自動販売機
自動販売機(じどうはんばいき)とは、商品(金券等を含む)の販売のために販売主が設置し、顧客が代金を支払って自らの希望に応じてそれを操作することで自動的に商品の引渡しや釣り銭の処理を行う機械。自販機(じはんき)とも略される。乗車券や食券などの券の販売機の場合は(自動)券売機とも言われる。
目次
概説
販売の形態としては対面販売でなく、買主は売主が予め設置した機械を相手として商品を購入することになる。営業の効率化や人件費の削減などを目的に導入される。自動販売機の多くは電気式であるが手動式の自動販売機もある。
歴史
最初の自動販売機といわれているのは紀元前215年頃、古代エジプトの神殿に置かれた聖水(いけにえの水)の自販装置である。てこの原理を応用し、投入された5ドラクマ硬貨の重みで内部の受け皿が傾き、その傾きが元に戻るまで弁が開いて蛇口から水が出る。これの記述図解はアレクサンドリアのヘロン著『気体装置(Pneumatika)』にあるが、だれが発明したかは不明である。
現在のようにボタンの選択によって、複数の商品が取り出せる自動販売機は1925年にアメリカで開発されている。日本社会に広く普及したのは1960年代以後と言われている。特に1967年に国鉄が合理化の一環として、都市部における近距離乗車券発行用自動券売機の全面的な導入に踏み切ったことが、大きな影響を与えたといわれている。
日本における自動販売機
日本では、俵谷高七が1888年(明治21年)に発明して内国勧業博覧会に出品された煙草自動販売機が最初であるとされている。特許の申請という観点では俵谷に先んじること9ヶ月前、小野秀三が後に特許第848号が与えられる「自動販売器」を申請しているが、俵谷が1904年(明治37年)に発明した「自働郵便切手葉書売下機」が現存する日本最古の自動販売機とされ逓信総合博物館に所蔵されていることもあり、また前述の煙草自動販売機が博覧会に出品されたことから日本最初の自動販売機発明者としては俵谷の名前が広く知られている。
日本全国の自動販売機設置台数は、20世紀においては増加の一途を辿り、2000年(平成12年)には560万台とピークを迎えたが、21世紀に入ってから減少傾向に転じ、2007年(平成19年)末には540万5300台(うち48.8パーセントが飲料販売用。日本自動販売機工業会の調査)、2008年(平成20年)12月末には526万台とその傾向が続いている。自販機による売上も、2000年の7兆円から2008年(平成20年)には5兆7000億円と減少の一途を辿っている。日本における購買者の比率は男性9:女性1とされる。日本国内で自動販売機の工業製品出荷金額が最も高いのは、三重県である。そして、自動販売機の生産台数が最も多いのは、四日市市で年間で約12万台が生産されている。
キヨスクが閉店した駅でも、利用客の不便を減らすために自動販売機を設置している駅が多い。
種類
物品自動販売機
一般には、冷やしたり温めたりした缶・瓶・ペットボトル・紙パッケージ・カップ入り飲料、カップめん・菓子パン・菓子類・タバコ・雑誌・新聞など保存の簡単なものが多い。また特殊なところでは、その都度豆から挽いて抽出するコーヒーや冷凍食品(焼きおにぎり、焼きそばなど)を内蔵電子レンジなどで温めて提供するものもある。カップ麺の場合は、湯で戻して提供され、ついでに箸がついてくる。
交通機関の乗車券や特急券、遊園地やテーマパークなどの入場券、各種プリペイドカードなど、券の形をした商品を販売するものは特に自動券売機ともいう。
近年では、ガソリンスタンドなどにおいても、ガソリン等の油脂類を顧客自らが給油機で注文を行い、給油までの操作をすべて自分自身で行う「セルフ式」といわれる方式を採用する店舗が多くなった。これも、給油機そのものが一種の自動販売機といえる。ただし、注文後に別室にいる従業員が目視を行い給油の許可を給油機に与えないと給油を行うことはできない(ガソリン車に軽油を給油したり、といった誤給油を防ぐため)。したがって、一連の給油操作がすべて「自動販売」化されているわけではない。
先進工業国を含めた多くの国では、公共交通機関の券売機などの例外を除くと単純な機構の手動式の自動販売機が主流である。このような販売機で取り扱われる商品はチューインガムやチョコレートなどの駄菓子や新聞などが多い。
