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2020年1月11日 (土) 00:10時点における最新版
荒川線(あらかわせん)は、東京都荒川区南千住一丁目の三ノ輪橋停留場から同新宿区西早稲田一丁目の早稲田停留場までを結ぶ、東京都交通局を事業主体とする東京都電車(都電)の軌道路線である。
目次
概要[編集]
かつて東京都23区内を中心に多距離・多路線を展開していた都電路線の大半が廃止された後も、唯一現存する路線である。東京都23区内で営業を行う軌道線は、同じ都営の日暮里・舎人ライナー、ゆりかもめの軌道扱いの部分をのぞけば、当線と東急世田谷線を残すのみとなっている。
当線の大部分は専用軌道を持ち、各道との平面交叉点をのぞけば、車道と区分されていない併用区間は明治通り(国道122号)上の王子駅前 - 飛鳥山間のみである。かつては小台 - 宮ノ前間にも併用区間が存在したが、道路拡幅により軌道と車道が分離され消滅した。この区間を含む小台 - 熊野前間においては道路中央部分に準専用軌道を敷設するセンターリザベーション方式が採用されている。
路線データ[編集]
来歴[編集]
当線は、王子電気軌道によって敷設された路線を東京市(現東京都)が買収したものを端緒とし、都電27系統(三ノ輪橋 - 赤羽)ならびに32系統(荒川車庫前 - 早稲田)と称して2路線別箇に運行していた。この経緯から、王子電気軌道以来の古い利用客の中には、いまだに「王子電車」(略称:「王電」)と呼称する者もいる。
1960年代の交通渋滞解消政策ならびに赤字公共事業整理政策の推進にともなう都電廃止の流れの中、都電27系統ならびに32系統については、例外的に路線の大半が専用軌道であり、また当路線とほぼ並行している明治通りは渋滞が恒常的だったため、バス路線による運行代替では定時運行が困難であると判断されたため、沿線住民を中心とする利用客には当線の存続要望が強く存在していた。
当線に対する交通ニーズが高く黒字運営が見込めること、大半が専用軌道であるため交通渋滞を引き起こすことがまれで、路線の管理も比較的容易であることが勘案されて、1972年11月12日までに都電路線のほとんどが廃止された後も、当路線については北本通り上にあった27系統の一部(王子駅前 - 赤羽間)が廃止されたのみで、ほとんどが存続することとなった。1974年、それまで別系統として運行されていた27系統と32系統を統合し、「荒川線」と改称した。
1974年の「荒川線」改編直後の乗降客は1日平均約9万3千人であったが、その後の沿線の事業所や教育機関の郊外移転にともなう交通総量の低下、当線沿線の交通ニーズの選択肢として対応する東京メトロ千代田線・有楽町線・南北線・副都心線、日暮里・舎人ライナー開業による乗客分散により、乗客数は漸減し1日平均5万5,000 - 5万8,000人で推移、2006年度には5万3,000人台と1974年改編当初の約6割に、同じく2011年末の局公式統計では49,130人と5割2分にまで低下している。ただ、当線沿線利用客が東日本旅客鉄道(JR東日本)各線に乗り換えることが多く、王子駅前と大塚駅前の両停留場においては時間を問わず乗降客が多数いる。
また、廃止区間となった旧27系統王子駅前 - 赤羽間については、現在都営バスの王57系統として運行している区間で、バスで代替輸送することになった。 旧27系統終点の「赤羽」停留場は、JR東日本の赤羽駅付近に所在していたわけではなく、現在の赤羽岩淵駅近くの都道311号(環八通り)と国道122号(北本通り)が交叉する赤羽交叉点付近の北本通り上に所在していた。また、東京メトロ南北線が同じルートをなぞっている。
運行形態[編集]
全線一系統であり系統番号は付いていない。全線運転列車と区間運転列車が存在する。区間運転は王子駅前、荒川車庫前、町屋駅前、大塚駅前の各停留場始発・終着がある。最も短い区間運転は王子駅前停留場 - 荒川車庫前停留場間(所要4分)で、夜間に存在する。
