012年 | [19] |
外部リンク
付録
脚注
- ↑ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 1.12 1.13 1.14 1.15 1.16 1.17 1.18 1.19 1.20 1.21 1.22 1.23 1.24 1.25 1.26 1.27 1.28 1.29 1.30 1.31 1.32 1.33 1.34 1.35 1.36 1.37 1.38 1.39 1.40 1.41 1.42 1.43 1.44 1.45 1.46 1.47 1.48 1.49 1.50 1.51 1.52 1.53 1.54 1.55 1.56 ハンドブック 2013 136-137
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 2.17 2.18 2.19 2.20 2.21 2.22 2.23 2.24 2.25 2.26 2.27 2.28 2.29 2.30 2.31 2.32 2.33 2.34 2.35 2.36 2.37 2.38 2.39 2.40 2.41 2.42 2.43 2.44 2.45 2.46 2.47 2.48 2.49 2.50 2.51 2.52 2.53 2.54 2.55 2.56 2.57 2.58 二宮書店 2017 329-330
- ↑ 3.00 3.01 3.02 3.03 3.04 3.05 3.06 3.07 3.08 3.09 3.10 3.11 竹内 1993 90
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- ↑ 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 6.13 6.14 6.15 リブロ 2014 27
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- ↑ 矢野恒太記念会 2014 71
- ↑ 11.0 11.1 11.2 11.3 矢野恒太記念会 2014 16
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- ↑ 矢野恒太記念会 2014 31,126
- ↑ 14.0 14.1 14.2 14.3 14.4 14.5 矢野恒太記念会 2014 120-121
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 121
- ↑ 16.0 16.1 16.2 矢野恒太記念会 2014 31
- ↑ 17.0 17.1 17.2 矢野恒太記念会 2014 17
- ↑ 矢野恒太記念会 2014 147
- ↑ 19.0 19.1 19.2 リブロ 2014 72-73
参考文献
- ジェトロ (2019) ジェトロ(日本貿易振興機構) > ヨーロッパ > 英国 2019年1月24日閲覧
- 二宮書店 (2017) 二宮書店編集部『データブック オブ・ザ・ワールド 2017年版』二宮書店、2017年、ISBN 978-4817604118
- リブロ (2014) リブロ『世界の国情報2014』リブロ、2014年、ISBN 978-4903611587
- 矢野恒太記念会 (2014) 矢野恒太記念会『世界国勢図絵2014/15年版』矢野恒太記念会、2014年、ISBN 978-4875494485
- ハンドブック (2013) 「世界各国ハンドブック」編集委員会『ニュースがわかる 世界各国ハンドブック』山川出版社、2013年、ISBN 978-4634640641
- 竹内 (1993) 竹内啓一『新版データブック世界各国地理』岩波書店、1993年、ISBN 4005002188