パチスロ
パチスロとは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」によって規制を受ける7号営業店=パチンコ店等に設置されるスロットマシンのことである。正式名称は「回胴式遊技機」。保安電子通信技術協会(保通協)によって行われる型式試験に合格しなければ設置できない。登場当初はオリンピア物産(現在のオリンピアとは別の会社)製の機械がメインだった為、「オリンピアマシン」とも言われる。
パチスロ登場以前は、ラスベガスなどでお馴染みのいわゆる「アップライト型」が主流であったが、大型のスロットマシンは店舗への導入が困難である事から、パチンコの枠にそのまま設置できるスロットマシンが開発された。
スロットマシンがリールの自動停止を待つのに対し、パチスロでは遊技者がストップボタンでリールを停止する。これはパチンコとともに法的に遊技者が最低限の技術介入を求められているためである。パチンコと共に庶民に最も身近な遊技のひとつ。
目次
概要
パチスロはスロットマシンをパチンコ台の空間に入るよう製造されたもの(ただし0号機の時代はその限りではなく、筐体はそのまま外国のスロットマシンと同じものだった)。そのため当初からパチンコを設置している店の一角にパチスロのコーナーが設けられていて、換金方法もパチンコの方式をそのまま流用しているところがほとんどである。遊戯に使用するメダルの借り賃は1枚20円以下と定められており[1]、一般にはメダル50枚(1000円)を単位として貸し出しを行う店が多い。
換金率は、かつてはパチンコの換金率から換算されていたため同じホールでの換金率はパチンコもパチスロもほぼ同じであったが、最近はパチスロ台の機械割が全体的に低下していることから、パチスロに限り等価交換を導入しパチンコと換金率に差を付けているホールも増えている。但し、パチンコでも最近になって大当たり1回で得られる出玉が減少しているため、パチンコも等価交換を導入して換金率に差がなくなる例や、ゲームの起伏がなだらかになり利益が取りにくくなったために換金率を下げ、パチンコとの逆転現象がおきるケースも見られ始めている。
パチンコとの遊技性の違いは、「ある程度の技術介入」要素が明確であり、出玉を左右しやすい点にある。つまり打ち手のレベルやテクニックによって目に見えて差が開きやすい。しかしながらシステムや遊技方法にある程度の理解が無いと遊技する上での楽しみや興奮が少なく、始めるにあたり敷居が高い、と思う者も多い。特にパチンコとの顕著な違いは「あらゆる役が当選しても、遊技者がその絵柄を決められた位置に止めないと払い出しを受けられない」という部分である(ただし本来は、パチンコでも、役が当選しても、開放した入賞口に玉を入れられなければ払い出しを受けられない部分は同じである)。ボーナスに限っては店の従業員に止めてもらうことも出来るが、その他の小役は基本的に遊技者が止める必要がある。
4号機が発売されていた時期はパチンコのホールをパチスロ専用のホールとして改装する店が多くあった。これはパチスロの演出の変化により店内のBGMや放送及び照明がパチンコのものと両立しなくなってきたためである。もちろん当時のパチスロ人気の高騰も原因の一つだった。これはパチンコの出玉に関する規制が一時厳しくなったために、より爆発力の大きいパチスロに客が流れたことに原因があった。しかし5号機の時代に入りパチスロの出玉規制が強化されたため、ここ1~2年ほどは逆にパチスロ専門店がパチンコ併設店またはパチンコ専門店、場合によってはゲームセンター(8号営業)へ転換するケースも多く見られる。
このことからもわかるように、遊技者は大量のコインを短時間で獲得できるような仕様のパチスロ機を求め、設置するホールも客の求める機種を多く設置するため、メーカーもそのような機種を発売する。そのために常にギャンブル性(射幸性)の高さが問題となり、そのたびに当局より規制を受けることになる(パチスロの進化と変遷の項を参照)。
ちなみに全国的にパチスロが普及した後も、三重県では公安委員会がパチスロの導入を認めないという理由でパチスロ台が1台も稼動していない状況が続いていたが、2000年にはパチスロの導入を認める方針に転換し、同年7月より三重県内でもパチスロが一斉に導入された。