5時27分から23時30分まで[1]の間、朝夕は1分未満 - 数分、日中でも1 - 5分間隔の頻発運転で、早朝・深夜などの閑散時間帯でも最大で十数分以内に次の列車が運行される。各停留場ホームに掲出されている時刻表には、日中時間帯の表示欄に「5 - 6分間隔」と表記されている。全線の所要時間は日中標準53分。
1両編成(単行)で、運転士のみが乗務するワンマン運転が採用されている。車掌は配置されておらず、運転士は運転のほか、車内放送の操作、運賃収受を一人で行う。また、多客時の王子駅前を除くと停留場に「駅員」も配置されておらず、路面電車や路線バスの標準的な形態となっている。
主要停留場においては、今度到着する列車の行き先と現在到達位置表示を行う発車標が併設されている。また、繁忙時間帯を中心に複数の列車が続行運転を行っているように見える場合もあるが、これは作為的に行っているのではなく、繁忙時間帯においては各停留場において多数の乗客による乗降時間が長くなり、また併用軌道における交通混雑や公道との平面交差点における停止信号による交通混雑によって、実際の運行が標準運行時間に対して遅延傾向となり、各編成の運行間隔が「詰まってしまっている」現象である。
以前は、最終列車の一つ前の列車を緑色背景の行き先表示で、最終列車を赤色背景で表示することによる告知を行っていた。その後、新型車両導入が進むにともなって、最終列車の一つ前の列車の表示は廃止されたものの、最終列車については、7000形の一部を用いる場合においては前面LED上の表示文字を赤色灯火することで終電として告知しているほか、他の7000形、8800形、9000形を用いる場合においては「終電」表示を併記する方法によって告知している。
臨時列車は軌道法準拠を活かして柔軟に行われており、土曜・休日の日中、特に晴天時に利用者が増加すると予想される場合には、大した予告も無く区間列車を臨時増発することがある。貸切運行も行っている。
伝鐘[編集]
現在ではワンマン運転が採用されているため、過去に「チンチン電車」の愛称のもととして愛顧されて来た車掌による発車時安全確認の伝鐘については、ドアが発車前に乗降用双方とも閉扉した際に自動打鐘される「2連打ベル制御器」として形態をかえて継承されており、昔ながらの伝鐘音を聞くことができる。路面電車においてはイベント用車両をのぞけば唯一現存するものである。雑誌『鉄道ピクトリアル』614号(特集:東京都電)の記述によれば、ワンマン化により、それまで車掌が「発車します」と放送していたものがなくなることから、乗客への発車合図として整備されたものであるとされる。
乗降制度[編集]
都営バス(23区内)と同様の方式である。「前乗り・後降り」方式をとる。降車ボタンで次停留場での降車を知らせる。始発・終着停留場においては、乗車扉も開放することがあり乗車扉からも降車できる。
普通旅客運賃は全区間一律で、1乗車につき大人ICカード165円・現金170円、小児ICカード82円・現金90円に設定され(2014年4月1日改定)[2][3]、出札や改札はなく、乗車時に支払う。運転席横には運賃箱・ICカード読取機が設置されており、現金(十円硬貨 - 千円紙幣)・PASMO等のICカード・紙製回数券に対応する。王子駅前停留場では一部時間帯に限りホーム上に運賃箱・ICカード読取機が設置されており乗車前支払いが可能となっている。運賃は一列車完結で、降車すると「下車」(旅行終了)とみなされる。乗換(乗継)制度はなく、再び乗車する際には別途運賃が必要である。
回数券[編集]
金券分割式の回数券を取扱っている(2014年4月1日現在)。発券単位は1,000円のみで、前払い割引として120円分が付加された実効1,120円券面として、「170円券×6枚+100円券×1枚」と「90円券×12枚+40円券×1枚」の2種類が発売されている。発売場所は車内(運転士)および営業所、都電定期券発売所。2008年(平成20年)11月1日から、券面に写真や広告などを印刷できる「都電フリーデザイン回数券」を発売している。
