六甲のおいしい水
六甲のおいしい水(ろっこうのおいしいみず)は、1983年から2010年までハウス食品が、2010年から2012年までアサヒ飲料が発売していた、ミネラルウォーターである。
アサヒ飲料の登録商標(日本第3137815号ほか)である。
2012年からは、同じものが「アサヒ おいしい水」のラインナップ「アサヒ おいしい水 六甲」として販売されている。
水
泉源は神戸市灘区篠原南町6-1-25で、六甲山系の花崗岩層をくぐり抜けた水である。
採取地が住宅地の中(周りはマンションやダイエーグルメシティ灘店)と意外な場所にあるため写真週刊誌で記事にされたこともある。この土地は以前、六甲牧場という、かつて存在した小規模な牛乳飲料メーカー[1]の工場跡である。
六甲のおいしい水は、工場跡の井戸を基礎として採水し、トレーラーで大和郡山市の奈良工場まで運ばれてボトリング(瓶入れ)されていた。ミネラルウォーターの作り方としてはやや特殊であった(普通は採水地でボトリングまでを行う)。
2004年に西区井吹台東町に新しく六甲工場を建設し、現在2リットル入りの製品はこの工場で原水を直接採水しボトリングまで一貫して生産するようになっている。なお、500ミリリットル入りの製品は現在でも奈良工場で生産されている。
ミクロフィルターで無菌化し、熱を加えずに無菌ルームでボトル詰めする「フレッシュ無菌パック製法」を採用している。
歴史
ハウス時代
ハウス食品により1983年に発売。日本国内での家庭用ミネラルウォーターのさきがけ的存在である。
当初は法的規制で加熱殺菌が必要だったので、中がアルミ箔でコーティングされた1リットル紙パックで発売された。1990年代に入ると規制緩和で加熱殺菌が不要になったので、現在のようにペットボトルで発売されるようになった。
現在、主流となっている角型で冷蔵庫のポケットに収まる2リットルボトルを最初に発売したのも、この製品であり、その後広くこの形が採用され、現在では2リットルペットボトルの主流となっている。また海外にも輸出されており、高級ミネラルウォーターとして珍重されている。
アサヒ時代
2010年4月8日、アサヒビールグループの飲料メーカーアサヒ飲料が、53億円で同事業及び六甲工場・灘採水場の土地建物設備を取得したことを発表[2]。同年5月末に事業譲受を完了し、同年6月から製造開始。そして、同年7月6日より発売を開始した。これで、アサヒ飲料が発売するミネラルウォーターは「富士山のバナジウム天然水」(取水地は山梨県富士吉田市[3])との2ブランド体制となった。
2011年10月製造分からは側面の蛇腹構造、ボトル肩部分の傾斜角度、底面に溝を入れるなどの工夫を行って十分な強度を確保しつつ、従来品よりも25~28%の軽量化を実現した新型2Lペットボトル「らくエコボトル」を導入[4]した。
おいしい水 六甲
2012年6月5日には製造拠点の複数化による供給能力向上と安定化を目的に全面刷新を行い、商品名を「六甲のおいしい水」から「おいしい水 六甲」に改めたうえで、販売エリアを西日本に限定した(稀に岐阜県や愛知県、三重県、北陸3県のオークワや平和堂にも置かれることもある。)。一方で、東日本(稀に滋賀県のバローにも置かれることもある。)には「おいしい水 富士山」(取水地は静岡県富士宮市[5])が販売される。
同時に復活設定となった小型サイズは従来品比20%増量の600mlとなった[6]。
なお、「おいしい水 富士山」と「富士山のバナジウム天然水」は、取水地・栄養成分が異なる(「おいしい水 富士山」にはバナジウムが含まれておらず、その他の成分(カルシウム、マグネシウムなど)の含有量が異なる)ことから、現在も2ブランド体制で製造・販売されている。
宣伝
1990年代は、中村吉右衛門出演のコマーシャルと、園まりが歌うコマーシャルソングが有名だった。
2005年には阪神タイガースの今岡誠が出演し、翌年からは同じく阪神タイガースから矢野燿大も加わった。
2007年には宝塚歌劇団からの選抜メンバー5人で結成したユニット・AQUA5がコマーシャル出演し、AQUA5メンバーの写真入りの限定ラベル商品が発売された。