2005年、これまでのメダルではなく、パチンコ玉にて遊技するパチスロ機(通称「パロット」)がSANKYOから登場。メダル3枚に相当するパチンコ玉15発が一回の遊技代となるが、上記のようにスロットとパチンコで換金格差がある関係でどうしてもスロットと同じように遊技できるという状況ではなく、メダルでの遊技ができるスロット機が主流となっている(現在ホールがパチスロのシマをもてあましており、わざわざパチンコのシマに設置する必然性が無いという理由もある)。
また、筐体の変化も様々で、床置きタイプの筐体なども少ないながら存在した(箱型以外のパチスロ機はホールには現存しない)。
進化と変遷
前史
1964年、アメリカ統治下の沖縄で「オリンピアマシン」が誕生要出典、現代のパチスロの嚆矢となった。東京オリンピックに因んでオリンピアと名づけられたスロットマシン型のこの遊技機は、ゲーム機メーカーのセガとタイトーが共同会社であるオリンピアを設立、セガがかねてより在日米軍基地や欧州市場向けに製造していたスロットマシンを応用した製品の製造を担当し、販売営業を分け合った。1ゲームに投入できるメダルは1枚、絵柄の組み合わせの有効ラインは1つで、ボーナスゲームはなかった。
0号機
1977年、0号機(1985年に施行された風営法以前に作られた機種の総称)の登場。基準など無かった時代なので、極端にスベリの有るものや、反対にスベリの少ないものがあり、目押しの出来るプレイヤーにとっては攻略の対象になった。リールもギアで動くものだった機種では、窓を押さえることでリールを止めることができたものもあった。
役は、ボーナスゲームと小役ゲームのみで構成され、一度ボーナスゲームが当たると次回のボーナスゲームが高率で当たり、店が設定した打ち止めまで続くようになっていた。また、連チャンの規制も無かったので激荒の波を持った機種もあった。尚『パチスロパルサー』には山佐パターンと呼ばれる独特のリーチ目があって、リーチ目表(大量リーチ目タイプなので代表的なパターンのみ)がホールに張り出されていた。このパターンは現在まで続いていて、パルサーシリーズのウリになっている。
なお、当時は今のように無制限で交換率が5~7枚交換というものではなく、ボーナス1回ごとに交換し交換率も10枚交換などというホールがざらにあった。またリプレイもなかった。コインサンドもまだなく、通貨を50枚単位で包んであるのと同じものをカウンターで1000円で交換していた。今でも高年齢の人が1000円を1本と呼ぶことがあるのはこのときの名残である。また、メダル貸し出し単価や機械仕様が統一されておらず、都道府県ごとに異なるレートが適応されていたり、それに合わせて打ち止め枚数などの仕様が異なっていたりした。都道府県ごとに規制が異なったため、0号機では、同一機種でも隣の県では異なるゲーム内容となっていた。
1号機
1985年、パチスロに新風営法に基づいた全国統一認定基準が定められ、1号機が登場。現在のボーナスシステムと同等のゲーム性を搭載した。その後、不正改造対策により1.5号機が登場。
2号機
1988年に2号機が登場。ボーナスの抽選方法が完全確率方式に統一され、吸い込み方式などは全廃された。コインを50枚まで貯留できるクレジット機能が採用されて操作性が向上したうえに、シングルボーナスや集中役など新しい遊技機能が許可されたことにより、ゲーム性が従来と比較して格段に向上した。その一方で、1ゲーム4秒(3号機以降は4.1秒)の規制が加わり、スピーディなプレイが難しくなった。
3号機
1990年に3号機が登場。2号機のギャンブル性を抑えた仕様であり、人気のあった集中役に対する規制が強化された。ゲーム性が画一化されてしまい、結果的に連チャンを誘発する仕掛けなど違法な裏モノが多く出回った。それへの対処として大規模な基板改修や再封印が行われた結果、パチスロ人気が急落した。
4号機
1992年に4号機が登場。コイン持ちをパチンコに合わせるために、再遊技(リプレイ)搭載が義務づけられた。フラグ告知機能も許可されたが、当初はあまり活用されなかった。他にも、オートリセット機能(3号機まではビッグボーナス終了のたびに店員を呼んでリセットをしてもらう必要があった)の搭載、払い出しに関係のない絵柄(多くの機種における中・右リールのチェリーなど)も4号機から認められている。さらに、ビッグボーナスに「期待値方式」を採用し、獲得枚数が毎回変化するようになったことも特筆される。また、3号機までは1メーカーにつき2機種までしか販売が許可されなかったが、4号機からは何機種でも販売できるようになっている。