カード・一日乗車券[編集]
PASMO等のICカード乗車券の利用が可能である(2013年3月23日現在)。
8800形と9000形をのぞくすべての車両には前面右側に「PASMO」、側面乗車口横に「バス得 PASMO Suica」の表示が掲出されている。なお、表示の有無に関わらずPASMO・Suica等10種のICカード乗車券が利用できる。
- ICカード
- 2007年(平成19年)3月18日に導入されたICカード「PASMO」「Suica」が使用可能である(ただしバス扱いのためSuicaの一部旧カードは利用できない)。また2013年(平成25年)3月23日より実施されたICカード10種の全国相互利用により「Kitaca」「TOICA」「ICOCA」「SUGOCA」「manaca」「PiTaPa」「nimoca」「はやかけん」にも対応している。
- ICカードには、バス利用特典サービス(PASMO・Suicaのみ)や車内で乗務員に申し出てチャージ(入金)できるサービスなど、都営バスと同様のサービスが適用されるが、現在のところ当線車内でのPASMOカードの発売は行っていない。このほか、磁気式の「都営バス専用乗継割引カード」も使用できるが、当線では乗継割引の適用はなく、ICカードによる乗継も同様に割引の対象外である。
- 共通一日乗車券
- 1日に限り何度でも乗降できる一日乗車券が発売されている。
- 都電一日乗車券
- 都電専用のものは大人400円・小児200円で、車内では発売当日通用の磁気券とIC券(PASMOまたはSuicaのみ対応・カード内に情報を入力して発行)の2種類を発売している。乗車の都度、磁気券は提示し、IC券は料金箱のIC読み取り部にタッチし、何度でも乗降できる。支払いは磁気券が現金、IC券はチャージ残額による。車内では当日売りのみ発売しており、以前は地紋入りの感熱紙に運賃箱のプリンターで日付を印字する紙券(非磁気券)であったが、現在は荒川電車営業所の発行機で前もって発行した磁気券となっている。
- 都営まるごときっぷ
- 都電のほかに都営地下鉄、都営バス、日暮里・舎人ライナーに乗車できる一日乗車券「都営まるごときっぷ」が、大人700円・小児350円で発売されている。車内では当日売りのみ発売しており、以前は紙券(非磁気券)であったが、現在は荒川電車営業所の発行機で前もって発行した磁気券となっており、地下鉄や日暮里・舎人ライナーでは自動改札機を利用できるようになった。
- なお、2008年3月29日までは「都電・都バス・都営地下鉄一日乗車券」として発売されていたが、同日以前に発売された前売り券でも日暮里・舎人ライナーの利用が可能となっている。
- 東京フリーきっぷ
- 都営交通(上野懸垂線のぞく)のほかにJR線の東京都区内区間・東京メトロ線全線に有効な「東京フリーきっぷ」が、荒川電車営業所や西巣鴨駅をはじめとする都営地下鉄各駅(押上・白金高輪 - 目黒間の各駅のぞく)、都電・都バス・都営地下鉄定期券うりば(一部のぞく)、王子駅・大塚駅をはじめとするJR線の東京都区内各駅、東京メトロの定期券うりば(西船橋駅のぞく)で発売されている。都電車内での発売はない。
- バス共通カード
- 1993年11月1日に発売された都電・都バス専用のTカードが拡大運用され、1994年(平成6年)10月1日に導入されたバス共通カードが使用できるようになった。バス共通カードは、特定の発券所にとどまらず、乗車の際に車内でも購入できた。2010年3月末で発売が終了し、同年7月末には同カード(都電・都バス専用Tカードを含む)の使用が停止された。
貸切[編集]
貸切運行の要件は緩やかで、車両型式を指定しての乗車(車番指定は場合によっては不可)、放送番組収録・映画撮影、車内コンサートや車内演劇など、幅広い要求に応えている。ただし車内での飲食、車載設備からの電源利用、通常の放送装置の利用はできない[4]。
停留場一覧[編集]
停留場名 | 駅間キロ | 累計キロ | 接続路線 | 停留場の周辺 | 所在地 |