新聞の販売機は、硬貨を金額分投入するとケースの鍵が開くので、手動でケースを開けて、中に積んである新聞の束から一部をつかんで取り出す方式である。新聞の一面を陳列するために、一部だけはケースの透明な窓を内側から覆う形で置いてあるので、最後の購入者はその新聞を取り出す。以降はケース内が空であることがわかるようになる。一度に複数部を取り出す不正行為を防ぐための機構はない。電気を要さないこともあり管理コストがほとんどかからず、また販売機も商品原価も安価であることから治安の影響もあまり受けず、市街地の路上に多数設置されて新聞の主要な販路のひとつとなっている。
自動サービス機
ジュークボックス・アーケードゲーム機・公衆電話など物ではなくサービスを提供する機械は自動販売機とは呼ばないが、日本自動販売機工業会では「自動サービス機」と呼んでいる。総務省の日本標準商品分類では「その他の機器 > 自動販売機及び自動サービス機」として分類されている。証明写真やプリクラのようにサービスとも商品とも取れるものもあり、線引きは曖昧である。
最近ではコンビニエンスストアなどに設置されている端末(マルチメディアステーション)から楽曲や画像データをMDやメモリーカードなどにダウンロードできるようになるなど、この傾向は更に強くなっている。
日本標準商品分類による自動サービス機の分類(数字は商品コード)
- 5821 自動両替機
- 5822 玉・メダル貸機(パチンコ・パチスロの玉・メダル貸出)
- 5823 自動貸出機
- 5824 自動改札機
- 5825 自動入場機
- 5826 自動写真撮影機 - 証明写真、写真シール(プリント倶楽部など)
- 5827 コインロッカー
- 5828 コインランドリー
- 5829 その他の自動サービス機 (コインシャワー、コイン洗車機など)
形態と品目
基本的には1990年6月改訂の日本標準商品分類(一部追記)に沿って記載する。
これによると、物品・非物品(サービス情報)に大別される。物品の場合、食品系(食品・飲料)と非食品系に分かれる。
しかしながら、コンビニエンスストアや24時間営業のスーパーマーケットの普及などにより、一昔前と比較すると販売する品目が減少してきている。 現在、自販機のほとんどが券売機や需要の多い飲み物・アイス、対面では買い難いコンドームなどのものである。
物品等自動販売機
- 非飲食物系
- タバコ(梱包を工夫して、同じ機械でライターを扱うものもある)
- 新聞・雑誌・文庫本(新聞は主に「ニュースくん」という愛称が付いている。また、雑誌では成人向け雑誌を扱うものもある)
- 切手・はがき(集配局の郵便局の一部で置かれていたが、2007年7月で全面廃止)
- 乾電池
- DVD・CDソフト
- 販売だけでなく、無人レンタルビデオなど貸し出し・返却を扱うものもある。
- 風船(ファンキーマルーン)
- 透明ロッカー型(日用小物から下着、靴下、お菓子など常温保存可能な食品も含む)
- カプセルトイ(ガシャポン、ガチャ、ガチャガチャ) - カプセルに入ったフィギュア等の玩具
- 先払いセルフ式ガソリンスタンド(先に現金を投入して品種(レギュラー・ハイオク・軽油)を選択し、投入金額分まで給油できる。残余分は釣銭として払いだされる)
- カード類 - テレフォンカード・ハイウェイカードなどのプリペイドカード類や乗車券などの切符類。トレーディングカード類(カードダス)。
- コンドーム
- 花(生花)(温度・湿度管理がされている)
- キーホルダー
- 下着
- 旅行保険(空港などで見られる。保険料を投入すると保険証書の用紙が払い出され、住所や氏名などを記入して、一番下の控え以外の部分を投入口に入れる)
- ティッシュペーパー、トイレットペーパー(駅のトイレなどに設置される。少ない投資で(自動販売機の購入のみで)、簡易的な有料トイレを作ることができる)
- お守り・おみくじ
- 自動券売機
- コスチューム
- 釣り餌(釣具店の軒先によく設置されている。生きた餌のパックを販売している)
- 温泉(温泉スタンドなど)
- タオル(温泉施設、無料の足湯がある所に設置されている)
- 洗車用洗剤
- 化粧品・櫛・ひげそり用品(主に宿泊施設・銭湯などに設置されている、整髪料などは小分けされている)
- 傘
- カメラ
- 金塊(海外に存在)
サービス情報自動販売機