4.0号機
4号機の規定の盲点をついた「小役回収打法(DDT打法、KKK打法とも呼ぶ)」「リプレイはずし」など、打ち手の技術介入度が高い機種が続々登場。「目押し全盛時代」と言われる。
1998年にチャレンジタイム(CT)が許可され、「ウルトラマン倶楽部3」をはじめとしたCT機が流行。その一方で、「ジャグラー」(北電子)や沖スロに代表される、リーチ目がわからなくても特定のランプが点灯すればボーナスが確定する完全告知マシンが高齢者や初心者を中心に人気を集める。
4.1号機
完全確率をベースとした規制であるが、規定の拡大解釈により、大幅な変貌を遂げる。後期に大量獲得機の登場やアシストタイム(AT)がブームになり、射幸心を煽る形に発展した。2003年にはいくつかの機種は検定を取り消され、4.5号機の早期投入が行われた。また、初のストック機「ブラックジャック777」が登場。また、4.1号機の後期ごろより、リール以外の手段を用いて演出を表示できる筐体が登場する。当初は簡易なドット絵やフラッシュが主流であったが、その後4thリールや液晶搭載機(ゲゲゲの鬼太郎が初搭載)の登場などで筐体そのものも大きな進化を遂げた。
4.5号機
ギャンブル性が高すぎたAT搭載の4.1号機を抑えた規制。サイレントストック型のストック機がメインに。
4.7号機
4.5号機の後継機として導入される。
以上の機種は2007年9月末をもって検定期間満了によりホールから撤去された。 ただし、これらの4号機をはじめとする「みなし機」は換金性はないものの、(正規のパチスロ機への悪用防止のため)コインセレクターなどに若干の改造を加えられてゲームセンターなどで新たにメダルゲーム機として転用され、遊技可能である(いわゆる七号転用機)。
5号機
2005年、5号機の登場。射幸心を煽りすぎた4号機と比較して出玉性能が大幅に制限される反面、技術介入面での差はさほどなくなり、打ち手に平等になったと思われた。しかし、一部メーカーによりリプパンはずしという新しい技術介入要素が考案され、それによって実質的な機械割を上げることができる機種が増えている。ただし、2007年9月申請分よりART機能を対象とした新たな書類添付が義務づけられ、出玉性能を飛躍的に上げることを目的としたリプパンはずし仕様は実質的に難しくなった(ゲーム性の一環としては採用可能)。
ただ、5号機そのものはまだ確立されている状態ではなく、メーカーの試行錯誤が続いている。
- 代表機種:新世紀エヴァンゲリオン、南国娘、サンダーVスペシャル、スパイダーマン2、アイムジャグラーEX、リングにかけろ1、青ドン、新世紀エヴァンゲリオン 〜まごころを、君に〜、北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章
様々な規制の余波
2002年以降、出玉上の規制が行われ、スペックの変化は様々であるが、出玉設計以外の分野においても規制の余波が届いている。
ホール営業
原則的に「来店客に対し、射幸心を煽る店内行為」が自粛されている。多くの店舗はパチンコとの兼業であり、8割が朝鮮系住民による経営とされ、北朝鮮への送金も多い。
- 過剰なアナウンスの自粛
- プレイヤーの射幸心・期待度を極端に煽るおなじみのアナウンスが自粛された。通常空き台の案内やイベント案内程度が主流。
- 出玉公開・写真
- 出玉ランキングにおいて、以前のような掲示方法が変わりつつある。大量獲得者の写真は、獲得者が強盗犯罪等に巻き込まれる可能性から、最近では無くなりつつある。
- イベント
- 設定を断言するなどの行為が自粛される。その代わりに「(設定を)上げ・キープ」、「爆裂札」、「ゴロゴロ(5656)祭」、「エビアン(海物語シリーズの5・6絵柄であるエビとアンコウ)祭」、「ドラゴンボールの星の数で告知」などの告知方法が多く、建前上は告知を行っていないという姿勢をとっている。