---|---|---|---|---|---|
三ノ輪橋 | - | 0.0 | 東京地下鉄: 日比谷線(三ノ輪駅:H-19) | 浄閑寺 | 荒川区 |
荒川一中前 | 0.3 | 0.3 | |||
荒川区役所前 | 0.3 | 0.6 | サンパール荒川 | ||
荒川二丁目 | 0.4 | 1.0 | 荒川自然公園 | ||
荒川七丁目 | 0.4 | 1.4 | イーストヒル町屋 | ||
町屋駅前 | 0.4 | 1.8 | 京成電鉄:本線(町屋駅) 東京地下鉄: 千代田線(町屋駅:C-17) |
||
町屋二丁目 | 0.4 | 2.2 | 満光寺 | ||
東尾久三丁目 | 0.3 | 2.5 | |||
熊野前 | 0.6 | 3.1 | 東京都交通局:日暮里・舎人ライナー(04) | 首都大学東京荒川キャンパス | |
宮ノ前 | 0.4 | 3.5 | 尾久八幡神社 | ||
小台 | 0.3 | 3.8 | |||
荒川遊園地前 | 0.3 | 4.1 | あらかわ遊園 | ||
荒川車庫前 | 0.5 | 4.6 | |||
梶原 | 0.4 | 5.0 | 北区 | ||
栄町 | 0.5 | 5.5 | 東京書籍印刷 | ||
王子駅前 | 0.5 | 6.0 | 東日本旅客鉄道:京浜東北線(王子駅) 東京地下鉄: 南北線(王子駅:N-16) |
||
飛鳥山 | 0.5 | 6.5 | 飛鳥山公園 | ||
滝野川一丁目 | 0.4 | 6.9 | 国立印刷局滝野川工場 | ||
西ヶ原四丁目 | 0.4 | 7.3 | |||
新庚申塚 | 0.4 | 7.7 | 都営地下鉄: 三田線(西巣鴨駅:I-16) | 善養寺 | 豊島区 |
庚申塚 | 0.2 | 7.9 | 巣鴨庚申塚 | ||
巣鴨新田 | 0.5 | 8.4 | |||
大塚駅前 | 0.5 | 8.9 | 東日本旅客鉄道:山手線(大塚駅) | ||
向原 | 0.5 | 9.4 | 大塚台公園 | ||
東池袋四丁目 | 0.6 | 10.0 | 東京地下鉄: 有楽町線(東池袋駅:Y-10) | サンシャインシティ | |
都電雑司ヶ谷 | 0.2 | 10.2 | 雑司ヶ谷霊園 | ||
鬼子母神前 | 0.5 | 10.7 | 東京地下鉄: 副都心線(雑司が谷駅:F-10) | 並木ハウス | |
学習院下 | 0.5 | 11.2 | 金乗院目白不動尊 | ||
面影橋 | 0.5 | 11.7 | 東京染ものがたり博物館 | 新宿区 | |
早稲田 | 0.5 | 12.2 | 演劇博物館 |
沿線風景[編集]
東京メトロ日比谷線三ノ輪駅から日光街道(国道4号)を北へ、明治通りとの大関横丁交叉点、JR常磐線を越えて3分程度歩くと、左手に旧王子電気軌道本社ビル跡である梅沢写真館ビルに到達する。同ビル1階の通路をくぐると商店街の中に、当線の起点となる「三ノ輪橋停留場(荒川線)」がある。当初は現梅沢写真館ビル付近の日光街道上に同道路線用のもう一つの「三ノ輪橋停留場(日光街道)」が設置されていたが、路線廃止にともなって同停留場も撤去され、その後は現行の「三ノ輪橋停留場(荒川線)」のみが存続し、2007年5月にホーロー看板などを掲げたレトロ調な駅舎に改装されている。
始点である「三ノ輪橋」停留場を発車すると軌道は西行し、荒川区立第一中学校・瑞光小学校・第六瑞光小学校が密在する次停留場の「荒川一中前」に達する。
「荒川一中前」を発車すると、ゆるやかな左カーブを描いて明治通り方面に寄り「荒川区役所前」に到着する。
「荒川区役所前」を発車すると、やがてゆるやかに右カーブを切って進行し、右手に東京都下水道局・三河島水再生センター(下水処理場)を臨んで北行する。この大施設は、日本初の大規模下水処理場であり、処理場上に造られた人工地盤に荒川自然公園が設置されており、この西側に沿って「荒川二丁目」・「荒川七丁目」の2停留場を過ぎると、線路はゆるやかに左カーブを描いて町屋方面へ向かい、京成本線ならびに東京メトロ千代田線が交差する「町屋駅前」停留場に到着する。1990年代に行われた同駅圏の再開発以前には、ホームと一体化した木造の大衆食堂やパチンコ店、売店、写真店などがあったが、再開発に伴い大きく様変わりした。