- 就職情報自動販売機
- パソコンソフト自動販売機
- かつて「ソフトベンダーTAKERU」(旧名「武尊」)があった。ダウンロードしたり内蔵光ディスクメディアから読み出したりしたソフトウェアを、ブランクディスクメディアやロムカセットに書き込んで販売した。
- 写真撮影・印刷自動販売機
- 証明写真自動撮影機
- プリクラ(プリント倶楽部)
- デジタルカメラプリント
- その他のサービス情報自動販売機
- 携帯電話機への着メロなどのダウンロード
珍しい自動販売機
- 中国地方・四国地方の一部の地域(有名なところでは今治市の菊間地区・四国中央市の三島紙屋町と寒川町)では生うどんを使ったうどんの自動販売機も存在している。映画が見られるグリコの自動販売機が存在していた。かつては全国に存在していた。
- 農業地域においては野菜・鶏卵などの農産物の無人直売スタンドも存在する。かつては箱などの非機械的な方法で代金を受け取っていたが代金の不払いのみならず売上金の盗難まで頻発するようになったため、自動販売機化されたものが増えている。
- 各都道府県の養鶏場近辺などに、たまごの自動販売機が設置されていることがある。
- いくつかのクレープ専門店が自動販売機を設置して人気を博している。ただし、日持ちがしないため毎朝補填・廃棄する必要があり、親店舗の休店日には販売を行わないこともある。
- 岐阜市に日本で唯一の缶ビールケース売り自動販売機が存在する。
- 2010年に、渋谷駅の構内・PLAZA GINZAの店頭・稲城市のスポーツクラブの3か所にバナナの自動販売機が設置された。これは日本のバナナ市場最大手のドールが試験的に設置したもので、今後、オフィスビルや大学構内に進出する計画もあるという。
- 中華人民共和国南京市には、上海ガニの自動販売機が存在する。市場価格より安い1杯10元~50元で活きたカニを購入できる。中はカニの鮮度を保つため、5℃~10℃に保たれており、補充の際に死んだカニがいないかチェックしている。万一死んだカニが出てきた際には活きたカニを3杯無償で提供する。
- 2011年1月19日に、霞ケ関駅にリンゴの自動販売機が登場した。これは食べやすいサイズにカットされ、皮付きと皮無しを選ぶことができる。
再利用
また最近では、コカ・コーラの飲料自販機の横に同社のロゴが描かれた鉄製の箱が設置されるケースが多くなってきている。これは古い自販機を改造した保冷庫で、飲料をあらかじめ保冷しながら保管しておくために設置されているのである。
販売制限・設置制限
商品によっては自動販売機に制限が設けられている場合がある。日本において該当するものは、タバコ、ビールなどアルコール飲料類の自動販売機の販売時間や設置場所の制限である。タバコやアルコール飲料の販売機は国税庁の認可や免許が必要なほか、成人識別自動販売機以外の自販機では行政指導で23時から翌朝5時まで停止されており、市町村や都道府県レベルの自治体による条例などで設置場所や販売時間に制限が課されていることが多い。
アルコール飲料の自動販売機の場合、成人識別自動販売機以外の自販機については深夜から翌朝の間の販売停止については罰則があるが、タバコの自動販売機の場合は2008年7月以降は全部成人識別自動販売機となったことで、1996年4月1日より行っていた屋外設置のたばこ自動販売機の深夜(午後11時から午前5時まで)稼働自主規制について、2008年8月1日から解除された。なお、販売停止されていた場合は押しボタンがすべて「売切」の点灯状態になっていた。
決済方法
飲料やタバコなど価格が数百円以下の場合、硬貨と1,000円紙幣併用のものがほとんどであり、一般的には1円硬貨と5円硬貨は使用不可能である。交通機関の乗車券・定期券・予約券・プリペイドカード(例・ハイウェイカード)、外食産業における食券、公営競技場の投票券など、1,000円前後およびそれ以上となる高額なものになると、硬貨や1,000円紙幣に加え2,000円、5,000円および10,000円紙幣も利用可能となっていることが多い。また、先払いセルフ式ガソリンスタンドではクレジットカードやキャッシュカードで決済出来るものもある。