パッケージ
ペットボトルの上部と底部に「水」という文字が0.3ミリ浮き上がるレリーフ処理が施されている、また2リットル入り製品の輸送の一部には鉄道コンテナが使われており、ペットボトルとしては初めてエコレールマーク認定を受けた。
前述の通り、2010年7月6日から製造・販売・商標の権利をアサヒ飲料が継承したが、ラベルのデザインはハウス食品時代の物をそのまま使用し、ラベル部分の「House」のロゴ表記が「Since 1983」に変更された。
「Asahi」ロゴはラベル右下の容量表記の上に書かれていたが、2011年5月24日にパッケージデザインをリニューアルし、「Asahi」ロゴの位置をラベル左下に変更した。
現行の「おいしい水」は従来の「六甲のおいしい水」のパッケージデザインを踏襲している。
It’s
ハウス食品は1980年代中期に、この地からとれる水と、果物からとった自然のテンプレート:疑問点果汁をミックスした250mlのボトル入り飲料「It’s」(イッツ)を販売した。CMキャラクターには西城秀樹を起用。
アップル、レモンライム、グレープフルーツ、オレンジライムの4種類が販売された。
当時はニアウォーター的商品は時代を先取りし過ぎたこともあり、珍しがられた結果、定着せずに製造中止に至った。
不当表示
公正取引委員会は2008年6月17日、景品表示法違反(優良誤認)でハウス食品に排除命令を出した。
公取委によると、2リットルボトルの水を製造する六甲工場が神戸市西区にあり、神戸市灘区の500ミリリットルと1.5リットルの採水場から17キロ離れた場所で採水していること。また、「花崗岩内のミネラルを溶かし込み」とラベルで表示していたが、西区の六甲工場は大阪層群で六甲山系の地下水が流れているとは考えにくく、また、六甲山系から西区の工場に至るまでに透水性の悪い粘土層や高塚山断層があり地下水が流れるとは考えにくく、たとえ地下水が流れたとしても長年かけて粘土層を通るためミネラル分が失われるためだと発表している。(ただし、科学的に完全に立証はされていない)
そして、2リットルボトルの水には、花崗岩質に多く含まれるカルシウム分が灘区の採水場より4分の1しか含まれていない。
ハウス食品も、複数の専門家から意見を聞き、花崗岩が分布している六甲山系西側の地下水を汲み上げているという学説やデータを提出したものの、地下水脈の構造について100%証明することができないため、公正取引委員会の理解を得ることができず、花崗岩からミネラルがどのようにどれくらい溶け込んだ事かを立証する事はできないと判断し、(立証できない以上は、)優良誤認であると認めた。景品表示法では合理的な根拠を示す資料を提出しない又は合理的な根拠を示す資料と認められない場合当該表示は不当とみなされる。
注釈
- ↑ 1879年(明治12年)創業だが、2004年に倒産・廃業し、現在は販売提携していた乳製品販売会社が商標を取得している。なお、神戸市立六甲山牧場とは異なる。
- ↑ アサヒ飲料株式会社による、ハウス食品株式会社のミネラルウォーター事業取得に関するお知らせ
- ↑ アサヒ 富士山のバナジウム天然水|アサヒ 富士山のバナジウム天然水|水|商品情報|アサヒ飲料
- ↑ 新型2Lペットボトル「らくエコボトル」『アサヒ 十六茶』『アサヒ 六甲のおいしい水』などで導入 - アサヒ飲料株式会社 ニュースリリース 2011年10月3日(2012年6月11日閲覧)
- ↑ アサヒ おいしい水 富士山|アサヒ おいしい水|水|商品情報|アサヒ飲料
- ↑ 「アサヒ おいしい水 六甲」「アサヒ おいしい水 富士山」新発売 - アサヒ飲料株式会社 ニュースリリース 2012年4月25日(2012年6月11日閲覧)
関連項目
- ミネラルウォーター
- 富士山のバナジウム天然水
- フルハウス:第6シーズン第3話「いざトーキョー・ツアー(Road to Tokyo)」は日本で曲がヒットしたジェシーが来日コンサートを行うエピソードで、楽屋にて「六甲のおいしい水」を飲むシーンがある。