「町屋駅前」を発車すると、そのまま西北方面に「町屋二丁目」・「東尾久三丁目」と、ゆるやかな右カーブを繰り返しながら川の手沿いの下町の住宅や町工場が密集する地区を運行し、日暮里・舎人ライナーならびにそれに併走する幹線道路である都道58号線尾久橋通り(放射11号線)と立体交叉する「熊野前」停留場に左カーブを描きながら到着する。当停留場は荒川年金事務所の至近駅で、日暮里・舎人ライナー熊野前駅との乗換駅となっている
「熊野前」を発車するとさらに西行し、北側に尾久消防署を見て、尾久八幡宮の門前にある「宮の前」停留場に停車する。「宮の前」を発車すると、すぐ右手に城北信用金庫尾久中央支店ビル(旧日興信用金庫尾久支店)および尾久警察署を見て進み、都道458号線との平面交叉点にある「小台」停留場に到着する。「熊野前」から「小台」までは路面活用して走行する区間であるが、現行においては軌道敷の両脇を縁石で固めたセンターリザーベーション方式を採用しており、軌道と自動車用道路の完全分離がなされている。
「小台」を発車すると、路線北側に所在する気の置けない観光スポットあらかわ遊園の南口入口にあたる「荒川遊園地前」を経て、当線の車両管理の中枢である荒川電車営業所至近の停留場である「荒川車庫前」に至る。「荒川車庫前」を発車すると、車両は同車庫への引込線へのスイッチを越えて西行直進し、再度明治通りとの平面交叉点「梶原」停留場に至り、さらに西行して大手出版・印刷会社である東京書籍の至近駅である「栄町」停留所に達する。
「栄町」を発車するとJR線の軌道に合流しゆるやかに右へカーブをとり、JR京浜東北線・地下鉄南北線との乗換駅である「王子駅前」に到着する。当駅においては時間帯の別を問わず多数の乗降客が見られ、かなりの乗客が入れ替わる。直前に運行した各駅における乗降客が少なく当停留場に標準運行時間よりも早着した場合には、当停留場において乗務員が標準発車時刻までの時間調整を行うケースが見られる。
「王子駅前」を発車して直後に明治通りと交差するとすぐに同道との併用軌道に入り、左折してJRの高架線の下部をくぐり、明治通り沿いに左に回り込むように南行、左手に都内有数の桜の名所である飛鳥山公園を臨みながら66パーミル(1000分の66)の急勾配を約200m走行して明治通りとの併用軌道を離れ、右にカーブを切って専用軌道に進入し「飛鳥山」停留場に到着する。同停留場は、毎春の花見シーズンは特に混雑が激しい。
この先は、明治通りの東側に平行して南下し、桜ヶ丘高校・滝野川第三小学校至近駅の「滝野川一丁目」、老人ホーム飛鳥晴山苑、武蔵野高校・中学校入口となる「西ヶ原四丁目」を走行する。かつて、東京外国語大学が2000年に府中市に移転するまでは「西ヶ原四丁目」が同学関係者に至近駅として利用されていた。
「西ヶ原四丁目」を発車するとさらに南行し、白山通りとの平面交叉点に所在し、大正大学、淑徳巣鴨高等学校、豊島区立巣鴨北中学校各校の至近駅である「新庚申塚」停留場に到着する。当停留場は都営地下鉄三田線西巣鴨駅との乗換駅とされている。 早着した場合には、当停留場において乗務員が標準発車時間までの時間調整を行うケースが見られる。
「新庚申塚」を発車すると、軌道距離わずか100m余、実走運行時間1分足らずで「庚申塚」停留場に到着する。同駅は、萬頂山高岩寺(通称:とげぬき地蔵)に至る参道兼門前町であり「おばあちゃんの原宿」との異名を取る、通称「地蔵通り」の北口入口に位置しており、地蔵通り北口には庚申信仰の拠りどころの一つである猿田彦大神を祭る神社が所在するため、「庚申塚」が停留場名に採用された。地蔵通りの白山通り側の南口入口にある三田線巣鴨駅とともに、特に高岩寺縁日である「4」のつく日には、同寺参詣者ないし地蔵通り商店街訪問者による乗降が非常に多く混雑する。