2000年代に入り、紙幣・硬貨・クレジットカード・キャッシュカードなどの偽造が増えたため、識別器(紙幣センサー、コインセンサー)の能力の強化が図られている。しかし偽造する側も新たな方法を編み出すため、犯罪の防止につながる成果があがっていない。正当な硬貨を投入しても返却される(誤検出)場合があるが、そのような場合には、硬貨の表面を擦るなどすると正しく検出されることがある。
現金やクレジットカード以外の支払方法として携帯電話やFelicaを利用した決済方法CmodeやEdy又はSuicaなどの電子マネー、iDやPiTaPaなどのポストペイで支払う販売機も登場した。特に、酒や煙草の販売機では年齢認証付きの電子マネー専用とすることが未成年への販売を防止できるという。又、機械を破壊しての現金盗難を防げることから今後は増えるものと見られる。
問題点
- 飲料の自動販売機は消費電力が大きく(ひとつの家庭に匹敵するほどの電力を消費する)省エネルギーの観点からは問題があるため、エネルギー効率の改良も続けられている。また、光害の問題や景観に対する悪影響も指摘されている。特定商品の自動販売機では製品の宣伝を兼ねる関係から色彩や形態に意匠が凝らされる傾向もあるが、この意匠が景観を損なうことがある。このため景観に配慮した自動販売機も見られ、設置の際に目立たないように工夫される場合もある。
- 私有地から公共地である道路にはみ出して設置してある場合があり、通行の障害となることがある。これに対しては、設置者側の対応や機器メーカー側も薄型の販売機を開発し導入している。
- 飲料の自動販売機では周囲に空缶などが散乱してしまう問題がある。空缶回収ボックスの設置と回収管理と共に利用者のモラル向上が大変重要となる。
- 酒・たばこの自動販売機による販売は、たばこは日本・ドイツ以外のほぼ全ての国で規制されており、酒においては世界で日本だけが行っている。また未成年者に対する購買規制が完全には行われていない。タバコ自販機においては、タバコ自販機の設置を禁止する旨の提言がなされた。これらの問題点に対して、日本はWHOなどから名指しで批判されていることから、たばこ自販機は2008年より社団法人日本たばこ協会(TIOJ)らはtaspoによる成人識別自動販売機の導入を開始した。しかし、カードの貸し借り、ないし無断使用の可能性もあり、実験的に導入した種子島では補導数が減少と増加の両面がみられたことから、同カードによる効果に疑問が呈されている状況にある。
- 取り扱い商品に品質上の問題や自動販売機自体のトラブル(代金を入れたのに品物が払い出されず、返金もできないなど)が生じた場合、通常利用者は自動販売機設置店の店員に直接声を掛けたり、機械本体に記載された連絡先に電話などで対応を求める(因みにこの措置は日本では普通となっているが、アメリカの田舎などになると泣き寝入り状態となる事が多い)。
- 週刊誌などの販売開始が限られている物もトラブルになることがある。少年漫画誌など短期間に販売する物など、周囲のコンビニ、本屋などとは販売開始時間が異なる。このため発売当日の明け方には既に発売を開始している場合もあり、近隣の販売店との間でトラブルの原因ともなる。
- たばこ自動販売機については、地方税法上は設置業者から日本たばこ産業とその関連会社が発注を受け、設置業者(店舗か自動販売機かは問わない)の所在する自治体に対し市町村たばこ税を納税することになっている。これについて、大阪府泉佐野市など一部の自治体が、企業誘致条例に基づき、自動販売機設置業者が別の自治体内で大量に販売したたばこを、行政区域内に1台のみ設けられたたばこ自動販売機から発注したように書類操作し、多額の税収を得ていたことが判明している。該当の自治体が、見返りに業者に対し奨励金を支払っていることも判明している。地方税法上、この手の書類操作には罰則規定は無いが、総務省では、「地方税法上の趣旨を逸脱している」としており、実態調査を実施したいとしている。
構造
ものによって種類は多々あり、一概にこれだけが自動販売機とは呼べない。
商品が落下する構造の物
缶・ペットボトル飲料自動販売機
本体部・商品棚の後ろ側には商品のストックが入っている。コインを入れてスイッチを押せば内部の電磁コイル等が通電し、商品を出す。また、下にベルトをつけ、一度落下させた商品を上に持ってくることで取り出しやすくした自動販売機も存在する。しかし、このベルト式は一度下に落ちた物体をまた上に運ぶという重力に逆らった方法から、開発当初から故障が後を絶たない。