- 営業時間の厳守
- 開店・閉店時間が厳格に守られるようになった。閉店時間に客が完全に退店していなければならなくなり、その結果、遊技を終了する時間が閉店時よりも早まっている(10~15分前)ので、その時間を計算して遊技を終了しないと、ボーナスやRTを取りきれずに終わらなければならないこともあるので注意が必要である。
海外でのパチスロ
パチスロは日本国内だけのものだと思われがちだが、実は北朝鮮・平壌市にあるボウリング場「平壌ゴールドレーン」の中にもあり、日本と同様、景品と交換できる。
韓国ではソウル市内を中心に多数の店舗が存在する。台は日本国内で流通してる台がそのまま稼動している。説明書きなどはハングルに直されている場合もある。機種は古いものでは『大花火』、新しいものでは『ヒデキに夢中!!』まで確認されている(2006年2月末日現在)。店の規模は40-50台程度のところが多く、ほとんどの店は韓国の法律に照らすと不法営業である。貸しコインは1万ウォン(約1200円)で90枚貸してくれ、交換するときは100枚で1万ウォン分の商品券をくれる。そのまま使えば1万ウォンは1万ウォンだが、現金に(それなりに堂々と)変えてくれるお兄さんを通すとそこから更に10%引かれるので、交換率で言うと6.3枚交換程度になる。
またモンゴルでも、ウランバートル市内で数店舗が営業を行っている。台湾でも台中市などにパチスロ店が存在する。
パチスロに関する法令や許認可等の関係から、日本国内では2007年秋以降4号機以前のパチスロ台を使用したホール営業が事実上困難になるのに対し、海外ではそのような問題が発生しないことから、業界関係者の間では「今後海外のカジノ等で、日本人客の集客アップを狙い旧式のパチスロ機による営業を行うところが増えるのではないか」との声も挙がっている。但し、パチスロのシステム上、同一のゲーム性でラスベガスのカジノに設置することは不可能(例えば、パチスロに備わっている設定機能はラスベガスに設置されるスロットマシンに存在してはならない機能である)など、ルール上パチスロが設置できない国や地域も多い。
なお日本国外でパチスロを打つ場合、日本における保安電子通信技術協会(保通協)や公安委員会による検定制度に相当する制度が存在しない、あるいは制度が存在しても検定基準が異なるといった理由から、台に改造が加えられゲーム性が当該機種本来のものと異なる(いわゆる「裏モノ」化している)可能性がある点には注意が必要である。
日本のパチスロメーカーの一覧
すべて五十音順。
現存するメーカー
同一グループに属するメーカーは主メーカーのところにまとめて掲載している。
- アイジーティージャパン
- アクト技研
- アスワン東京
- アビリット
- アリストクラートテクノロジーズ
- アルゼ(エレコ・ミズホ・メーシー)
- イレブン
- エール
- SNKプレイモア
- エマ
- オーイズミ
- 岡崎産業
- 北電子
- KPE
- サミー(銀座・ロデオ)
- SANKYO(ビスティ)
- 三洋物産
- JSI(日本回胴式遊技機工業)
- ジェイピーエス
- 清龍ゲームジャパン
- 大一商会
- 大都技研
- タイヨー
- タイヨーエレック
- トリビー
- 西陣
- ネット
- パイオニア
- バルテック
- バンガード
- 藤興
- 藤商事
- 平和(オリンピア)
- ベルコ
- 弁慶
- ヤーマ
- 山佐(ニイガタ電子精機)
- ユニオンマシーナリ
- ラスター
- リックコーポレーション
かつて存在したメーカー
社名変更したメーカー
- エイペックス→トリビー
- エーアイ→大都技研
- エレクトロコインジャパン(ECJ)→エレコ
- 興進産業→テクノコーシン→ラスター
- サミー工業→サミー
- 尚球社→岡崎産業
- 大東音響→藤興
- ダイドー→ビスティ
- 日活興業→ネット
- バークレスト→ロデオ
- 瑞穂製作所→ミズホ
- メーシー販売→メーシー
- ユニバーサル販売→アルゼ
営業方法
等価~6枚交換は無制限営業、7枚交換以下は1回交換が多い。
5号機時代になって、従来のメダル1枚20円から5円ないし10円に単価を下げた営業もみられるようになった。特徴としては中間設定付近をメインとし、客を長時間座らせることを目的としている。