「庚申塚」を発車すると、ゆるやかな右カーブを描いて南下したあと左急カーブを切って、都立文京高校、空蝉坂下、よしや付近に所在する「巣鴨新田」停留場に到着する。「巣鴨新田」を発車すると、下り勾配からJR大塚駅北口広場に進入し、JR線高架の真下に設置された「大塚駅前」停留場に到着する。同駅での乗降客数は「王子駅前」と並んで非常に多く、早着した場合には、当停留場において乗務員が標準発車時刻までの時間調整を行うケースが見られる。
「大塚駅前」を発車すると、同駅南口ロータリーに進入し向かい急右折・急左折を行って、再度専用軌道に入り南方上り坂を進み、右手先にサンシャインビルや造幣局東京支局への東池袋入口交叉点方向を臨んで、春日通りとの平面交叉点に所在する「向原」停留場に到着する。「大塚駅前」から「向原」に至る軌道の勾配は非常に急であるため、早朝・夕刻薄暮時間帯や夜間においては、視認性確保を目的として乗務員がしばしば起立して運転を行うほか、適宜一時停止による安全確認を行う。当停留場は、次停留場の「東池袋四丁目」とともに、サンシャインシティへの最寄駅となっている。
「向原」を発車すると、軌道はゆるやかに右カーブし、西南に方向転換して東京メトロ有楽町線・首都高速5号池袋線と交差する「東池袋四丁目」停留場に到着する。「向原」から「東池袋四丁目」までの区間は、サンシャインビルの東側を通過する区間でもあり、同ビルと都電の組合せ風景が、写真やテレビ番組撮影の定番としてしばしば取り上げられる。「東池袋四丁目」は、有楽町線東池袋駅との乗換駅となっている。
「東池袋四丁目」を発車すると、「都電雑司ヶ谷」に到着、さらに左手の雑司が谷霊園を巻き込むようにゆるやかに左カーブを描き、南方に進路をとって「鬼子母神前」停留場に到着する。「鬼子母神前」は東京メトロ副都心線雑司が谷駅との乗換駅でもある。なお、「都電雑司ヶ谷」・「鬼子母神前」間付近は旧来、武蔵野の面影を残す閑静な住宅地であったが、雑司ヶ谷霊園西脇の南池袋、雑司が谷、鬼子母神、学習院下地域にかけて建設された副都心線の工事に際して、近隣の民家が立ち退くなど景観が大きく変化している。
「鬼子母神前」を発車し、わずかな距離で再び明治通りに合流・併走し、学習院大学への乗降駅である「学習院下」停留場に到着する。
「学習院下」を発車すると、神田川に向かってさらに降坂し、神田川にかかる高戸橋の直南、明治通りと新目白通りとの交叉点において新目白通り中央部分のセンターリザーベーション軌道に移って東方へ左折し、オリジン電気本社がある神田川面影橋至近の「面影橋」停留場に至る。
「面影橋」を発車し、その先500mほど進行すると終着「早稲田」停留場に到着する。東京メトロ東西線の早稲田駅は直線距離で南方に約600m程度、実歩行距離で700mほど離れている。当停留場近隣には早稲田大学、穴八幡神社などがあるほか、当線の軌道終点約240m先右手には都営バス早稲田営業所が所在し、新宿・上野方面への都営バス路線の発着拠点となっており、都電の定期券発売も行っている。この都営バス早稲田営業所は、かつての都電早稲田車庫跡地が改装されたものであり、都電全盛期には現在の荒川線「早稲田」停留場との間にも軌道が直結されていた。
使用車両[編集]
現行車両[編集]
2011年現在、運行されている車両のうち7000形が吊り掛け駆動方式である。東京都内を走る電車では唯一その音を聞くことができる。電番(後述)は2011年現在。
- 7000形
- 電番:1 - 11, 13 - 25 04と15と16は欠番。
- 荒川線成立以前より使用されている。ただし後年更新され、現在見られる形になっている。
- 8500形
- 電番:40 - 43(8501 - 8504号), 12(8505号)
- 7000形・7500形の老朽化に伴い1990年(平成2年)より増備された形式である。当初は2形式全車を本形式で置き換える構想もあったが、財政面での関係や余剰車を出さないように5両で打ち切られている。
- 9000形
- 電番:44(9001号), 48(9002号)