以前は販売する商品にあわせ機械側の調整が必要なものだったが、昨今その調整を自動で行う無調整機構というものも開発されている。この方式であれば、仮に間違って商品を投入しても詰まることなく商品が払い出され、故障の低減に一役かっている。
また、小型ペットボトル容器が登場し、ペットボトル自体の素材から投入の際に詰まり易いという弊害もでてきている。しかしながら蓋をして持ち運べるという観点から、その需要は今も急速に伸び続けている。
通常、屋外にある販売機では取り出し口は手前引きとなる。これは雨水などの浸入を防ぐ衛生上の配慮である。
瓶飲料自動販売機
缶飲料同様の自動販売機も存在する。仕組みは缶飲料の自動販売機とほぼ同じだが、ペットボトル同様詰まりやすいという欠点を持っていた。前者と異なるのは、瓶が横方向に滑るように落下するのではなく買い手の手前方向に落下する。
汎用型自動販売機
パン類や菓子類の自動販売機の場合、前面がショーウインドー状になっておりスイッチを押すと選択した商品の載った渦巻状のラックが回転し商品を前方の取出口に落下させるスパイラル式のものがある。
商品を引き出す構造の物
瓶飲料自動販売機
近年ではあまり見かけないが、コインを投入し、買い手自らストックされた瓶を引き出す構造の物もある。 お金を投入することにより、金額に達した商品のロックが外れ、引き出せる構造になっている。缶飲料が普及する以前はこの自動販売機が主に飲料の販売機であった。瓶の栓抜きは販売機前面に固定されており、瓶の王冠を引っかけ、てこの原理で瓶を下げることにより、王冠が外れる仕組みである。また外れた王冠は、自動的に王冠のホルダーに落下する仕組みとなっていた。
現在では、かつての瓶飲料の販売機と似た構造を持った販売機を宿泊施設の冷蔵庫などに見ることができる。この場合、前者とは異なり、後払い方式が採用されている。基本的にはストックされた飲料のストッカーにスイッチが付いており、それを引き出すことにより、スイッチが働く仕組みとなっている。冷蔵庫には通信機能があり、それを宿泊施設のコンピューターなどが検知、チェックアウト時に精算するという後払い方式の自動販売機である。ストッカーの形状に合わせて、瓶飲料のみならず、缶飲料など多種の飲料を販売している。
扉を開けて商品を引き出す構造の物
落下などの衝撃を与える事のできない商品、多種の商品を選択させる場合、大型の商品を扱う場合などに用いられる。
円盤に商品が乗っている物
構造は、数段の円盤上の棚に、商品が並べられ商品と商品との間は仕切り板で仕切られている。1つの円盤上には6~8程度の商品が並べられ、回転ボタンを押すことにより商品が循環する仕組みとなっている。希望の商品が手前に来た時点で回転ボタンを放し、扉を開け、希望の商品を取り出す仕組みである。 大衆食堂や、ドライブイン、学生食堂、社員食堂などでは、おかずやおつまみの販売、鉢植えの花などの販売、に用いられている。
コインロッカー型の物
農作物の無人販売スタンドなどでは前面の扉を透明な樹脂にしたコインロッカー様のキャビネットを設置し中に商品(野菜や果物、鶏卵など)を入れ、「利用料金を支払って施錠する」コインロッカーから逆転の発想をした「代金を支払うことで商品を取り出せる」料金徴収方法を採っている。但しその場合、支払い以前に商品を手にとって鮮度を確認することは出来ない。
自動販売機と犯罪
自動販売機が普及すると、これを標的にした窃盗も現れた。自動販売機窃盗は加害者から被害者の顔が見えないため、心理的な障壁が低い。窃盗は機械に誤認識させる知能的な窃盗と機械を破壊する暴力的な窃盗に分かれる。
1990年代前半には護身用のスタンガンの高周波を悪用し、自動販売機内部の硬貨選別装置を誤動作させ硬貨を盗み出すという手口まで現れた(現在は対策が施されており不可能)。その他、コイン投入口から洗剤を入れて内部回路にダメージを与える等の多彩な攻撃手法が試みられている。
また、韓国の500ウォン硬貨を変造し500円硬貨として不正利用する事件が相次ぎ、500円硬貨は改鋳を余儀なくされた。当時の価値が500円硬貨のおよそ10分の1であった500ウォン硬貨(発行開始日:1982年6月11日)は500円硬貨(発行開始日:1982年4月1日)よりもわずか2ヶ月後に制定されたものであるが、500円硬貨と比べて重さが0.5gほど重いだけであり、素材金属の混合比や外径は同じであった。そのため、貫通しない程度に穴をあけたり表面を削り落とすなどして重量を調整してやると自動販売機が500円と誤認識した。紙幣の場合、犯罪を減らすため紙幣を投入可能なものでは紙幣識別機が搭載されている。
機械の破壊に対して、頑丈な鍵と扉を設置するなど物理的対策が取られることもある。これは完全に破壊されるまでの時間稼ぎに過ぎず、その間に犯罪の発覚を期待するか犯罪遂行を断念させるかでしかなく、決定的な防犯対策とはなっていない。なお、現在では携帯電話・PHS・無線LANを利用して在庫情報の管理や機械の破壊に対しての緊急通報を行う機能を持つものも存在する。このような犯罪行為を防止するため、自動販売機は通常人の目が届く場所に設置される。例外的に日本では屋外での設置が広く普及しており、日本の景観上の特色にもなっている。
現在、一部には電子プリペイドカードあるいは携帯電話機でのみのキャッシュレス決済を行う自動販売機が設置されつつあるが、これらには自動販売機内部にお金を置かないことで窃盗犯に狙われにくくする副次的な効果もある。ただし、キャッシュレス決済手段自体がまだその普及を急いでいる段階であり、現時点では逆に小銭しか持っていない顧客を取りこぼすデメリットを抱えている。
上記の犯罪以外にも販売商品の中身を毒物に入れ変えた瓶飲料を取り出し口の置き去りによる傷害事件も過去に発生している。
多機能化
災害時対応
災害時には炊き出しの一種として自動販売機の中の飲料を無料で提供できる機能(フリーベンド)も導入が始まっている。
これは、地域で災害が発生し自治体などと設置業者の間に結ばれた協定に基づいた状況になった時に、徒歩などで帰宅する者(→帰宅困難者)や断水などにより飲料水を絶たれた地域住民の急場の需要を満たすもので、内部スイッチを手動・遠隔操作・自動で切り替えることで内蔵された飲料を無料で提供することができるというものである。中には電光掲示板を設置したタイプもあり、インターネット回線を介してメッセージの変更が可能となっており、災害時に情報提供を行えるようになっている。商品の提供方法については、通常の販売と違って金銭を投入しなくてもボタンを押すだけで商品が出るというだけに過ぎず、基本的に停電の場合には自動販売機そのものが動作しないため、飲料提供は困難となる。
ただこういった停電により停止した自動販売機内の商品も、メンテナンス業者や店舗側の好意で被災者に提供される可能性もある。南海電気鉄道は2007年9月1日に同社の管理する自動販売機のうち、なんばCITYにフリーベンド機能付きのもの13台を設置したほか、同社が商品として各売店などに一定量在庫している計約1万本の飲料を災害発生時に提供する意向を発表している。
また自家発電設備のある施設以外に設置するためのフリーベンド対応機種として、バッテリーなど内部電源をもち外部電源が切断した場合には電力消費の激しい飲料の冷却ないし保温と表示用照明を停め、飲料提供機能のみ動作させる自動販売機も登場している。
自動体外式除細動器(AED)
自動体外式除細動器を搭載した自動販売機も増えている。
無線LANアクセスポイント
愛知万博などで、自動販売機に公衆無線LANアクセスポイントを搭載し、サービス展開を行っていた。その後、愛知県に本社を置くベンダー「タケショウ」が「Free Mobile」の名称で中部地区を中心に無線ルーター内蔵自動販売機の展開を始め、2012年からアサヒ飲料がタケショウと提携して全国の大都市圏のアサヒの自動販売機に無線ルーターを内蔵して公衆無線LANサービスを始めることにしている。
日本における主な自動販売機メーカー
- 富士電機リテイルシステムズ(旧富士電機冷機、富士電機グループ、業界1位)
- サンデン
- パナソニックフードアプライアンス(パナソニックグループ)
- 芝浦自販機(旧芝浦製作所自販機部門、東芝系芝浦メカトロニクス子会社)
- クボタ
- グローリー(旧グローリー工業、販売子会社(グローリー商事)を吸収合併し現社名に)
- ネッツエスアイ東洋(TNSi)(旧東洋通信機自販機部門、現NECグループ(NECネッツエスアイ子会社))
参考文献
- 鷲巣力『自動販売機の文化史』集英社新書、2003年、ISBN 978-4-08-720187-1
関連項目
こち亀。両津が食べ物販売サービスした事がある。84巻に収録されている