- 昭和初期の東京市電をイメージしたレトロ車両として、また2001年(平成13年)に運転を終了した6000形に代わる新イベント車両として、9001号の1両を新造し、2007年5月27日に運行を開始した。2008年度にも9002号が落成している。
- 8800形
- 電番:49 - 53(8801 - 8805号), 86 - 90(8806号 - 8810号)10月からの2か月間は8806は38、8807は37だった。
- 9000形とは別の新型車両として、8801と8802の2両が2009年(平成21年)4月26日に運用を開始した。導入に先立って2008年1月に車両のデザインが3案提示され、一般公募によるデザイン投票(投票期間:2008年1月16日 - 25日)が行われた結果、最多得票を獲得した丸みのあるデザインが採用された。2010年(平成22年)3月からは8803-8805が営業運転を開始、8806と8807は10月22日から、8808-8810は12月25日から営業入りして、予定の10両が揃った。
財政難の東京都交通局の収益源を少しでも確保するためか、運行されている車両のほとんどは車体外部に全面広告が施された、いわゆるラッピング車両で、広告のないオリジナルの車両は少ない。
電番とは入口扉(進行方向左側の前ドア)の傍らに車両番号とは別に2桁の番号が記載されているが、これは列車無線や運行管理システムのIDである(欠番あり)。荒川車庫営業所の中には、車両の位置、電番、行き先がわかる電光掲示板がある。
過去に運行されていた車両[編集]
- 6000形
- 昭和30年代の都電全盛期の主力形式であり、荒川線では1978年(昭和53年)にワンマン化されるまで13両が使用され、うち5両がワンマン化記念花電車乙6000形に改造された後に廃車となり、唯一6152号車のみが応急車(事業用)として残された。この車両は1987年(昭和62年)にイベント車両として復活し、後に黄色に赤帯から深緑(→緑)とクリームのツートン塗装に変更され、月1回の休日のイベント運転「一球さん号」(前照灯が1個で、中に裸電球が入っているため)や貸切列車を中心に運行されていたが、2000年の京福電気鉄道衝突事故の後の点検でブレーキが1系統しかないことが問題となり、同年に休車、2001年に廃車され、2003年(平成15年)以降はあらかわ遊園にて静態保存されている。その後、イベント車両は2007年に登場した9000形までなかった。
- 7500形
- 電番:26 - 39 9000形や8800形の置き換えによって2011年3月13日をもって全車引退した。
- 荒川線成立以前より使用されている。ただし7000形同様後年更新され、現在見られる形になっている。
- 2008年からは都交通局と南海グループが「トーキョーサカ」と銘打って共同キャンペーンを展開し、2010年6月6日からは7511号が阪堺モ161形をイメージした阪堺電気軌道(旧、南海大阪軌道線)の昭和40年代当時の塗色である濃緑色地に窓周り縁取り及び扉が橙色の配色に変更された。発表時には車両の方向幕を「天王寺駅前」「住吉」に変更し、共同PRを行った。同時期に阪堺モ501形にも都電6000形をイメージした電車が登場し「PR相互乗り入れ」として運行している[5]。異事業者同士の塗装交換は2009年秋の江ノ島電鉄と京福電気鉄道に次いで2例目となった。
他には、6000形と同形だが全長が短い3000形、昭和初期に製造された小型車の1000形、昭和30年代に大量に生産され各営業所に投入された経済車8000形、杉並線から転属した軽量車体の2500形、王子電気軌道引き継ぎの100形・120形・150形・160形・170形が使用されていた。
なお、2008年9月27日に開催された「荒川線の日」記念イベントで、30年間都内の個人宅に静態保存されていた6000形6086号車が荒川電車営業所に戻り、一般に公開された。
その他[編集]
- 毎年6月10日の「路面電車の日」や10月1日の「荒川線の日」に近い日曜日には記念イベントが開催され、以前は記念バス共通カードが発売されていた。
- 一時期に池袋駅東口への支線建設や高田馬場駅・新宿駅方面への延長が構想されたことがあったが、広島電鉄におけるグリーンムーバーシリーズの導入や富山ライトレール開業などに端を発する路面電車の見直しやライトレール導入の機運の中で、昨今再び検討されつつある。しかし、後に池袋駅東口への路面電車の建設はサンシャインシティを循環するルートとなった。
- 2004年8月のアテネオリンピックにおいて、荒川区出身の競泳選手・北島康介が金メダルを獲得したことを記念した特別電車を運行した。
- 集英社の漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』に連載中の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が連載30周年を突破した記念として、作中にも登場したことがある荒川線で7000形を利用してラッピング電車が運行された。
- 2007年5月27日の9000形営業運転開始に関連して、一部停留場の照明にガス灯を模した街路灯の設置が計画された。1955年頃をイメージした案内サイン、時計塔、公衆トイレや地域情報発信コーナーなども登場した。その第1弾が三ノ輪橋停留場にお目見えした。それと併せて荒川電車営業所の敷地内にそれまで留置線に残っていた都電の旧形車両2両(5500形5501・7500形7504)を移設し、「都電おもいで広場」として展示している。毎週末に公開し、車両に沿って停留場を模したウッドデッキを設け、イベントスペースも確保されている。なお、同年12月25日から2008年4月4日まではトイレや車両を覆う屋根の新設などを行う改修工事のため休園していた。さらに同年12月19日には庚申塚停留場も三ノ輪橋と同じスタイルに生まれ変わった。
- 1970年代には大塚駅前 - 早稲田間の廃止が検討されたが、乗客や地元住民の継続嘆願の運動が起こったこともあり廃案になった。1981年には大塚駅前付近から東池袋付近までを地下化するという豊島区の構想が新聞で報じられたが[6]、実現しなかった。
- 2008年3月から、8500形をのぞく全車両の自動案内放送に英語放送が追加された。
- 明治通り上の急勾配を走る王子 - 飛鳥山間で、2008年4月から2009年1月にかけ、雨天時に大型ダンプカーやレジャー用多目的車(RV車)がスリップ・横転して線路をふさぎ、運行できなくなる事故が4件発生した。深刻な事故につながる恐れもあるため、都と警視庁が対策を検討している[7]。
- 2010年10月から11月にかけてマスコットキャラクターのデザインを公募し[8]、同年12月22日にデザインを発表[9]、2011年2月に愛称を公募し[10]、同年4月18日に『とあらん』と決定した[11]。
脚注[編集]
- ↑ 列車時刻表 - 2013年1月6日閲覧
- ↑ 運賃・乗車券・定期券 - 東京都交通局、2014年4月10日閲覧
- ↑ 旅客運賃改定のお知らせ - 東京都交通局、2014年4月10日閲覧
- ↑ 都電の貸切について - 東京都交通局、2010年10月閲覧。
- ↑ 都電荒川線に阪堺カラーの、阪堺電車に都電カラーの路面電車が走ります - 東京都報道発表資料、2010年5月14日掲載。
- ↑ 「都電を地下化し遊歩道 大塚駅周辺、豊島区が大改造案」朝日新聞東京版朝刊20面、1981年7月10日。
- ↑ 「都電が道路上走る区間で、車の事故多発…都など対策検討」読売新聞、2009年2月13日
- ↑ 都電荒川線マスコットキャラクター イラストコンテストを開催します!! - 東京都交通局 2010年10月25日
- ↑ 都電荒川線マスコットキャラクターが決定しました! - 東京都交通局 2010年12月22日
- ↑ 都電荒川線マスコットキャラクターの愛称を募集します! - 東京都交通局 2011年1月31日
- ↑ 都電荒川線マスコットキャラクターの愛称が決定しました! - 東京都交通局 2011年4月18日